ピラジナミドとは? わかりやすく解説

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ピラジナミド【pyrazinamide】

読み方:ぴらじなみど

結核化学療法用いられる薬剤一つ白色結晶または結晶性粉末化学式C5H5N3O PZAピラジンアミド


ピラジナミド

分子式C5H5N3O
その他の名称チサミド、ノバミド、ジナミド、エプラジン、ツベルサン、テブラジド、ピラファト、ピラルジナ、ファルミジナ、アルジンアミド、イソピラトシン、ジアジンアミド、ピラジンアミド、ウニピランアミド、Eprazin、Novamid、Pyrafat、Tisamid、Tebrazid、Tubersan、Zinamide、Farmizina、Piralzina、Aldinamide、Diazinamide、Isopyratsin、Pyrazinamide、Unipyranamide、2-Pyrazinecarboxamide、ピラジナミド、ピラジミダ、ピラジン酸アミド、MK-56、D-50、Pyrazinolic acid amide、Pirazimida、PZA【ピラジナミド】、ピラマイド、Pyramide、PZAPyrazinamide】、Pyrazine-2-carboxamide、Pyrazinecarboxamide
体系名:ピラジン-2-カルボアミド、2-ピラジンカルボアミド、ピラジンカルボアミド、2-ピラジンカルボキサミド


ピラジナミド

Pyrazinamide, PZA

【概要】 抗結核薬一つ。他の組合わせて使う。1日1.5~2.0g 分1~3 

【副作用】肝障害痛風関節痛食欲低下吐き気嘔吐排尿痛など。

《参照》 結核


ピラジナミド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/27 10:00 UTC 版)

ピラジナミド
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
胎児危険度分類
  • C
法的規制
  • ?
投与方法 Oral
薬物動態データ
生物学的利用能>90%
代謝肝代謝型
半減期9 - 10時間
排泄腎排泄型
識別
CAS番号
98-96-4
ATCコード J04AK01 (WHO)
PubChem CID: 1046
DrugBank APRD01206
ChemSpider 1017
KEGG D00144
化学的データ
化学式C5H5N3O
分子量123.113 g/mol
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ピラジナミド(Pyrazinamide)とは結核の治療に使用される薬物の一つである[1]。ピラジナミドは主に静菌的に作用するが、活発に分裂する結核菌に対しては殺菌的に作用する。

治療初期に有効であり、リファンピシンイソニアジドとの併用により再発率が低下するとされている[2]

略語表記

PZAないしZが略語表記として一般的である。

用法と薬剤形態

20-25mg/kgを毎日投与、または50-70mg/kgを週3回投与する。

イギリス胸部疾患学会英語版の定めるガイドラインでは、体重が50kg未満の患者には1日1.5gを投与し、50kg以上の患者には1日2gを投与すると定めている。

ピラジナミドは非専売化されており、多様な種類の形態のものが出回っている。ピラジナミドの錠剤は一般に500mg錠であり、結核の標準的な治療法の主体となっている。一部の患者には、ピラジナミド錠は大きすぎて飲み込めないため、シロップ剤を代わりに投与することもある。

ピラジナミドは、イソニアジドリファンピシンといった他の抗結核薬との合剤のかたちでも製造されている。リファタール英語版が好例である。

日本で2009年10月現在において販売されているピラジナミドは、ピラマイド原末(散剤)のみで、錠剤はない[1]

薬物動態学

ピラジナミドは経口投与でも吸収が良好である。炎症を起こした脳脊髄膜を通り抜けるので、結核性髄膜炎に必須の治療薬のひとつとなっている。ピラジナミドは肝臓で代謝を受け、代謝物は腎臓から排出される。

ピラジナミドは英国その他の国では妊婦にも適用されている。WHOでは妊婦に投与しても問題ないと認めていて、安全性を確証する臨床データも豊富に揃っているためである。米国では、安全性が充分に確立されていないとして、妊婦へのピラジナミドの投与は行われていない[3]。日本でも、安全性の未確立を理由として、妊婦への投与は治療上の有益性が危険性を上回るときのみに限られている[1]。ピラジナミドは血液透析によって除去されるため、ピラジナミドの投与は透析の終わりごろにすべきであるとされる。

臨床上の使用

結核の治療において、ピラジナミドはイソニアジドリファンピシンといった他の抗結核薬と組み合わせることでのみ使用され、決して単独で使用されることはない。また結核以外での適応もない。さらに、他のマイコバクテリウム属の細菌による疾患を治療する目的で使われることもない。ウシ型結核菌やらい菌は、生得的にピラジナミドに対して抵抗性を持つ。ピラジナミドは宿主細胞の外で旺盛に増殖する結核菌よりも宿主細胞内に寄生し代謝の低下した菌に対して有効であり、治療期間を短縮する目的で治療の最初の2か月間に投与される[4]。ピラジナミドを使用しない治療計画では、治療に9か月かそれ以上を要する。

ピラジナミドとリファンピシンの併用は、潜在性結核の治療にしばしば用いられる手法である[5]

