電気 電気の概要

電気

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/08/28 17:44 UTC 版)

Jump to navigation Jump to search
電磁気学
VFPt Solenoid correct2.svg


夜の稲妻
は最も劇的な電気現象の一つである。

電気に関する現象は古くから研究されてきたが、科学としての進歩が見られるのは17世紀および18世紀になってからである。しかし電気を実用化できたのはさらに後のことで、産業や日常生活で使われるようになったのは19世紀後半だった。その後急速な電気テクノロジーの発展により、産業や社会が大きく変化することになった。電気のエネルギー源としての並外れた多才さにより、交通機関の動力源、空気調和照明、などほとんど無制限の用途が生まれた。商用電源は現代産業社会の根幹であり、今後も当分の間はその位置に留まると見られている[1]。また、多様な特性から電気通信コンピュータなどが開発され、広く普及している。

歴史

語源

電気を表す英単語 electricity はギリシア語の ηλεκτρον ([elektron], 琥珀)に由来する。古代ギリシア人が琥珀をこする事により静電気が発生する事を発見した故事によるもので、そこから古典ラテン語で electrum、新ラテン語で ēlectricus(琥珀のような)という言葉が生まれ、そこから electricity が派生した。

一方で漢語の「電気」の「」はの別名であり、いわば「電気」というのは「雷の素」といった意味になる。ベンジャミン・フランクリンによる研究はしばしば「雷の正体が電気である事を発見した」と紹介されるが、この文章は字義的な矛盾を含む事になる。もちろん「電気」という漢語がフランクリンの時代以後に作られたからである。

古代

古代の電気研究者タレス

電気について知識がなかったころにも、電気を発生させる魚類の電気ショックに気づいていた人々がいた。紀元前2750年ごろの古代エジプトの文献にそういった魚を「ナイル川の雷神」とする記述があり、全ての魚の守護神だと記している。そういった魚類についての記述は、千年以上後の古代ギリシア古代ローマ、イスラムの学者らの文献にもある[2]大プリニウスやスクリボニウス・ラルグスといった古代の著作家は、デンキナマズシビレエイによる感電の例をいくつか記しており、それらの電気ショックが導体を伝わることを知っていた[3]痛風頭痛などの患者をそういった電気を発する魚に触れさせるという治療が行われたこともある[4]や他の自然界の電気が全て同じものだという発見は中世イスラムという可能性もあり、15世紀のアラビア語辞書で雷を意味する raad という言葉がシビレエイも表すとされていた[5]

バグダッド電池

古代の地中海周辺地域では、琥珀の棒を猫の毛皮でこすると羽根のような軽い物を引き付けるという性質が知られていた。 紀元前600年ごろミレトスタレスは一連の静電気についての記述を残しているが、彼は琥珀をこすって生じる力は磁力だと信じており、磁鉄鉱のような鉱物がこすらなくても発揮する力と同じものだと考えた[6][7]。タレスがそれを磁力だと考えたことは間違っていたが、後に電気と磁気には密接な関連があることが判明している。古代ギリシア人は、琥珀のボタンが髪の毛のような小さい物を引きつけることや、十分に長い間琥珀をこすれば火花をとばせることも知っていた。イラクで1936年に発見された、紀元前250年頃のものとされる、バグダッド電池なるものはガルバニ電池に似ている。バグダッド電池はパルティア人が電気めっきを知っていた証拠とする説もあるが、これを単に金属棒に巻物を巻いて収め地中に埋めた壺(つまり電池ではない)とする説もある[8]

近世

ライデン瓶、Boerhaave博物館、ライデン [2]

イタリアの物理学者カルダーノは、『De Subtilitate』(1550年)のなかで[9]、電気による力と磁力とをおそらくは初めて区別した。1600年にイギリスの科学者ウィリアム・ギルバートは、『De Magnete』のなかでカルダーノの業績について詳細に述べ[6]、ギリシア語単語「琥珀」elektron からラテン語単語 electricus を作り出した[10][11]electricity という英単語の最初の使用は、トーマス・ブラウンの1646年の著作『Pseudodoxia Epidemica』の中にあるとされる[12]

ギルバートに続いて、1660年ゲーリケは静電発電機を発明した。ロバート・ボイル1675年に、電気による牽引と反発は真空中で作用し得ると述べた。スティーヴン・グレイ1729年に、物質を導体絶縁体とに分類した。デュ・フェは、のちに positive(陽)、negative(陰)と称ばれることになる、電気の2つの型を最初に同定した。大量の電気エネルギーの蓄電器の一種であるライデン瓶は、1745年ライデン大学で、ミュッセンブルークによって発明された。ワトソン (William Watson) はライデン瓶で実験し、1747年に静電気の放電は電流に等しいことを発見した。平賀源内は、18世紀半ばにエレキテルを開発した。

