ドラマ終了後の構想
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あくまでもドラマが続いた場合の倉本聰の構想であり、映像化並びに書籍として活字出版化されている訳ではないので注意が必要。 北の国から1900。北の国からのルーツを探る物語。徳島から北海道静内へ蜂須賀藩の家臣稲田家は移住してくる。ドラマでは一行が襟裳岬のほうに流されその末裔が黒板五郎の一家。黒板一家は山道をたどって富良野まで来る。川のほとりに家を造るが下流にもう1軒別の一家(白濱家)が住んでいた。黒板一家はその上流に家を構えたために水争いが起き、両家は対立して険悪になる。そんな中で黒板一家の息子と川下の家にいる娘が恋をする、という話を倉本は考えていた。 92巣立ちの他に「92成人」「92卒業」とする別タイトル案もあった。また杉田によると「秘密」の前に一つ幻の脚本があり、シュウと五郎の恋愛話だった。純は物語に関係なく、さすがにちょっとこれはということになって撮影が見送られた。そのため「秘密」ではシュウと五郎の仲睦まじいシーンが多数描かれている。 2002年冬、純と結は結婚。麓郷を離れ富良野市麻町の2DKアパートで暮らす。結婚式には五郎、雪子、トドのみ招待した。披露宴は行わず、埼玉にいる螢と正吉には「お金が掛かるから来ないで良い」と言った。中畑、シンジュク、成田、クマも式には呼ばなかった。中畑和夫は2004年に再婚。五郎はみずえの遺言にあった拾ってきた家を雪子の家の隣に建てるが、純と結は中畑より「あの家は純たちにいつか麓郷へ戻って欲しくて建てているんだ」と真実を知らされ二人は号泣する。 2002年6月13日、純と結は結婚。同年12月24日、栃木県宇都宮に住んでいる正吉宅より、快が五郎に会いたくて一人で寝台特急北斗星に乗ってしまう。二人は捜索願提出。翌25日、札幌駅で警察が無事快を保護。快が持っていた絵葉書の住所から五郎の元に連絡が届き、五郎は涙に咽ぶ。同月31日、正吉、螢は富良野へ快を迎えに行く。翌2003年1月1日、正吉は螢に内緒で五郎へ家を建てて欲しいとお願いをする。 純と結は結婚し富良野市内に居住。麓郷で一緒に暮らして欲しいという五郎と町で暮らしたいという純は意見が対立しているが、結と五郎は懇意であるという。 2006年12月11日、その後のシナリオで登場する「純と結の家」が富良野に完成する。黒板五郎が息子の純と結夫婦のために建てたという設定。倉本は集まった約50人の前で、最終章「遺言2002」から「純と結の家」完成までのシナリオを朗読した。 2007年のインタビューで倉本は続編を作る意欲を持ち、筋も考えていると答えた。純は結と離婚して初恋相手のれいと再婚し、螢と正吉も離婚する。その後は螢の息子の快を主役に発展させる構想とした。 2009年、杉田によると「2015年くらいになったら装いを新たにした『北の国から』があるかもしれない。倉本さんもそれからの『北の国から』を書いている」と述べている。 倉本は2011年に刊行した『獨白 2011年3月』において、新作を最近書かないかと言われたが、諸般の事情で流れたと述べている。倉本がそのとき考えかけたプランでは、純は富良野におらず結と離婚して東京に出てゴミの仕事か何かやっている。親爺のことは想っているけど五郎へ仕送りはしていない。螢は正吉と関東におり、五郎にもマメに仕送りはするが仕事が忙しく滅多に富良野に顔は出さない。五郎はときどき中畑が見舞うがほぼ「無縁社会の独居老人」となり、税金をずっと払っていないため年金も受け取っておらず「国の世話にならず、自然の世話になっている」毅然とした独居老人の姿を書いてみようとちょっと思って止めたと倉本は述べている。 2011年5月の富良野での「北の国から」広場オープンの倉本のスピーチによると、五郎は麓郷の石の家に住んでいる。純は妻に逃げられ、羅臼でトドの手伝いをしたり、埼玉でゴミ処理の仕事をやっていた。