ワンガリ・マータイ
ケニア出身の環境保護活動家、生物学博士。元・ケニア副環境相、国連平和大使。ノーベル平和賞受賞者。
植林活動を通じて環境保全と女性の社会参加を促す「グリーンベルト運動」や、「Reduce(ゴミ削減)、Reuse(再利用)、Recycle(再資源化)」を一つの概念として捉えた「3R」、および、3RにRespect(自然への畏敬)を含めたメッセージとしての「MOTTAINAI」を世界に向けて発信するキャンペーンなどを展開した。
2004年に環境分野の活動家として初めて、アフリカ出身の女性としても初めて、ノーベル平和賞を受賞した。
2011年9月に子宮がんのため死去した。享年71歳だった。
関連サイト:
MOTTAINAI もったいないプロジェクト
The Nobel Peace Prize 2004 - Wangari Maathai(英語)
マータイ【Wangari Muta Maathai】
ワンガリ・マータイ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/09 02:22 UTC 版)
ワンガリ・マータイ
Wangari Muta Maathai |
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ワンガリ・マータイ
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生誕 | 1940年4月1日![]() ![]() |
死没 | 2011年9月25日(71歳没)![]() |
職業 | ナイロビ大学教授 環境保護活動家 |
政党 | ケニア・マジンジラ緑の党 |
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ワンガリ・マータイ(Wangari Muta Maathai, 1940年4月1日 - 2011年9月25日[1])は、ケニア出身の女性環境保護活動家、政治家。ノーベル賞受賞者。
2004年12月10日、「持続可能な開発、民主主義と平和への貢献」により、環境分野の活動家およびアフリカ人女性として史上初のノーベル平和賞を受賞した。また、ナイロビ大学初の女性教授となった人物でもある。関西学院大学、早稲田大学、青山学院大学、お茶の水女子大学、創価大学名誉博士。
名前は出身エスニックグループのキクユの言葉で Wangarĩ Maathai と表記される場合もある[2]が、これをキクユ語読みすると [waŋɡaɾe maːðai] となるため、より原語に近いカナ表記はワンガレ・マーザイとなる。
略歴
1940年、ケニア中部のニエリの農家の娘として生まれ、アメリカ、カンザス州のベネディクティン・カレッジ卒業後、ピッツバーグ大学で修士号、ナイロビ大学で博士号(獣医学)を取得し、1971年にはナイロビ大学教授に就任した。1977年にグリーン・ベルト・ムーブメントを設立して土壌の浸食と砂漠化を防止する植林活動を開始し、1986年にアフリカン・グリーン・ベルト・ネットワークへ改称後、アフリカ大陸全土で植林活動を行い、民主化や持続可能な開発の推進に取り組んだ。
独裁政権下にあったケニアにおいて、公然と政権を批判したことで数度の逮捕と投獄を経験。男尊女卑が根強かった当時のケニア国内においては、その自己主張と信念の強さを持つ異色の女性であったがゆえに、コントロール不可能であると夫が国に訴え離婚させられた経験も持つ。1997年にはケニアの大統領選挙に立候補しようとしたが、所属政党の説得により断念。
2001年、オーストラリアのキャンベラで開催された「グローバル・グリーンズ」の第一回大会において、アフリカの現状についてスピーチした[3]。
2002年に国会議員となり、2003年から環境・天然資源・野生動物省の副大臣を務め、ケニア・マジンジラ緑の党を設立して代表も務めた。2005年3月28日、アフリカ連合経済社会文化会議の初代議長に選出された。2007年実施のケニア国会議員総選挙で落選した。
2005年2月14日から10日間、京都議定書関連行事出席のため来日した際、日本語の「もったいない(モッタイナイ[4])」という言葉を知って感銘を受ける。同年3月の国連女性地位委員会では出席者全員と「もったいない」と唱和した。同年より「MOTTAINAI」キャンペーンを展開する。
2006年のトリノオリンピックの開会式ではオリンピック旗を掲揚する際の旗手を務めた。2009年5月にはケニアの岩谷滋雄特命全権大使から旭日大綬章の伝達を受け、同年12月には国連平和大使に任命された。
2011年9月25日、ケニアの首都ナイロビの病院で卵巣がんにより死去[5]。71歳没。同月28日、ケニアのキバキ大統領は生前の功績を称え国葬とすることを決め[6]、10月8日にナイロビ市内のウフル公園で国葬が行われた。葬儀は「木を使わないで」という遺言に従い、特製の棺に納められガスによる火葬に付された[7]。
ノーベル平和賞

ノルウェー・ノーベル委員会は、2004年度のノーベル平和賞受賞者を発表する席で次のようにコメントした。「マータイは、ケニアの圧政的な前政権に対し果敢にも立ち上がり、彼女のユニークな運動は政治的抑圧に対して国内、また国際的にも注意を引くのに貢献した。彼女は民主的権利への運動の中で多くの人々にとってインスピレーションとなり、また特に女性の地位向上を促すのに勇気を与えた」。
ノーベル平和賞受賞の報告を受けての席上で、マータイは、エイズウイルス陰謀説のうちの一つである「HIVウイルスは生体工学の産物であり、アフリカにおいて西洋の科学者によって、黒人を懲らしめるために大量破壊兵器としてばら撒かれた」との主張に対して賛成するようなコメントをした。その後マータイは自らの見解を、2004年10月10日付TIMEマガジンヨーロッパ版にて明らかにした[8]。
授賞式のスピーチではこれまでの活動を振り返ると同時に、アフリカの同胞に対し紛争や貧困を減らし生活の質を向上させるため共に努力することを呼びかけ、またアウンサンスーチーの軟禁解除を訴えた[9]。