18世紀中ごろ、ベンジャミン・フランクリンは私財を投じて電気の研究を行い、1752年6月、雷を伴う嵐のなかを揚げるという実験を行った[13]。この実験で雷が電気であることを示し、それに基づいて避雷針を発明した[14]。フランクリンは陽電気および陰電気の発明の確立者と見なされることが多い。

近代

1773年、ヘンリー・キャヴェンディッシュ荷電粒子間に働く力が電荷の積に比例し、距離の2乗に反比例することを実験で確認。1785年にシャルル・ド・クーロンクーロンの法則として定式化した。

1791年、ルイージ・ガルヴァーニは生体電気の発見を発表。神経細胞から筋肉に信号を伝える媒体が電気であることを示した[15]。1800年、アレッサンドロ・ボルタは亜鉛と銅を交互に重ねたボルタの電堆を発明。それまでの静電発電機よりも安定的に動作する電源となった[15]

1820年、ハンス・クリスティアン・エルステッド電磁気学の基礎となる電流による磁気作用を発見。アンドレ=マリ・アンペールは現象を再現してさらに詳細な研究を行った。ジャン=バティスト・ビオフェリックス・サバールは1820年、電流とその周囲に形成される磁場の関係を定式化(ビオ・サバールの法則)。1821年、マイケル・ファラデーはその現象を応用した電動機を発明。1830年、ファラデーとジョセフ・ヘンリー電磁誘導現象を発見。電気と磁気(と光)の関係を定式化したのはジェームズ・クラーク・マクスウェルで、1861年から1862年の論文 On Physical Lines of Force で発表した。これにはウィリアム・トムソンの1845年の論文が影響を与えた。

ゲオルク・オームは1827年、オームの法則を含む電気回路の数学的解析を発表した[15]グスタフ・キルヒホフは1845年、キルヒホッフの法則を発見。これらの成果を基にヘルマン・フォン・ヘルムホルツ(1853年)、シャルル・テブナン(1883年、再発見)、鳳秀太郎(?年)が電気回路に関する電圧、電流、電源の考え方を確立した。

このように19世紀前半に電気の研究は大いに進展したが、19世紀後半には電気工学が急速に発展した。ニコラ・テスラは交流を応用した電気機器(交流発電機ほか)を発明。後の電気の発電、送配電に大きな影響を与えた。また、蛍光灯や無線機の発明も行った。トーマス・エジソン蓄音機電球などを発明。イェドリク・アーニョシュダイナモの原理を確立。ジョージ・ウェスティングハウスはテスラの交流電動機の権利を取得し、交流発電・送電システムの確立に寄与した。ヴェルナー・フォン・ジーメンスも電気産業の発展に貢献。アレクサンダー・グラハム・ベルは電話を発明。電気は科学的興味の対象から第二次産業革命の推進力となり、日常生活に欠かせないものへと変貌していった[16]

物理学における電気

電子陽子などの素粒子固有の性質に由来する。古代より、摩擦した琥珀(こはく)に物が吸い寄せられるなどの電気現象が知られており、物質にはこのような性質を持つものと持たないものがあるということがわかっていた。

近代になって物理学が発展すると、これらの現象(電気)は、定量化することができ、また保存されるということがわかった。電気の現象を研究する物理学の分野は電磁気学と呼ばれている。電気が多量にあると思われる場合や逆に少量しかない場合など、条件に応じて、物が吸い寄せられるなどの電気現象にその程度の相違が観察されたり、雷の火花の大きさの程度により、電気にも水量と同様にその嵩があるとして、電気の嵩の多少を示す量として電気の量、即ち「電気量」というものが考えられている。これに対して、「電荷」とは「電気量」の多少を特に問わずに電気が存在しさえすれば足りる時に「電荷」があるなどと言い表し、「電気量」とは少し視点が異なり、電荷量とは言わないことが多い。

電気はの二種類がある。正と正または負と負に帯電した物体同士は反発し合い、正と負に帯電した物体同士は引き合う。その引力あるいは斥力の強さはクーロンの法則により計算することができる。また、これにより「電気量」の単位を決めることもできる。

