収録されている作品
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「10の世界の物語」の記事における「収録されている作品」の解説
思いおこすバビロン(I Remember Babylon) フィクションではなく、クラークの体験談を述べたもの。コロンボのソ連大使館でのパーティに招待されたとき、クラークに話しかけてくる男がいた。その男はテレビ関係の仕事をしているらしく、後日ホテルで会いたいという。ホテルで男は、ニューオーリンズの真南の赤道上にテレビ送信機を打ち上げるという計画を話した。それはどの国の領土も侵さないので、政治的にも問題がなく、アメリカ全土に放送できる唯一の放送局だ。その放送では宗教的、性的なものでも、だれにも検閲されないと言うのである。男はクラークの本から、このアイデアを得たとも言った。 イカルスの夏(Summertime on Icarus) 太陽に接近中の小惑星「イカルス」の表面で、調査していた男の作業船が事故で墜落した。いまは太陽の反対側の夜の部分にいるが、やがてイカルスの自転によって太陽側になってしまう。そして温度が上昇して焼け死んでしまうのだ。無線アンテナもちぎれてしまい、母船との連絡もつけられない。男は船についているアームを使ってイカルスの表面を移動しはじめたが、ほどなく大きな岩に衝突して1本のアームは折れ、片方は使えないほど曲がってしまった。もう動くことはできず、死の夜明けを迎えるしかない。暗闇のなかに、太陽コロナの光が見えてきた。 ゆりかごから(Out of the Cradle, Endlessly Orbiting…) 人類が月面に基地を建設してから、ずいぶん時が過ぎていた。3隻の火星探査宇宙船の建設も進んでいた。かつてソ連のツィオルコフスキーが言った。「地球は人類のゆりかご。だがゆりかごの中にはいつまでもいられない」。いまそれが実践されようとしていた。そして地球以外でのはじめての出来事が起こった。 幽霊宇宙服(Who's There?) 宇宙ステーションのレーダーが、3キロ先に小さな物体を捉えた。1人の男が宇宙服を着て、調査にでかけた。すると宇宙服の中で不思議な音がする。ひっかくような、手探りをするような音が…。もしかして、この宇宙服は、事故死した者が着ていたものを修理して使っているのでは…。 憎悪(Hate) ソ連の有人衛星が、着水地点を外れて行方不明になった。潜水夫の男がそれを発見したのだが、彼の家族がかつてソ連軍に殺されたことがあり、彼はソ連を憎んでいた。早く港に衛星を届けようとする乗組員の裏をかいて、彼は妨害工作を始めた。 彗星の中へ(Into the Comet) 宇宙船チャレンジャー号は、ランダール彗星のそばに接近した。すると、原因不明のコンピューター故障が起き、どうしても修理できない。コンピューター無しでは、地球へ帰還する軌道計算は不可能である。そのとき1人の日系人が「そろばん」を作って軌道計算することを提案した。 わが家の猿(An Ape about the House) わが家に、家事をするよう訓練された猿「ドーカス」が来た。ドーカスはひととおりの家事はできたので、新しい仕事を教えてみようと思った。絵を描かせたのである。初めは不慣れだったがだんだんと上達し、私の助けもあって、絵の個展を開くまでになった。ある日のこと、ドーカスの絵の技術に疑問を持っている女が、私の家族が留守で、ドーカスしかいないのを見計らって訪問してきた。 土星は昇る(Saturn Rising) 土星探検から戻った1人の男が、全国を講演旅行していた。あるところで、彼に話しかけてきた紳士がいた。聞けば土星に異常な興味を持っているようだ。自作した望遠鏡で、土星を見たときの感激はいまでも忘れられないという。二度目の土星探検から帰った男に、再びあの紳士が話しかけてきた。紳士はホテル王で、土星の衛星系にホテルを建設する場所を探しているので、どこがいいかというのだ。 光あれ(Let There Be Light) 妻の不貞に閉口していた男が、完全犯罪を思いついた。反射鏡で光を収束させ、車を運転している妻に照射して事故を起こさせようというのだ。天体観測が趣味の男は、その知識を生かし、大きな反射鏡の製作を始めた。 死と上院議員(Death and the Senator) その上院議員は、アメリカの宇宙実験所の計画に反対していた。彼は重い心臓病になった。無重力のところならば、心臓の負担を軽くして回復させることができる。だが、アメリカには彼が反対したために宇宙施設が無い。やがて、ソ連の宇宙病院から彼に連絡がきた。 