左右
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/28 03:14 UTC 版)
交通における左右
歩行者
国・地域によって異なる。自動車が普及している国では、車両とは逆の通行区分になっている場合が多い(対面交通)。
日本の道路では歩行者は、歩道・路側帯と車道の区別のない道路に於いては、原則車両とは逆の右側通行である。これは道路交通法第10条第1項に定められている。1900年に発令された道路取締規則、1920年に制定された道路取締令では、歩行者も車両と同じく左側通行であった(これは、武士が左側に帯刀していた為、すれ違う時に鞘が触れ合わないよう、左側を歩いていたからとの説がある)。しかし終戦直後、死亡事故が頻発した為、1949年11月1日に「車両は左側通行、歩行者は右側通行」の対面交通が取り入れられた[6]。しかし、鉄道駅の通路は現在も左側通行の所が多い[7]。また、盲導犬は道路の左側を歩くよう訓練されており、道交法でも左側通行が認められている[8]。
エスカレーター
日本では、エスカレーターでは左に立ち止まり、歩く者は右側を行くのが慣習となっている。但し、大阪では右に立ち止まり、歩く者は左側を行く[9]。
大阪での慣習の由来については、いくつかの説がある。そのひとつに、1970年代に、阪急電車の梅田駅で、右に立つことが推奨されたため、右側に立つことが定着したというものがある[10]。
しかし、エスカレーターは立ち止まって乗ることを前提に設計されており、鉄道各社は2列に並び立ち止まって乗るよう呼び掛けている[9]。また、2024年3月現在、埼玉県ではエスカレーターでの歩行そのものが条例違反であるが、罰則はない。
車両
この写真の場合、走り去る車が写っている方が左、向かってくる車が写っている方が右となる。
世界には、車両が右側通行の国と左側通行の国がある。日本は左側通行であり、これは道路交通法第17条第4項に定められている。ただし、例外として地形の制約などにより上下線の配列が左右逆になっている箇所(北陸自動車道 敦賀IC~今庄IC間等)も存在する。
日本以外の左側通行の国や地域の多くは、イギリス、アイルランド、オーストラリア、ニュージーランド、タイ王国、マレーシアなど、旧大英帝国・イギリスの旧植民地であるところが大部分である。
左側通行では右ハンドル、右側通行では左ハンドルの車の使用が標準となる。右ハンドル左ハンドルどちらの場合もクラッチ・ブレーキ・アクセルの並びは左からこの順で変わりはない。ヘッドライトのロービームも、左側通行用の車と右側通行用の車で配光が異なる。つまり、ロービームは前面を満遍なく照らすのではなく、対向車を幻惑させないように配光がされている。日本や英国などでは、右ハンドル、左ハンドルどちらの仕様の車両であっても国内の法制に従って車両を登録し、公道上を運行させることができる。
また、ヨーロッパ連合においては左側通行である英国やアイルランドとその他の右側通行国との間、タイとラオスの両国間、また中国の国内において香港やマカオと他地域との間[11]などでは自動車による往来が可能であるため、必然的に右ハンドル仕様車と左ハンドル仕様車が同一の交通の中で混在する。この場合、車両通行の左右が入れ替わる場所では立体交差にするなどして交通の錯綜を防いでいる。
船舶
![](https://weblio.hs.llnwd.net/e7/redirect?dictCode=WKPJA&url=https%3A%2F%2Fupload.wikimedia.org%2Fwikipedia%2Fcommons%2Fthumb%2Fe%2Fe9%2FSeikan_ferry_route_map.svg%2F250px-Seikan_ferry_route_map.svg.png)
スターボード艇優先の原則により、船舶は万国共通で右側航行が原則となっている(海上における衝突の予防のための国際規則に関する条約)。
日本でも海上衝突予防法で
- 狭い水道ではできる限り右側に寄って航行しなければならない(第9条)。
- 2隻の動力船が正面から行き会う場合には、原則的に、それぞれ針路を右に転じなければならない(第14条)。
とされている。
ただし例外もあり、例えば青函連絡船が運行されていた時代の青函航路は左側通行であった。
また、船舶は右側航行が原則であるが、接岸は左舷で行われることが多い。上述の「スターボード艇優先の原則」の「スターボード(starboard)」とは舵取り板を意味する「ステアリングボード(steering board)」の訛りであり、昔の船は舵取り板を船尾右舷に装備していたため、左舷で接岸が行われていた。このため、現在でも右舷は「スターボードサイド(starboard side)」、左舷は「ポートサイド(port side)」と呼ばれ[12]、慣習的に左舷で接岸が行われている。
