親族 親族の概要

親族

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/03/04 14:41 UTC 版)

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概説

血族と姻族

  • 血族
    法において血縁の繋がっている者(血縁関係にある者)を血族という[1][2]。日本の旧民法では「血統ノ相連結スル者ノ関係」と定義されていた(旧民法人事編19条1項)。血族には自然血族と法定血族とがある。なお、「血族」の概念はあくまでも法的な観点から決定される点に注意を要する(自然の血縁関係がなくとも養子縁組は血族を擬制し、他方、生物学上の血縁関係があっても非嫡出子は父や父の血族との関係を生じるためには父の認知が必要となる(民法第779条))[2][3]
    • 自然血族
      相互に自然の血縁関係(生物学上の血縁関係)にある者を自然血族という[4][1]。直系・傍系を問わない[2]。また、法律上の婚姻によるか否かを問わない(ただし、日本の現行民法では嫡出推定認知親権扶養相続などの点で法律上の差異がある)[2]
    • 法定血族
      法律の規定により血族とされる者。準血族あるいは人為血族ともいう[4][2]。日本の現行民法では養子縁組による血族関係のみが法定血族となっている。明治民法(旧728条)では養子関係のほか継親子関係(父の後妻と先妻の子との間)や嫡母庶子関係(父の家に入った父から認知された庶子と父の妻との間)も法定血族とされていたが、現行民法では姻族関係にとどまる[1]
  • 姻族
    配偶者の一方からみて他方配偶者の血縁関係にあたる者[5]。婚姻関係にある配偶者の一方が、単独で養子として縁組を行った場合、養親と他方配偶者との間に姻族関係が成立するかについては見解が分かれる。

親系の種別

血統の連絡の関係を親系という[6]。以下のような種別がある。

直系と傍系

血統が直上直下で連結する親族関係を直系あるいは直系親という[7][8]祖父母子供などがこれに含まれる。つまり、本人から見て、親の親の親…、あるいは、子の子の子…、で繋がる関係をいう。

血統が共同の始祖より直下する異なった親系に属する者相互の間の親族関係を傍系あるいは傍系親という[7][9]兄弟姉妹おじおばなどがこれに含まれる。つまり、本人から見て、ある共通の祖先から分岐した血統に属する者、もっとわかりやすく言えば、ある先祖の兄弟姉妹の子孫をいう。

誤用されがちであるが、直系・傍系を本家(嫡流)・分家(庶流)の意味で用いるのは誤りである。直系・傍系とは、あくまで、ある人物から見た相対的な生物学的血統上の関係をいうのであるから、分家の人物から見た本家の人物は傍系である。あくまで生物学的血統上の相対関係であるから、家筋や家系とは一切関係がない

父系と母系

父及びその血族親を父系(父系親、父方)、母及びその血族親を母系(母系親、母方)という[6]

男系と女系

血統がもっぱら男子で連絡する場合を男系あるいは男系親といい、それ以外の場合を女系あるいは女系親という[6]

尊属と卑属

自分より前の世代に属する者を尊属という[7]。尊属には父母や祖父母などが含まれる。一方、自分より後の世代に属する者を卑属という[7]。子や孫などがこれに含まれる。

尊属と卑属の区別は、現在では尊属を養子とすることを禁じた民法第793条くらいで法律効果はほとんどないに近いとされる[10]

自分と同世代の者には尊属・卑属の区別はない[11]。また、尊属と卑属の区別は血族に関するもので姻族にはこれらの区別はないとされる[11]

なお、「尊属」と「卑属」という語は、儒教が起源の古代中国の輩行制度に由来するとされるが[12]、親や祖父母の世代を「尊属」、子や孫の世代を「卑属」と呼ぶのは「子供を蔑む言い方だ」など法の下の平等から問題であるとする論[13]や、これらの語は現代においては適切でないとして改めるべきとの論[14]がある。しかし、他の語に変えようがないのが現状とされる[15]

