薬草 薬用植物の成分

薬草

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/11 02:34 UTC 版)

薬用植物の成分

植物は「酢酸マロン酸経路」「シキミ酸経路」「メバロン酸経路」の3つの経路および複合経路によって、多種多様な有機化合物生合成している[48]

主たる成分を挙げる。

薬用、有毒など生理活性物質が多い[49]。アミノ酸を生合成原料として作られる植物成分。窒素原子を含み、弱い塩基性を示すので、「植物塩基」とも言う。
  • カルシウム塩

薬用植物の有効な働きについての調査・研究と再評価

ここ数十年ほど、次第に多くの医師が西洋医学の諸問題を自覚するようになり、東洋医学の再評価が進んでいる。

近年の大学・研究所、その他一般の医師による東洋医学の基礎的研究や臨床治験の成績は、質量ともに目覚ましい展開を見せており[50]、東洋医学の有用性を、西洋医学的な見地から見ても裏付ける形となっている[50]。報告のスタイルとしては、「西洋医学での病名に対する漢方方剤の通用」というスタイルの治験報告が多く[50]、その成績は推計学的に有意の差をもって有効性を示すものが多い[50]。基礎医学的研究も、漢方薬の有用性を現代医学的に裏付ける結果を示すものが多い[50]。年々、こういった報告は増えており、すべてに目を通すことが困難なほどに多くなっているという[50]

例を挙げればきりが無いわけであるが、いくつか例を挙げるとすると、例えば、漢方製剤の牛車腎気丸は、痺れを中心とする糖尿病性神経障害の症状に有用であり、メコバラミンとの比較試験においても、痺れに対しては、メコバラミンより有意に改善率が大である事実は明らかになっている[51][52]。当初は有効性のメカニズムの詳細が明らかではなかったが、その後、牛車腎気丸にアルドース還元酵素阻害作用がある事実が、女屋らによって発見されている。また、牛車腎気丸に、皮膚温上昇、血流改善作用があることや、血中過酸化脂質低下作用のあることも医学研究者らによって報告・指摘されており、骨粗鬆症にも有効であるとの客観的臨床成績が報告されている[53]。牛車腎気丸の西洋医学的な薬理作用も解明されるに至っている[53]

肝硬変患者に小柴胡湯を投与することで、肝癌を予防できることも実際に確かめられている[54]。小柴胡湯は潜在期の小さい癌をやっつける作用があると考えられているのである[54]

東洋医学や漢方を、西洋の科学的な視点で再分析・再評価することを望んでいる医師もいる(もっとも、患者の治療や健康という医療の大目的を後回しにして、何が何でも医学的知識を獲得することを最重要視してしまうことに危惧を抱く医師も多い[* 11])。ただ、いずれにせよ、このような活動においては、世界的に見ておそらく日本がイニシアティブを取ってゆくことになろう、とも見なされている[55]

ただし、漢方方剤というのは、漢方医学の体系をしっかりと理解して、初めて上手く、適切に使いこなせるものである。

漢方の復権とともに、漢方薬が使用されることは非常に多くなったが、それに伴い、若干の問題が生じている。漢方の知識が足りない医師の中に、漢方薬を西洋医学的発想で使ってしまう者がいるのだという。例えば、「気管支喘息に小青龍湯」「下痢に真武湯」といった考え方をして、まず西洋医学における疾患名を決めてしまって、手引書からそれに相当する漢方処方を恣意的に選択して、これを使ってしまう医師がいるのだという。結果として多剤投与となり、「このようなことは決して望ましいことではない」と大塚恭男は述べている[56]

薬用植物の有効性について、一般の人が気をつけなければならない点をひとつ指摘するならば、「薬用植物であれば、何でも身体に良いのだろう」だとか、「薬用植物であれば、どんな使い方をしても身体によいのだろう」などと単純化して捉えてしまう人が一部にいるようだが、そのように考えることは間違っている、と医師らからは しばしば指摘されている。医療には必ず適応というものがあり、これを見誤れば、効果が期待できなかったり、患者の健康に不利に働くことすらある[57]。薬用植物であっても、用い方を誤れば、(化学薬と同様に)健康に害をもたらす可能性がある、いわゆる"副作用"はあるといえるのである。

