視覚障害者 視覚障害者の概要

視覚障害者

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/07 15:42 UTC 版)

障害 > 身体障害 > 視覚障害者
ブラジルショッピングセンター盲導犬とともに歩く視覚障害者

概要

長年、情報障害者と言われ続けてきたが、ノーマライゼーションの社会的風潮の土台の上、近年の情報通信技術(Information and Communication Technology:ICT)の著しい発展で、状況によっては健常者と変わらない活動をする機会が与えられるようになってきた(アクセシビリティのページを参照の事)。

残存視覚がある「弱視者」(またはロービジョン者)(low vision)と、視覚をもたない「」(全盲)(blindness)とに分けることができ、前者を見えにくい人、後者を見えない人、と呼ぶ場合がある[1]

対義語は「晴眼者」。

歴史・背景・世界的観点

日本においては明治維新以前の時代[注釈 1]では、当道座、盲僧座、瞽女屋敷などの自治的組織がいくつかあり[4][5]、中でも当道座では検校勾当別当、座頭などの官位が与えられ、音楽家鍼灸按摩を専業としていた。当道の座の最高職である「総検校」(または「職検校」)[6]は、十万石の大名に匹敵する地位と格式を有していた[要出典]

過去「目暗、眼暗(めくら)」と呼ばれたが、現在では差別的(差別用語)とされ、「視覚障害者」という言葉の指し示す対象が拡がってきた[注釈 2][7]事もあり、使わない傾向にある。

障害者、特に視覚障害者はどの時代や国、地域にも広く存在する社会的少数者(マイノリティ)であるとされ、生活は時代や国により大きな制約を受ける。WHOによれば、世界の視覚障害者は推計2億5300万人、そのうち3600万人が全く見えず、2億1700万人は中度から重度の視覚障害を持っているという[8]。視覚障害者の内「弱視者」(またはロービジョン者)の割合は7割とされている[9]

一般的に「“(行政から)認定を受けた”視覚障害者(とりわけ全盲の人)」を指していることが少なくない。本質的な「障害」に対する考え方は、日本図書館協会の「図書館利用に障害のある人」という定義[10]や、ロービジョンケアにおける考え方、近年の「障害者の権利に関する条約」に基づく、政府による障害者の定義の見直しにも見られるように、日本においても医学モデルから社会モデルへの転換が図られつつあり、従前のとらえ方では選に漏れる人たちが多数発生することに注意が必要である。たとえば、夜盲症(鳥目)や眼瞼下垂眼震羞明複視色覚異常、昼盲も言葉の定義からすれば、視覚障害ではあるが、これらは身体障害者福祉法における視覚障害の定義には含まれない。

教育・情報

視覚障害者を対象にした学部を持つ国立大学として、筑波技術大学があり、聴覚障害者への対応を行っているが、一般的な大学でも受け入れをしており、その情報支援・情報保障[注釈 3]は各大学によっては大きく進んでいることがある。

2007年に創設された、特別支援学校教諭免許状教職課程を設置している大学等の教育機関のうち、5領域中、「視覚障害」の取得可能な教育機関は、他の4教育領域に比べて著しく少ない。さらに、大学通信教育においては、2012年現在は課程設置校は皆無であり、そのほとんどが、旧養護学校免許状に相当する3領域のみ取得可能となっており、聴覚障害を教育領域とする免許を取得可能な通信制課程も1校にしか認可されていない。

世間での典型的なイメージは「視覚障害者=全盲=点字」である[独自研究?]が、近年、中途視覚障害者統合教育を選択した(つまり盲学校[注釈 4]に行かない)者を中心に、点字の普及率(いわば点字の識字率)は決して高くは無く、よって、比較的豊かな点字図書の資産を生かす事ができない者も増えてきている。しかし一方で、点字未習得者で「点字を必要としない」者も増えてきている[11]。時代と共に音訳による録音図書や、とくに近年においてはパソコンなどのIT技術[注釈 5]を利用した情報取得の機会も多くなってきており、自らが、より自発的・能動的に情報収集を行なえる環境も整いつつある(情報保障も参照の事)。