親族の範囲

階級等親制と世数親等制

親族の範囲の定め方には、「等親」という階級を用いて各種の親族ごとに法定する階級等親制と、世数を「親等」という単位で数えて客観的に定める世数親等制がある[12][11]

  • 階級等親制
階級等親制(列記主義)とは、親族の範囲について「祖父母」、「夫の姪」、「前夫の子」、「姑の子」という具合に、各種の親族ごとにそれぞれ個別的に列記する形で定める法制[12]。日本では大宝律令や新律綱領第5条がこの方式をとっていた[12]。階級の単位には「等親」を用いるが、等親は法定されたものであり客観的な世数とは一致しない(日本の新律綱領第5条は5等親までを親族とし、「夫」や「子」などを1等親、「妻」「妾」や「孫」などを2等親、「庶子」や「継父」などを3等親、「兄弟ノ妻」や「前夫ノ子」などを4等親、「妻ノ父母」や「玄孫」などを5等親として規定していた[16])。
  • 世数親等制
日本の民法などで採用されている方式。世数1世をもって1親等として数え、その親等の数によって客観的に親族の範囲を定める法制で、単位には「親等」を用いるが、親等の数え方には下のローマ法式とカノン法式とがある[17]

親等の数え方

親等とは親族関係の親疎・遠近をなす尺度をいい[18]、 親等の数え方にはローマ法式とカノン法式がある。

  • ローマ法式
ローマ法に由来する方式。直系親族の場合には血族間の世数を数え、傍系親族間の場合にはそれぞれの共同始祖(同一の祖先)に至る世数を合算して親等とする方式(本人から世数を起算して共同始祖にまで遡ったのち一方の者まで下って世数を数える)[12][11][10]。日本の民法は親族の範囲について、直系親族の場合には「親族間の世代数を数えて、これを定める」とし(民法第726条第1項)、また、傍系親族の場合には「その一人又はその配偶者から同一の祖先にさかのぼり、その祖先から他の一人に下るまでの世代数による」(民法第726条第2項)としており、ローマ法式の数え方を採用している。この法制では兄弟姉妹間は2親等(本人→共同始祖である父母で1親等→兄弟姉妹で2親等)、伯叔父母とは3親等(本人→父母で1親等→共同始祖である祖父母で2親等→伯叔父母で3親等)、従兄弟姉妹は4親等(本人→父母で1親等→共同始祖である祖父母で2親等→伯叔父母で3親等→従兄弟姉妹で4親等)となる。日本民法での親等の数え方については#日本法における親族も参照。
  • カノン法式
カノン法に由来する方式。寺院法主義あるいは教会法主義ともいう[12]。直系親族間の数え方についてはローマ法式と同じだが、傍系親族間においては共同始祖(同一の祖先)に対する本人及び一方の者の世数をそれぞれ数え、数に差がある場合には多い方の数を親等とする方式[11][10]。この法制では兄弟姉妹間は1親等(本人と兄弟姉妹の共同始祖である父母から起算するため1親等)、伯叔父母とは2親等(本人と伯叔父母の共同始祖である祖父母から起算し、伯叔父母側は1親等、本人側は2親等となるが多い方をとるため2親等)、従兄弟姉妹も2親等(本人と従兄弟姉妹の共同始祖である祖父母から起算するため2親等)となる[19][15]。歴史的には教会が親族間の婚姻障害の範囲を広く適用するためにとられた方式とされるが、現在、この法制を採用している国はない[11][10]

