不動産 不動産の概要

不動産

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/19 18:05 UTC 版)

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概説

区別の根拠

物を動産と不動産に分けて異なる法律的取扱いが行われてきたのには幾つかの理由がある。第一は歴史的な理由で動産よりも不動産のほうが価値が高いと考えられていたことがある。第二は自然の性質による理由で物の移動がある動産と移動のない不動産とでは、法技術的に異なった扱いをせざるを得ないという理由があったためである[1]

歴史

不動産と動産の区別あるいはその歴史は時代や地域によって制度や法制が大きく異なっており、今日でも法体系によって多少の違いが存在している。

動産は原始時代に個々の人類が自己の所持物を他者のそれと分けるようになってから存在し続けていたと考えられているが、土地のような不動産が所有の対象となるのは、限られた土地の上に社会・国家が成立した後であり、しかも当初は社会・国家を構成する特定の人々による共同所有であった。ローマ法による動産と不動産の区分はビザンツ帝国期から成立していたが、法律上の扱いに大きな差異は見られない。また、建物は土地と一体化したものと考えられており、今日のドイツやスイスの民法にその名残が存在する。また、フランスでは土地を「天然の不動産」、建物を「性質の不動産」として後者は前者の存在を前提として成立するものとしている。一方、ゲルマン法では早くから動産と不動産の法的扱いの違いの差異が生じており、ローマ法とゲルマン法の動産・不動産観念は今日の欧米や日本の民事法に強く影響を与えている。

古代日本においては動産は「もの」、不動産は「ところ」と称せられ、律令制の頃には前者は「資財」「財物」、後者は「田宅」「所領」などと称されるようになった。田宅とは土地を生産・収益の根源とみなすところから来た呼称であり、中世には「知行」、近世には「石高」がこれに代わる概念として現れることとなった。江戸時代には家屋や蔵などが土地から分離して売買や貸借の対象となっていった。もっとも、こうした区別は当時の法制や法慣習を近代的な法概念に当てはめたものであり、当時の法意識は「生産財」か「消費財」かという概念の法が重要視されていたという説もある。また、古代から近世末期まで「奴婢」「下人」など、人間でありながら動産として扱われてきた人々がいた。

更に前近代においては所有の概念の違いも時代や地域によって異なり、国制・身分に基づく所有の制約が存在した。例えば、日本においては所有の観念が今日と大きく異なっていた。土地を開墾した人(「草分け」)や財物を所持し続けた人と当該財産の関係は単なる所有の主体と客体ではなく一種の呪術的な関係があり、仏物(ぶつもつ)・神物(しんもつ)・人物(じんもつ)などと言った、本主(本来所有すべき所有者)に基づく財産の区分が存在し、本主のみが正当な所有者で他の区分あるいは人物に売買や譲渡が行われたとしても相手は正当な所有者ではないため、いつかは本来あるべき姿(本主が当該財産を所有する状態)に回復されなければならないとする法観念が広く存在していた。そのため、中世の日本において、合法的な売買・譲渡が行われた土地が無償で本主に返還されるという徳政令寺社興行法のような今日の観念では非常識・反社会的な法令が行われたのも、本主が所有されるべきものが所有されていないことの方がより問題視されていたからだと言われている[2][3]

土地と建物の関係

欧米の法制度では建物は土地の一部として扱われ、土地と建物が同一所有者ならば建物には土地から独立した所有権は認められない[4]

一方、日本法においては土地と建物は別個の不動産とされており、不動産登記法はそのような前提で定められている[4]。民法制定過程では当初は建物は土地の一部とされる予定だったが、土地抵当権の効力がその後に建築された建物に及ぶことに異議が唱えられた[4]。審議の結果、抵当権の効力の及ぶ範囲の規定(現行の民法370条)に抵当地の上に存する建物を除外する文言が規定され、不動産登記法でも土地と建物は別の不動産とされた[4]。これは台湾民法にもみられるが、比較法的には珍しい。