普段の情報入手の手段としては、実は健常者と変わらずテレビが一番多いのだが、テレビ音声の受信可能なラジオによる情報取得者も多かった。しかし、地上デジタル化に合わせた、ラジオの地デジ化対応が進んでいなかった時期があり[12]、実は視覚障害者にとっても「地デジ化」は緊急の課題であり重大な問題であったのである。

現在は地デジ対応ラジオも普及している[13]


注釈

  1. ^ 盲人組織の取り締まりをする職屋敷(全国58ヵ国)・惣録屋敷(関東8ヵ国)は1871年(明治4年)に廃止された[2][3]
  2. ^ NHKラジオでの番組名が「盲人の時間」から「視覚障害者の時間」、さらに「聞いて 聞かせて ~ブラインド・ロービジョン・ネット~」になっている事が顕著である。
  3. ^ テキスト・講義は適宜点訳音訳されている。
  4. ^ 盲学校によっては、学校名を変更して、視覚特別支援学校等としている場合がある。
  5. ^ OCRによる活字データ画面読み上げ機能によるインターネット利用、点訳データの音声化ソフトによる音訳など。
  6. ^ 風が吹けば桶屋が儲かる」の例でわかるように、盲人が多く三味線弾きを生業としていた。
  7. ^ 小沢昭一の『日本の放浪芸』には、新潟の瞽女、岩手のおく浄瑠璃、山形の早物語、青森のいたこ、熊本の肥後琵琶を採録した1枚がある。vicg-60234
  8. ^ しもた屋は、「しもうたや」が音変化した語。「しもう」は、「終える」「片付ける」を意味する動詞「仕舞う(しまう)」に由来し、漢字では「仕舞屋」「仕舞うた屋」「仕舞た屋」などと書く。ここでの「しまう」は、「店をたたむ」「商売をやめる」といった意味で、江戸時代、ある程度の財産ができると店をたたんで、普通の家に住むことをいった。しもた屋の多くは、表向きは普通の家であるが、裏で家賃や金利などで収入を得て、裕福な暮らしをする者が多かったといわれる[30]
  9. ^ 特に、屋内で、入口や着席した位置を起点にして説明する際に有効である。
  10. ^ (理由は不明だが)近年刊行された書籍にはこのクロックポジションの説明は省かれている例が多い。
  11. ^ コンピュータの歴史から見れば、そもそもGUI導入以前の時代はテキストベース(CUI)であったので、キーボードのみでのパソコン操作は特別なことではない。
  12. ^ サイト内のほかのページへのリンクが集められた場所で、一般にナビゲーションメニュー、ヘッダー、サイドバーなどと呼ばれる。
  13. ^ ナビゲーションはサイト内全ページに置くことがほとんどなので、サイト内を移動するたびに毎回同じリンクの羅列を聞かされる。
  14. ^ 見た目は先頭または左側にあってもソースファイル上で本文の後方に配置することで呼び上げ順への配慮が可能(ウィキペディアがその代表例)。
  15. ^ 大抵の視覚障害者用ソフトは高額なので、障害者補助のない晴眼者には、おいそれと試験導入とは行かないのが現状である。
  16. ^ しかしながらこれらのコンテンツに対応しない読み上げブラウザも少なくない。
  17. ^ これにより、五千円紙幣の透明層の面積・形状が一万円紙幣のものと異なることとなり、区別が可能となる。

