欧州連合 懐疑論

欧州連合

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/02 00:29 UTC 版)

懐疑論

ストックホルムにおいて行われた、リスボン条約批准に反対するデモ活動 横断幕にはスウェーデン語で「EU条約は国民投票で!」と大書されている

ヨーロッパの統合が進められる中で、加盟国の主権と欧州連合の権限の優劣関係や、欧州連合の制度の下で享受される恩恵が加盟国間で不平等であるといった批判や疑問を唱える論調も存在する。政治分野での統合を目的に欧州政治共同体の設置構想が掲げられ、この手前の段階として1952年には欧州防衛共同体の創設に向けた作業が進められていた。しかしフランスにおいて設置条約の批准が国民議会において諮られていたが、国民議会はこれを拒否した。

2004年10月、将来の拡大における受け入れ態勢の整備と肥大化した機構の効率化、さらには政策決定手続の簡素化を盛り込んだ欧州憲法条約が調印されたが、同条約では「欧州連合の旗」や「欧州連合の歌」といったものを盛り込み、さながら欧州連合をひとつの国家とするような性格を持っていた。これに対して加盟国の国民からは自国が欧州連合にとって替えられるという不安から欧州憲法条約を危険視する風潮が起こり、2005年5月にフランスで、翌6月にオランダで行われた同条約の批准の是非を問う国民投票で反対票が賛成票を上回るという結果が出された。この事態にヨーロッパ統合を進めていた欧州連合の首脳は動揺し、また一部の首脳からは欧州連合のあり方について疑問や批判が出されるようになった。

2007年3月にベルリン宣言が発表され、欧州連合の統合を進めていくことが再確認された。その後、欧州憲法条約から超国家主義的な要素を排除し、欧州連合の改革を進めるための新たな基本条約の策定が合意された。「改革条約」と位置づけられたこの条約は2007年12月にリスボン条約として調印される。ところがこの条約に対しても、市民にとって機構改革の必要性がわかりにくいなどの批判が起こり、2008年6月に行われたアイルランドでの国民投票で欧州連合に批判的な政党が「わからないものには No を」と呼びかけるなどした結果、反対票が53.4%、賛成票が46.6%(投票率 53.1%)となり、ヨーロッパ統合は再び暗礁に乗り上げ、リスボン条約を推し進めてきた各国の首脳らは欧州連合に対する市民の厳しい見方の存在を改めて痛感することになった。さらにポーランドやチェコでは議会で批准が承認されたリスボン条約に大統領が署名を拒み続けるということもあった。

またイギリスは1990年代後半から2000年代にかけて、欧州連合のもとでヨーロッパ統合に前向きであったにもかかわらず、ユーロの導入に関して、1990年の欧州為替相場メカニズム参加を契機に起こったポンド危機の経験から消極的な姿勢が見られる。このイギリスの消極的な姿勢は2016年のEU離脱へ至る。くわえて、基本条約においてユーロ導入が義務付けられているスウェーデンも、1994年の欧州連合への加盟を問う国民投票で加盟賛成が53%を占めていたものの、議会がユーロ導入時期の決定について事実上の棚上げを宣言し、その後2003年のユーロ導入を問う国民投票で反対が56%を占めるという結果が出されている。

ノルウェー

ノルウェーはEUとは距離を置いている。ノルウェーは1973年と1995年の拡大のさいにそれぞれ欧州連合(欧州諸共同体)加盟条約に調印していたが、それらの条約の批准をめぐって国民投票で是非が問われ、いずれも反対する票が上回り、実際には欧州連合(欧州諸共同体)加盟に至らなかった。また1992年6月2日、マーストリヒト条約批准にあたってデンマークでは国民投票が実施されたが、僅差で批准反対票が上回り、さらにはイギリスにおいても議会で批准が拒否される事態が起きた。さらに従来の基本条約を修正するニース条約の批准においても、基本条約を修正するさいに国民投票の実施が憲法で義務付けられているアイルランドにおいて批准が拒否された。これらについてはいずれもその後の協議で特例を設けるなどの対応がなされ、改めて批准が諮られ可決されてきた。

2015年の調査でもノルウェー有権者の約7割がEU加盟に反対している[67]。 もしEUに加盟すればEU側の主張や法(共通農業政策、共通の刑法など)に従うことが求められる。 よってノルウェーは自国の主権を最大限に行使するため、EUではなく、欧州自由貿易連合に加盟している。 EFTA加盟国の一人当たり所得はEUの約1.5倍である[67]