ピラジナミドは抗尿酸排泄効果を示すことがあるため[6]高尿酸血症や高尿酸尿症の原因の診断に適用外使用されることがある[7]。ピラジナミドは尿酸トランスポーター (URAT1) に作用する[7]

ピラジナミドは、抗インフルエンザウイルス剤ファビピラビルとの併用で血中尿酸値を上昇させる。ピラジナミド投与下でのファビピラビル併用投与には注意を要する。

ピラジナミド1.5g1日1回、ファビピラビル1200/400mg1日2回が投与されたとき、血中尿酸値はピラジナミド単独投与時及びファビピラビル併用投与時でそれぞれ11.6mg/dl及び13.9mg/dlであった。

作用機序

ピラジナミドは結核菌の増殖を停止させるプロドラッグである。

結核菌はピラジナミドを活性型のピラジン酸に変換する酵素ピラジナミダーゼ(PncA)を有しているが、この酵素は酸性下でのみ機能することから[8]、結核菌が存在する病変部やマクロファージのファゴソーム内等の酸性環境下ではピラジナミドの抗結核作用が著しく増す。

ピラジン酸の主な作用機序としては、1型脂肪酸合成酵素(FAS I)による脂肪酸(C24-C26)合成の阻害を介した細胞膜合成阻害が知られるが[9]、一方で同モデルを疑問視する報告もなされている[10]。他の機序として、キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(QPRT)によるNAD+生合成の阻害[11]、リボソームS1タンパク質(RpsA)によるtmRNAを介したtrans-translationの阻害[12](ただしRpsAは抗菌作用には無関係とする報告もあり[13])、Rv2783を介した様々な核酸代謝系の阻害[14]、アスパラギン酸脱炭酸酵素(PanD)による補酵素A生合成の阻害[15]等が提唱されている。

なお、ピラジナミダーゼ遺伝子(pncA)は、結核菌のピラジナミド耐性獲得の原因とされる[9]

副作用

ピラジナミドの副作用のうちで最も頻度の高い(およそ1%)ものは、関節痛であるが、大抵はそれほど激しいものではなく、ピラジナミドの服用を中止するまでには至らない[16][17]

ピラジナミドの副作用で最も危険性の高いものは肝毒性である。これは用量依存的に生じる。ピラジナミドの1日投与量は、以前は40-70mg/kgであったが、推奨投与量が低く設定しなおされた結果、薬物性の肝炎の事例が有意に減少した。標準的な4剤併用治療(イソニアジド、リファンピシン、ピラジナミド、エタンブトール)のうちで、ピラジナミドが薬物性肝炎の原因因子として最も一般的である[18]。ピラジナミドを原因とする肝炎を、イソニアジドやリファンピシンを原因とする肝炎と鑑別するのは困難であり、実験的に薬物を投与して判断する必要がある。

