アラブ首長国連邦
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経済
2015年のGDPは約3391億ドルであり[23]、九州よりやや小さい経済規模である[24]。一人当たりGDPは3万5392ドルである[22]。2016年のGDPは約3487億ドルであり[25]、大阪府よりやや大きい経済規模である[26]。同年の一人当たり国民総所得(GNI)は4万480ドルでベルギーに次ぐ世界第19位となっている[27]。
かつては沿岸部の真珠採集と、ドバイやシャールジャなどでおこなわれていたわずかな中継貿易、それに北部諸首長国で行われた切手の発行(コレクター向けに発行されたもの。現地の郵便に使用可能ではあったが、郵便規模に比べてあまりに種類が多かったためコレクターからの顰蹙を買い、土侯国切手と称されている)がわずかな収入源であった。その真珠採集も1920年代の日本の養殖真珠の成功により衰退し、ますます経済活動が縮小していたが、1960年代後半にアブダビでの石油産出が本格化して以降、経済構造が一変した。
GDPの約40%が石油と天然ガスで占められ、日本がその最大の輸出先である。原油確認埋蔵量は世界5位の約980億バレル。天然ガスの確認埋蔵量は6兆600億m3で、世界の3.5%を占める。一人当たりの国民所得は世界のトップクラスである。原油のほとんどはアブダビ首長国で採掘され、ドバイやシャールジャでの採掘量はわずかである。アブダビは石油の富を蓄積しており、石油を産しない国内の他首長国への支援も積極的におこなっている。
石油が圧倒的に主力であるアブダビ経済に対し、ドバイの経済の主力は貿易と工業、金融である。石油をほとんど産出しないドバイは、ビジネス環境や都市インフラを整備することで経済成長の礎を築いた。1983年にジュベル・アリ港が建設され、1985年にはその地域にジュベル・アリ・フリーゾーンが設立された。ジャベル・アリ・フリーゾーンには、外国企業への優遇制度があり、近年、日本や欧米企業の進出が急増して、物流拠点となっている。オイルショック後オイルマネーによって潤うようになった周辺アラブ諸国であるが、それら諸国には適当な投資先がなく、自国に距離的にも文化的にも近く積極的な開発のおこなわれているドバイに余剰資金が流入したのが、ドバイの爆発的発展の原動力となった。それ以外にアルミニウムや繊維の輸出も好調である。アルミ工場は石油や電力の優遇措置を受けているため極めて安価なコストでの生産が可能であり、主力輸出品の一つとなっている。また、貿易、特にインド、イラク、イランに向けての中継貿易の拠点となっている。
数値的にはアラブ首長国連邦の石油依存度は低いように見えるが、連邦の非鉱業部門の中心であるドバイの商業開発や産業はアブダビや周辺諸国のオイルマネーが流れ込んだ結果であり、アルミ部門のように原料面などでの支援を受けているものも多く、石油無しで現在の状況を維持しきれるとは必ずしもいえない。本質的には未だ石油はこの国の経済の重要な部分を占めている。
なお近年は、ドバイのみならず国内全体において産業の多角化を進め、石油などの天然資源の掘削に対する経済依存度を低め、東南アジアにおける香港やシンガポールのような中東における金融と流通、観光の一大拠点となることを目標にしている。また、特にドバイにおいて近年は観光客を呼び寄せるためのリゾート施設の開発に力を入れており、世界一高いホテルであるブルジュ・アル・アラブの建設、「パーム・アイランド」と呼ばれる人工島群、2010年に完成した高さ828メートルと世界一高い建造物であるブルジュ・ハリーファなど、近年急速に開発が進んでおり、中東からだけでなく世界中から観光客を引き寄せることに成功している。この成功を見たアブダビやシャールジャなど他首長国も観光に力を入れ始め、豪華なリゾートホテルや観光施設の建設が相次いでいる。
また、食糧安保のために農業にも多大な投資をおこなっている。デーツなどを栽培する在来のオアシス農業のほかに、海水を淡水化して大規模な灌漑農業をおこなっており、野菜類の自給率は80%に達している[28]。
アラブ首長国連邦の企業
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- ^ “「歴史的」と言われたイスラエルとUAEの急接近、トランプ氏だけの成果ではなかった” (2021年2月12日). 2021年2月28日閲覧。
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- ^ IMF2016年1月2日閲覧。
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- ^ 「アラブ首長国連邦」外務省
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- ^ 「1.2 名目GDP(国内総生産)及び一人当たりGNI(国民総所得)順位」外務省
- ^ 細井長編著『アラブ首長国連邦(UAE)を知るための60章』(明石書店 2011年3月18日初版第1刷発行)p.263
- ^ Top 10 Popular Sports in United Arab Emirates (U.A.E) neoprimesport.com 2019年7月18日閲覧。
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