B型肝炎の治療
【概要】 B型肝炎ウイルスの排除の目的は、慢性肝炎からの進行を防ぐことである。まずB型肝炎の自然経過の特異性に注目が必要。成人にみられる急性肝炎の多くは自然治癒する。劇症肝炎の治療は治癒傾向がなければ肝臓移植となる。キャリアからのセロコンバージョンによる急性憎悪も沈静化も見届ける必要がある。キャリアからの慢性肝炎、肝硬変、肝臓癌への進行を食い止めるために、インターフェロンや逆転写酵素阻害剤が使用されている。ただしB型肝炎の場合、肝硬変がなくても癌が発生することもある。
【詳しく】 インターフェロンの有効率は10%前後。抗HIV薬であるラミブジン(商品名:ゼフィックス)、アデホビル(商品名:ヘプセラ)が著効し保険適応がある。エンテカビル(商品名:バラクルード)は認可待ちである。ゼフィックスの場合、途中で治療を中止すると、HBVの急激な増加が起こり肝炎が劇症化することがある。半年から2年治療を続けていると、HBV-DNAポリメラーゼの活性中心である「YMDD motif」のメチオニンがイソロイシンかバリンに変異すると3TC耐性となる。テノヒビルとエムトリシタビンはHBVに効果があるが、保険適応を申請していない。

C型肝炎の治療
【概要】 肝硬変や肝臓癌になってからウイルスを抑えることは役に立たない。肝硬変への進行をくい止めるのが目的となる。そのためにはHCVの増殖を抑えることが大切で、現在は感染の存在とHCVの遺伝子型、HCV RNA量を目安にインターフェロンが使用されている。長期間ウイルスが検出限界以下になったものを(SVR: Sustained Viral Response)と呼ぶ。インターフェロンの種類、使用量、使用スケジュールで治療成績が異なる。この他、HCVは排除できないが肝炎を沈静化させる肝庇護療法がある。
【詳しく】 ポリエチレングリコールを化学的にインターフェロンにくっつけた、ペグ化インターフェロン(PEG-IFN)は血中半減期が長くなる。商品名はペグ・イントロン(シェーリング社)とペガシス(ロシュ-中外製薬)。核酸系類似物質であるリバビリンとの併用により、40-50%と高いSVRが得られるようになった。SVRが得られなくても肝炎が沈静化することにより、肝硬変・肝臓癌を先送りできた可能性もある。抗HIV薬開発と同じようにHCV特有の酵素を阻害する新しい抗HCV薬も開発研究中である。近い将来HIVと同じようにコントロールできる病気になるかもしれない。

HIV消耗症候群の治療
【治療】 HIV消耗症候群の治療法としては、1)抗HIV薬の使用でHIV増殖を抑えること、2)ドロナビノールや酢酸メゲステロール(日本では未発売)という食欲増進剤、3)栄養補給、4)組み換え型ヒト成長ホルモン製剤(セロスティム)、5)蛋白同化ステロイド、がFDAの認可済みである。アメリカではTNFαを抑えるサリドマイドの小規模な治験も開始されている。

HIV脳症の治療
【治療】 HAART以前には確実な治療法はなかった。現在は中枢神経の中でのHIVの複製を抑制することを目指している。前向きの比較試験はない。脳脊髄液中への移行が良い抗HIV薬の方が、よりRNAの低下をもたらす可能性がある。HAARTによりMRIの白質病変は長いあいだ改善し、認知障害の改善で就労可能になることがある。脳脊髄液中のHIV RNAの回復と相関している。

カポジ肉腫の治療
【治療】 治療は局所的な(1)放射線療法、(2)液体窒素による凍結療法。(3)ビンブラスチンの局注、(4)αインターフェロン(保険摘要なし)がある。全身や内臓に転移したものには、(5)抗癌剤:リポ化ドキソルビシン(Doxil:ドキシル:エイズ治療薬研究班より入手)、エトポシド、パクリタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、ドキソルビシンなどを単独あるいは併用で使用する。
【予後】 治療前のCD4数が400以上のもの、数が少なく増加傾向が緩徐なもの、全身症状がないものは治療への反応性も良い。HAART以前は抗癌剤による完全寛解は1~4%、部分寛解は10~40%で再発も多く、平均生存期間は18ケ月であった。ドキシルとブレオマイシンの併用療法では、完全寛解5.8%、部分寛解52.8%であった。
《参照》 日和見腫瘍、 ABV、 ビンクリスチン、 ビンブラスチン、 ブレオマイシン、 アドリアマイシン、 リポソーマルドキソルビシン、 パクリタキセル、 インターフェロン

