その他の擬神兵
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「かつて神だった獣たちへ」の記事における「その他の擬神兵」の解説
ダニエル・プライス / スプリガン 声 - 立花慎之介 ハンクとシャールが初めて出会った町に暮らす擬神兵。通称ダニー。特殊な脂肪組織によって蓄えられた栄養を基に骨や皮膚の硬化といった、身体を自由に巨大化させる性質をもつ。消耗の少ない人型と突破力に優れる肥大型を使い分けるが可能であり、擬神兵の中でも汎用性の高い個体だった。 新街道によってさびれる町や家族のために擬神兵となり、内戦後は居場所を失いたくない一心で、商人の馬車などから強奪した物を出稼ぎの報酬と称して町にもたらしていた。しかし噂を聞きつけたハンクによって致命傷を負い、最期までどう生きるのが正解だったのかを問いながら射殺される。 アニメ版では、強奪した金品に血糊がついており、彼の母や町の住民からは既に事情を理解されていたが、正気を失っては暴れるダニーに対し何もすることが出来なかった。 セオドア・シャーマン / ミノタウロス 声 - 内山昂輝 ローグヒルという町で「ミノタウロスの要塞」と呼ばれる砦を作り続ける牛頭の擬神兵。通称セオ。戦時中はその巨体には似合わない繊細な手先と、巨大な戦斧を怪力で操作する勇ましさを誇り、僅かな資材の運用や土木作業に転用可能な筋力により、堅牢な砦を築くことの出来る築城のプロフェッショナルとして活躍した。俊敏性に劣るのが弱点。 元来は何事にも恐れを抱く臆病な性格で、戦後も戦いと死への恐怖を払拭するために、「備えれば落ち着ける」というハンクの言葉に従って砦を建設した。しかし実際は戦後になっても死の恐怖に苛まれており、事実ローグヒルに砦を築きあげた切っ掛けも、幼い子供にオモチャの銃を突き付けられたからであった。ローグヒルを訪れたハンクを敵とみなして交戦、ウェアウルフとなった彼に敗北。今際の間、死の恐怖から解放されることに安堵し、射殺される。 アーサー・オールストン / ベヒモス 声 - 津田健次郎 全長50メートルを誇る巨体と負傷箇所が硬く再生する性質をもった擬神兵。通称アーティ。その巨体と並みの砲弾ですらものともせず戦場を突き進む姿は敵兵たちに多大な恐怖を与え、佇むだけでも敵の指揮が下がったという。圧倒的な再生能力に加え、その皮膚は再生する事に分厚くなり、更なる防御能力を得る。しかし、極めて愚鈍であったために他の擬神兵との歩調を追わせることが困難。 寡黙で命令に忠実な人物で、個人的なことをあまり語らない人物だったとハンクは述懐している。 終戦後、構わず東に向かって進行を続け、鉄道橋を破壊するルートに入ったことからハンクのターゲットとなる。ユニオン軍や鉄道主の度重なる攻撃に進行を妨害され、最終的にハンクの苦渋の攻撃で擱座するが、鉄道橋の先にある海を見て戦時中から抱いていた海を見たいという願望を叶えたことに満足しながら死亡した。 クリストファー・ケインズ / ガーゴイル 声 - 福山潤 蒸気の街ホワイトチャーチの教会を根城とする擬神兵。通称トーファー。人型ながら素早い飛行能力を有し、敵軍の指揮官だけを狙い指揮能力を下げる、戦況把握のための情報収集、石のような姿からの市街地における迷彩効果による撹乱など、多くの戦況に適していた。 戦時中は正義を信奉し、南軍殲滅に躊躇しない性格から、ハンクや部隊の仲間たちに一目置かれていた。南北の和解に最も激昂し反対していた。これはストリートチルドレン時代に巡礼聖職者(正体は牧師)との関わりを経て正義の意義を理解するが、貧富の差が激しい街で正しい行いをなすことが難しい現実に直面し、犯罪を犯さなければ生きていけず絶望した過去をもつ。戦争の序盤、兵士になることで今の状況を打開するため町を出て従軍し擬神兵となるが、内戦後は他に行く所がなく、渋々故郷に帰還し、歪んだ正義感をもって正義にそぐわない行動をする者を殺す日々を送る。 ケインを追ってホワイトチャーチを訪れたシャールやハンクに遭遇すると、盗みを働いた孤児をかばった彼らを罪人と断じて敵対。ケインから与えられた神殺しの弾丸によってハンクを追い詰めるが、シャールの射撃によって頭部を吹き飛ばされる。最期は自分の正道を疑わずにハンクに射殺される。 アニメ版では、戦時中に飛行しながら敵の砦に接近し、砲台へ手投げ弾を放り投げるなどのヒットアンドアウェイな攻撃を行っていた。 ジョン・ウィリアム・バンクロフト / ニーズヘッグ 声 - 平川大輔 シャールの父で、強靭な肉体と生命力を秘めた巨大なドラゴンの擬神兵。飛行能力と巨体を生かした肉弾戦、さらには火炎を放つ。