医療人類学
医療人類学は一般的には「病気とは何か、それはどのような状態を指し、また何が原因で病気になったのかについて人々の考え方である疾病観念、病気になったと人びとが考えた時病人や周囲の人々がとる対処の方法、およびその知識、特定の治療行為をすることを認めたり新たな治療者を養成する制度、またのはその治療法を社会が承認したり伝承したりする制度、疾病観念や治療方法と直接結びつく身体観念など広範なものを研究対象とする。そして研究や分析の方法論には文化人類学的方法論を用いる」学問と定義することができる。しかし、医療人類学の発達は様々な学問的、実践的領域の理論や方法論の影響を受けてきており上記の定義を中核としながらも理論、方法論的幅は広い。その中でも、現在、特に国際医療保健の中でその理論と方法論とにおいて重要な貢献をしている医療人類学の主なアプローチとして以下の3つが挙げられるであろう。
1)生態人類学(Ecological Anthropology):自然人類学の流れをくみ、健康は環境への適応の尺度であるという基本理念、
2)民族誌的医療研究(Ethnomedicine):病の象徴性、伝統的医療知識、疾病観念や身体観念がどう受診行動に影響を与えるかなどを研究し、病の文化的「説明モデル」を構築、
3)批判的医療人類学(Critical Medical Anthropology):個人、地域社会、国レベルの健康は政治経済的要因によって規定されるという立場から健康、疾病問題を分析。(松山章子)
参考資料:「医療人類学入門」波平恵美子、朝日選書491、1994年
医療人類学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/24 13:15 UTC 版)
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医療人類学(いりょうじんるいがく、英語: medical anthropology)とは、病気と健康(保健)に関する人類学研究分野のことである。 当初は医学史や医療・医学の哲学領域から、考古・歴史上の過去の事象や、非西洋の同時代の異文化・異民族の事象を検討することを通して、西洋近代医療概念を相対化するために、この学問領域が登場してきた。したがって医療・医学の研究から人類学の方法論や概念を身につけて研究した人たちと、人類学の分野から医療すなわち病気・健康・保健を対象とする学問を研究する人たちの2つに大別することができた。やがて人類学研究の細分化が加速し医療人類学の専門を名乗る人たちが出てきて、専門学会や研究会を組織し、学術雑誌を出すようになり、今日のような研究領域ができあがった。
歴史的背景
人類学と医療・医学実践の関係はしばしば記録に残っている[1]。人類学は基本的な医療科学(一般的に前臨床として知られているようなテーマと関連するようなもの)において重要な位置を占めていた。しかしながら、実証的な医療現場における医療重視(患者の身体とアイデンティティを切り離すような非人間的医療)や患者の意思の制限の結果として、医学教育は病院の制限のもとにおかれるようになった[2][3]。病院の臨床教育やクロード・ベルナールによって提案された実証的方法論が覇権を握ったことにより、かつて知識源とみなされていた医療現場の医師の日常経験の価値は低下した。病院による臨床訓練の発展の後、医学における基本的な情報源は病院や研究室による経験医学となり、これは長年にわたり大半の医者が知識のツールとしてのエスノグラフィーを放棄したということを意味した。 ただ、医療関係者全員がエスノグラフィーを放棄したというわけではない。というのは、エスノグラフィーは20世紀の大半において初期段階のヘルスケアや地方医療、国際的公共福祉における知識のツールであり続けたからである。医学がエスノグラフィーを放棄したのは社会人類学がエスノグラフィーを独自の手法として採用し、初期の人類学の試みから離れ始めた頃であった。ただし、人類学が医学から分離したからといって、決して完全に分断されたというわけではない[4]。この二つの領域の関係は1960・70年代において現代医療人類学が発展を見せるまでも継続していた。
W.H.R.リバース、アブラム・カーディナー、ロバート・I・レヴィといった20世紀の医療人類学に貢献した者たちの多くは、医学、看護学、心理学、精神医学を初期教育の段階で受けていた。彼らの中には臨床における規則と人類学における規則を共有した者もいた。また、ジョージ・フォスター、ウィリアム・コーディル、バイロン・グッドなどのように、人類学や社会科学から来た者もいた。
医療人類学が扱う主要なトピックには、メンタルヘルス、セクシャルヘルス、妊娠、誕生、老い、中毒、栄養、障碍、伝染病、非感染性疾患(NCDs)、世界的な感染症、災害マネジメントなどがある。
概要