カンジダ症の治療
【治療】 (1)食道炎:フルコナゾール(ジフルカン)を100~200mgを1日に1回内服。(2)全身性や深部の場合:ジフルカン1回200-400mgを1日1回点滴静注。ホスフルコナゾール(プロジフ)1回800mgを1日1回2日間、その後1回400mgを1日1回静注。無効の場合は、ミカファンギン(ファンガード)、ボリコナゾール(ブイフェンド)、アムホテリシンB(ファンギゾン)の点滴静注を行う。
【副作用】 フルコナゾールとホスフルコナゾール:肝障害。プロテアーゼ阻害剤との間に薬物相互作用あり。アムホテリシンB:寒気、発熱、頭痛、皮疹、吐き気、嘔吐、肝障害、腎障害、貧血、低カリウム血症。
【予後】 治癒率は90~95%、再発率も60~70%、診断から死亡までの平均生存期間は6~8ケ月といわれた。最近はジフルカンの使用で延長しているが、耐性カンジダの問題も生じている。抗HIV薬によって免疫能の回復が得られれば、再発も起こらなくなる。

クリプトコッカス症の治療
【治療】 (1)アムホテリシンB:0.6mg/Kgを1日に1回点滴、8~12週間続け、合計量が1500~2000mgになるまで。フルシトシンの併用を行うこともある。(2)フルコナゾール:初日は400mg、2日目以降は200mgを使用。2~3ケ月続ける。イトラコナゾールの内服も有効である。
【予後】 急性感染での生存率は30%。治療後の平均生存期間は6~8ケ月。免疫能が回復しなければ再発率は80%なので、フルコナゾールを生涯続ける必要がある。抗HIV薬によりCD4細胞数が100以上を3ヶ月以上維持できれば中止できる可能性がある。

サイトメガロウイルス症の治療
【治療】最近ガンシクロビルのプロドラッグであるバルガンシクロビル(商品名:バリキサ)が使用できる。1回900mgを1日2回、3週間。その後の維持量は1日1回を続ける。ガンシクロビルは5mg/Kgを1日に2回、14日間点滴する。その後は1日1回を続ける。CD4細胞数が100以上を3-6ヶ月以上継続すれば治療を中止できる。ガンシクロビルの経口剤は効果は劣る。ガンシクロビルに耐性のCMVでは、第二選択剤としてホスカルネットの点滴が使用される。網膜炎に対してはガンシクロビルの硝子体内注射もある。
【副作用】ガンシクロビルでは白血球や血小板減少が必発。腎排泄型の薬剤併用は相互作用に注意。ホスカルネットは腎障害に注意。
【予後】有効率は80%。HAART時代の前は、薬を中断すると再発率は100%、平均生存期間は6~8ケ月であった。現在はHAARTにより免疫能が回復してCMV感染症の再発が起こらず、維持療法を中止できるようになった。

トキソプラズマ脳症の治療
【治療】 脳の悪性リンパ腫と区別がつかなかったら、まずトキソプラズマと考えて治療を開始する。リンパ腫より経過がより急速で、治療による反応が得られる可能性があるからである。ピリメタミン(初回100mg、2回目以降は50~75mgを1日1回経口) + 葉酸(10~30mgを1日1回) + スルファダイアジン(1~1.5gを1日4回経口)あるいはクリンダマイシン(600mg経口あるいは静注を1日4回)。以上を3~6週間行う。最初の6週以後はピリメタミンを25mgに減らしてもよい。ピリメタミンとスルファダイアジンの合剤がファンシダールである。免疫能の回復まで治療は続ける。サルファ剤にアレルギーを示す患者には、クリンダマイシンを1200~1800mgを6週間続ける。アメリカではクラリスロマイシン、アジスロマイシン、アトバコン、ダプソンなどの組み合わせが試されている。ST合剤には予防効果がある。
【副作用】ファンシダールは副作用が多い。骨髄抑制、皮疹、発熱、サルファ剤結晶による腎障害などで、時には致死的である。

ニユーモシスチス肺炎の治療
【治療】(1)ST合剤:15mg/Kg/日を4回に分ける、(2)ST合剤の注射(=4アンプル)、治療期間は14~21日。(3)イセチオン酸ペンタミジン:4mg/Kgを日に1回点滴静注、14~21日間。(4)軽症の場合はエアロゾル化したペンタミジン(600mg)を1日に1回、21日間吸入させる。(5)もし動脈血の酸素濃度が70mmHg以下であれば、プレドニソロンを40mg/日加える。上記以外の薬としてはトリメトプリム+ダプソンの組み合わせ、クリンダマイシン+プリマキンの組み合わせ、アトバコン(厚生省のエイズ治療薬研究班が確保)が試みられている。
【予後】 有効率は70~80%、再発率は20%。ST合剤を2錠/日の内服、あるいはペンタミジン(300mg/回/月)の吸入で再発予防ができる。補助酸素療法をしないと生存率は15~20%に下がる。AZTが登場する前の平均生存期間は36週間であったが、現在は21ケ月に伸びている。
【予防】 免疫能が低下すると高率に発生するので、CD4数が200/μL以下になるとST合剤の内服(毎日or週3日)や、ペンタミジンの静注、吸入などで予防する。ST合剤が最も良い。CD4数が200/μL以上を3ヶ月以上維持できれば、予防治療は中止できる。