時とのもめごと(Trouble with Time) 火星のメリディアン・シティにある博物館には、火星で発掘された「シレーンの女神」という貴重な展示物がある。あるとき一人の泥棒が、この宝物を盗もうとした。彼は土曜日に博物館の「東側」から入り、見学したあとも館内に潜んでいて、夜に盗みの仕事を始めた。ほとんど一晩かかってケースをこじ開けて宝物を取り、にせものの宝物を入れてケースを閉めるところまできた。今は日曜の朝だから、休館日で誰も来ないので、まだ一日の余裕があるはずだった。だが、博物館の入り口の鍵を開ける音が聞こえてきた。 エデンの園のまえで(Before Eden) 金星に探検隊が降り立った。金星は高温であるが、両極地帯ならば低温のはずで生命がいるかもしれない。調べにでかけた2人の男は、酸素濃度が濃いことを発見した。これは植物のある証拠だ。やがて彼らの目の前に、液体のように動く生物が現れた。2人は写真を撮り、生物の標本を採取した。 軽い日射病(A Slight Case of Sunstroke) 南米にあるA国とB国は、お互いにサッカーで張り合っていた。前回の試合はA国で行われたが、審判が不正とも思われる判定をしB国は負けていた。今度の試合はB国で開催され、審判はくだんの者であった。B国の応援席には、日光を反射する鏡のようなパンフレットが配られた。試合が始まり、その審判はやはりB国に不利な判定をしていた。合図とともに、すべてのパンフレットが審判に向けられた。 ドッグ・スター(Dog Star) 男は犬を飼っていた。カリフォルニア大地震が起こる直前に、犬の鳴き声で目覚めた男は助かった。月面の研究所へ転勤になった男は、やむを得ず犬を知人に預けたが、ほどなく犬は死んだ。ある夜、夢で犬の鳴き声を聞いた男は起き上がった。その瞬間、地震(月震)の揺れが襲ってきた。 海にいたる道(The Road to the Sea) 未来の地球。月との間を宇宙艇が飛行し、食料合成機が食事を準備する時代でも、人々は牧歌的な生活をしていた。ある日一人の若者が、海岸沿いにある見捨てられた都市「シャスター」に行くことにした。彼は飛翔艇を使わずに、馬に荷物を積んで徒歩で向かった。何日もかけて彼はシャスターに到着した。そこに大型宇宙船が来て、見知らぬ人間たちが降りてきた。
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収録されている作品
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/03 02:22 UTC 版)
序文 著者自身が書いたもの。この短編集に収められた作品のいくつかを、簡単に紹介している。 太陽系最後の日(Rescue Party) 銀河系巡視宇宙船「S9000号」は、太陽系に向かってエンジンが悲鳴をあげるほどの全速力で航行していた。知的生命体からと思われる電磁波を探知し、超光速観測機が太陽系に焦点を合わせて観測したところ、太陽が前ノヴァ期段階にあることを確認したのだ。爆発までに残された時間は少ししかない。乗組員たちの使命はただひとつ、少数でもいいからその惑星にいる知的生命体を救助し、その絶滅を防ぐことであった。地球に到着した宇宙船からは、2班にわかれて捜索隊が出発したが、地表には生命の気配もない。 闇を行く(A Walk in the Dark) アームストロングは、キャンプから宇宙港へ続く道を1人で歩いていた。手元に1台しかないトラクターが故障したのである。銀河系の中心から離れたこの惑星には、小さな衛星しかなく、星明かりもほとんどない。彼は昔に聞いた話を思い出した。夜道には得体のしれない生き物が出没し、「カリカリ」という爪を合わせるような音を出すというのである。そのときは笑って聞いていたアームストロングだが、いまの状況では本当のことにも思える。恐怖と戦いながら歩くうちに、遠くに宇宙港の明かりが見えてきた。宇宙船に貨物を積み込む音も聞こえる。あと一つ、暗闇になったカーブを曲がりさえれば大丈夫だ。そのとき前方の暗がりから、カリカリという音が聞こえてきた。 忘れられていた敵(The Forgotten Enemy) 地球が氷河期に入り、いまやロンドンも雪と氷に覆われていた。ここに残った1人の男は、街に残された食料や燃料を漁って生き延びてきた。動物の姿はたまに見かけるが、人間はほとんど皆無である。電気店に残されていたラジオを使っても、聞こえてくるのは空電の音ばかり。時が過ぎ、遠くのほうから轟音が聞こえるようになってきた。北に住んでいた動物たちも、その方向から逃げてくる。轟音は日ごとに大きくなるように感じる。男は人類がなにかの機械を使って、氷を砕きながらロンドンに向かってきているのかと考えた。 