アンコウ アンコウの概要

アンコウ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/17 16:24 UTC 版)

アンコウ
ニシアンコウ(アングラー)
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
上綱 : 魚上綱 Pisciformes
: 硬骨魚綱 Osteichthyes
: アンコウ目 Lophiiformes
: アンコウ科 Lophiidae
学名
Lophiidae
Rafinesque, 1810
英名
Monkfish
Goosefish

4属25種

本文参照
生きた「キアンコウ」はアクアワールド・茨城県大洗水族館「深海の海ゾーン」などで見る事が出来る。

「アンコウ科」と結果的同義と言える英語としては goosefishmonkfish があり、日本語「アンコウ」の第1義とも同義と言える。英語には anglerfish という語もあるが、こちらはより広く「アンコウ目」および日本語最広義の「アンコウ」と同義と言える。

分類

アンコウクツアンコウ
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: アンコウ目 Lophiiformes
: アンコウ科 Lophiidae
: アンコウ属 Lophiomus
T. N. Gill, 1883
: アンコウクツアンコウ
L. setigerus
学名
Lophiomus setigerus
Vahl, 1797
和名
アンコウクツアンコウ
英名
Blackmouth angler

アンコウ類はタラ類の近縁にあたる[2]。アンコウ目は16科300種ほどであるが漁業資源となるのはアンコウ科に属するものだけである[3]。アンコウ科には25種ほどが含まれ、すべてが海水魚で、そのほとんどが深海魚である。以下は主に食用にされるアンコウ類。

キアンコウ(ホンアンコウ) Lophius litulon
メスは尾びれの根元までの体長 1.0mから1.5m程。オスは50cm前後太平洋北西部(日本、朝鮮半島、東シナ海)の水深500m程までの深海に生息。なお、一般にはキアンコウの別称として「アンコウ」あるいは「ホンアンコウ」と呼ばれることがある[4]
アンコウクツアンコウLophiomus setigerus
全長40cm前後。インド洋、太平洋の全域の水深500m程までの深海に生息。キアンコウの口中は白っぽいのに対して、クツアンコウの口中は黒地に黄白色の水玉模様という特徴がある[4][5]

ヨーロッパで主に食べられるアンコウはアングラー、北アメリカで食べられるアンコウは、アメリカンアングラーと呼ばれ、いずれもキアンコウと同じキアンコウ属 ( Lophius ) に含まれる種である。

アングラーニシアンコウLophius piscatorius
体長2m、体重60kg近くになる。大西洋東岸(バレンツ海西南部からジブラルタル海峡まで)、地中海、黒海の水深1000mまでの深海に分布。
アメリカンアングラー(アメリカアンコウ) Lophius americanus
全長1.2m、体重20kg。大西洋西岸(カナダ、ケベック州から米国フロリダ州まで)の水深100mまでの海底に分布。

特徴

日本では、キアンコウ(ホンアンコウ)とアンコウ(クツアンコウ)が主な食用の種である。両種は別の属に分類されているが、外見は良く似ている。そのため、一般に市場では区別されていない[4][5]。外見的な特徴は頭部が大きく幅が広いこと。体は暗褐色から黒色で、やわらかく平たい。

分布

北極海太平洋インド洋大西洋地中海に生息する。

生態

アンコウは水深30m-500mの砂泥状の海底に生息する[5]。手足のように変形したヒレで海底を移動する。このことから、アンコウ目の魚類全体に対して底生生活のイメージが持たれているが、アンコウ目のうちチョウチンアンコウなどは深海域の150m-2500mの中層域に生息し[6]ハナオコゼのように表層に分布するものもある[6]

擬餌状体という誘引突起による待ち伏せ型の摂餌法をとる魚である[5]。肉食性で、口が大きく、歯が発達している。海底に潜んで他の魚を襲うのに適するため、口はやや上を向いている。頭には2本のアンテナ状の突起があり、長い方には皮がついている。アンコウは泳ぎが下手なため、泳ぎの上手な魚を追い回しても逃げられてしまう。そこで、海底の砂に潜り、その突起の皮を水面で揺らし、これをエサだと思って寄ってきた魚を、丸呑みにして捕食する。突起の皮は擬餌針のような働きをする。

アンコウは主に小魚やプランクトンを捕食するが、種によっては小さなサメスルメイカカレイウニなどを捕食するものもある。さらに、たまに水面に出て海鳥を襲うこともあり、食べるために解体したら胃の中にカモメウミガラスペンギンなどが入っていたという報告もある。

体長は大きなもので2m近く、重さも60kg近い種(ニシアンコウ)もある。

アンコウ目の魚類には雌雄差がある[7]。アンコウのメスはオスよりも早く成長し体が大きく寿命も長い[8]。チョウチンアンコウ科に属するチョウチンアンコウではメスの体長が60cm程度なのに対してオスの体長は4cmに満たない。ただ、アンコウ科に属するアンコウは雌雄ともに大きくなる[6](東シナ海のキアンコウのオスは8歳にもなると全長55cm・体重2kgにも達する[8])。また、アンコウ目のうちヒレナガチョウチンアンコウ科、ミツクリエナガチョウチンアンコウ科、オニアンコウ科など一部ではオスがメスに寄生する習性を持つ[6]。なおキアンコウなどアンコウ科に属する種はそのような習性は見られない[9][6](ちなみにチョウチンアンコウ科に属するチョウチンアンコウもメスに寄生しない[6])。また産卵時期などにオスのキアンコウがメスに捕食されるケースがある。

