國學院大學
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/05/04 23:10 UTC 版)
概観
大学全体

國學院大學は1882年(明治15年)に創立された皇典講究所を母体とする大学である[1]。皇典講究所は明治政府の神道政策の一環として、古典研究と神職養成の機関として創立された[2]。1890年(明治23年)に皇典講究所によって國學院が設立されて以来、諸学問を通じて日本の伝統文化を明らかにして、国や地域への貢献、国際社会の発展に寄与するとともに、自己の個性を最大限に発揮することのできる人材を育成することを理念とし、 国史・国文・国法の研究機関、「国学(=日本を学ぶ)」の大学として研究と教育を重ねる[1][3]。1920年(大正9年)に日本の私立大学では早稲田大学・慶應義塾大学についで、最も古い段階で大学令に基づく大学となった(詳しくは旧制大学参照)。
大学名の表記
新字体(当用漢字)での「国学院大学」あるいは新字体を含む「國學院大学」表記はマスメディアやスポーツ分野で正字体の使用が認められない場合に使用されることがあるが、國學院大學の責任において発行・発信される全ての発行物・広報物・書類においては正字体表記(「國學院大學」)を基本としている[4]。 なお、渋谷キャンパス前の交差点およびバス停名が「国学院大学前」であるほか、渋谷キャンパス、たまプラーザキャンパスともに「国学院大学」の表記も一部用いられている。
建学の精神
國學院大學学則第1条では「本学は神道精神に基づき人格を陶冶し、諸学の理論並びに応用を攻究教授し、有用な人材を育成することを目的とする」と規定され、國學院大學では神道精神を「日本人としての主体性を保持した寛容性と謙虚さ」と定義している[5]。
明治維新の際、急速な欧米化によって日本古来の思想・文物が顧みられない状態となった。一方で、日本が独立を全うし国家が発展するためには、思想、文化、体制は日本の歴史・民族性に基づくものでなければならないという気運が高まり、1882年(明治15年)國學院大學の母体である皇典講究所が明治政府によって設立された。
11月4日の皇典講究所開黌式当日、初代総裁有栖川宮幟仁親王は、教職員・生徒に対して、次のような告諭を述べた。
凡學問ノ道ハ本ヲ立ツルヨリ大ナルハ莫シ故ニ國體ヲ講明シテ以テ立國ノ基礎ヲ鞏クシ徳性ヲ涵養シテ以テ人生ノ本分ヲ盡スハ百世易フベカラザル典則ナリ而シテ世或ハ此ニ暗シ是レ本黌ノ設立ヲ要スル所以ナリ
國學院大學建学の精神はこの告諭の「本ヲ立ツル」ことを基底としている。「本ヲ立ツル」は、日本人が「拠って立つ根本を明らかにする」という意味である[6]。日本の国柄を明らかにし(国体の講明)、人柄を養い育む(徳性の涵養)ことで、伝統文化に基づいた日本の根本を究める(本を立つる)ことが、國學院大學の神道精神の基礎をなしている[1]。
元学長で國學院大學中興の祖と呼ばれる芳賀矢一作詞の國學院大學校歌にも建学の精神が歌い込まれている[7]。
また、1890年(明治23年)7月に皇典講究所初代所長の山田顕義が公表した「國學院設立趣意書[8]」には、国史・国文・国法を中心に学び、海外百科の学問も網羅兼修することが述べられている[9]。
スローガンなど
「おもい」に「慮」の字を用いるのは、神道精神に基づいて「相手の立場を慮りつつ自己主張を行い、協調を図る」の意味を込めているもの[6]。
- 『國學院ビジョン』:標(人文・社会科学系の「標」となる)、大人(主体性を持ち、自立した「大人」の育成)[11]
教育および研究
國學院大學には神社本庁の神職の資格が取れる神職課程がある。大学でこの資格を取得できるのは國學院大學と皇學館大学のみである[12]。
学風および特色
皇典講究所をルーツに持つ経歴もあり、日本文化に関連する特色ある行事が行われる。
1月には渋谷キャンパスで奈良・平安時代の神式の成人式を再現した「成人加冠式」が行われ、男子が冠、女子が釵子と呼ばれる装飾具を頭部に着し、学内の神殿に奉告する[13][14]。
7月の七夕には「和装DAY」が開催され、当日は浴衣で授業を受講できるほか、学内に竹が飾られ学生が短冊を掛ける。
10月には供物を献じて十五夜の満月を鑑賞する中秋観月に由来する「観月祭」が行われる[15]。
渋谷キャンパスとたまプラーザキャンパスにそれぞれ図書館があり、神道・国史を中心に約160万点の資料を収容し、國學院大學本源氏物語を初め貴重な資料も所蔵している。