つまり、生薬が健康に良い、というのは、あくまで、中医学や漢方医学などの歴史に裏付けられた伝統医学の病理観(患者の心身を全人的に把握する方法)を学び体得し、薬用植物の人間の心身への作用の仕方を体得している専門家が、適切な処方を選択してくれているから、薬用植物が安全に有効に効いている、ということなのである。「東洋医学では、生体を全体として機能する有機体として捉え、患者の訴える多彩な愁訴も個々別々のものではなく、すべてが関連を持ったひとつのネットワークと考え、一人の患者のひとつの状態に対して、もっとも適切と思われる一剤を与えるのが原則であり、またそれが可能である」と大塚恭男は述べている[58]

ただし、素人が家庭で使える薬用植物・用法を挙げている本もある[59]

薬用植物の例

漢方

西洋ハーブ

アーユルヴェーダ


  1. ^ 北米の原住民ら(いわゆる「インディアン」によって、見出され、用いられてきたもの
  2. ^ 日本では、ギリシア本草とも訳される
  3. ^ 対訳版はLoeb Classical Library から出ている(大塚恭男 1996, p. 68)
  4. ^ テオフラストスの『植物誌』には、当時ギリシャにあったはずの「四体液説」関連の記述も見られないという(大塚恭男 1996, p. 68)。
  5. ^ 大塚恭三著『東洋医学』などでは『ギリシャ本草』という表現も記載されている。
  6. ^ 修道院からはシャルトルーズ(Chartreuse)、ベネディクティーヌ(Benedictine)など多くの人々に愛される有名な銘柄も数多く生まれた。修道院でのワイン、リキュールなどの酒造りは貴重な収入源でもあった。
  7. ^ ただし、リンネの分類法は、現代の自然分類法とは異なっていて、各植物のいくつかの特徴に着目し分類するというものではあった。その後さまざまな分類法が提唱されたが、19世紀には植物の進化の系統に基づいて分類が行われるようになり、現在も生物学ではそれが採用されている(県功 & 奥田拓男 1991, p. 4)。
  8. ^ 「薬の適用法には、単行、相須、相使、相畏、相悪、相反、相殺の7通りがあり、配剤には相須と相使のものを使い、相悪や相反のものを伍用してはならない。ただ、毒薬の場合は相畏、相殺のものを用いて、その毒性を抑制するようにする」という薬の配合禁忌の原則が記載されている。(大塚恭男 1996, p. 71)
  9. ^ 中国において「東洋医学」と言うと、日本の医学を指してしまう、という。
  10. ^ 例えば、甘草では、口渇、喉の痛み、呼吸困難、咳、胃病、創傷、諸薬の効果を助ける、などの項が東西の古本草の記載で一致しており、大黄では、諸体液の新陳代謝、胸腹の痛み、便秘、胃腸病、黄疸、月経異常、利尿、熱病などの項が一致しているという(大塚恭男 1996, p. 13)。
  11. ^ 大塚恭男は、「農学栄えて農業滅ぶ」と言った農業経済学者東畑精一の言葉を引用して警告している(大塚恭男 1996, p. 49)。いわゆる「科学者」や、大学の研究者などがしばしば陥ってしまう、とも指摘されることがある態度。そもそも、それぞれの領域が存在する最大の目的・任務を忘れて、自分が「知る」ことを優先してしまったり、「知る」ことのためには、領域の本来の目的を放置したり、求めている大切な状態を破壊しても何とも思わなくなってしまうような、目的と手段が反転した、本末転倒の態度。このような態度は、また「主知主義」といった言葉で非難されていることも多い。
  1. ^ a b c d e 馬場篤 1996, p. 4.
  2. ^ a b c d e f 県功 & 奥田拓男 1991, p. 1.
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n 県功 & 奥田拓男 1991, pp. 1–2.
  4. ^ a b c d e f g h i j k 馬場篤 1996, p. 5.
  5. ^ a b c 馬場篤 1996, p. 6.
  6. ^ 関連リンク:山崎 幹夫「ディオスコリデスの薬物誌 全2巻、鷲谷いずみ訳(第1巻)、大槻真一郎訳(第2巻)、B5判、1200頁、22000円、エンタプライズ(株)」NAID 110003647995
  7. ^ 関連リンク:青柳正規「ディオスコリデスと植物園」東京大学
  8. ^ a b c d e f g h i j k 県功 & 奥田拓男 1991, p. 3.