電気エネルギーは他の様々なエネルギーに変換でき、また逆に他のエネルギーから電気エネルギーにも変換できる。

他のエネルギーと比べ効率が良く伝送が容易なため、現代では広く利用されている。


  1. ^ Jones, D.A., “Electrical engineering: the backbone of society”, Proceedings of the IEE: Science, Measurement and Technology 138 (1): 1–10 
  2. ^ Moller & Kramer 1991, pp. 794-6
  3. ^ a b c Bullock 2005, pp. 5-7
  4. ^ a b Morris 2003, pp. 182-185
  5. ^ The Encyclopedia Americana; a library of universal knowledge (1918), New York: Encyclopedia Americana Corp
  6. ^ a b Stewart 2001, p. 50
  7. ^ Simpson 2003, pp. 6-7
  8. ^ Frood, Arran (27 February 2003), Riddle of 'Baghdad's batteries', BBC, http://news.bbc.co.uk/1/hi/sci/tech/2804257.stm 2008年2月16日閲覧。 
  9. ^ Cardano, Girolamo, De subtilitate rerum. Libri XXI. Nuremberg, Johann Petreius, 1550. Described at [1], facsimile here.
  10. ^ Baigrie 2006, pp. 7-8
  11. ^ Douglas Harper (2001). Online Etymology Dictionary: electric. Retrieved August 29, 2006.
  12. ^ Chalmers 1937, pp. 75-95
  13. ^ Srodes 2002, pp. 92-94 フランクリンが単独でこの実験を行ったかは定かではないが、一般にフランクリン1人の業績とされている。
  14. ^ Uman 1987
  15. ^ a b c Kirby 1990, pp. 331-333
  16. ^ Marković, Dragana, The Second Industrial Revolution, http://www.b92.net/eng/special/tesla/life.php?nav_id=36502 2007年12月9日閲覧。 
  17. ^ Trefil 2003, p. 74
  18. ^ a b Duffin 1980, pp. 2-5
  19. ^ a b Sears 1982, p. 457
  20. ^ 「同種の電気を蓄えた2つの小さな球の間の斥力は、2つの球の中心間の距離の2乗に反比例する」 Charles-Augustin de Coulomb, Histoire de l'Academie Royal des Sciences, Paris 1785.
  21. ^ Duffin 1980, p. 35
  22. ^ National Research Council 1998, pp. 215-216
  23. ^ a b Umashankar 1989, pp. 77-79
  24. ^ a b Hawking 1988, p. 77
  25. ^ Shectman 2003, pp. 87-91
  26. ^ Sewell 1902, p. 18. The Q originally stood for 'quantity of electricity', the term 'electricity' now more commonly expressed as 'charge'.
  27. ^ Close 2007, p. 51
  28. ^ Ward, Robert (1960), Introduction to Electrical Engineering, Prentice-Hall, p. 18 
  29. ^ Duffin 1980, p. 17
  30. ^ Solymar 1984, p. 140
  31. ^ a b Duffin 1980, pp. 23-24
  32. ^ a b Berkson 1974, p. 370 なお、講義の後という文献や講義の最中だったという文献もある。
  33. ^ Bird 2007, p. 11
  34. ^ Bird 2007, pp. 206-207
  35. ^ Bird 2007, pp. 223-225
  36. ^ ほとんど全ての電場は空間の位置によって変化する。例外としては、無限に広がる平面の導体が帯電している場合の電場は一様である。
  37. ^ a b Sears 1982, pp. 469–470
  38. ^ a b Morely & Hughes 1994, p. 73
  39. ^ & Sears 1982, p. 479
  40. ^ Duffin 1980, p. 88
  41. ^ Naidu & Kamataru 1982, p. 2
  42. ^ Naidu & Kamataru 1982, pp. 201–202
  43. ^ Rickards 1985, p. 167
  44. ^ a b Sears 1982, pp. 494–498
  45. ^ Serway 2006, p. 500
  46. ^ Saeli, Sue, Using Gravitational Analogies To Introduce Elementary Electrical Field Theory Concepts, http://physicsed.buffalostate.edu/pubs/PHY690/Saeli2004GEModels/older/ElectricAnalogies1Nov.doc 2007年12月9日閲覧。 
  47. ^ Duffin 1980, p. 60
  48. ^ Thompson 2004, p. 79
  49. ^ a b Morely & Hughes 1994, pp. 92–93
  50. ^ a b Sears 1982, pp. 696–700
  51. ^ a b c d Edminister 1965
  52. ^ a b Dell & Rand 2001, pp. 2-4
  53. ^ McLaren 1984, pp. 182-183
  54. ^ a b Patterson 1999, pp. 44–48
  55. ^ Edison Electric Institute, History of the U.S. Electric Power Industry, 1882-1991, http://www.eia.doe.gov/cneaf/electricity/chg_stru_update/appa.html 2007年12月8日閲覧。 
  56. ^ IndexMundi, China Electricity - consumption, http://www.indexmundi.com/china/electricity_consumption.html 2007年12月8日閲覧。 
  57. ^ National Research Council 1986, p. 16
  58. ^ National Research Council 1986, p. 89
  59. ^ Wald, Matthew (21 March 1990), “Growing Use of Electricity Raises Questions on Supply”, New York Times, http://query.nytimes.com/gst/fullpage.html?res=9C0CE6DD1F3AF932A15750C0A966958260 2007年12月9日閲覧。 
  60. ^ d'Alroy Jones 1967, p. 211
  61. ^ ReVelle 1992, p. 298
  62. ^ Danish Ministry of Environment and Energy, “F.2 The Heat Supply Act”, Denmark´s Second National Communication on Climate Change, オリジナルの2008年1月8日時点によるアーカイブ。, http://web.archive.org/web/20080108011443/http://glwww.mst.dk/udgiv/Publications/1997/87-7810-983-3/html/annexf.htm 2007年12月9日閲覧。 
  63. ^ Brown 2002
  64. ^ Hojjati, B.; Battles, S., The Growth in Electricity Demand in U.S. Households, 1981-2001: Implications for Carbon Emissions, http://www.eia.doe.gov/emeu/efficiency/2005_USAEE.pdf 2007年12月9日閲覧。 
  65. ^ Herrick 2003
  66. ^ a b Nasser 2008, pp. 552–554
  67. ^ Sverre 2000, pp. 301-309
  68. ^ Lipschultz & Hilt 2002, p. 95
  69. ^ Encrenaz 2004, p. 217
  70. ^ a b Lima-de-Faria & Buerger 1990, p. 67
  71. ^ Ivancevic 2005, p. 602
  72. ^ a b Kandel, Schwartz & Jessell 2007, pp. 27-28
  73. ^ Davidovits 2007, pp. 204-205
  74. ^ Van Riper 2002, p. 69
  75. ^ a b c d e f Van Riper 2002, p. 71