そこに2011年3月東日本大震災が起きる。福島県のいわき市に住んでいた正吉一家は災害に巻き込まれ、子供を助けようとした正吉が津波にのまれて死亡。螢は生き残った快を麓郷の五郎のもとに預け、福島で看護師としてボランティア活動を行っている。純も螢と共に福島で災害復興の仕事に従事している。 2011年8月、倉本と大根仁、Boseのラジオでの対談によると、正吉は津波に流されて死亡。螢は中一になる快を五郎の所へ送り、看護師としていわき市で働いている。純は埼玉でごみ処理を行っていたが正吉の死にショックを受け福島で瓦礫の整理(ママ)に従事している。五郎は快と二人暮らしをしているが、税金も払っていないため国の世話にはならず金も持たず物々交換で生計を立てている。役場の人が来ると隠れて逃げてしまう。純と結はあっさりと離婚したと答えている。同年9月、富良野での「『北の国から』放映30周年記念中嶋、竹下、倉本のトークショー」によると、純は埼玉でごみ収集をしていたが震災後福島で原発事故の孫請けとして働き、螢はいわき市で看護師としてボランティアを行い、快は麓郷で五郎とともに石の家に住んでいる。雪子は恋をしていると倉本は語った。 2012年2月に発売された雑誌『文藝春秋』2012年3月号で倉本は「頭の中の『北の国から』―2011『つなみ』」と題した現時点での登場人物の「その後」について触れた文章を寄稿した。この中では以下のような内容が記されている。富良野の町は、駅前が再開発で大きく変わり、旭川から帯広へ向かう広規格道路が北の峰の地中を貫通しかけている。町はドーナツ化現象が進み、マクドナルドやケンタッキー、レンタルヴィデオ屋(ママ)のゲオやホーマックの進出で外郭道路周辺に町の中心が移って来つつあった。 正吉・螢一家は2004年から浪江町に移住し、正吉は浪江町消防署勤務、螢は南相馬市の南相馬市立総合病院で看護師として働いていたが、東北地方太平洋沖地震のため、病院では「地方に避難するか病院に残るかは職員各自の自主判断に任せる」という苦渋の選択をする。当直明けの螢は、早朝、ベットに眠っている患者に握り飯二つをそっと置いて誰にも告げず息子の快とともに2日間掛けて鉄道で富良野へ避難する。螢は患者や正吉のことを心配していたが、正吉が行方不明と知り快を残して福島県に戻る。瓦礫の中を正吉を求めて半狂乱で彷徨い、何日か目に正吉を捜していた純とばったり出逢う。 純は結と2003年に結婚し、五郎と共に石の家に住んでいた。その後、麓郷の町の中へ二年がかりで建てた拾ってきた家に住むも2006年に離婚。出ていった結を純は狂ったように探すも行方は分からなかった。純はごみ収集職員として働きながら借金を返済していたが、2007年の大晦日三沢のじっちゃんが亡くなり、伝え置きにより返済から解放される。ごみ収集職員としての日常をブログに綴っていたところ、読者の一人がれいだと判明。メールによる交流が始まる。2年前に離婚し東京で暮らすれいと7年ぶりに再会する。恐る恐るれいのアパートへ招かれた時、東北太平洋沖地震に遭遇。正吉一家とは連絡が取れず、五郎にも連絡ができない。福島県に赴き瓦礫の山の中で黙々と正吉の遺体を探しているところで螢と再会する。その後、福島第一原子力発電所事故に伴う放射能飛散が懸念されながらも、原発現場の瓦礫処理の下請け作業員の末端として危険な現場に身を置いている。他の登場人物は次の通りと答えている。 五郎・・・喜寿を迎えた。 快・・・浪江町第一中学校へ進学。富良野へ避難後は、五郎の過激な愛情に不潔さと不気味さを感じている。富良野を一人で脱出しようとするが、福島は限界区域(ママ)に指定されていた。 雪子・・・麓郷在住。拾ってきた家に住んでいる。 中畑和夫・・・再婚。生協で妻を伴ってワゴンを押しながら人参を選んでいる。 シンジュク・・・町の電気屋を続けている。 たま子・・・鹿児島県種ケ島在住。二児の母。 結・・・純といくつかのいさかいの挙句に突然消えてしまう。