  9. ^ ギリシア語の原題は「Περὶ φυτῶν ἱστορία ペリ・ピトン・ヒストリア」。ラテン語訳版のタイトルは「Historia Plantarumヒストーリア・プランタールム」。
  10. ^ a b c 大塚恭男 1996, p. 68.
  11. ^ a b c d 大塚恭男 1996, p. 67.
  12. ^ 『修道院の薬草箱―70種類の薬用ハーブと症状別レシピ集』
  13. ^ a b c d 県功 & 奥田拓男 1991, p. 4.
  14. ^ a b c 県功 & 奥田拓男 1991, p. 5.
  15. ^ a b c 日本医師会 編 『漢方治療のABC』医学書院〈日本医師会生涯教育シリーズ〉、1992年、20-22頁。ISBN 4260175076 
  16. ^ a b c d e 県功 & 奥田拓男 1991, p. 6.
  17. ^ a b 大塚恭男 1996, p. 21.
  18. ^ 羽生 2010, p. 146.
  19. ^ 羽生 2010, p. 129.
  20. ^ 羽生 2010, p. 148-150.
  21. ^ 羽生 2010, p. 179-183.
  22. ^ 羽生 2010, p. 140-141.
  23. ^ 羽生 2010, p. 150-151.
  24. ^ 羽生 2010, p. 159.
  25. ^ a b c d e f g h i j 大塚恭男 1996, p. 10.
  26. ^ 日経メディカル開発 1995, p. 131.
  27. ^ 大塚恭男 1996, pp. 9–10.
  28. ^ 日経メディカル開発 1995, p. 210.
  29. ^ 大塚恭男 1996, p. 2.
  30. ^ 医原病
  31. ^ Health at a Glance 2013 (Report). OECD. (2013-11-21). pp. 104-105. doi:10.1787/health_glance-2013-en. ISBN 978-92-64-205024. 
  32. ^ a b c 日経メディカル開発 1995, p. 145.
  33. ^ 大塚恭男 1996, p. 4.
  34. ^ 日経メディカル開発 1995, p. 214.
  35. ^ a b 日経メディカル開発 1995, p. 158.
  36. ^ 日経メディカル開発 1995, p. 311.
  37. ^ a b c 県功 & 奥田拓男 1991, p. 45.
  38. ^ 県功 & 奥田拓男 1991, p. 46.
  39. ^ a b 県功 & 奥田拓男 1991, p. 53.
  40. ^ 県功 & 奥田拓男 1991, p. 54.
  41. ^ 薬草、国産ぐんぐん 高まる漢方需要・中国産高騰朝日新聞』夕刊2017年7月15日
  42. ^ a b 大塚恭男 1996, p. 12.
  43. ^ a b 大塚恭男 1996, p. 13.
  44. ^ a b 大塚恭男 1996, pp. 13–14.
  45. ^ a b c 大塚恭男 1996, p. 14.
  46. ^ 花輪寿彦 2003, pp. 286–288.
  47. ^ 大塚恭男 1996, p. 16.
  48. ^ 県功 & 奥田拓男 1991, p. 40.
  49. ^ 県功 & 奥田拓男 1991, p. 44.
  50. ^ a b c d e f 日経メディカル開発 1995, p. 365.
  51. ^ 坂本信夫 他(1987年)「糖尿病」30: 729-738
  52. ^ 日経メディカル開発 1995, p. 211佐藤祐造
  53. ^ a b 日経メディカル開発 1995, p. 211.
  54. ^ a b 日経メディカル開発 1995, p. 403.
  55. ^ 大塚恭男 1996, p. 48.
  56. ^ 大塚恭男 1996.
  57. ^ 日経メディカル開発 1995, p. 239.
  58. ^ 大塚恭男 1996, p. 108.
  59. ^ 田中 孝治、神蔵 嘉高『家庭で使える薬用植物大事典』家の光協会、2002






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