名古屋港水族館でキアンコウの産卵シーン撮影が成功している[10]


注釈

  1. ^ 誤解の生じない正確な解説を試みるならば、日本人が古来「あんこう」と呼んできた「口が極めて大きく、大体にして平べったい、海の底や深い所にいる魚」の一群は、分類学が科学的に分類する「アンコウ科」という一群と結果的同義であったので、近現代の日本人はそれを日本語の第1義としている、ということ。加えて、日本語「あんこう」は、より大きな分類群である「アンコウ目」とも結果的同義であったので、近現代の日本人はそれを日本語の第2義としている。その一方で、“食用”という完全な人為分類による括りである日本語第3義は、分類学による科学的分類と一致する道理が無い(一致するなら、それは単なる偶然でしかない)。
  2. ^ 2012年(平成24年)における青森県のアンコウ水揚げ量は約500トンであり、そのうち約80トンが風間浦村にある下風呂・易国間・蛇浦の漁港で水揚げされる[14]

出典

  1. ^ 講談社 2002, p. 34.
  2. ^ 上野・坂本 2004, p. 120.
  3. ^ 上野・坂本 2004, p. 121.
  4. ^ a b c d e f g h i j k 講談社 2002, p. 35.
  5. ^ a b c d 上野・坂本 2004, p. 122.
  6. ^ a b c d e f 上野・坂本 2004, p. 124.
  7. ^ 上野・坂本 2004, p. 125.
  8. ^ a b c おさかな瓦版 No.39 シリーズ:三陸のさかなたち 第6回 キアンコウ (PDF) - 独立行政法人水産総合研究センター
  9. ^ 『深海生物ファイル』北村雄一著 2005年 ネコ・パブリッシング発行 p.184
  10. ^ 12月7日に観察されたキアンコウの産卵について”. 名古屋港水族館 (2010年1月3日). 2013年1月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年12月1日閲覧。
  11. ^ a b フリーランス雑学ライダーズ編『あて字のおもしろ雑学』 p.47 1988年 永岡書店
  12. ^ 沖森卓也ほか『図解 日本の文字』三省堂、2011年、52頁
  13. ^ a b c d テレビ東京『食彩の王国』第664回「鍋の定番! 津軽海峡あんこう物語」2017年1月28日放送回中「食材のリスト」。
  14. ^ 特集:あおもりの旬2014年1月号 風間浦村「風間浦鮟鱇(かざまうらあんこう)」”. 青森のうまいものたち. 青森県農林水産部総合販売戦略課. 2015年5月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年4月2日閲覧。
  15. ^ a b c 風間浦鮟鱇”. 風間浦村. 2017年1月28日閲覧。
  16. ^ 風間浦鮟鱇まつり(2017年12月21日閲覧)
  17. ^ 【食 旬な産地】山口・下関漁港/冬のアンコウ 大きな肝/水揚げ量日本一、ブランド化でPR『読売新聞』朝刊2017年12月20日(くらし面)
  18. ^ あんこう下関市ホームページ(2017年12月21日閲覧)
  19. ^ 文部科学省 「日本食品標準成分表2015年版(七訂)
  20. ^ 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2015年版)
  21. ^ 五訂増補日本食品標準成分表
  22. ^ 五訂増補日本食品標準成分表 脂肪酸成分表編
  23. ^ a b 本山 1958, p. 23.
  24. ^ 東京都中央卸売市場築地市場東都水産株式会社 2013年1月
  25. ^ a b c d e f g h おさかな雑学研究会 『頭がよくなる おさかな雑学大事典』 p.202 幻冬舎文庫 2002年
  26. ^ 市場における輸入アンキモのアニサキス亜科線虫の感染状況 - 国立感染症研究所
  27. ^ 佐藤祥子『相撲部屋ちゃんこ百景 とっておきの話15』河出文庫 2016年 ISBN 978-4309414515
  28. ^ 食の情報館 〜魚のさばき方〜 あんこう(鍋物)”. 東京都中央卸売市場. 2012年10月27日閲覧。
  29. ^ 「雪中切り」に大歓声/ゆかい村鮟鱇まつり”. デーリー東北 (2012年2月7日). 2012年2月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年10月27日閲覧。
  30. ^ 『ゆかい村鮟鱇まつり』最新情報” (PDF). 風間浦村. 2016年5月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年10月27日閲覧。
  31. ^ 鮟鱇(あんこう) 常陸路冬の風物詩”. よかっぺ大洗. 大洗観光協会. 2016年11月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年4月2日閲覧。


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