同日・同月
『王子と乞食』(トウェイン) 16世紀の半ば過ぎのある秋の日、ロンドン市中の貧しい家で、トムは泥棒を父親、乞食を母親として生まれた。同じ日、同じロンドンの宮殿では、国王ヘンリー8世の息子エドワード王子が生まれた。2人は10余年後の冬に出会い、1月下旬から約1ヵ月間、王子が乞食に、乞食が王子に入れ替わって過ごした。
『神道集』巻8-46「釜神の事」 甲賀郡由良の里の東西2軒の家に、同日同時に女児・男児が誕生する。女児は福運、男児は貧運を持って生まれてきた(*→〔枕〕1a)。男児の父親である百姓が、「きっと2人は、冥途から娑婆へ来る中有(ちゅうう)の間、道づれで来たので、契りが深いのだろう」と言って、2人を許婚(いいなづけ)にする。2人は成長後、夫婦となるが、やがて離婚する。
『炭焼き長者』(昔話)「再婚型」 東(あがり)長者の家で女児が、西(いり)長者の家で男児が、同じ日に誕生する。女児は福運、男児は貧運を持っており(*→〔枕〕1a)、2人は18歳の年に結婚する。しかし男が横暴だったので、女は家を出る(鹿児島県大島郡。*その後女は、「炭焼き五郎は働き者だ」との神様のお告げを聞き、五郎の小屋を訪ねてその妻になる→〔再会(夫婦)〕4)。
『ダンマパダ・アッタカター』 ウパティッサ村に住むバラモンの妻サーリーと、隣のコーリタ村に住むバラモンの妻モッガリーが、同じ日に子供を身ごもる。10ヵ月後、サーリーから生まれたのがサーリプッタ(舎利弗)であり、モッガリーから生まれたのがモッガラーナ(目連)である。
『日本書紀』巻11〔第16代〕仁徳天皇元年(A.D.313)正月 応神天皇の子仁徳天皇と、武内宿禰の子木菟宿禰とは、同じ日に生まれた。また、誕生にあたって両者の産殿に木菟(ツク)と鷦鷯(サザキ)がそれぞれ飛びこむという瑞兆があった。
★1b.同日に誕生する人と馬。
『千一夜物語』「警察署長たちの物語」マルドリュス版第952夜 サルタンの王子が誕生した日、王の厩舎でも血統正しい牝馬が子馬を産み落とした。サルタンは、子馬を王子の所有とする。後に、この馬は王子の命を救う。
佐久の生駒姫の伝説 佐久地方の領主望月氏に姫君が誕生したのと同じ日に、領内の御牧に月毛の名馬が生まれた。そのため姫君は「生駒姫」と名づけられた。月毛は生駒姫の乗馬と定められ、姫は牧の内を駆け回って遊んだ。やがて月毛は、生駒姫を恋い慕うようになった(長野県北佐久郡望月町望月)→〔難題〕3a。
『オーメン』(ドナー) 外交官ロバートの息子は、6月6日午前6時に生まれたが、すぐ死んでしまった(*実は、悪魔の手先によって殺された)。悲しむロバートに、1人の神父が近づいて、「ここの病院で、同日同時刻にもう1人赤ん坊が生まれ、母親は死んだ。その子を養子になさい」と勧める。ロバートはその子をダミアンと名づけ、自分の子として育てる。しかしダミアンは悪魔の子だった。
★2a.同日に死ぬ二人。
『大鏡』「伊尹伝」 太政大臣伊尹(これまさ)の息子は、代明(よあきら)親王の娘の腹に、前少将挙賢・後少将義孝がおり、華やかな存在であった。天延2年(974)に皰瘡(もがさ)が流行した時、2人とも罹病し、兄の挙賢は朝に、弟の義孝は同日の夕方に、死去した(ともに20代前半であった)。1日のうちに2人の子を亡くした母の心持ちは、どのようであったろうか→〔枕〕3。
『黄金伝説』143「聖フランキスクス(フランチェスコ)」 アッシジの聖フランキスクスが死んだ同時刻に、テラ・ラボリスのフランチェスコ会修院長アウグスティヌスが、病床で「聖人様、私もお供いたします」と叫んだ。修道士たちが不思議がると、院長は「フランキスクス様が昇天されるのが見えないのか」と言い、息を引きとった。
