電気 発電と電気の利用

電気

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/08/28 17:44 UTC 版)

発電と電気の利用

発電と送電

チェコのDukovany原子力発電所。冷却塔から廃熱のための蒸気が出ている。

前述の通り、電気エネルギーはさまざまな形態のエネルギーへの変換が容易であり、伝送も比較的簡単であるので、現代ではさまざまな分野で必要不可欠のものとなっている。非電気エネルギーを電気に変換することを、発電と呼ぶ。

タレスの琥珀棒の実験は、電気エネルギー生産の最初期の研究だった。その摩擦帯電現象は軽い物なら引き寄せることができ、火花を発生させることもあるが、発電方法としては極めて非効率である[52]。史上初の実用的な電力源は18世紀に発明されたボルタ電池である。ボルタ電池から始まった電池はエネルギーを化学的に蓄え、そこから必要に応じて電気エネルギーを引き出して使うことができる[52]。電池は様々な用途に使える一般的な電力源だが、蓄えているエネルギー量は有限であり、完全に放電すると再充電するか廃棄するしかない。電気エネルギーへの大きな需要に応えるためには、継続的に発電し、電線を通してそれを送電する必要がある。

電力は主に水蒸気で駆動される発電機で発電され、水蒸気を発生させるための熱源としては化石燃料の燃焼や核分裂反応の発生する熱が使われている。あるいは水流や風の持つ運動エネルギーを利用して発電機を駆動する場合もある。蒸気タービンは1884年にチャールズ・アルジャーノン・パーソンズが発明し、何らかの熱源で蒸気タービンを回して発電することで今では全世界の80%の電力を得ている。そういった発電機は1831年のファラデーの円盤とは似ても似つかないものだが、磁場を横切る形で移動する伝導体の両端に電位差が生じるというファラデーの電磁誘導の法則に従って発電している[53]。19世紀末に変圧器が発明され、高電圧低電流でより効率的に電力を送ることが可能になった。送電が効率化されたことで1つの大きな発電所で発電して広い地域に電力を供給できるようになり、規模の経済の効果が発揮されるようになる[54]

風力発電は世界各国で重要性が増しつつある。

国家規模の電力需要を賄えるほど電気エネルギーを蓄えるのは容易ではないため、電力網には常に必要とされるだけの電気エネルギーを供給し続ける必要がある[54]。そのためには常に電力需要を注意深く予測し、発電所間で常に連携する必要がある。ある程度の発電能力は、急激な電力需要増や何らかの障害への対策としてとって置く必要がある。

国が近代化し経済発展すると共に、電力需要は急激に増大する。アメリカ合衆国では20世紀の最初の30年間、毎年12%電力需要が増加し[55]、最近では発展の著しいインドや中国が似たような増加傾向を示している[56]。歴史的に見て、電力需要の成長率は他のエネルギー形態のそれよりも急激だった[57]

環境問題への懸念から、風力発電水力発電といった再生可能エネルギーに注目が集まりつつある。様々な発電技法の環境への影響が議論される中で、これらは相対的にクリーンだとされている[58]

利用

電球ジュール熱によってフィラメントを発光させる。

電気はエネルギーの形態としては極めて柔軟であり、その用途は極めて幅広い[59]。1870年代に実用的な電球が発明され、照明が電力の用途として最初に一般に普及した。照明に電気を使うことは新たな危険性を伴っていたが、同時にガス灯などの火をそのまま使う従来の技法に付きまとっていた火災の危険性を大きく低減させることになった[60]。電力網は電気照明のためにまず大都市圏から急激に整備され始めた。

電球が利用しているジュール熱現象は、より直接的に電気ストーブでも利用されている。電気エネルギーをジュール熱に変換して利用することは制御が容易で便利だが、元々の発電で熱エネルギーを電気エネルギーに変換していることを考えると大きな無駄ともいえる[61]。デンマークなどの多くの国々で、新たに建設する建物で電気を熱源として利用することを制限または禁止する法律が成立している[62]。しかしながら電気は冷却[63]空調のエネルギー源としてよく使われていて、その分野の需要増が電力需要全体を押し上げている[64]

電気は電気通信にも使われている。中でも電信は1837年、チャールズ・ホイートストンウィリアム・フォザギル・クック英語版が最初に商業化した。1860年代には大陸間の電信網、さらには大西洋横断電信ケーブルができ、電気によって数分で世界中に通信可能となった。光ファイバー技術も通信の一部を担うようになったが、やはり通信の大部分は電気が担っている。