離婚後はトド(高村吾平)と羅臼で暮らしている。 シュウ・・・帯広の豆腐屋に嫁ぐ。五郎には父親の感情を抱いており、盆暮れには必ず顔を出している。 涼子先生・・・遠軽在住。 成田新吉・・鉄工所を息子の代へ今年(2012年か)渡した。 大里れい・・・銀座のバーに勤めているが原宿の一間きりの質素なアパートに暮らしており、地味で清楚な暮らしを送っている。コードネーム「メリー」として純のブログの読者となっている。華やかな衣装に毎晩身を包んでいる自分よりも、未だにゴミにまみれて生きている純の姿を眩しく見ている。 倉本は2015年のインタビューで『北の国から』の続編を、福島を舞台に描く構想があると答えた。同年中村敏夫の葬儀・告別式で、倉本は新作/次回作を構想し、プレゼントしようとしていた幻の企画書を棺の中へ入れた。内容については話さないとした。同年秋、五郎は富良野へ戻ってきたこごみと再び付き合い出す。こごみは60近くなっている。このことは中畑和夫や雪子、地元の人も知っているという。 2017年2月より発売された『「北の国から」全話収録DVDマガジン』において、倉本スペシャルインタビュー及び記者の黒板五郎インタビュー(脚本・倉本)では以下のようなことが述べられている。五郎は現在でも恋をしており、若い女性に風車を作ってやったり本棚を直してあげている。ただし、アッチの方はダメになった模様。「遺言」から15年後の五郎へのインタビューによると、老年期障害のせいで耳が遠くなり目もかすみ自分の年齢も82歳か85、86歳か分からなくなっている。記者からもらったバイアグラを服用していたが現在では勃たなくなった。本人曰く「看護度(ママ)は1」とケアマネージャーから言われている。中畑和夫は妻に先立たれた後再婚したもののボケてしまい、その2年後にクルマで高速道路を逆走し交通事故に遭って死亡。この事故は新聞記事にもなった。正吉は2011年3月11日の東日本大震災で津波のため亡くなり、場所は磐城(いわき市でなく磐城)と述べている。こごみはへそ歓楽街で小さな居酒屋を営んでいる。スナック駒草ではないとしているものの「巣立ち」の時のスナック「こごみ」なのかは不明。現在五郎が住んでいる石の家や土地はほとんど中畑の土地であると述べており、五郎自身が亡くなった場合は純たちへ相続せず自然へ返すとしている。中畑家へ土地を返すかどうかについては触れていない。また五郎は初期認知症が進行している。 2019年の倉本の著作『テレビの国から』によると、新しく書きかけた話として「蛍の息子の決が家出して五郎へ会いに富良野へ行くという話で五郎は狂喜する。他のレギュラー陣は登場しないおじいちゃんと孫のみのストーリーだった。残念ながらドラマ化は実現しなかったがいつでも復元できる」と語っている。もし新たに脚本に生かすとしたらシュウちゃんだが、僕(倉本)は結が好きだった。れい派シュウ派でいえば、れい派。シュウだといつかひずみが来そうな気がする、と述べている。 2021年4月25日放送フジテレビ「ボクらの時代」では、吉岡秀隆が「去年、(倉本から)電話があって北(の国から)の続編をやりたがっていましたよ。構想は先生の中ではいろいろあるみたいで」と明かした。同年4月、麓郷へ田中邦衛の献花に訪れた倉本は「邦さんは死んだが五郎さんはまだ生きている。(放送開始から)40年の月日がたったが、まだ続きを書き続けているような気がしている」と語り、「富良野を歩いていても、五郎から『よぉー』と肩をたたかれそうな気がするんだ」と盟友との別れを惜しんだ。追悼の続編については「いろいろ考えたんだけれども、頭の中だけにしておこうと思う」とも述べている。 2021年10月9日に富良野で行われた「追悼田中邦衛さん、北の国から40周年記念トークショー思い出せ!五郎の生き方」で、倉本は新作『北の国から2021 ひとり』を発表した。2002年、螢と正吉は息子の快と共に福島県へ移住。2003年富岡町の夜ノ森に家を借り、正吉は富岡町の消防署、螢は診療所に勤め始める。