アイスランド

2015年、もはやアイスランドは欧州連合に加盟する意志がないことを欧州委員会とEU大統領に通告した[68]。自国通貨アイスランド・クローナを有するアイスランドは、2008年のデフォルト以来、通貨暴落の恩恵を受けて輸出増で景気が順調に回復した。2007年には1ドル60アイスランド・クローナだったが、債務不履行の後に1ドル125アイスランド・クローナまで暴落。この通貨安はアイスランドの輸出産業、例えば観光業に追い風を与え、2011年度には56万人の観光客を呼び込み、国家全体として輸出主導の景気回復によって3%を越える経済成長を記録した[69]。2012年には失業率を4.5%にまで改善させた。この数字はEUの平均失業率よりもはるかに低い[70]

スイス

スイスは1992年にEU加盟のための申請を行ったが、その後EEAに加盟するかどうかの国民投票においてスイス国民がEEA非加盟を選択した[71]。それ以降EU加盟のための交渉は停止していた。 その後スイス国民党が中心となって動き、スイス下院でEU加盟申請を取り下げる決定を下した。そして2016年6月にスイス上院が1992年の加盟申請を無効化する決定をしたことにより、スイスはEUへの加盟を公式に辞退した[71]




欧州連合
欧州旗
欧州連合の標語: In varietate concordia[2]
ラテン語: 多様性における統一)
欧州連合の歌: 交響曲第9番第4楽章歓喜の歌
公用語
拠点都市ブリュッセル
ストラスブール
ルクセンブルク市
加盟国
欧州理事会議長
(欧州大統領)
シャルル・ミシェル
欧州議会議長ダビド・サッソリ
欧州委員会委員長ウルズラ・フォン・デア・ライエン
設立
- ローマ条約発効
- マーストリヒト条約発効

1958年1月1日
1993年11月1日
面積
- 総計
- 水面積率
世界第7位[4]
- 4,233,262 km2
- 3.08%
人口
- 総計(2020年)
- 人口密度
世界第3位[4]
- 447,206,135 人[5]
GDP (PPP)
- 総計
- 1人あたり
2020年 [6]
- 20兆366億USドル
- 45,541 USドル
GDP(名目)
- 総計
- 1人あたり
2020年 (IMF)[7]
- 16兆33億USドル
- 35,851 USドル
通貨
時間帯UTC ±0 から +2
DST: +1 から +3)
ccTLD.eu
  1. ^ 公式の名称については欧州連合の各公用語のものがある。
  2. ^ 欧州連合の各公用語での表記があるが、ここではリングワ・フランカとされるラテン語による表記のみとした。
  3. ^ 欧州連合の公用語については欧州連合の言語を参照。
  4. ^ a b 欧州連合を単一の国として数えたときの順位。
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  7. ^ World Economic Outlook Database, October 2019”. IMF.org. International Monetary Fund. 2020年2月1日閲覧。

注釈

  1. ^ 『中学社会 地理 地域にまなぶ』(文部科学省検定済教科書 中学校社会科用 発行所:教育出版株式会社。平成23年3月30日検定済。平成27年1月10日印刷。平成27年1月20日発行。17教出 地理722)p 10に「また, 逆にヨーロッパ連合(EU)のように, 地域統合を目ざしているところもあります。」と書かれ、『新しい社会 公民』(文部科学省検定済教科書 中学校社会科用 発行所:東京書籍株式会社。平成23年3月30日検定済。平成27年1月20日印刷。平成27年2月10日発行。2 東書 公民921)p 154に「1993年にはヨーロッパ連合(EU)が発足し, ヨーロッパ各国はたがいに結びつきを強めています。」と書かれていて、ヨーロッパ連合を使用している。ただ、『社会科 中学生の歴史 日本の歩みと世界の動き』(文部科学省検定済教科書 中学校社会科用 発行所:株式会社 帝国書院。平成23年3月30日検定済。平成27年1月10日印刷。平成27年1月20日発行。46 帝国 歴史724)p 245には「1993年に発足した欧州連合(EU)は, その国家の壁を低くして協力し合う試みを東ヨーロッパにまで広げています。」と書かれ、欧州連合を使用している。したがって、教科書では、ヨーロッパ連合、欧州連合のいずれを使用してもよいことになっている。
  2. ^ ただし、このように2005年をひとつの区切りとするのは田中俊郎(2007)p.17に従うものである。
  3. ^ リスボン条約の発効による暫定措置として、2009年6月の選挙では736名の議員と18名のオブザーバが選出された。18名のオブザーバは必要な措置を経て正式に議員となる。そのため欧州議会は、2014年の任期満了までは基本条約で定められる上限を超えて、754名で構成されることになる。
  4. ^ EUは目下の拡大政策について、SAAを締結・発効した西バルカン諸国に重点を置いている。EUが位置付ける潜在的加盟候補国は、西バルカン諸国のうちまだ加盟候補国でない国を指すため、連合協定を締結・発効したウクライナ、モルドバ、ジョージアは通常これにあたらない。

出典

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