『かるかや』(説経) 苅萱道心は、83歳の8月15日午の刻、善光寺で往生を遂げた。高野山に修行する道念坊(石童丸)も、苅萱道心を実の父と知らぬまま、同じ日の同じ刻に63歳で往生を遂げた。
『三宝絵詞』中-1 聖徳太子とその妃は、同日に死去した。その日、太子の黒駒は草水を口にせず、太子の墓まで行って1度いななき、倒れ死んだ。また、太子がかつて衡山より持って来た経も、その日消え失せた〔*『今昔物語集』巻11-1に類話〕。
『百年の孤独』(ガルシア=マルケス) 双子のホセ・アルカディオ・セグンドとアウレリャーノ・セグンドは、少年時代瓜二つで見分けがつかなかった。2人はそれぞれ波乱の生涯を送り、初老期に達した頃、同日同時刻に病死した。埋葬の時も2人は間違えられた。
*伊勢の男と日向の男が、同日・同時刻に死ぬ→〔火葬〕1bの『伊勢や日向の物語』(書陵部本『和歌知顕集』所載)。
★2b.同日に死ぬ大勢の人。
『大鏡』「藤氏物語」 藤原冬嗣が、氏寺の興福寺に南円堂を建て、丈六の不空羂索(けんじゃく)観音を据えて、『不空羂索経』1千巻を写経供養した。この造仏・写経のおかげで、以後、藤原氏は栄えることとなった。供養当日には、藤原氏以外の他姓の上達部が大勢、亡くなった。これも造仏・写経の力だ、と世間の人々は言った。
★2c.同月の死。
『平家物語』巻6「祇園女御」 大納言邦綱は平相国清盛と仲が良かったが、そのためでもあろうか、清盛と同日に病みつき、同月に死去した。
『春琴抄』(谷崎潤一郎) 佐助は自らも盲目になりながらも(*→〔盲目〕2)、盲目の春琴の世話をし、2人は内縁関係のまま仲むつまじく暮らした。明治19年(1886)6月上旬、春琴は脚気にかかり、秋には重態に陥って、10月14日に心臓麻痺で長逝した。享年58歳であった。佐助はそれから21年後の明治40年(1907)10月14日、春琴の祥月命日に、83歳で死んだ。
『敵討義女英(かたきうちぎじょのはなぶさ)』(南杣笑楚満人) 舟木逸平は、息子茂之介が桂浅太郎との決闘の傷がもとで死んで以来、世をはかなみ、娘小しゅんに婿を取って出家しようと考えていた。しかし彼女は桂浅太郎の弟に討たれ、しかもその日は茂之介の命日にあたる日だった。「月こそ変われ、同じ日に2人の子を失うとは」と、舟木逸平は宿業を嘆いた→〔仇討ち〕2。
『小袖曽我薊色縫(こそでそがあざみのいろぬい)』(河竹黙阿弥) 春の夜、遊女十六夜(いざよい)と僧清心は入水心中をはかり、死にきれぬまま別れ別れになる。その夜、清心は寺小姓求女を殺すが、求女は十六夜の弟だった。十六夜は俳諧師白蓮の妾となるが、白蓮は清心の兄だった。再会した十六夜・清心が、めぐる因果の恐ろしさを知って自殺したのは、求女の1周忌の逮夜、すなわち2人の心中未遂から丸1年が立とうとする前夜だった。
*子供の死から1年後の同月同日→〔物狂い〕1の『隅田川』(能)。
*釈迦如来入滅の日と同じ2月15日→〔死期〕1cの『古今著聞集』巻13「哀傷」第21・通巻465話。
*聖徳太子薨去の日と同じ2月5日→〔死期〕1dの『日本書紀』巻22推古天皇29年2月。
『沙石集』巻9-8 文永年中(1264~75)、鎌倉で、某武士が2月18日申(さる)の時に、罪なき者の頸(くび)を切った。その怨みの報いであろうか、某武士は、翌年の同月・同日・同時刻に頸を刎ねられた。
★3b.殺人者が、人を殺してから七年目の同月同日に病死する、もしくは処刑される。
『鼠坂』(森鴎外) 小日向(こびなた)から音羽へ降りる鼠坂に、日露戦争後、成金の深淵氏が2階家を新築した。2月17日の晩、深淵氏は、新築祝いに招いた新聞記者小川に、かつて小川が中国大陸で土地の娘を犯して殺した体験を語らせた。それはちょうど、殺された娘の7回忌にあたる日だった。その夜小川は深淵邸に泊まり、寝床の中で幻覚を見て、脳溢血で死んだ。