日本法における不動産

民法で定める不動産

土地及びその定着物をいう(民法86条1項)。不動産以外のは、全て動産(どうさん)である(同条2項)。

不動産は、その全てが替えの効かない特定物であり、また移動が容易でなく、かつ、財産としても高価であるため、動産とは別個の規制に服する(民法177条など)。

先述のとおり、日本の民法においては土地上の建物は土地と別個の不動産として扱われる(民法370条)。このため、土地売買契約によって譲り受けても、買主は土地の上にある建物の所有権を当然には取得できないし、土地に抵当権を設定しても抵当権者は建物に対する抵当権を当然には取得しない。民法は不動産に公示の原則の考え方を採っており、所有権を取得しても登記が無ければ第三者に対し、所有権を対抗できないとしている(民法177条)。

登記法では、建物であるためには、屋根で遮断されていて、建物としての用途に供しうること、土地に定着していることが求められる。そのため建築中の建物は、屋根や壁が作られた段階で、動産である建築資材から不動産である建物へと法的な扱いが変わる。但し、自動車等で牽引する移動式の建物(キャンピングトレーラーの類)は、不動産ではなく動産に含まれる。この扱いについてはトレーラーハウスも参照。

ふすま障子などは動産であり、建物とは別個の財産である。しかし、これらの動産は不動産に付属する従物として、建物とは別に扱うとする特約がない限り、建物所有権の移転、建物に対する抵当権の設定などの効果を受ける。他方、立木は土地の定着物であるため不動産であるが、後述する特別法によって独立の不動産として取り扱われる場合を除き、定着物たる土地に吸収される。

特別法で定める不動産

不動産とみなされるもの

  • 立木法の規定により登記された立木
  • 財団
    • 工場抵当法第9条の規定により登記された工場財団
    • 鉱業抵当法第3条の規定により登記された鉱業財団
    • 漁業財団抵当法第6条の規定により登記された漁業財団
    • 観光施設財団抵当法第7条の規定により登記された観光施設財団
    • 港湾運送事業法第26条の規定により登記された港湾運送事業財団
    • 道路交通事業抵当法第6条規定により登記された道路交通事業財団
    • 自動車交通事業法第38条の規定により登録された自動車交通事業財団
    • 鉄道抵当法第28条の2の規定により登録された鉄道財団
    • 軌道抵当法(軌道ノ抵当ニ関スル法律)第1条の規定により登録された軌道財団
    • 運河財団(運河法)

不動産の規定が準用される物権

民事執行法上の不動産

金銭執行は執行対象財産の種類に応じて、不動産に対する金銭執行(不動産の強制競売・強制管理、不動産競売・担保不動産収益執行)、動産に対する金銭執行(動産執行、動産競売)、債権その他の財産権に対する金銭執行(債権執行、各種財産権執行、少額訴訟債権執行)、船舶・航空機・自動車・建設機械等に対する金銭執行(準不動産執行、準不動産競売)に区分される[5]。この財産の種類の区分は執行手続の構造上の異同によるもので民法における区別とは一致しない[6]




  1. ^ 星野英一『民法概論 I 序論・総則 改訂版』良書普及会、1993年、159頁。
  2. ^ 小島信泰「動産と不動産」(『歴史学事典 13 所有と生産』(弘文堂、2006年) ISBN 978-4-335-21042-6 P438-439)
  3. ^ 笠松宏至「徳政」(『日本史大事典 5』(吉川弘文館、1989年) ISBN 978-4-642-00510-4 P172下段)
  4. ^ a b c d 平野裕之『民法総則』日本評論社、2017年、101頁。
  5. ^ 中野貞一郎『民事執行・保全法概説 第3版』有斐閣、2006年、9頁。
  6. ^ 中野貞一郎『民事執行・保全法概説 第3版』有斐閣、2006年、10頁。
  7. ^ http://www.urel.biz/ 大学不動産連盟 2019.2.21閲覧
  8. ^ https://diamond.jp/articles/-/163335 「学閥の王者・慶應三田会、秘密の物件情報が飛び交う「不動産三田会」に潜入」週刊ダイヤモンド編集部 2018.3.15 ネット記事等参照


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