ワークシェアリング ワークシェアリングの概要

ワークシェアリング

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/22 19:02 UTC 版)

OECD各国の雇用者におけるパートタイマー割合(%)[1]

内閣府によれば、以下二つのタイプがある[2]

  • 雇用維持型 - 不況などで企業の業績が悪化した際に、一人当たりの労働時間を減らすことによって企業全体での雇用を維持する。典型例にドイツがある。
  • 雇用創出型 - 様々な業務ごとの短時間労働を組み合わせることによって、雇用機会を増やす。典型例にオランダがある。80年代前半の失業率12%は、2001年には3%を下回るまで低下している。

またアメリカ合衆国内国歳入庁によれば、以下の六類型にまとめられる。

  1. 週当たり労働時間の短縮による雇用創出
  2. ジョブシェアリング
  3. 早期退職措置としてのパートタイム化
  4. 自発的パートタイム化
  5. 連続有給休暇時の代替要員
  6. キャリア・ブレーク時代の代替要員

経緯

背景にあるのは労働市場の悪化であり、労働者過労死失業による自殺の解決方法として、ワークシェアリングの活用という意識が起きた[3]。また、ワークシェアリングによって雇用を安定させ、労働流動化と産業構造の転換を促進することが、マクロ経済政策として重要となる[3]

インサイダー・アウトサイダー理論

長期的・構造的な失業継続を説明する理論として「インサイダー・アウトサイダー理論」というものがある[4]。まず、雇用が保障され、労働組合に加入する正規雇用者を「インサイダー」、失業者を「アウトサイダー」とする[4]

インサイダーは交渉力が強く、不況下でも賃金が下がらない一方、アウトサイダーは低賃金で働きたくても雇用されない。このような状況下で失業の長期化と人的資本の劣化が進み、アウトサイダーの労働市場への影響力はさらに小さくなる[4]。結果、アウトサイダーはますます失業から抜け出すことが困難になり、失業は長期的、構造的になる[4]。アウトサイダーからスタートせざるを得ない若者がもっとも不利な状態に置かれることになる[5]

効果

雇用機会に対しては、ワークシェアリングを導入することによって、雇用は増加する傾向があるという分析がある。ただし、その分析でも、他の制度政策等の影響もあると考えられ、「ワークシェアリングのみで失業等への効果的な政策になりうるかは十分注意すべき」としている。また、経済活性化に対しても、ワークシェアリングだけでなく、資源配分の改善、生産性の向上も必要であるという[2]

働き方の選択肢を広げて自由度を高めるという点では意義のあるものであるが、ある一定量の仕事を皆で分合わなければならないといった労働塊の誤謬の下に、失業問題対策として制度化されることには問題がある[6]

ワークシェアリングを導入する大学・政府機関・および企業にとっては、大学教授・講師または従業員の頭数が増えるため、社会保障費、従業員訓練にかかるコストが増加する[2]。大学講師・政府機関労働者・企業従業員にとっては、給料が下がるものの余暇が増えることにより自己研鑽等ができ、また余暇の増加に伴い消費が活性化することが期待されている[2]。ただし、給与が下がることで消費に回る余裕がなくなることも懸念される。

一方心の面で見れば、育児において利便性が高いとされ幼稚園制度・保育園制度に代わる在り方として分析されているが、発展途上の段階である。なお、日本では短時間正社員制度として一定程度導入されつつあり、労働効率の改善による従業員間の不公平感解消が課題となっている。

フランス・カナダにおける法定労働時間の変化を利用した研究では、法定労働時間が減少しても雇用量は変化せず、ワークシェアリングが雇用創出に貢献したという結果は得られていない[7]。また、日本においても、1988年-1997年にかけての法定労働時間の減少を利用した実証分析が行われ、法定労働時間の減少は実労働時間を減少させたが、月給・賞与は減少せず、時間当たり賃金が上昇したという結果が得られている[7]。さらに、新規採用が抑制される傾向も確認されている[7]


  1. ^ OECD Employment Outlook 2021, OECD, (2021-07), doi:10.1787/5a700c4b-en 
  2. ^ a b c d e f 世界経済の潮流 2002.
  3. ^ a b ワークシェアリングの現状と課題RIETI 2002年5月
  4. ^ a b c d 雇用危機:克服への処方箋RIETI 2009年2月18日
  5. ^ 【日本の未来を考える】東京大・大学院教授 伊藤元重 企業任せの雇用に転換点MSN産経ニュース 2009年3月7日(2009年3月10日時点のインターネットアーカイブ
  6. ^ Productivity, labour demand, and employment Nick Rowe, Worthwhile Canadian Initiative
  7. ^ a b c 労働時間改革:日本の働き方をいかに変えるかRIETI 2009年4月2日
  8. ^ a b c d e f g h i j 権丈 英子「オランダの労働市場 (特集 この国の労働市場)」『日本労働研究雑誌』第60巻第4号、労働政策研究・研修機構、2018年4月、 48-60頁、 NAID 40021529444
  9. ^ 平成15年度 内閣府 国民生活白書 オランダ パートタイム労働者の均等待遇
  10. ^ 横浜市立大学 永岑研究室 EUの雇用戦略 〜オランダでの成功例〜
  11. ^ 神樹兵輔 『面白いほどよくわかる 最新経済のしくみ-マクロ経済からミクロ経済まで素朴な疑問を一発解消(学校で教えない教科書)』 日本文芸社、2008年、220頁。
  12. ^ 野口旭 『「経済のしくみ」がすんなりわかる講座』 ナツメ社、2003年、144頁。
  13. ^ 総務省労働力調査
  14. ^ 社会ニュース 2/2 経済キーワード【ワークシェアリング】All About 2002年1月3日
  15. ^ 労働者の「敵」か「味方」か ワークシェアリングの素顔」J-CASTテレビウォッチ 2009年3月10日
  16. ^ ワークシェアで雇用維持、経団連会長「一つの選択肢」 ―YOMIURI ONLINE(読売新聞)


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