出典

  1. ^ 福祉教育コーナー、View-Net神奈川
  2. ^ 吉川英治『世界大百科事典11 [しょくやしき【職屋敷】]』平凡社、1966年2月25日、648頁。 
  3. ^ 吉川英治『大百科事典13 [そうろくやしき【惣録屋敷】]』平凡社、1966年6月25日、744頁。 
  4. ^ 吉川英治『世界大百科事典16 [とうどう【当道】]』平凡社、1966年11月30日、324頁。 
  5. ^ 大藤時彦『世界大百科事典 [ごぜ【瞽女】]』(2版)平凡社、1966年1月10日、703頁。 
  6. ^ 大藤時彦『世界大百科事典9 [ざとう【座頭】]』(2版)平凡社、1966年2月1日、535-536頁。 
  7. ^ 国内の視覚障害者数は164万人―日本眼科医会”. 医療介護CBnews (2009年9月17日). 2018年6月9日閲覧。
  8. ^ 視力障害と失明 WHOファクトシート” (PDF). 公益社団法人WHO協会 (2017年10月). 2018年3月29日閲覧。
  9. ^ 点字ブロック やっぱり黄色「弱視の人にも見やすい」”. 毎日新聞. 2018年3月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年3月29日閲覧。
  10. ^ 日本図書館協会・障害者サービス委員会
  11. ^ 平成18年身体障害児・者実態調査結果 18ページ(平成25年3月25日閲覧、厚生労働省)
  12. ^ ラジオも地デジ化 見えぬ具体像、業界に不協和音も2008年9月9日
  13. ^ 『地デジラジオ』発売開始、社会福祉法人 日本盲人会連合HP、閲覧2017年10月3日
  14. ^ 日本医史学雑誌第48巻第3号(2002)、(一社)日本医史学会HP、閲覧2017年10月3日
  15. ^ なるほど納得!緑内障の情報サイト
  16. ^ 平成18年身体障害児・者実態調査結果(平成20年3月24日、厚生労働省)
  17. ^ (PPT)視覚障害者に対する的確な雇用支援、厚生労働省、平成19年4月。(テキスト版 - 文書の構造が分かりにくくなっている。)
  18. ^ ヘルスキーパーとは”. 日本視覚障害ヘルスキーパー協会. 2018年4月1日閲覧。
  19. ^ 「見える人たちと見えない人たちを対象にしたアンモナイト(レプリカをふくむ)の触察実験です。実験結果によれば、最初の触った感じ(触感実験)では両者にあまり差は見られませんでした(見える人たちの触覚は予想に反して良かった)が、化石の立体的な細かい構造などについては見えない人たちの触知能力の良さが認められています。」 2 視覚以外の感覚への注目 > ●常識を疑う > 1)視覚障害者の触覚は優れているのか、触覚を通じてみた世界(改訂版)、2002年7月20日。原論文: 山下浩之・田口公則・小出良幸, アンモナイトを利用した化石の触覚実験とその地球科学教育学的意義, Bulletin of the Kanagawa Prefectural Museum (Nat. Sci.), No. 30, Mar. 2001.
  20. ^ 「'06平和考・京都:視覚障害者と戦争/中 海軍病院でマッサージ」毎日新聞(京都版)、2006年8月18日。転載: 36 史料「舞鶴海軍病院技療士」・醍醐照三さん、京都盲唖院・盲学校・視覚障害・点字の歴史(見えない戦争と平和)。2015年11月25日閲覧。
  21. ^ 鈴木栄助『ある盲学校教師の三十年』岩波新書,1978年。NCID BN00432372。関連箇所: 同書紹介文部分
  22. ^ 本の紹介 秋元波留夫・清水寛共著 忘れられた歴史はくり返す」(記事データベース)、新聞『農民』、2007年4月23日。2015年11月25日閲覧。
  23. ^ 石川県視覚障害者協会(編)『自立と社会参加への道のり : 創立八十周年記念誌』石川県視覚障害者協会、1999、p, 10, p. 149。石川県立図書館 レファレンス事例詳細
  24. ^ 特集オーディオドラマ「空の防人」NHK、2011年8月13日放送。文化庁芸術祭賞受賞記事
  25. ^ 上田誠二「戦争と音感の社会史」『総力戦と音楽文化』