電気と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

「電気」に関係したコラム

  • 株式上場企業の業種分類

    日本の株式上場企業は、東京証券取引所(東証)をはじめとする証券取引所の独自の基準により、業種別に分類されています。例えば、東京証券取引所(東証)の場合、業種分類は「業種別分類に関する取扱い要領」により...

  • 株式市場の01銘柄とは

    株式市場の01銘柄とは、4桁の証券コードのうち下2桁が01で終わる証券コードの銘柄のことです。01銘柄は、その業種の代表的な銘柄であることが多く、株価の値動きは市場関係者から注目されています。次の表は...

  • CFDの銅相場の見方

    銅は、熱や電気を伝導したり、腐食に耐えられるなどの特性から工業用の金属として用いられています。銅の主な用途は送電線や電気製品などが挙げられます。銅は、工業用金属としては鉄、アルミニウムに続く消費量です...

  • 株365の日経225証拠金取引の見方

    株365の日経225証拠金取引は、日経平均株価(日経225)に連動して値動きする銘柄です。そのため、日経平均株価の値動きや構成銘柄の特徴を知ることで日経225証拠金取引の値動きを予測できます。日経平均...

  • ETFの銘柄一覧

    ETFの銘柄数は2012年9月の時点で約140あります。そして、いずれの銘柄にも価格の連動となる対象の商品があります。ここでは、ETFの銘柄をジャンルごとに紹介します。表の「コード」は株式コード、「市...

  • ETFを始めるための最低資金は

    ETFを始めるための最低資金はいくらでしょうか。ETFの取引では売買代金に加えて取引手数料などの費用がかかるため、最低資金は次の計算式で求めることができます。資金=売買代金+取引手数料+その他費用売買...

辞書ショートカット

カテゴリ一覧

全て

ビジネス

業界用語

コンピュータ

電車

自動車・バイク

工学

建築・不動産

学問

文化

生活

ヘルスケア

趣味

スポーツ

生物

食品

人名

方言

辞書・百科事典

すべての辞書の索引

「電気」の関連用語

電気のお隣キーワード

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   
検索ランキング



電気のページの著作権
Weblio 辞書情報提供元は参加元一覧にて確認できます。

  
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの電気 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2018 Weblio RSS