左右
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/28 03:14 UTC 版)
道具・機械に関する左右
道具や機械によっては、急須などのように右利き用に作られているものも多い。これについては利き手を参照されたい。
冷蔵庫では、左右どちらからでも開くドアを有するものが1954年に東芝から発売されている[1]。
スポーツにおける左右
各種レース
陸上のトラック競技は、左回りで行われる。これは利き足が右である人間が多く、その場合右足の方が左足と比べて地面を蹴る力が強いので、左回りの方が速く走れるためである。競馬のレースは、左回りのものと右回りのものの双方がある[2]。競艇では、船舶が右側航行であるのに合わせて、左回りでレースが行われる。
政治的・思想的立場と左右
政治的・思想的な立場を表すために右と左の語が用いられる場合がある。右(右翼・右派)は保守的・国粋的な立場を、左(左翼・左派)は急進的・革新的な立場をそれぞれ意味することが一般的である。この由来は、フランス革命時の国民議会で、議長席から見て、右に保守派、左に急進派のジャコバン党が座ったことである。左翼・右翼も参照。
文化と左右
文化によっては、左と右に優劣や貴賎の意味を持たすことがある。
古代インドの礼法では右回りを吉、左回りを不吉とした。インドを発祥とする仏教にも右旋を優位とする礼法が多く見られ、仏教圏の文化に影響を与えている[3]。また、古代中国では北辰信仰が盛んであり、北極星を中心に左旋回する天体の運行を人間の方位観に当てはめ、南面する天子を中心とした秩序を構成した[3]。
一方、老子や道教では「吉事尚左、凶事右」として主に左が貴ばれた。中国では時代によって左右の貴賎が変わり、時代順に周は左を貴び、戦国・秦・漢は右を、六朝・隋・唐・宋は左を、元は右を、明・清は左を貴んだ。これについて、左を賎しめ右を貴んだ時代は荒れ乱れた世が多く、「君子、居れば則ち左を貴び、兵を用うれば則ち右を貴ぶ」という老子の言葉の通りである、とする見方がある[要出典]。
奈良時代から平安時代にかけての日本は、中国の歴代王朝の中でも特に左を貴んだとされる唐の影響を強く受けていたため、当時の日本では右大臣よりも左大臣が貴い地位であった。
漢の時代の中国では、官吏を賎い地位に下げることを「左遷」と表現していた(『漢書』周昌伝)。現在の日本でも、会社員や公務員の地位を下げたり条件の悪い勤務地へ強制的に転勤させることを「左遷」(させん)と言うが、この言葉は現代中国語の語彙としては消滅している[4]。
建物・住居における左右
日本の国会議事堂は、建物は左右対称だが、建物の正面から見て左側が衆議院、右側が参議院である。
日本では、襖や障子は通常右側が手前になるようにはめ込む。引き戸やアルミサッシなどでも同様である。
舞台における左右
劇場の舞台では、演者と観客が対面する形での上演が多く、左右で方向を表すと混乱しやすい。
日本では、観客から舞台に向かって見たときの右側を上手(かみて)、左側を下手(しもて)と呼び、左右の語は使わない。
英語の表現では、この二つを"stage left"(上手)、"stage right"(下手)と呼ぶ。舞台上の演者から観客に向かって見る立場である。実際には、やはり混乱しやすいので、プロンプターが通常上手にいることから、"prompt"(上手)、"opposite prompt"(下手)という語も使われる。
衣服における左右
日本の着物は、現代では通常、男性用、女性用ともにその着物を着る者からみて右側の部分が手前となるように着付ける。これを、「右前(みぎまえ)」という。例外的に、死者に着せる和服のみは「左前(ひだりまえ)」に着せる。
これに対して、洋服では、男性用は「右前」、女性用では「左前」のものが一般的である。
食事における左右
日本の和食において、飯茶碗と汁茶碗は、食事をする者から見てそれぞれ左、右に配膳することとされる。また、焼き魚を皿に盛り付ける場合には、食事をする者からみて左側に頭を据えるものとされている。
洋食のテーブルセットは、通常、客からみて右側にナイフ、左側にフォークがセットされている。これはナイフは右手で、フォークが左手で用いるのが一応のマナーとされるからであるが、ナイフを置き、フォークを右手に持ち替えて食べることをアメリカン・スタイルと呼びマナー上も許容されている。
アラブなどイスラム教を信仰する地域や、インドなどヒンドゥー教を信仰する地域ではフォークやスプーンを用いず、直接食べ物を指で口に運ぶことが多いが、左手は不浄の手(用便の際に使用)とされ、食事の際には用いられない。
平城京、平安京・京都における左右
平城京や平安京では、東側は左京、西側は右京と呼ばれる。これは、北部にある御所において天皇は南むきに玉座に座るために、街の東側は左側に、街の西側は右側にみえることに由来する。現代の地図上の左右、つまり地図の北を上にしたときの左右ではない。現代の京都市の左京区、右京区は、平安京とは地域的にずれるがこれに倣ったものである。
しかしながら、京都の五山送り火には西と東に二つの「大文字」があるが、こちらは西側の大文字が「左大文字」と呼ばれる。
卜占と左右
占いや順位においては、左右に優劣をつけることが、様々な文化に見られる。