通称ウィル。 戦時中、経営が苦しくなった孤児院を守るために擬神兵となった。 帰還後は無尽蔵の食欲が災いして村の家畜を食い荒らすようになり、噂を聞きつけたハンクによって本編以前に射殺される。その後は村の山奥に埋葬されたが、シャールがクーデグラスと村に帰還するのと同時期に復活。本能のみで動く獣と化し、村への被害を食い止めるために出撃したクーテグラスと戦闘になる。ガトリング砲や焼き討ちでも死なない生命力を見せるが、シャールの銃撃を受けて活動を停止。娘の姿を確認するようにして完全に事切れる。 ベアトリス / セイレーン 声 - 早見沙織 鳥の翼と魚類の下半身をもった擬神兵。通称トリス。翼の振動で発生させる歌によって相手を気絶に似た状態にさせることができる。その反面、普通の人間と変わらない耐久力しかもたないため、戦場では体躯に優れたダニーと組むことが多かった。 かつてはストリートチルドレンであったが、彼女に目をつけた神父によって酒場の店主に紹介され、斜陽の港町ポートガルフの酒場で人気を博した歌手であった。しかし、内戦により商売が成り立たなくなり、途方に暮れていたところを擬神兵の素質有りとしてスカウトされた。内戦後は町に帰還し隠遁生活を送っていた。しかし新パトリアとの交戦の機運を知ると、自身の力で町の人々を眠らせて戦いから遠ざけようとする。しかし噂を聞きつけたクーテグラスによって重傷を負い、最後はシャールに諭され歌手時代の歌を歌いあげ、死亡した。 アニメ版では、戦時中は部隊の仲間に歌を聞かせて皆の評価も高かった。その後はポートガルフに帰ってきたが自らの姿を人前に出せず路地にいた所をかつての酒場の店主、チャールズに見つけられ、町外れの洞窟に匿われる。しばらくしてトリスの歌声に惹かれたシャールと出会い交流を深めた。そして町を出てやり直そうと決心した矢先、トリスを匿っていることを突き止められ致命傷を負わされたチャールズの死と、不慮の事故から起きた火事で燃えていく酒場を見てしまい完全に発狂、住民たちを永遠の眠りに誘おうとするも、シャールにそんな歌は聞きたくないと否定され我に返るが、自ら自傷することで能力から逃れたクロードに撃たれ逃亡。最後は燃え尽きた酒場後でシャールと語り合うものの、クーデグラスの銃撃を立て続けに喰らってしまい、最後の思いを込めてかつて酒場で歌った曲を歌い上げ、力尽きてシャールに見守られながら死亡した。 ヴィック / サスカッチ 声 - 藤井隼 厚い脂肪と抜きん出た体力を生かした索敵や隠密行動、ゲリラ戦に富んだ雪男の擬神兵。 戦後は雪山に潜み、空腹から人を襲撃していたためハンクに誅戮される。仕方がなかったという言葉から、罪悪感は抱いていた模様。 アニメ版では、クーデグラスの部隊と思われる者たちを殺害・補食しているところをハンクに誅戮された。 ロバート・アーベル / ドッペルゲンガー 膨大な養分を糧に腹部の培養胎から自分の分身を生み出す能力をもった擬神兵。通称ロビン。本来は失敗作として処理されるはずだったが、優れた兵力を生み出す力を見込まれて部隊員となった経緯の持ち主。分身は複数同時に作成が可能であり、最低限の知能と本体と直接意思の連結を行うことにより、複雑な作戦にも対処が可能。しかし分身は1カ月程度で老化し死に至り、加えて養分となる餌が多量に必要とするため、コストの維持が厳しいといった欠点を持つ。戦時中は使用出来なくなった分身を更に餌に利用していた。 故郷が南北の境目に存在し、家族や故郷を守るため擬神兵となった。 内戦後、記憶を失くした状態でケインに保護され、新パトリアに併合された故郷ダブルウォーカータウンに帰還したところでハンクたちと再会する。しかしそれは町人を喰らって生み出された分身であり、オリジナルのロビンはケインによって町の地下に運ばれ、訪問者を捕食して人の姿を成さない怪人じみた分身を生み出し続ける存在となり果てていた。オリジナルはせめて何も知らない分身に人として生きてもらいたいとハンクに語ったが、真相を知った分身のロビンは発狂し自殺する。オリジナルもこれに絶望し、ハンクにエコールへ向かうよう助言し、ケインを止めてほしいと懇願した後、射殺を受け入れた。 トワイライト / スペクター 廃墟となったエコールでハンクたちが見つけた死体のような擬神兵。発光器官と発音器官を備えた大量の羽虫を操る能力によって、見聞きした内容を虫を操作して再現劇として見せることが可能。 戦時中に昏睡状態となり失敗作として処理されたが、実際は意志を伝える手段がなかっただけであり、施設が放棄された後も擬神兵用調製槽と擬神兵の生命力によって生き続けていた。