  26. ^ 鈴木洋和「視覚障害、ITで変わる 音声で技術者続々」朝日新聞、2010年4月27日。
  27. ^ 公共図書館で働く視覚障害職員の会(なごや会)HP、閲覧2017年10月3日
  28. ^ 資料シリーズNO.35、視覚障害者雇用の拡大とその支援 -三療以外の新たな職域開拓の変遷と現状-、第2章 視覚障害者の職域拡大の変遷と現状、第4節 図書館職員への就職とその現状、障害者職業総合センター 研究部門HP、閲覧2017年10月3日
  29. ^ 医師国家試験に合格…臨床研修、門戸開かず」(リンク切れ)、毎日新聞、2005年5月13日。記事に取り上げられた医師は、現在は精神科医として診療を行っている(大里晃弘、全盲の精神科医として、臨床の現場から考える、エッセイ その(7)、障害者欠格条項をなくす会、2010.7。大里晃弘「全盲医師として、どこまでできるか? : 法制度の改正で50歳からの再出発」(7. 臨床研修制度の問題点)、第5回 21世紀連合シンポジウム ―科学技術と人間―、東京大学医学部、2006年11月11, 12日, NAID 40015307049
  30. ^ 語源由来辞典
  31. ^ 山田明『通史日本の障害者 : 明治・大正・昭和』明石書店、2013、pp. 40-41。
  32. ^ 高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準” (PDF). 第2部 高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準. 国土交通省. p. 153 (2012年). 2018年6月9日閲覧。
  33. ^ あなたの知らない点字ブロックの話(2004.5.6放送、NHK福祉ネットワーク』)
  34. ^ a b “視覚障害者 「声かけためらわないで」3割ホーム転落経験”. 毎日新聞. (2017年1月17日). https://mainichi.jp/articles/20170118/k00/00m/040/139000c 2017年4月19日閲覧。 
  35. ^ 視覚障害者ホーム転落、ホームドアの設置急務 県内12駅で整備予定2017年1月15日埼玉新聞
  36. ^ “盲導犬利用者、生活に支障 コロナで距離感つかめず、協会”. 47NEWS(一般社団法人共同通信社). (2020年9月20日). https://www.47news.jp/5280859.html 2020年9月20日閲覧。 
  37. ^ 国立特殊教育総合研究所 視覚障害者のパソコン・インターネット・携帯電話利用状況調査2007
  38. ^ 盲導犬マークがつくおもちゃとは?日本玩具協会
  39. ^ 盲導犬マークのおもちゃとはタカラトミー
  40. ^ ウェブアクセシビリティ・レポート 第11回 Flashコンテンツのアクセシビリティ - MdN Design Interactive
  41. ^ NHKプロフェッショナル-仕事の流儀:浅川智恵子
  42. ^ 視覚障害者の暮らし--お金の見分け方編【FTCJフィリピン盲学校支援事業】
  43. ^ 識別マーク(凹版印刷)
  44. ^ お札識別アプリ「言う吉くん」
  45. ^ 日本銀行券の券種の識別性を向上させるための取組みを実施します』(プレスリリース)財務省・日本銀行・独立行政法人国立印刷局、2013年4月26日https://www.mof.go.jp/policy/currency/bill/issued/20130426.htm2013年5月1日閲覧 
  46. ^ 【08.02.25】「識別しやすい紙幣を」と視覚障害者が財務省要請佐々木憲昭オフィシャルサイト)
    ※リンク先の記事では「新旧五千円紙幣の横幅は同じ」と受け取られる表現となっているが、五千円紙幣E号券(2004年発行)は横幅がさらに1ミリ拡張されたため誤りである。
  47. ^ サイズが同一の米国紙幣は視覚障害者差別、米連邦控訴裁(2008.5 AFPBB News)
  48. ^ NIDEK CO,.LTD. 人工視覚の種類






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