注釈
- ^ スポーツ関係の報道で、主に当用漢字表記の「国学大」が用いられることがある。
- ^ 國學院大學応援歌の歌詞に「國大」表記があるほか、國大音頭や國大小唄などといった使用例がある。
- ^ スポーツ関係の報道で、主に当用漢字表記の「国学大」が用いられることがある。
- ^ 國學院大學応援歌の歌詞に「國大」表記があるほか、國大音頭や國大小唄などといった使用例がある。
- ^ 当初は令和3年(2021年)4月の開設に向け文部科学省に認可申請をしていたが、審査の過程における指摘を踏まえ申請を取り下げた[26]。
- ^ 商標登録第4760192号[28]
- ^ DIC表記:DIC 193p·CMYK表記:C35,M100,Y12·RGB表記:R174,B121[4]
- ^ 「抹茶ゴールド」は学校法人國學院大學の出願した商標出願2015-124127での呼称[29]。(RGBの組合せ:R125,G110,B68)とされる。「校名表記等に関するガイドライン」ではブランドマークの基準色としてDIC表記:DIC 507p·CMYK表記:C60,M58,Y84·RGB表記: R125,G110,B68と定義されている[4]。
- ^ 商標登録第5329371号(標準文字)、商標第5329372号(画像)[28]
- ^ 正しくは「
田茂穗」。吉の異体字「𠮷」(「土+口」、U+20BB7)を使用。
出典
- ^ a b c “國學院大學の歴史”. 國學院大學. 2020年7月9日閲覧。
- ^ ブリタニカ百科事典『皇典講究所』 - コトバンク
- ^ “研究”. 國學院大學. 2020年11月18日閲覧。
- ^ a b c d 國學院大學 校名表記等に関するガイドライン (PDF) 國學院大學 (2015年10月). 2017年10月7日閲覧。
- ^ “多様性あふれる渋谷から「伝わる」が進化する!”. 國學院大學. 2020年8月20日閲覧。
- ^ a b “「3つの慮い」と「5つの基い」で育む國學院ブランド/國學院大學”. 大学の最新事例. 2020年8月20日閲覧。
- ^ “建学の精神”. 國學院大學 (2008年9月2日). 2019年7月14日閲覧。
- ^ “國學院設立趣意書”. 國學院大學. 2020年2月2日閲覧。
- ^ “国学から始まる「學問ノ道」”. 國學院大學. 2020年2月2日閲覧。
- ^ a b “学問の系譜”. 國學院大學. 2017年10月7日閲覧。
- ^ “國學院大學について”. 國學院大學. 2020年3月7日閲覧。
- ^ 『大学選びのための職業・進路案内』(東進ハイスクール・東進衛星予備校編、ナガセ、2013年)87頁。
- ^ “装束姿の新成人…国学院大学で「成人加冠式」”. AFP通信. 2020年3月12日閲覧。
- ^ “成人加冠式”. 國學院大學. 2020年3月12日閲覧。
- ^ “観月祭”. 國學院大學. 2020年4月5日閲覧。
- ^ “沿革”. 國學院大學 (2019年4月1日). 2019年10月20日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z “学問の系譜”. 國學院大學. 2020年5月8日閲覧。
- ^ 『日本キリスト教会50年史』62頁。
- ^ “國學院大學に対する大学評価結果ならびに認証評価結果”. 大学基準協会. 2020年7月9日閲覧。
- ^ “【重要なお知らせ】令和元年度卒業式の中止について(2/27)”. 國學院大學. 2020年5月11日閲覧。
- ^ “【重要なお知らせ】令和2年度 入学式の中止について”. 國學院大學. 2020年5月11日閲覧。
- ^ “2020(令和2)年4月、経済学部は新たな学びへ”. 國學院大學. 2020年5月11日閲覧。
- ^ “聖心女子大、前期全授業をオンライン実施へ 青学・国学院なども入構禁止措置”. シブヤ経済新聞. 2020年11月23日閲覧。
- ^ “【在学生・保護者の方へ】(お知らせ)令和2年度前期授業の開始にあたって―本学独自の修学支援について―(5/1掲載)”. 國學院大學. 2020年5月11日閲覧。
- ^ “國學院大學 観光学部観光まちづくり学科(仮称)令和4(2022)年4月設置構想中”. new-f.kokugakuin.ac.jp. 2020年12月14日閲覧。