免疫再構築症候群の治療
【概要】 本症は抗HIV療法で免疫回復過程に、病原体が居残っているために発生する炎症反応である。従って対処としては原因となっている病原体への治療継続、他の隠れていた日和見感染症の診断と治療が基本。対症的に非ステロイド系消炎剤の使用、過剰なサイトカイン産生を抑制するために、中等量の副腎皮質ステロイドの併用も多い。結核や非定型抗酸菌症のように病原体の抑制に時間がかかり、かつ免疫反応が強い場合は、長期ステロイド使用の不利益を考え、抗HIV治療の中断をしないといけない場合もある。
【詳しく】 現実に主治医を悩ませるのは、原因となる病原体がみつけにくい場合、使用している薬剤の副作用との区別、副腎皮質ステロイド使用の決断、抗HIV治療中断の決断などである。確実な予防法はない。本症を知っていること。抗HIV療法を開始する前に隠れた日和見感染症はないか検討しておくこと、結核の場合、待つことが可能なら先に結核を治療して、後から抗HIV療法を開始する戦略が考えられる。個別には専門医と相談しながら対処するのが良い。

単純性ヘルペスの治療
【治療】 塩酸バラシクロビル(商品名バルトレックス):500mgを1日に2回内服。初回例では10日間継続。再発例では5日程度。患者が1年間に6回以上発症するのであれば発病抑制治療を考慮すべきである。投与量は500mg量を経口1日2回または1回で行う。耐性の場合、ホスカルネットが試みられている。日本ではビダラビン(Ara-A)が使用可能である。

原発性中枢神経リンパ腫の治療
【治療】 治療は生存期間を伸ばすためと言うよりも、QOL改善のためである。標準的な治療は全脳への放射能照射に、脳浮腫軽減のためにステロイドの短期併用を行なう。寛解率は20-50%であるが、再発率も高い。大量メソトレキセートなど全身的な抗癌剤の使用も試みられている。すでに進行したHIV感染症であることが多いため、長期生存は少なく、平均生存日数は290日である。

急性HIV感染症の治療
【治療】 多くの患者では最初のHIVの爆発的複製で、HIV特異的なヘルパーT細胞をねらい撃ちになってしまい、やがてCTL(細胞傷害性T細胞)もいなくなってしまう。CTLが維持された場合が長期非進行者と考えられ、抗HIV薬なしでHIVの増殖は少なくCD4細胞数も長期間良好に保たれている。 「HIV急性感染のうちに強力な抗HIV療法を実施してCTLを温存できれば、長期非進行者を作ることができるのではないか。それなら感染初期に抗HIV薬を使い、やがて中止できるかもしれない。」という仮説が考えられた。実際には、治療中止後ある程度経過すると、ほとんどの患者でウイルス量は再上昇し、治療開始前の値に戻ってしまった。現状では研究目的や急速に進行する患者を除いて、急性感染期の積極的な治療は行われていない。

悪性リンパ腫の治療
【治療】 普通は4~6種類の抗癌剤を組合わせて使用する。m-BACOD、CHOP、CDE、PRO-MACE/MOPPなどのレジメンがある。効果はあるが同時に免疫能も血球数も減少してしまう厳しい治療である。出血や感染症が起こり、治療による死亡さえありうるので、血液の専門医による管理が勧められる。 リツキシマブ(商品名:リツキサン)はBリンパ球に特異的なモノクローナル抗体。静注で体中の隅々に届きBリンパ球に結合し細胞死に追い込む。エイズのリンパ腫はBリンパ球由来が多いので、治療効果が期待されている。
【副作用】 嘔き気、嘔吐、食欲低下、手足のしびれや痛み、貧血、白血球の減少、血小板の減少など。
【予後】 完全寛解率は治療法により33~63%だが、再発も多い。生存中央値は35週前後。最近は多剤併用療法で1年以上の生存例もでてきた。