『本朝二十不孝』(井原西鶴)巻2-2「旅行の暮の僧にて候」 勘太夫は、九歳の娘小吟にそそのかされて旅の僧を殺し、百両を奪う。ところが小吟が成長後、人を殺して姿をくらましたために、親勘太夫が牢に入れられ、「霜月18日死刑」と定まる。その日は旅僧を殺してからちょうど7年目、月も日もぴったり同じなので、「これも因縁」と、勘太夫は観念する〔*勘太夫の処刑後に小吟は出頭し、同様に処刑された〕。
*妹が姉を恨んで自殺する。1年後の同月同日に姉は病死する→〔蛇〕5aの『夜窓鬼談』(石川鴻斎)上巻「蛇妖」。
★3c.甲が乙を殺す。乙が死んだ日に丙が生まれる。丙は多年の後に甲を処刑する。
『子不語』巻13-317 徐冠卿は幼い頃、師父の周先生を毒殺した。徐は成人後、別件で訴えられ、刑部へひったてられる。取調べ官の楊景震を見て、徐は驚き、「周先生の件だ。自分は死ぬのだ」と覚悟する。楊景震は厳しく徐を尋問し、斬死の刑に処した。その後、ある人が、楊景震の誕生日=周先生の死んだ日だ、と気づく。楊景震は笑って、「そうだったのか。知っていれば助命してやったのに」と言った〔*周先生は死んだその日に、ただちに楊景震に生まれ変わった、ということであろう〕。
*死んだその日に、ただちに別人に生まれ変わる→〔老翁〕1dの『子不語』巻13-336、〔前世〕4eの『子不語』巻13-338、→〔転生〕5の『聊斎志異』巻6-240「餓鬼」・巻12-483「李檀斯」。
『三国志演義』第1回 中平元年(184)春、劉備・関羽・張飛の3人は、桃園で義兄弟の契りを結び、「我ら3名、同年同月同日に生まるることは得ざるも、願わくは同年同月同日に死せん」と誓った〔*しかし、そうはならなかった。建安24年(219)、まず関羽が孫権に斬られ、その2年後に張飛が部下に寝首をかかれ、さらにその2年後に劉備は病死した〕。
*同日に死ぬ3人の義兄弟→〔三人兄弟〕5の『三人吉三廓初買』。
『変身物語』(オヴィディウス)巻8 老夫婦ピレモンとバウキスは、「2人同時に死にたい」とユピテル(ゼウス)に願う。2人はユピテルの神殿の神官となるが、何年か後のある日、神殿の階段前に立って土地の昔話をしていた時、2人の身体から木の葉が出て来た。2人は「さようなら妻よ」「さようなら夫よ」と言葉を交し合って、そのまま2本の木になった。
「同月」の例文・使い方・用例・文例
- 1月の輸出は昨年の同月に比べ20%の増加だった。
- 1月の輸出は100億ドルと、同月としては最高記録になった。
- 人の死後,満1年目の同月日
- 人の死後,満1年目の同月日に行う仏教の行事
- 翌年の同月同日をもって1年とする数え方
- 「マシェリ」シリーズの3月の売上高は,前年同月の売上高の2倍だった。
- プリウスの売上高は,前年同月から2倍以上となった。
- 3月は,液晶テレビやプラズマテレビなどの薄型テレビの売上高は昨年同月から27.1%増えていた。
- ある自転車店のオーナーは,7月の店の売上高が昨年同月の売上高の2倍以上だったと話す。
- 今年2月,東京の築(つき)地(じ)市(し)場(じょう)では,中国産ハマグリの注文が昨年同月と比べて半分近くに落ち込んだ。
- 政府の推計によると,そのような改修に使用される窓の4月から7月までの出荷量は前年同月を大きく上回った。
- 2月に築地に入荷されたカツオは昨年同月の入荷量のほぼ3倍だった。
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