他の副作用としては、吐気嘔吐、食欲不振、鉄芽球性貧血蕁麻疹発疹瘙痒高尿酸血症排尿障害、間質性腎炎、不安感がある。まれにポルフィリン症発熱もみられる。

歴史

関連項目

出典

[脚注の使い方]
  1. ^ a b c ピラマイド原末 添付文書” (2009年6月). 2016年6月29日閲覧。
  2. ^ ピラマイド原末 インタビューフォーム” (2014年12月). 2016年6月29日閲覧。
  3. ^ American Thoracic Society, Centers for Disease Control, Infectious Diseases Society of America (2003). “Treatment of Tuberculosis”. Am J Respir Crit Care Med 167 (602–662). 
  4. ^ Hong Kong Chest Service, Medical Research Council. “Controlled trial of four thrice weekly regimens and a daily regimen given for 6 months for pulmonary tuberculosis”. Lancet 1 (8213): 171–4. PMID 6109855. 
  5. ^ Centers for Disease Control and Prevention. “Targeted tuberculin testing and treatment of latent tuberculosis infection”. MMWR 49 (No. RR-6): 31–32. 
  6. ^ Spaia S, Magoula I, Tsapas G, Vayonas G (2000). “Effect of pyrazinamide and probenecid on peritoneal urate transport kinetics during continuous ambulatory peritoneal dialysis”. Perit Dial Int 20 (1): 47–52. PMID 10716583. http://www.pdiconnect.com/cgi/pmidlookup?view=long&pmid=10716583. 
  7. ^ a b Ichida K, Hosoyamada M, Hisatome I, Enomoto A, Hikita M, Endou H, Hosoya T (January 2004). “Clinical and molecular analysis of patients with renal hypouricemia in Japan-influence of URAT1 gene on urinary urate excretion”. J. Am. Soc. Nephrol. 15 (1): 164–73. doi:10.1097/01.ASN.0000105320.04395.D0. PMID 14694169. http://jasn.asnjournals.org/cgi/pmidlookup?view=long&pmid=14694169. 
  8. ^ Zhang Y, Mitchison D (January 2003). “The curious characteristics of pyrazinamide: a review”. Int. J. Tuberc. Lung Dis. 7 (1): 6–21. PMID 12701830. http://openurl.ingenta.com/content/nlm?genre=article&issn=1027-3719&volume=7&issue=1&spage=6&aulast=Zhang. 
  9. ^ a b Zimhony O, Cox JS, Welch JT, Vilchèze C, Jacobs WR (2000). “Pyrazinamide inhibits the eukaryotic-like fatty acid synthetase I (FASI) of Mycobacterium tuberculosis (abstract). Nature Medicine 6 (9): 1043–47. doi:10.1038/79558. PMID 10973326. http://www.nature.com/nm/journal/v6/n9/abs/nm0900_1043.html;jsessionid=AFEEF16483CA23196C7729EBE644297C. 
  10. ^ Boshoff HI, Mizrahi V, Barry CE 3rd (2002). “Effects of pyrazinamide on fatty acid synthesis by whole mycobacterial cells and purified fatty acid synthase I.” (abstract). J. Bacteriol. 184 (8): 2167–72. doi:10.1128/JB.184.8.2167-2172.2002. PMID 11914348. http://jb.asm.org/content/184/8/2167.abstract. 
  11. ^ Kim, Hyun; Shibayama, Keigo; Rimbara, Emiko; Mori, Shigetarou (2014). “Biochemical characterization of quinolinic acid phosphoribosyltransferase from Mycobacterium tuberculosis H37Rv and inhibition of its activity by pyrazinamide”. PloS One 9 (6): e100062. doi:10.1371/journal.pone.0100062. ISSN 1932-6203. PMC 4065032. PMID 24949952. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24949952. 
  12. ^ Shi W, Zhang X, Jiang X, Yuan H, Lee JS, Barry CE 3rd, Wang H, Zhang W, Zhang Y (2011). “Effects of pyrazinamide on fatty acid synthesis by whole mycobacterial cells and purified fatty acid synthase I.” (abstract). Science 333 (6049): 1630-2. doi:10.1126/science.1208813. PMID 21835980. http://www.sciencemag.org/content/333/6049/1630.abstract. 
  13. ^ Dillon, Nicholas A.; Peterson, Nicholas D.; Feaga, Heather A.; Keiler, Kenneth C.; Baughn, Anthony D. (2017-07-21). “Anti-tubercular Activity of Pyrazinamide is Independent of trans-Translation and RpsA”. Scientific Reports 7 (1): 6135. doi:10.1038/s41598-017-06415-5. ISSN 2045-2322. PMC 5522395. PMID 28733601. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28733601. 
  14. ^ Njire, Moses; Wang, Na; Wang, Bangxing; Tan, Yaoju; Cai, Xingshan; Liu, Yanwen; Mugweru, Julius; Guo, Jintao et al. (07 2017). “Pyrazinoic Acid Inhibits a Bifunctional Enzyme in Mycobacterium tuberculosis”. Antimicrobial Agents and Chemotherapy 61 (7). doi:10.1128/AAC.00070-17. ISSN 1098-6596. PMC 5487608. PMID 28438933. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28438933. 
  15. ^ Gopal, Pooja; Nartey, Wilson; Ragunathan, Priya; Sarathy, Jansy; Kaya, Firat; Yee, Michelle; Setzer, Claudia; Manimekalai, Malathy Sony Subramanian et al. (11 10, 2017). “Pyrazinoic Acid Inhibits Mycobacterial Coenzyme A Biosynthesis by Binding to Aspartate Decarboxylase PanD”. ACS infectious diseases 3 (11): 807–819. doi:10.1021/acsinfecdis.7b00079. ISSN 2373-8227. PMC 5734868. PMID 28991455. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28991455. 
  16. ^ East and Central African/Medical Research Council Fifth Collaborative Study (1983). “Controlled clinical trial of 4 short-course regimens of chemotherapy (three 6-month and one 9-month) for pulmonary tuberculosis”. Tubercle 64: 153–166. doi:10.1016/0041-3879(83)90011-9. PMID 6356538. 
  17. ^ British Thoracic Society (1984). “A controlled trial of 6 months chemotherapy in pulmonary tuberculosis, final report: results during the 36 months after the end of chemotherapy and beyond”. Br J Dis Chest 78 (4): 330–336. PMID 6386028. 
  18. ^ Yee D et al. (2003). “Incidence of serious side effects from first-line antituberculosis drugs among patients treated for active tuberculosis”. Am J Resp Crit Care Med 167 (11): 1472–7. doi:10.1164/rccm.200206-626OC. PMID 12569078. http://ajrccm.atsjournals.org/cgi/content/full/167/11/1472. 

ピラジナミド(PZA)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/08 19:05 UTC 版)

抗結核薬」の記事における「ピラジナミド(PZA)」の解説

ピラジナミド(ピラマイド)の作用機序不明な点が多い。肝臓代謝をうけてピラジン酸となり抗菌活性を示すと考えられている。ピラジナミドの特性としてpH5.0〜5.5の酸性環境で強い抗菌力を示すこと、細胞膜透過性が強いことがあげられるこのためマクロファージファゴソーム内に取り込まれ結核菌滅菌的に作用する

※この「ピラジナミド(PZA)」の解説は、「抗結核薬」の解説の一部です。
「ピラジナミド(PZA)」を含む「抗結核薬」の記事については、「抗結核薬」の概要を参照ください。

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