電磁気学的現象を目に見える形で使っている例として電動機があり、クリーンで効率的な動力源となっている。ウインチなど据え置き型では電力供給が容易だが、電動輸送機器のような電動機自体が移動する用途では、電池を搭載して電力を供給するか、集電装置のような機構で電力を供給する必要があり、移動距離や移動範囲が制限されている。

20世紀最大の発明の1つであるトランジスタ[65]は、現代のあらゆる電子回路の基本素子である。最近の集積回路には、数センチ平方メートルの中に数十億個の微細なトランジスタが含まれている。


  1. ^ Jones, D.A., “Electrical engineering: the backbone of society”, Proceedings of the IEE: Science, Measurement and Technology 138 (1): 1–10 
  2. ^ Moller & Kramer 1991, pp. 794-6
  3. ^ a b c Bullock 2005, pp. 5-7
  4. ^ a b Morris 2003, pp. 182-185
  5. ^ The Encyclopedia Americana; a library of universal knowledge (1918), New York: Encyclopedia Americana Corp
  6. ^ a b Stewart 2001, p. 50
  7. ^ Simpson 2003, pp. 6-7
  8. ^ Frood, Arran (27 February 2003), Riddle of 'Baghdad's batteries', BBC, http://news.bbc.co.uk/1/hi/sci/tech/2804257.stm 2008年2月16日閲覧。 
  9. ^ Cardano, Girolamo, De subtilitate rerum. Libri XXI. Nuremberg, Johann Petreius, 1550. Described at [1], facsimile here.
  10. ^ Baigrie 2006, pp. 7-8
  11. ^ Douglas Harper (2001). Online Etymology Dictionary: electric. Retrieved August 29, 2006.
  12. ^ Chalmers 1937, pp. 75-95
  13. ^ Srodes 2002, pp. 92-94 フランクリンが単独でこの実験を行ったかは定かではないが、一般にフランクリン1人の業績とされている。
  14. ^ Uman 1987
  15. ^ a b c Kirby 1990, pp. 331-333
  16. ^ Marković, Dragana, The Second Industrial Revolution, http://www.b92.net/eng/special/tesla/life.php?nav_id=36502 2007年12月9日閲覧。 
  17. ^ Trefil 2003, p. 74
  18. ^ a b Duffin 1980, pp. 2-5
  19. ^ a b Sears 1982, p. 457
  20. ^ 「同種の電気を蓄えた2つの小さな球の間の斥力は、2つの球の中心間の距離の2乗に反比例する」 Charles-Augustin de Coulomb, Histoire de l'Academie Royal des Sciences, Paris 1785.
  21. ^ Duffin 1980, p. 35
  22. ^ National Research Council 1998, pp. 215-216
  23. ^ a b Umashankar 1989, pp. 77-79
  24. ^ a b Hawking 1988, p. 77
  25. ^ Shectman 2003, pp. 87-91
  26. ^ Sewell 1902, p. 18. The Q originally stood for 'quantity of electricity', the term 'electricity' now more commonly expressed as 'charge'.
  27. ^ Close 2007, p. 51
  28. ^ Ward, Robert (1960), Introduction to Electrical Engineering, Prentice-Hall, p. 18 
  29. ^ Duffin 1980, p. 17
  30. ^ Solymar 1984, p. 140
  31. ^ a b Duffin 1980, pp. 23-24
  32. ^ a b Berkson 1974, p. 370 なお、講義の後という文献や講義の最中だったという文献もある。
  33. ^ Bird 2007, p. 11
  34. ^ Bird 2007, pp. 206-207
  35. ^ Bird 2007, pp. 223-225
  36. ^ ほとんど全ての電場は空間の位置によって変化する。例外としては、無限に広がる平面の導体が帯電している場合の電場は一様である。
  37. ^ a b Sears 1982, pp. 469–470
  38. ^ a b Morely & Hughes 1994, p. 73
  39. ^ & Sears 1982, p. 479
  40. ^ Duffin 1980, p. 88
  41. ^ Naidu & Kamataru 1982, p. 2
  42. ^ Naidu & Kamataru 1982, pp. 201–202
  43. ^ Rickards 1985, p. 167
  44. ^ a b Sears 1982, pp. 494–498
  45. ^ Serway 2006, p. 500
  46. ^ Saeli, Sue, Using Gravitational Analogies To Introduce Elementary Electrical Field Theory Concepts, http://physicsed.buffalostate.edu/pubs/PHY690/Saeli2004GEModels/older/ElectricAnalogies1Nov.doc 2007年12月9日閲覧。 
  47. ^ Duffin 1980, p. 60
  48. ^ Thompson 2004, p. 79
  49. ^ a b Morely & Hughes 1994, pp. 92–93
  50. ^ a b Sears 1982, pp. 696–700
  51. ^ a b c d Edminister 1965
  52. ^ a b Dell & Rand 2001, pp. 2-4
  53. ^ McLaren 1984, pp. 182-183
  54. ^ a b Patterson 1999, pp. 44–48
  55. ^ Edison Electric Institute, History of the U.S. Electric Power Industry, 1882-1991, http://www.eia.doe.gov/cneaf/electricity/chg_stru_update/appa.html 2007年12月8日閲覧。 
  56. ^ IndexMundi, China Electricity - consumption, http://www.indexmundi.com/china/electricity_consumption.html 2007年12月8日閲覧。 
  57. ^ National Research Council 1986, p. 16
  58. ^ National Research Council 1986, p. 89
  59. ^ Wald, Matthew (21 March 1990), “Growing Use of Electricity Raises Questions on Supply”, New York Times, http://query.nytimes.com/gst/fullpage.html?res=9C0CE6DD1F3AF932A15750C0A966958260 2007年12月9日閲覧。 
  60. ^ d'Alroy Jones 1967, p. 211
  61. ^ ReVelle 1992, p. 298
  62. ^ Danish Ministry of Environment and Energy, “F.2 The Heat Supply Act”, Denmark´s Second National Communication on Climate Change, オリジナルの2008年1月8日時点によるアーカイブ。, http://web.archive.org/web/20080108011443/http://glwww.mst.dk/udgiv/Publications/1997/87-7810-983-3/html/annexf.htm 2007年12月9日閲覧。 
  63. ^ Brown 2002
  64. ^ Hojjati, B.; Battles, S., The Growth in Electricity Demand in U.S. Households, 1981-2001: Implications for Carbon Emissions, http://www.eia.doe.gov/emeu/efficiency/2005_USAEE.pdf 2007年12月9日閲覧。 
  65. ^ Herrick 2003
  66. ^ a b Nasser 2008, pp. 552–554
  67. ^ Sverre 2000, pp. 301-309
  68. ^ Lipschultz & Hilt 2002, p. 95
  69. ^ Encrenaz 2004, p. 217
  70. ^ a b Lima-de-Faria & Buerger 1990, p. 67
  71. ^ Ivancevic 2005, p. 602
  72. ^ a b Kandel, Schwartz & Jessell 2007, pp. 27-28
  73. ^ Davidovits 2007, pp. 204-205
  74. ^ Van Riper 2002, p. 69
  75. ^ a b c d e f Van Riper 2002, p. 71