エラー(Technical Error) 超電導を利用した世界初の発電所が造られた。技師が機器を点検中に、過負荷がかかった発電機に大電流が流れてスパークし、その技師は倒れた。幸いにも大きな怪我はなく意識も正常だったが、彼の体内のたんぱく質構造が反転していた。これでは普通の食料をどんなに食べても、消化吸収されずに餓死するのだ。初めは人工合成した食料を使って男を生かしていたが、これでは経費がかかりすぎる。技師を元通りの身体に反転させるため、あの日と同じように大電流を流す試みが行われる。その直前に、とある博士がとんでもない危険に気付いたのだが・・。 寄生虫(The Parasite) AとBの2人の男が話し合っていた。精神治療を受けている男Aは、何かにとりつかれているみたいだと言う。2人分のカクテルを作ったときに、なぜだか分からないが3人分を作ってしまい、他の誰かがいる気配がしたとも言う。それはAの脳のなかに、何年も前からいるように感じるらしい。Aはそれを「オメガ」と呼んだ。ある日、Aはピストルで自殺しようとした。Bはやめてくれと懇願したが、Aはためらわず引き金を引いた。その瞬間、Bはオメガが実在していると確信した。そしてオメガが新しい宿主を探していることを知った。 地中の火(The Fires Within) ハンコック教授は、超音波を使った「地底レーダー」を作った。初期の装置でも、地下鉄の路線をとらえることができた。予算をつけてもらい、出力の大きな装置を作るにつれて、どんどん深いところが探査できるようになった。地下15マイルに達したとき、格子模様の物体がとらえられた。明らかに自然のものではなく、何者かが造った建造物である。しかしそれほど高温高圧の場所に、何が存在しているのか?。 目覚め(The Awakening) 人類が恒星間飛行するのを見たいと思った男がいた。男は人工冬眠装置を付けた宇宙船を造り、自らを太陽から遠く離れた軌道に打ち上げた。何十万年も過ぎてから、男は目覚めた。地球には海がなくなり、月もなくなって代わりに輪があった。着陸した男を迎えたのは、人類ではなかった。 親善使節(Trouble With the Natives) 1隻の空飛ぶ円盤が地球に着陸した。乗組員は様々な星の種族だったので、人類に似た体形の2人が変装して下船した。2人はラジオ放送を聴いて英語を話せるようになっていたので、行く先々で人間に話しかけた。だが、配達で忙しい郵便人、耳の聞こえない老女、セールスマン嫌いの主婦、SFオタクの若者などにしか会えなかった。不審な行動をする2人は、警察署の留置場に入れられた。そこには先客がいた。酔っぱらって入れられたが、知的な学生だった。彼と会話した2人の宇宙人は、隠しもっていた機械を使って脱獄することにした。取り出した小さな機械を向けると、留置所の壁は崩れ落ちた。 呪い(The Curse) ロンドンを目標とした水爆ミサイルのうちの1発がそれた。そのミサイルは小さな町に落ち、教会を破壊した。教会には300年も前の墓石があり、こう書かれていた。「わが骨を動かす者に呪いあれ」。(※シェークスピアの墓のこと) 時の矢(Time's Arrow) 2人の考古学者が、谷で発掘作業をしていた。谷の下流では何かの施設があり、多くの人が働いていた。2人はその施設の科学者と親しくなり、施設を見せてもらうことになった。聞けば時間旅行の研究をしているというではないか。 木星第五衛星(Jupiter Five) 木星第五衛星に、探検隊を乗せた1隻の宇宙船Aが着陸した。一行は、第五衛星そのものが異星人の巨大な宇宙船の残骸であり、その内部には貴重な資料が残されていることを発見した。まもなくもう1隻の宇宙船Bも第五衛星に着陸したので、その乗組員たちに事情を説明し、内部の資料には手をつけないことを約束させた。だがBの乗組員たちは密かに資料を持ち出そうとした。資料が盗まれることを防ぐため、探検隊員たちは意外な方法で宇宙船Bを離陸できないようにしたのである。その方法とは・・。 憑かれたもの(The Possessed) 何百万年ものあいだ、故郷の星を失って宇宙をさまよっている精神体の「群れ」があった。一つの惑星を見つけたそれらは、そこに住む原始的な生物に「群れ」の一部の精神を寄生させた。残りの「群れ」はさらに旅を続けることにした。それらは約束を交わした。この惑星が太陽を廻るあいだの特定の日に、この場所で再会しようと。ときが移り、その場所は海に沈んだ。だが太古の精神体の記憶を受け継ぐその「レミング」たちは、今年も約束の場所に向かうのであった。
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