糖尿病の治療
【概要】 糖尿病はブドウ糖の代謝異常を基礎に、ケトアシドーシスや昏睡、最小血管障害、腎症、網膜症、動脈硬化などを発生する症候群である。原因も、多遺伝子性の先天的要素と感染症、栄養環境、薬剤などの環境因子(二次性)が組み合わさっている。糖尿病の治療は血糖の変動をできるだけ正常に近づけることにつきる。長期にわたり自覚症状がない状態が続くので、早期発見や悪化因子を避け良い状態で生活を送るために患者教育が最も大切である。中でも食事療法と運動療法を加えた基礎療法で体重調節を行うことは非常に大切である。
【詳しく】 眼科の合併症は眼科での診療、腎臓合併症による腎不全では腎臓内科での診療、動脈硬化性疾患には予防や対策が必要である。血糖の調節には、経口糖尿病薬、自己血糖測定やインスリン注射が行われる。
《参照》 インスリン抵抗性

結核の治療
【治療】 治療は抗結核薬を3種類以上組み合わせて使用する。イソニアジド:300mg/日を1日に1回+エタンブトール+リファンピシン+ピラジナミド20~30mg/Kg分4。免疫能が回復すれば、治療期間は通常の患者と同じ半年から1年が普通である。日本では結核予防法で管理しており治療費の公費負担もある。
【詳しく】 リファンピシンは薬物代謝酵素チトクロームp450を誘導する。これにより抗HIV薬の血中濃度が低下して、十分効果をあげないばかりか、耐性HIVの発生を促す恐れがある。治療の選択やタイミングなどについて専門家と相談すべきである。治療経過中のPCR検査は、治療薬で死滅した菌のDNAも検出するので、治療の成功失敗を判断することはできない。クォンティフェロンTB-2Gの値は、治療成功で低下すると言う。
《参照》 イソニアジド、 リファンピシン、 ピラジナミド、 エタンブトール、 チトクロームP450、 クォンティフェロンTB2G

非定型抗酸菌症の治療
【治療】 (1)M.カンサシイは結核と同じ治療。(2)M.フォルツイツムはオフロキサシン(商品名タリビット)が有効。(3)MACはクラリスロマイシン(あるいはアジスロマイシン)とエサンブトールとリファブチン(あるいはリファンピシン)の3剤、さらにシプロキサシンやアミカシンの点滴を加えることがある。薬の副作用や相互作用に注意。免疫再構築症候群として本症が起こった場合には副腎皮質ステロイドを加える。それでもなお病勢が強ければHAARTを中断せざるをえないこともある。
【予後】 治療した患者の40~60%は症状の軽減効果がある。軽快後も治療薬を続ける。但しエタンブトールは15mg/Kgに減量する。HAARTで免疫能が回復できなければ、平均生存期間は4~6ケ月である。
【予防】CD4数が100/μL以下の場合に開始。(1)クラリスロマイシン500mgを1日2回。(2)アジスロマイシン1200mg(アメリカの推奨量)を週に1回。(3)リファブチン(日本では2006年3月現在、未発売)300mgを1日1回。

「Treatment of」の例文・使い方・用例・文例
- Microsoftがβ版をランチするのは「NetShow streaming server」で動画や音声をオンデマンドで提供する。
- 《主に米国で用いられる》 = 《主に英国で用いられる》 an admiral of the fleet 海軍元帥.
- 篏入的 r 音 《英音の India office /ndiərfɪs/の /r/の音》.
- =《口語》 These kind of stamps are rare. この種の[こういう]切手は珍しい.
- (英国の)運輸省. the Ministry of Education(, Science and Culture) (日本の)文部省.
- は of の誤植です.
- を off と誤植する.
- あいまい母音 《about, sofa などの /ə/》.
- 副詞的小詞 《on, in, out, over, off など》.
- 迂言的属格 《語尾変化によらず前置詞によって示す属格; たとえば Caesar's の代わりの of Caesar など》.
- çon of garlic [humor]. それにはガーリック[ユーモア]がちょっぴり必要だ.
- 《主に米国で用いられる》 = 《主に英国で用いられる》 the Speaker of the House of Commons 下院議長.
- 《主に米国で用いられる》 = 《主に英国で用いられる》 the Committee of Ways and Means 歳入委員会.
- 初めて読んだ英文小説は“The Vicar of Wakefield”
- (違法罪―a sin of commission―に対する)怠惰罪
- 『each』、『every』、『either』、『neither』、『none』が分配的、つまり集団の中の1つのものを指すのに対し、『which of the men』の『which』は分離的である
- 『hot off the press(最新情報)』は『hot(最新の)』の拡張感覚を示している
- 『Each made a list of the books that had influenced him』における制限節は、リストに載った本を制限節で定義された特定の本だけに制限する
- 臨床的鬱病を治療するのに用いられる三環系抗鬱薬(商品名ImavateとTofranil)
- 『sunshine-roof』は『sunroof(サンルーフ)』に対する英国の用語である
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