航空機
航空機は、船舶の慣習を多く引き継いでおり、右側航行が原則とされる。2機の航空機が、互いに正面から接近しつつある場合には、互に進路を右に変えなければならないこととされる。これは、日本の航空法施行規則第182条にも規定されている。また、ポートサイド・スターボードサイドの呼び名や左側から乗降することが多いのも、船舶と同様である[13]。
鉄道
自動車と同様国・地域によって異なるが、路面電車以外の鉄道は必ずしも自動車の通行区分と一致するわけではない。
台湾、韓国、北朝鮮では、自動車は右側通行だが、日本統治時代に建設された鉄道路線は左側通行である。また、韓国ではソウル交通公社1号線も、乗り入れ先の韓国鉄道公社に合わせて左側通行となっている。フランスも自動車は右側通行だが、鉄道はイギリスの技術支援を受けた影響で左側通行となっている。フランス国鉄はこのように左側通行であるが、パリの地下鉄(メトロ)では右側通行となっている。他、イタリアやスイス等も自動車とは逆の左側通行となっている[14]。
逆に、インドネシアは自動車は左側通行だが、鉄道は右側通行となっている。
日本の鉄道はイギリスの技術支援を受けた影響で原則左側通行だが、例外として地形の制約により上下線の配列が左右逆になっている箇所(東海道本線の南荒尾信号場 - 関ケ原駅間、北陸本線の新疋田駅 - 敦賀駅間など)が存在する。それ以外では、三重交通神都線が複線区間で右側通行だった。また、単線区間においてホームに進入する際には、線路の構造や、閉塞取扱(の名残)、ワンマン運転における乗客の取り扱いの利便性から、右側通行になる場合がある[15]。
運転席は右側通行の場合は右側、左側通行の場合は左側にあることが多い。
鉄道車両の形式図においては、前方[16]が左に来る側面を「公式側」、逆の側面を「非公式側」と呼んでおり、鉄道写真などでこの用語が利用されることもある[17]。一方で、路線環境に応じて、線路に対する左右方向の呼称が「山側/浜側」「西側/東側」のように社内で決められている例もある[18]。
- ^ 阪本則秋、山本正和、藤井加奈子 (2006年). “冷蔵庫のコンセプトとキー技術” (PDF). 東芝レビュー. 東芝. p. 12. 2018年2月27日閲覧。
- ^ 大井競馬場は、現存する競馬場としては世界で唯一、左右両回りでレースが行われる。
- ^ a b 諏訪春雄、篠田知和基(編)、2009、「日本人の空間認識:南北線と東西線」、『天空の世界神話』、八坂書房 ISBN 9784896949414 pp.54-62.
- ^ 日中飛鴻「左遷」(1999年12月1日)
- ^ “イエメン共和国|東京都立図書館”. 東京都立図書館. 2021年3月3日閲覧。
- ^ “俗語辞典”. 日本放送協会 (2015年7月6日). 2018年1月27日閲覧。
- ^ “右側通行?左側通行?(1)-「車は左、人は右」と言われている歩行者の通行ルールは本当はどうなっているのか-”. ニッセイ基礎研究所 (2016年11月14日). 2018年1月30日閲覧。
- ^ “広報はにゅう 2016年5月1日号” (PDF). 羽生市. 2018年1月19日閲覧。(8頁参照)
- ^ a b “エスカレーター、関西なぜ「右立ち」(謎解きクルーズ)”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2014年12月13日) 2018年2月1日閲覧。
- ^ 『謎山トキオの謎解き分析-右と左の50の謎』丸山健夫 日科技連出版社 2010年 ISBN 978-4-8171-9368-1
- ^ 双方の地域での車両登録が必要などの条件を満たす必要がある
- ^ スターボードサイド、ポートサイドって? 日本船舶海洋工学会、2008年(2015年7月18日閲覧)。
- ^ 航空豆知識 第58回 飛行機はなぜ左側から乗るの? 日本航空、2015年7月18日閲覧。
- ^ “右側通行?左側通行?(3)-鉄道・船舶・航空機の通行ルールはどうなっているのか:研究員の眼”. ハフポスト. (2016年12月5日) 2018年2月1日閲覧。
- ^ “いまだけ電車が右側通行の区間がある”. マイナビニュース (マイナビ). (2012年2月4日) 2018年2月1日閲覧。
- ^ 片運転台の場合はわかりやすいが、それ以外の車両についても、車両構造によりどちらが前方かは定義されている。
- ^ いまさら聞けない「鉄道ニッチ用語」(その2) 撮影用語編 マイナビニュース(杉山淳一)、2011年8月28日(2021年1月10日閲覧)。
- ^ 阪急公式アカウントのツイート(2015年5月27日)2021年1月10日閲覧。
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