- 1970年代以降、北米において盛んに研究が行われてきている。アメリカ人類学会(American Anthroplogical Association)の下位カテゴリーにおいて、医学領域の会員数がかなりの数を占めることからもその隆盛がうかがえる。
- 日本語の「医療人類学」の訳語の初期の初出は、欠田早苗(1973)によるものと思われる[5]。現在、日本においても、この領域に関心をもつ研究者は増えてきており、大学の研究室も存在する。
- 医療人類学を研究する多くの研究者は日本文化人類学会に属している。
関連研究領域
- 自然人類学・人類生態学・古病理学
- 司法人類学(forensic anthropologyの訳、法人類学とも訳せるがむしろ法医学的人類学ないしは法廷人類学にちかい)
- 民族医療・民俗医療
- 臨床人類学
- 文化精神医学・トランス文化精神医学
- 国際医療協力学(開発医療人類学)
医療人類学を勉強できる大学・大学院
- 千葉大学大学院社会文化学研究科
- 大阪大学コミュニケーションデザイン・センターCSCD
- 大阪大学大学院人間科学研究科
- 山口大学医学部医療環境学講座
- 早稲田大学大学院人間科学研究科
- 広島大学総合科学部
- 東京都立大学 人間健康科学研究科
研究者
- 飯田淳子
- 池田光穂
- 磯野真穂
- 江口重幸
- 大森絹子
- 小田博志
- 北中淳子
- 下地明友
- 白川千尋
- 鈴木七美
- 武井秀夫
- 田代順
- 波平恵美子
- 星野晋
- 道信良子
- 松岡悦子
- 松岡秀明
- 宮地尚子
- 吉田正紀(人類学者)
- アーサー・クラインマン
- アラン・ヤング
- ナンシー・シュエパー・ヒューズ
- バイロン・グッド
- マーガレット・ロック
脚注
- ^ Martínez Hernáez, Ángel; Comelles, Josep Maria (2020-03-26). “La medicina popular. ¿Los límites culturales del modelo médico?”. Disparidades. Revista de Antropología 49 (2): 109. doi:10.3989/rdtp.1994.v49.i2.293. ISSN 2659-6881 .
- ^ Mainetti, J. A. (1977-01-01). “The Birth of the Clinic. By Michel Foucault. Translated by A. M. Sheridan Smith. New York: Pantheon Books, 1973. Pp. 215. $8.95. (First published in French as Naissance de la clinique [Paris: Presses Universitaires de France, 1963.)”]. Journal of Medicine and Philosophy 2 (1): 77–83. doi:10.1093/jmp/2.1.77. ISSN 0360-5310 .
- ^ Bueltzingsloewen, Isabelle von (1997). Machines à instruire, machines à guérir. Presses universitaires de Lyon. ISBN 978-2-7297-0582-4
- ^ Comelles, Josep M. (2000). “[No title found”]. Culture, Medicine and Psychiatry 24 (1): 39–73. doi:10.1023/A:1005560608783 .
- ^ Alexander Alland 著、欠田早苗 訳『文化と医療 : 医療人類学入門』医歯薬出版、1973年。
参考文献
池田光穂・奥野克己共編『医療人類学のレッスン 病いをめぐる文化を探る』(学陽書房、2007年)
関連項目
外部リンク
- 医療人類学プロジェクト
- 仮想医療人類学辞典
- 進化心理学・人間行動生態学 - ウェイバックマシン(2000年4月7日アーカイブ分)
- 山口大学医学部医療環境学講座医療人類学
- ナースに役立つ種類のサイト - ウェイバックマシン(2019年1月1日アーカイブ分)
医療人類学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/30 00:33 UTC 版)
医療人類学の定義は、池田光穂によると「医学と人類学を架橋(ブリッジ)する学問を医療人類学(medical anthropology)」としている。
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