ハンクたちに当時の情景やケインの目的を伝えた後、自らの死を望み、ハンクに射殺された。 単行本の巻末紹介からも説明されているが、正式には擬神兵としてカウントされておらず、トワイライトという名前も仮初めのものに過ぎない。浮浪者や孤児といった身元不明の人物は本名さえ持っていないことも珍しくなかったため、擬神兵計画に参加した身元不明者が後ろ暗い過去を隠すために、敢えて新しい名前を名乗ることも珍しくなかったとのこと。 リース・バーリス / フレスヴェルグ ベヒモス、ニーズヘッグに次ぐ巨体を誇り、戦時中は優れた機動力と攻撃力で敵兵を蹂躙したとされる巨鳥の擬神兵。羽毛は銃弾を通さず、激しい羽ばたきから成される突風によって、多くの敵兵を吹き飛ばした。また、銃弾の届かない空からの急降下による敵陣突入は、この擬神兵最大の武器であった。小型の擬神兵の運搬にも用いられたが、弱点として、飛行するための準備に時間を要することに加え、後述の精神の不安定さが挙げられる。 徴兵される前は北部の大農場マダー農園の使用人であり、農園の令嬢ルビアと親密な間柄だったが、身分の差を疎み、従軍し功績を挙げれば一緒になれると信じ軍に入隊。しかし戦争の中で正気を失ってしまい、流れるように擬神兵計画に参加、早期に理性を失くしたとされる。 戦争後は、理性が無い状態でルビアの下に戻り、農園が荒廃する原因となる。噂をききつけたハンクと戦闘になり、羽を撃たれ墜落しさらに致命傷を負うが、最後の悪あがきのように屋敷に突撃し、異形の姿を受け入れたルビアと共に敷地の外に逃亡し、行方不明となった。戦時中は、ジョンと相性が悪かった。これは、性格や敵の処遇についての倫理観などのズレもあったが、擬神兵としての互いの相性によるものが大きいと推測されている。 アビー / ヒドラ 声 - 井上剛 本編では劇中外でハンクにより殺害されたとされる擬神兵。遺体はパトリア軍によって鹵獲され、抽出された毒からアルファルドが製造される。 アニメ版では茶髪をハーフモヒカンにしたお調子者の青年兵の姿で登場。擬神兵時は3つの蛇の首を生やし、両腕にも口が出現した姿となる。毒牙で噛みついて人間の体をドロドロに溶かす他、毒を霧状に吐くこともできる。 擬神兵としての理性に次第に心を犯されていき、局地戦の戦後処理中にとうとう能力を制御できなくなり、周囲の兵士を敵味方問わず殺害したことで友軍から一斉砲撃を喰らう。瀕死の状態で人の姿を取り戻すも、自らが化け物に変わっていくことに耐えられなくなり、ハンクの眼前で、彼の静止を無視して腕を口に突っ込みヒドラの頭部を発生させ、自らの頭部が破裂させる形で自害してしまった。死後は肉体を解析され、アルファルドが製造されてしまった。 彼の死によって部隊に多大な不安が生まれ、エレインは擬神兵が誤った存在であったと確信してしまい、ハンクには獣に堕ちた擬神兵は仲間の手で葬るということを決意させた。 エドガー・ベックフォード / バジリスク 声 - 安元洋貴 アニメオリジナルの擬神兵。擬神兵時は巨大なトカゲの姿となる。体表を迷彩のように周囲に溶け込ませながら高速で移動し、長大な舌を振り回して攻撃する。 周囲から慕われる好人物だったが、終戦後、擬神兵こそ神であるとの考えから徐々に歪んでいき、いずこかの街で強盗殺人を行っていたところをハンクにより誅戮される。 ネッド / キュクロプス 巨大な肉体に一つ目が特徴的な擬神兵。その巨体からは想像出来ないほど手先が器用であり、他の擬神兵らの武装の作成を担当していた寡黙な人物。その技能は、単独であらゆる工程を作業することが出来るほど。ティーカップやベッドなどの家財も作成することが可能であり、ハンクの武装も彼が開発したが、ミノタウロスと比べると細かい作業に向かない上、優れた筋肉と体力を持ち合わせいるのにも関わらず、一つ目という事で遠近の測りが上手くいかないため戦闘向けではなかった。 ハンクや軍部が唯一危険性がないと判断している擬神兵であり、擬神兵になる前の技能が反映された貴重な個体にも当たる。後方担当であり問題行為も起こさなかったが、戦意を著しく欠いた個体だったために他の擬神兵から敬遠される立場にいた。 人里離れた山奥の鍛冶場でひっそりと暮らしており、訪ねてきたハンクらを出迎えた。擬神兵として変わっていった戦友たちと違い、何も変わらず興味をもつことが出来ない自身を憂いていることをハンクに告げ、対ケイン用に作成した毒蛇の散弾を授ける。翌日に旅立っていくハンクにいつか平和な世界を見せて欲しいと言葉を綴り、見送った。
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