  1. ^ a b c 泉久雄著 『親族法』 有斐閣〈有斐閣法学双書〉、1997年5月、5頁
  2. ^ a b c d e 谷口知平編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、91頁
  3. ^ 前田陽一・本山敦・浦野由紀子著 『民法Ⅵ 親族・相続』 有斐閣〈LEGAL QUEST〉、2010年10月
  4. ^ a b 久貴・右近・浦本・中川・山崎・阿部・泉(1977)46頁
  5. ^ 久貴・右近・浦本・中川・山崎・阿部・泉(1977)47頁
  6. ^ a b c 谷口知平編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、103頁
  7. ^ a b c d 遠藤・原島・広中・川井・山本・水本(2004)40頁
  8. ^ 久貴・右近・浦本・中川・山崎・阿部・泉(1977)49頁
  9. ^ 久貴・右近・浦本・中川・山崎・阿部・泉(1977)49頁
  10. ^ a b c d 泉久雄著 『親族法』 有斐閣〈有斐閣法学双書〉、1997年5月、7頁
  11. ^ a b c d e f 遠藤・原島・広中・川井・山本・水本(2004)41頁
  12. ^ a b c d e f g h 谷口知平編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、106頁
  13. ^ 久貴・右近・浦本・中川・山崎・阿部・泉(1977)50頁
  14. ^ 遠藤・原島・広中・川井・山本・水本(2004)40-41頁
  15. ^ a b c 千葉洋三・床谷文雄・田中通裕・辻朗著 『プリメール民法5-家族法 第2版』 法律文化社、2005年11月、5頁
  16. ^ 谷口知平編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、84頁
  17. ^ 谷口知平編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、107頁
  18. ^ 久貴・右近・浦本・中川・山崎・阿部・泉(1977)50頁
  19. ^ 久貴・右近・浦本・中川・山崎・阿部・泉(1977)50頁
  20. ^ a b 千葉洋三・床谷文雄・田中通裕・辻朗著 『プリメール民法5-家族法 第2版』 法律文化社、2005年11月、7頁
  21. ^ a b 谷口知平編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、96頁
  22. ^ 遠藤・原島・広中・川井・山本・水本(2004)37頁
  23. ^ a b 泉久雄著 『親族法』 有斐閣〈有斐閣法学双書〉、1997年5月、39頁
  24. ^ 久貴・右近・浦本・中川・山崎・阿部・泉(1977)47頁
  25. ^ 遠藤・原島・広中・川井・山本・水本(2004)42頁
  26. ^ 遠藤・原島・広中・川井・山本・水本(2004)44頁
  27. ^ 久貴・右近・浦本・中川・山崎・阿部・泉(1977)47頁
  28. ^ a b c 泉久雄著 『親族法』 有斐閣〈有斐閣法学双書〉、1997年5月、8頁
  29. ^ 谷口知平編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、85頁
  30. ^ 我妻榮編著 『判例コンメンタール〈Ⅶ〉親族法』 コンメンタール刊行会、1970年、45頁
  31. ^ 我妻榮・有泉亨・川井健『民法3 親族法・相続法 第2版』勁草書房、2005年10月、32頁
  32. ^ a b 泉久雄著 『親族法』 有斐閣〈有斐閣法学双書〉、1997年5月、40頁
  33. ^ 二宮周平著 『家族法 第2版』 新世社〈新法学ライブラリ〉、2005年1月
  34. ^ 遠藤・原島・広中・川井・山本・水本(2004)44頁
  35. ^ 久貴・右近・浦本・中川・山崎・阿部・泉(1977)47頁
  36. ^ 泉久雄著 『親族法』 有斐閣〈有斐閣法学双書〉、1997年5月、43頁
  37. ^ a b 谷口知平編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、92頁
  38. ^ 谷口知平編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、93頁
  39. ^ 泉久雄著 『親族法』 有斐閣〈有斐閣法学双書〉、1997年5月、43-44頁
  40. ^ 谷口知平編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、95頁
  41. ^ a b c 泉久雄著 『親族法』 有斐閣〈有斐閣法学双書〉、1997年5月、44頁
  42. ^ 谷口知平編『新版 注釈民法〈21〉親族1』有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉1989年12月、99頁以下


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