2009年に初めての正式な二人の子長女・さくらが誕生。孫の誕生に五郎は狂喜して居座るが、純に強制的に北海道へ連れ戻される。 2010年、純の妻である結が勤め先のコンビニの店長と不倫をして離婚する。このころ快は趣味でチェロを始める。 2011年3月11日、東日本大震災で消防職員の正吉は人を助けようとして津波に巻き込まれ行方不明となる。翌12日、原発が爆発して全員避難、帰宅困難地域のため正吉を探すことができない状況となる。螢は二人の子を連れていわき市に移住。病院では婦長(ママ)に昇任する。 2014年に避難地区が解除される。五郎は必死になって正吉の手掛かりを探すが純は「もうあきらめよう」と説得。富良野に連れて帰る。高校生になった快は医大を希望するようになり前述の音楽といい徐々に実の父親の血が見られ始める。 2018年、五郎は癌の疑いで病院に検査入院する。そこで熊撃ちの「山おじ」と呼ばれる爺さんと出会うが、その相手は高校時代に二宮サチコという美少女を五郎と争ったことのある喧嘩仲間だった。二人は意気投合し付き合いを再開する。五郎は「犬を一匹だけ飼っている。嫁さんは死んだ」と笑いながら話す。サチコは独身で、年をとっても八千草薫に似て美人だった。しかし認知症が進行し、特別養護老人ホームに入院していたものの山おじが連れ出して小屋に住まわせていた。サチコは「死ぬときは山の中で死にたい。その時はお願い」と昔山おじと指切りをしており、その約束を果たすためだった。山には3つあり、人が生活し山の恵みを受ける里山。第2が熊など動物が生活する山。第3が誰も入れない聖域の山。この第3の山の穴の中にサチコを置いてきたと山おじは言う。このことに五郎は大きく心を動かされる。 2020年、新型コロナが流行。螢は病院、純は札幌で病院から出る感染性廃棄物を回収し、焼却施設に運ぶ仕事をしており、忙しさから純も螢も五郎と連絡が取れないでいた。そんな時、純は札幌でシュウと再会。シュウは神戸での結婚生活に破れ札幌に戻り、居酒屋で働いていることろでばったり純と再会。バツイチ同士の純とシュウは再び付き合うこととなる。シュウは昔から五郎と仲が良かったため、純の代わりに五郎の様子を見に行くことになる。シュウが石の家に着くと中から五郎の話し声が聞こえていた。誰と会話しているのか分からないまま外で待っていたものの、あまりにも長いのでそっと家へ入ってみると五郎がひとりで令子の写真と会話していることに気付く。シュウは五郎と顔を合わせる。シュウは札幌へ戻ると五郎の「最近、夢を見た。山で、ものすごく大きな角を持った真っ白なシカに会った。そのシカが夢の中でおいらに言った。みんなひとりじゃないって。あれはカムイの使いだ」との聞いた言葉を純へ伝える。 純も螢も忙しく手段もないためまともに連絡が取れないまま時が過ぎる。2021年3月、あまりにも不安になった純はシュウと二人で石の家に行く。そこで「純様、螢様、おいらの人生もう終わる。探しても無理。探索無用。おいらのことならほっといて」との書置きがあるのを見つけ大騒ぎとなる。石の家では令子の写真だけが無くなっていた。捜索中、純は山おじと出会う。山おじは「五郎は山に入った。お前らに行くのは無理だ」と言って場所を教えない。純は「自分たちが父親を放置したために死なせた」という思いにかられて、螢に涙ながらに電話をする。 五郎は一人で山に入って亡くなり、遺体を動物に、骨を微生物に食わせて「自然に還ったのだ」と察する。その晩、石の家に泊まった純とシュウは大きな真っ白い雄鹿と出会う。雄鹿は、石の家をじっと見つめた後、ゆっくりと向きを変え、森の奥へと消えていく。この時純は「一人じゃない」という言葉を聞いた気がした。この物語の終焉は2021年3月24日、田中邦衛さんが亡くなった日であろうと思われる――。
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