- ^ “観光学部観光まちづくり学科(仮称)の設置認可申請取り下げについて”. 國學院大學. 2020年12月14日閲覧。
- ^ “國學院大學創立140周年記念式典・記念講演を挙行(令和4(2022)年11月4日)”. 國學院大學. 2022年11月6日閲覧。
- ^ a b “國學院大學について 商標登録”. 國學院大學. 2020年5月25日閲覧。
- ^ “商標照会(固定アドレス) 商願2015-124127”. www.j-platpat.inpit.go.jp. 2020年10月19日閲覧。
- ^ “國學院学長とウサギ、取り違えの裏に過激派 ビラ作成の学生「注意呼びかけ」”. BuzzFeed News (2016年4月28日). 2022年8月26日閲覧。}
- ^ “ビラ一枚で退学処分?!”. いいねを押したい弁護士ブログ (2016年5月10日). 2022年8月26日閲覧。
- ^ a b c “法人概要 | 一般財団法人 國學院大學院友会”. www.kokugakuin.or.jp. 2021年3月29日閲覧。
- ^ “院友会館のご案内”. 國學院大學院友会. 2014年4月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年5月13日閲覧。
- ^ “院友会”. 國學院大學. 2021年3月29日閲覧。
- ^ “支部情報 | 一般財団法人 國學院大學院友会”. www.kokugakuin.or.jp. 2021年3月29日閲覧。
- ^ “法人概要 歴代会長一覧 | 一般財団法人 國學院大學院友会”. www.kokugakuin.or.jp. 2021年3月29日閲覧。
- ^ a b c d “國學院大學院友会館 ご利用案内 | 一般財団法人 國學院大學院友会”. www.kokugakuin.or.jp. 2021年3月29日閲覧。
- ^ “神殿鎮座記念祭”. 國學院大學 取材日誌 (2016年5月1日). 2017年10月7日閲覧。
- ^ INC, SANKEI DIGITAL (2019年11月20日). “【学ナビ】学食訪問 国学院大学「讃岐うどん」 香川から「こだわりの生麺」”. 産経ニュース. 2020年7月29日閲覧。
- ^ “当館の概要”. 國學院大學博物館. 2019年10月7日閲覧。
- ^ “学生の読書離れ防げ 気軽に本読めるスペース新設 約800冊配架”. 毎日新聞. 2019年11月8日閲覧。
- ^ 米澤潤、神藤剛 著「欅坂46のCDジャケットを手掛けるアートディレクター&フォトグラファー制作秘話」、香月孝史 編『MdN』 2017年1月号、エムディエヌコーポレーション、2016年12月6日、40-43頁。ASIN B01MXMI5GC。
- ^ “三原 健司(フレデリック)のツイート”. 2020年4月15日閲覧。
- ^ “國學院大學北海道短期大学部”. 國學院大學北海道短期大学部. 2022年1月21日閲覧。
- ^ “厚生寮”. 國學院大學 (2017年9月30日). 2017年10月7日閲覧。
- ^ “國學院大學と大学間包括連携に関する協定を締結しました”. 西南学院大学. 2020年4月9日閲覧。
- ^ “海外協定校ネットワーク”. 國學院大學 (2019年6月6日). 2019年7月14日閲覧。
- ^ “日本法律学校の創設”. 日本大学. 2015年1月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年3月8日閲覧。
- ^ “オープンカレッジ修了式、日本大学へ表敬訪問”. 國學院大學 (2010年3月4日). 2015年4月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年3月8日閲覧。
- ^ “日大から表敬訪問、神職課程階位一括申請手続書類受付、こくぴょんぬいぐるみ予約受付開始、Kokugakuin Miss&Mr.CONTEST 2011”. 國學院大學 (2011年11月17日). 2015年4月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年3月8日閲覧。
- ^ “林理事長と酒井学長が國學院大學を表敬訪問”. 自主創造 - 日本大学 Nihon University - あなたとともに100万人の仲間とともに. 2022年8月24日閲覧。
固有名詞の分類
- 國學院大學のページへのリンク