電気と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

「電気」に関係したコラム

  • 株式上場企業の業種分類

    日本の株式上場企業は、東京証券取引所(東証)をはじめとする証券取引所の独自の基準により、業種別に分類されています。例えば、東京証券取引所(東証)の場合、業種分類は「業種別分類に関する取扱い要領」により...

  • 株式市場の01銘柄とは

    株式市場の01銘柄とは、4桁の証券コードのうち下2桁が01で終わる証券コードの銘柄のことです。01銘柄は、その業種の代表的な銘柄であることが多く、株価の値動きは市場関係者から注目されています。次の表は...

  • CFDの銅相場の見方

    銅は、熱や電気を伝導したり、腐食に耐えられるなどの特性から工業用の金属として用いられています。銅の主な用途は送電線や電気製品などが挙げられます。銅は、工業用金属としては鉄、アルミニウムに続く消費量です...

  • 株365の日経225証拠金取引の見方

    株365の日経225証拠金取引は、日経平均株価(日経225)に連動して値動きする銘柄です。そのため、日経平均株価の値動きや構成銘柄の特徴を知ることで日経225証拠金取引の値動きを予測できます。日経平均...

  • ETFの銘柄一覧

    ETFの銘柄数は2012年9月の時点で約140あります。そして、いずれの銘柄にも価格の連動となる対象の商品があります。ここでは、ETFの銘柄をジャンルごとに紹介します。表の「コード」は株式コード、「市...

  • ETFを始めるための最低資金は

    ETFを始めるための最低資金はいくらでしょうか。ETFの取引では売買代金に加えて取引手数料などの費用がかかるため、最低資金は次の計算式で求めることができます。資金=売買代金+取引手数料+その他費用売買...

辞書ショートカット

カテゴリ一覧

全て

ビジネス

業界用語

コンピュータ

電車

自動車・バイク

工学

建築・不動産

学問

文化

生活

ヘルスケア

趣味

スポーツ

生物

食品

人名

方言

辞書・百科事典

すべての辞書の索引

「電気」の関連用語

電気のお隣キーワード

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   
検索ランキング



電気のページの著作権
Weblio 辞書情報提供元は参加元一覧にて確認できます。

  
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの電気 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2018 Weblio RSS