非定型抗酸菌症
【概要】 抗酸菌は酸に抵抗性がある(=胃液でやられない)。抗酸菌は大きく、結核菌、癩菌、非定型抗酸菌の3種類に分けられる。非定型抗酸菌にはアビウム・イントラセルラール(MAC=マック)が最も多く、カンサシイ、フォルツイツムなどもある。HIV感染者ではCD4細胞数が相当減って(100/μL以下)から起こる。すでに他の疾患でエイズ発病していることが多く、典型的な日和見感染症である。主な侵入経路は腸管で、腸間膜リンパ節、肝臓、全身臓器(特に骨髄)に広がる。

非定型抗酸菌症の治療
【治療】 (1)M.カンサシイは結核と同じ治療。(2)M.フォルツイツムはオフロキサシン(商品名タリビット)が有効。(3)MACはクラリスロマイシン(あるいはアジスロマイシン)とエサンブトールとリファブチン(あるいはリファンピシン)の3剤、さらにシプロキサシンやアミカシンの点滴を加えることがある。薬の副作用や相互作用に注意。免疫再構築症候群として本症が起こった場合には副腎皮質ステロイドを加える。それでもなお病勢が強ければHAARTを中断せざるをえないこともある。
【予後】 治療した患者の40~60%は症状の軽減効果がある。軽快後も治療薬を続ける。但しエタンブトールは15mg/Kgに減量する。HAARTで免疫能が回復できなければ、平均生存期間は4~6ケ月である。
【予防】CD4数が100/μL以下の場合に開始。(1)クラリスロマイシン500mgを1日2回。(2)アジスロマイシン1200mg(アメリカの推奨量)を週に1回。(3)リファブチン(日本では2006年3月現在、未発売)300mgを1日1回。

非定型抗酸菌症の診断
【診断】(1) 確定診断:細菌学的培養により診断、(2) 臨床的診断:a)糞便、汚染されていない体液、あるいは、b)肺、皮膚、頚部もしくは肺門リンパ節以外の組織から、顕微鏡検査により、結核菌以外の抗酸菌を検出した場合は、非定型抗酸菌症と診断。
【詳しく】 1)抗酸菌培養:生検組織の培養、血液培養など。菌が生えたらRNAを抽出し、液相ハイブリダイゼーション法で確定する。2)最近は直接PCR法を行う。3)クエン酸ガリウムを使ったシンチグラフィで、病気の広がりが診断できる。

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