英語で「凶運な」を意味する“sinister”は、ラテン語の「左」sinistraに由来する。日本語にも、“sinister”の忠実な訳語として「左前」がある。なお、対義語で「右の」は "dexter" である。一方、中国では陰陽五行思想では左が陽とされ、太極拳や気功は左から始まる。
川の右岸と左岸
川下に向かって川を見た時、左側の岸を左岸、右側の岸を右岸と呼ぶ。今日ではこの慣例が定着している。
国名
イエメンのアラビア語国名「アル・ヤマン」は「右」を意味する「ヤマン」に定冠詞を冠するものである。メッカのカアバに向かって立つと、顔は東を向き、右手に砂漠とこの地方が広がる。したがってメッカ以南の地は、すべて「右側」と呼ばれた。やがて時代を経て、アル・ヤマンはイエメンだけ指すようになった[5]。
言語、表記、文字の左右
漢字の左と右
漢字の部首において偏(へん)は左に、旁(つくり)は右に位置する。
表記
日本語の表記方法としては、縦書きと横書きがあるが、縦書きの場合には、右列から左列に、横書きの場合には、左から右へと文字が綴られるのが標準である。戦前までは横書きを右から読むことが多かったが、これは1行1文字の縦書きであるとみることができる。また、縦書きを左から書くこともある。
世界には、横書きでも右から左に書く文字体系も、左から右に書く体系もある。
日本語における熟語
- 左右
- 日本語においては「左右」の語が、「将来・運命を左右する」など、善悪や成否に決定的に関わるほどの大きな影響の意味で用いられる例がある。これは熟語であり、左または右に単独での意味はない。
- 右に出る
- 日本語において相手より優れることを「右に出る」という言い方が使用される。例えば、「~の右に出る者はいない」とは、「~より優れる者はいない」「~が最も優秀だ」を意味する用句である。
- 最左翼・最右翼
- 日本語で「最左翼」には「最も劣った」、「最右翼」には「最も優れた」という意味も持つ。例えば、「優勝候補の最左翼」とは、「最も優勝しそうにない人」を意味する。これは、第二次大戦前の日本の士官学校において、成績が最上位の者を最も右に配置し、成績順に右から左に列べた事に由来する。
複式簿記
複式簿記の仕訳の表記においては借方を左側に、貸方を右側に書くように定められている。借方貸方の用語が類似していて混乱しやすく、また歴史的な語義が失われていることから、借方貸方という用語は単に左側右側を意味しているに過ぎない。
- ^ 阪本則秋、山本正和、藤井加奈子 (2006年). “冷蔵庫のコンセプトとキー技術” (PDF). 東芝レビュー. 東芝. p. 12. 2018年2月27日閲覧。
- ^ 大井競馬場は、現存する競馬場としては世界で唯一、左右両回りでレースが行われる。
- ^ a b 諏訪春雄、篠田知和基(編)、2009、「日本人の空間認識:南北線と東西線」、『天空の世界神話』、八坂書房 ISBN 9784896949414 pp.54-62.
- ^ 日中飛鴻「左遷」(1999年12月1日)
- ^ “イエメン共和国|東京都立図書館”. 東京都立図書館. 2021年3月3日閲覧。
- ^ “俗語辞典”. 日本放送協会 (2015年7月6日). 2018年1月27日閲覧。
- ^ “右側通行?左側通行?(1)-「車は左、人は右」と言われている歩行者の通行ルールは本当はどうなっているのか-”. ニッセイ基礎研究所 (2016年11月14日). 2018年1月30日閲覧。
- ^ “広報はにゅう 2016年5月1日号” (PDF). 羽生市. 2018年1月19日閲覧。(8頁参照)
- ^ a b “エスカレーター、関西なぜ「右立ち」(謎解きクルーズ)”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2014年12月13日) 2018年2月1日閲覧。
- ^ 『謎山トキオの謎解き分析-右と左の50の謎』丸山健夫 日科技連出版社 2010年 ISBN 978-4-8171-9368-1
- ^ 双方の地域での車両登録が必要などの条件を満たす必要がある
- ^ スターボードサイド、ポートサイドって? 日本船舶海洋工学会、2008年(2015年7月18日閲覧)。
- ^ 航空豆知識 第58回 飛行機はなぜ左側から乗るの? 日本航空、2015年7月18日閲覧。
- ^ “右側通行?左側通行?(3)-鉄道・船舶・航空機の通行ルールはどうなっているのか:研究員の眼”. ハフポスト. (2016年12月5日) 2018年2月1日閲覧。
- ^ “いまだけ電車が右側通行の区間がある”. マイナビニュース (マイナビ). (2012年2月4日) 2018年2月1日閲覧。
- ^ 片運転台の場合はわかりやすいが、それ以外の車両についても、車両構造によりどちらが前方かは定義されている。
- ^ いまさら聞けない「鉄道ニッチ用語」(その2) 撮影用語編 マイナビニュース(杉山淳一)、2011年8月28日(2021年1月10日閲覧)。
- ^ 阪急公式アカウントのツイート(2015年5月27日)2021年1月10日閲覧。
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品詞の分類
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