公爵 ロシアの公爵

公爵

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/01 04:45 UTC 版)

ロシアの公爵

帝政ロシア貴族ロシア語版17世紀以前のボヤールモスクワ大公国以前からの諸侯)に由来するものと、18世紀以降ロシア帝国初代皇帝ピョートル1世が制定した官等表に基づいて貴族になった官僚貴族のドヴォリャンストヴォに分けられるが、ボヤールも官僚としての勤務で官等表に組み込まれ、ドヴォリャンストヴォ化したので両者は同質化していった[114]

ロシア貴族の称号は当初は公爵(クニャージ、Князь、knyaz)しかなかったが、ピョートル1世はドイツと同じ伯爵位(グラフ、граф, graf)、イギリスと同じ男爵位(バロン、барон、baron)を加えて爵位制度を作った[114][115]。また皇族の称号として大公(ヴェリーキー・クニャージ、Великий князь)があった[116]

帝政ロシア時代の公爵家にはドルゴルーコフ家ゴリツィン家ロシア語版ロプーヒン=デミドフ家カンテミール家ポチョムキン家ロシア語版、オボレンスキー家ロシア語版ゴルチャコフ家ロシア語版ロバノフ=ロストフスキー家ロシア語版ユスポフ家ロシア語版ヴォルコンスキー家ロシア語版などがあった。

帝政ロシアの貴族の特徴はロマノフ朝皇帝権力に強く従属し、勤務義務を負っていることだった。その原因の一つとしてロシア貴族は伝統的に均分相続法によって所領が細分化しやすかったため、官僚として働いて生活費を稼ぐ必要のある者が多かったことがあげられる。またロマノフ皇帝は絶対権力者であるので、その近くで勤務することは自分の権力と財産を拡大させるチャンスであった[117]

しかし18世紀を通じて貴族の勤務義務は徐々に緩和されていき、1762年のピョートル3世の布告で廃止された[117]。貴族の領地と農奴を私有財産として保障した[114]1785年のエカチェリーナ2世の特権認可状は貴族を身分に再編しようというものだったが、実際にロシア貴族に身分意識が生まれたのは19世紀以降だった[117]

ロシア貴族が住む屋敷はウサージバと呼ばれた[118]

ロシア革命により貴族身分は廃止され、ソビエト連邦時代を通じて貴族家系の出身者は迫害・抑圧されたが、ソビエト連邦の崩壊後には貴族の子孫たちが自分の先祖の再評価の出版を相次いで行っている[117]