受賞した賞
- 1984年、ライト・ライブリフッド賞(正しい生計賞 - もうひとつのノーベル賞とも呼ばれる賞)
- 1987年、Global 500 Roll of Honour
- 1991年、ゴールドマン環境賞
- 1993年、アフリカ賞、Edinburgh Medal
- 2004年、ペトラケリー賞、ソフィー賞、ノーベル平和賞
- 2006年、レジオンドヌール勲章
- 2007年、World Citizenship Award、インディラ・ガンディー賞
- 2009年、旭日大綬章[10]
著作
脚注
- ^ “ノーベル平和賞受賞のマータイさん死去”. 日テレNEWS24. (2011年9月26日) 2020年2月7日閲覧。
- ^ Magu, Stephen M. (2018). The Socio-Cultural, Ethnic and Historic Foundations of Kenya's Electoral Violence: Democracy On Fire. Routledge. ISBN 9780815350651
- ^ 小野一『緑の党 運動・思想・政党の歴史』講談社〈講談社選書メチエ583〉、53頁。
- ^ 社説:マータイさん死去 「モッタイナイ」を永遠に - 毎日jp(毎日新聞)
- ^ W.マータイさん死去 アフリカの環境保護に尽力 04年ノーベル平和賞 産経新聞 2011年9月26日閲覧
- ^ 「もったいない」のマータイさん、ケニアで国葬に ロイター 2011年9月30日閲覧
- ^ ワンガリ・マータイさん死去:「木を使わないで」遺言通り葬儀 毎日新聞 2011年10月10日閲覧
- ^ 10 Questions: Wangari Maathai TIME MAGAZINE WORLD 2004年10月10日閲覧
- ^ マータイさん演説要旨 ノーベル平和賞受賞 47news 2004年12月10日
- ^ “もったいなくない マータイさん旭日大綬章 春の叙勲”. 朝日新聞デジタル (2009年4月29日). 2023年4月8日閲覧。
関連項目
外部リンク
- ワンガリ・マータイ - ブリタニカ百科事典
- 『マータイ』 - コトバンク
- Wangari Maathai - Encyclopedia of Earth「ワンガリ・マータイ」の項目。
ワンガリ・マータイ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/16 01:19 UTC 版)
ワンガリ・マータイは、ケニア出身の環境保護活動家である。環境分野で初めてノーベル平和賞を受賞した人物でもある(2004年)。 『MOTTAINAI』との出会い(2005年2月) 京都議定書関連行事のため、毎日新聞社の招聘により日本を訪問。その時、同社編集局長とのインタビューで「もったいない」という言葉を知る。 「もったいない」は"wasteful"と同じ意味であって、両方の言葉は環境問題を考えるに重要な概念と話したという。 同年2月17日に、当時の内閣総理大臣・小泉純一郎と会談した際、"wasteful"という言葉を使用したが、「もったいない」という言葉を使ったと報道された。 同年3月には国連女性地位委員会で出席者全員に「もったいない」と唱和させたりするなど、世界へこの語を広めようとしている。 『MOTTAINAI』を世界共通の言葉とする理由 「もったいない」に感銘を受けた後、この意思と概念を世界中に広めるため他の言語で該当するような言葉を探したが、「もったいない」のように、自然や物に対する敬意、愛などの意思(リスペクト)が込められているような言葉が他に見つからなかった。 消費削減(リデュース)、再使用(リユース)、再生利用(リサイクル)、尊敬(リスペクト)の概念を一語で表せる言葉も見つからなかった。 そのため、そのまま『MOTTAINAI』を世界共通の言葉として広めているという(『世界一受けたい授業』(日本テレビ系のテレビ番組)などで語った所による)。 グレンイーグルズ・サミット(2005年7月) 歌手のボノやボブ・ゲルドフなどとともに、英首相のトニー・ブレアにアフリカ支援を訴えた(イギリス・スコットランドのパースシャーで開かれた主要国首脳会議)。 その後、エディンバラのサッカー場で開催されたライブ8(Live 8)コンサートで、6万人の観衆に「もったいない」を紹介。 その他の活動 南アフリカ共和国・ヨハネスブルクでネルソン・マンデラ前大統領の87歳の誕生日を祝う式典にも招かれ、ビル・クリントン前米大統領ら約1,000人の招待者にMOTTAINAIを呼びかけた。 アメリカ合衆国ハーバード大学やエール大学などの講演でも「日本人の知恵」としてこの言葉を紹介している。 再来日(2006年2月) 毎日新聞社の招きで再来日し、当時の環境大臣・小池百合子やトヨタ自動車名誉会長・豊田章一郎、歌手・倉木麻衣など、政財界の首脳や著名人と会談する一方で、千葉県松戸市の小学校や早稲田大学、横浜国立大学、北九州市など日本各地で講演し、さまざまなイベントで市民と交流した。 この際、日本の伝統美である風呂敷を「もったいない精神の象徴」と紹介し、小池と一緒に「Furoshiki」をアピールし、風呂敷ブームを巻き起こした。 自叙伝での紹介 2006年10月に発刊。タイトルは「Unbowed」(「不屈、へこたれない」の意味)。 アフリカの緑化活動、「グリーンベルト運動」を軌道に乗せるまでの苦難の半生を描いたものであり、その序文でも「MOTTAINAI」を紹介している。 マータイや山口昭(後述)が唱える「もったいない精神」に共通しているのは、本来、日本人が「もったいない」で感じるネガティブな概念を昇華し、これを人やもの、生物、自然、平和を敬う3R運動や環境保護、平和運動の実践理念としてポジティブにとらえている点である。
※この「ワンガリ・マータイ」の解説は、「もったいない」の解説の一部です。
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