  1. ^ 新村出広辞苑 第六版』(岩波書店2011年)942頁および松村明編『大辞林 第三版』(三省堂2006年)849頁参照。
  2. ^ 小田部雄次 2006, p. 13-18.
  3. ^ 小田部雄次 2006, p. 21.
  4. ^ 浅見雅男 1994, p. 71-76.
  5. ^ 小田部雄次 2006, p. 26.
  6. ^ 小田部雄次 2006, p. 30.
  7. ^ 居相正広 1925, p. 21.
  8. ^ a b 百瀬孝 1990, p. 242.
  9. ^ 小田部雄次 2006, p. 56.
  10. ^ 小田部雄次 2006, p. 57.
  11. ^ 小田部雄次 2006, p. 18.
  12. ^ 酒井美意子 1982, p. 47.
  13. ^ 小田部雄次 2006, p. 49.
  14. ^ 小田部雄次 2006, p. 65.
  15. ^ 浅見雅男 1994, p. 34.
  16. ^ 浅見雅男 1994, p. 116-117.
  17. ^ 百瀬孝 1990, p. 37.
  18. ^ a b c 内藤一成 2008, p. 15.
  19. ^ a b 百瀬孝, 1990 & p37-38.
  20. ^ a b c d 小田部雄次 2006, p. 45.
  21. ^ 百瀬孝, 1990 & p38.
  22. ^ 小田部雄次 2006, p. 89-90.
  23. ^ 内藤一成 2008, p. 42.
  24. ^ 原口大輔 2018, p. 206.
  25. ^ 原口大輔 2018, p. 206-207.
  26. ^ a b c 小田部雄次 2006, p. 29.
  27. ^ a b c d 浅見雅男 1994, p. 92.
  28. ^ 浅見雅男 1994, p. 97.
  29. ^ 小田部雄次 2006, p. 58.
  30. ^ a b 華族大鑑刊行会 1990, p. 10.
  31. ^ 華族大鑑刊行会 1990, p. 16.
  32. ^ 華族大鑑刊行会 1990, p. 11.
  33. ^ 華族大鑑刊行会 1990, p. 23.
  34. ^ 華族大鑑刊行会 1990, p. 13.
  35. ^ 華族大鑑刊行会 1990, p. 4.
  36. ^ 華族大鑑刊行会 1990, p. 6.
  37. ^ 華族大鑑刊行会 1990, p. 14.
  38. ^ 華族大鑑刊行会 1990, p. 22.
  39. ^ 毛利博物館(毛利邸)の歴史”. 毛利博物館. 2021年9月12日閲覧。
  40. ^ 華族大鑑刊行会 1990, p. 15.
  41. ^ 華族大鑑刊行会 1990, p. 24.
  42. ^ 華族大鑑刊行会 1990, p. 18.
  43. ^ 華族大鑑刊行会 1990, p. 17.
  44. ^ 華族大鑑刊行会 1990, p. 21.
  45. ^ 華族大鑑刊行会 1990, p. 20.
  46. ^ a b 華族大鑑刊行会 1990, p. 3.
  47. ^ 華族大鑑刊行会 1990, p. 7.
  48. ^ 石黒ひさ子 2006, p. 2-3.
  49. ^ a b 石黒ひさ子 2006, p. 3.
  50. ^ 石黒ひさ子 2006, p. 5.
  51. ^ 石黒ひさ子 2006, p. 4.
  52. ^ 石黒ひさ子 2006, p. 6.
  53. ^ a b 袴田郁一 2014, p. 86-87.
  54. ^ a b 袴田郁一 2014, p. 95.
  55. ^ 袴田郁一 2014, p. 93.
  56. ^ a b 今堀誠二, p. 422-423.
  57. ^ 袴田郁一 2014, p. 100.
  58. ^ 袴田郁一 2014, p. 98.
  59. ^ 袴田郁一 2014, p. 103.
  60. ^ a b 袴田郁一 2014, p. 102-103.
  61. ^ 袴田郁一 2014, p. 106.
  62. ^ 袴田郁一 2014, p. 107.
  63. ^ 袴田郁一 2014, p. 110.
  64. ^ 袴田郁一 2014, p. 112.
  65. ^ 袴田郁一 2014, p. 114.
  66. ^ 袴田郁一 2014, p. 113.
  67. ^ 袴田郁一 2014, p. 115.
  68. ^ 小林(1991) p.16-17
  69. ^ 森(1987) p.5
  70. ^ 森(1987) p.6
  71. ^ 小林(1991) p.18
  72. ^ 森(1987) p.7-8
  73. ^ 森(1987) p.9
  74. ^ 森(1987) p.11-12
  75. ^ a b 森(1987) p.15
  76. ^ 前田英昭 1976, p. 46-58.
  77. ^ 田中嘉彦 2009, p. 279/290.
  78. ^ 成瀬治, 山田欣吾 & 木村靖二 1997, p. 60.
  79. ^ 柴田三千雄, 樺山紘一 & 福井憲彦 1995, p. 290.
  80. ^ 柴田三千雄, 樺山紘一 & 福井憲彦 1995, p. 272.
  81. ^ 中野隆生 & 加藤玄 2020, p. 38-39/122.
  82. ^ 柴田三千雄, 樺山紘一 & 福井憲彦 1995, p. 187.
  83. ^ 柴田三千雄, 樺山紘一 & 福井憲彦 1995, p. 189.
  84. ^ 柴田三千雄, 樺山紘一 & 福井憲彦 1995, p. 205.
  85. ^ 中野隆生 & 加藤玄 2020, p. 124.
  86. ^ 柴田三千雄, 樺山紘一 & 福井憲彦 1996, pp. 128–129.
  87. ^ 中野隆生 & 加藤玄 2020, p. 166.
  88. ^ a b 日本大百科全書(ニッポニカ). “爵位”. コトバンク. 株式会社DIGITALIO. 2021年3月28日閲覧。
  89. ^ 柴田三千雄, 樺山紘一 & 福井憲彦 1996, p. 156.
  90. ^ 上垣豊 1995, p. 129(617).
  91. ^ a b 柴田三千雄, 樺山紘一 & 福井憲彦 1996, p. 419.
  92. ^ a b 上垣豊 1995, p. 130(618).
  93. ^ 柴田三千雄, 樺山紘一 & 福井憲彦 1996, p. 458.
  94. ^ 山本浩三 1959, p. 46/49.
  95. ^ Éric Mension-Rigau Enquête sur la noblesse. La permanence aristocratique, éditions Perrin, 2019, page 69.
  96. ^ Marc Guillaume, Directeur des affaires civiles et du Sceau, 2006.
  97. ^ Marc Guillaume, Maître des requêtes au Conseil d’Etat, Directeur des affaires civiles et du Sceau, Le Sceau de France, titre nobiliaire et changement de nom Académie des Sciences Morales et Politiques séance du lundi 3 juillet 2006.
  98. ^ 成瀬治, 山田欣吾 & 木村靖二 1997, p. 141.
  99. ^ 森井裕一 2016, p. 92-93.
  100. ^ 森井裕一 2016, p. 96.
  101. ^ 成瀬治, 山田欣吾 & 木村靖二 1996, p. 222/230.
  102. ^ 成瀬治, 山田欣吾 & 木村靖二 1996, p. 396.
  103. ^ a b 坂東省次 2013, p. 68.
  104. ^ a b c d e f g h i j Noble Titles in Spain and Spanish Grandees
  105. ^ 関哲行, 中塚次郎 & 立石博高 2008, p. 332.
  106. ^ 関哲行, 中塚次郎 & 立石博高 2008, p. 346.
  107. ^ 坂東省次 2013, p. 69.
  108. ^ 関哲行, 中塚次郎 & 立石博高 2008, p. 419.
  109. ^ 坂東省次 2013, p. 669/71.
  110. ^ 関哲行, 中塚次郎 & 立石博高 2008, p. 315.
  111. ^ a b 関哲行, 中塚次郎 & 立石博高 2008, p. 370.
  112. ^ https://www.boe.es/datos/pdfs/BOE//1931/153/A01122-01123.pdf
  113. ^ https://www.boe.es/buscar/act.php?id=BOE-A-1948-3512
  114. ^ a b c 坂内知子 2012, p. 164.
  115. ^ 世界大百科事典. “官等表”. コトバンク. 株式会社DIGITALIO. 2021年3月23日閲覧。
  116. ^ 秦郁彦編 2001, p. 426.
  117. ^ a b c d 川端香男里、佐藤経明 2004, p. 172.
  118. ^ 坂内知子 2012, p. 165.






公爵と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

公爵のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



公爵のページの著作権
Weblio 辞書情報提供元は参加元一覧にて確認できます。

  
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの公爵 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2022 GRAS Group, Inc.RSS