英語 母語圏以外の英語事情

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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/01 01:49 UTC 版)

母語圏以外の英語事情

南アフリカの英語事情

南アフリカは大きな英語母語話者の集団が存在するものの多数派ではなく、2011年時点で英語母語話者人口は総人口の約9.6%を占めるに過ぎず、ズールー語コサ語アフリカーンス語に次ぐ規模にとどまっている。公用語としても唯一のものではなく、11ある公用語のうちの一つに過ぎない。一方で第二・第三言語として英語を使用する人口は非常に多く、事実上国内の共通語となっている。もともとアパルトヘイト期においては白人系の言語であるアフリカーンス語と英語の2言語のみが公用語となっており、なかでも政府や社会の主導権を握るアフリカーナーの言語であるアフリカーンス語の利用が積極的に進められたものの、この政策は差別される側である黒人の強い反発を招き、その反動からアパルトヘイト撤廃後は英語の共通語化が急速に進んだ[48]

インドの英語事情

インドでは英語はヒンディー語と並んで公用語の地位にあるが、現状に至るまでには紆余曲折が存在した。インドには英語の母語話者がほぼ存在せず、一方で北部を中心にヒンディー語が広大な共通言語圏を形成していたため、憲法制定時にはヒンディー語の単独公用語化が目指され、英語は「1965年までは公用語として併用される」との規定が定められていた[49]。しかしまったく言語圏の違う南部のドラヴィダ諸語圏からの反発が非常に強く、1965年に憲法における英語併用期限が切れると同時に激しい反対運動が巻き起こり、2週間後には事実上公用語2言語制の継続が決定した[50]。一方で、ヒンディー語話者を中心に英語公用語化への反発も存在する[51]

日本の英語事情

日本では、学校教育の場合、文部科学省が定める学習指導要領により、義務教育である中学校3年間と小学校5・6年生で英語が必修科目となっているが、「受験英語」という言葉があるように読解力が特に重視されていて、会話(英会話)があまり教えられていないため、受験(入学試験)が終わると英語に接する機会が少なく、非英語圏の先進国アジア域内諸国と比べても通用度は低い。(全く話せず、聞き取れず、という人がほとんど)

江戸時代末期にアメリカイギリスからの使節と交渉する必要が生じ、日本での英語の歴史が始まった。ジョン万次郎が著した日本最初の英会話教本には、(日本語とは語順の違う)英文の意味を取りやすいよう、漢文のような返り点が打たれていた。英国外交官ミットフォードは1866年から4年間日本に滞在し貝原好古の『諺艸』など和書の一部を英訳して本国で紹介しており、初めて英訳された日本の文書はこれであろうと述べている[52][注釈 1]

島村盛助など英文学者らが和英辞書を編纂したが、英語は第二次世界大戦中は、敵性語として排斥されていた時期もあった。今日、日本における英語は依然第一外国語であり、科学技術や諸制度の吸収のための手段や通商の道具(商業英語)という位置付けである。

高校受験大学受験各種学校の必修・選択単位取得においては、英語を読解する能力が重視され、英文和訳を中心とした授業(いわゆる受験英語の学習)が行われている。日本語での出版活動が盛んで、多くの英語の書籍が日本語へ翻訳されることから、日常生活で英語の読解に迫られることはあまりないが、職種によっては英文文献の読解が必要となることは少なくない。そのため、専門分野の英文の理解はできるが、日常会話の経験はなく、英会話に苦手意識を持っている日本人は多い。

日本では、非都市部を中心に英語会話能力を特殊技能と見なす傾向が認められる。日本では大学の講義を英語ではなく日本語で受けることができること、すなわち日本の高等教育は母語だけで十分に享受できるということ、英語を母語とする人が1%未満であり日本語だけで日常生活に支障をきたさないことなど複合的な要素によって、日本国内では特定の業界や職種を除き、英会話の必要性が乏しいためである。一方、東京・大阪・神戸・名古屋・福岡などの都市圏では英語話者のコミュニティが形成されている他、英語放送局も存在する。日本の案内標識は英文併記が多い。


注釈

  1. ^ ミットフォード貝原好古『諺艸』の他、佐倉惣五郎を描いた悲劇『東山桜荘子』なども英訳した。

出典

  1. ^ English”. エスノローグ18版 (2015年). 2015年9月2日閲覧。
  2. ^ 例えば、青木輔清 編『英吉利語学便覧 初編』(明治5年刊)など。
  3. ^ kotobank 「米語」
  4. ^ 「英語の歴史」p97-100 寺沢盾 中公新書 2008年10月25日発行
  5. ^ 「言語世界地図」p197-199 町田健 新潮新書 2008年5月20日発行
  6. ^ 「英語の歴史」p137 寺沢盾 中公新書 2008年10月25日発行
  7. ^ 「世界の英語ができるまで」p239-241 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  8. ^ 「世界の英語ができるまで」p247-249 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  9. ^ 「英語の歴史」p146 寺沢盾 中公新書 2008年10月25日発行
  10. ^ 「よくわかる社会言語学」(やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)p81 田中春美・田中幸子編著 ミネルヴァ書房 2015年9月20日初版第1刷発行
  11. ^ 「英語の歴史」p24-25 寺沢盾 中公新書 2008年10月25日発行
  12. ^ 「英語の歴史」p38 寺沢盾 中公新書 2008年10月25日発行
  13. ^ 「世界の英語ができるまで」p20-21 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  14. ^ 「世界の英語ができるまで」p24-26 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  15. ^ 「世界の英語ができるまで」p36-38 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  16. ^ 「世界の英語ができるまで」p42-44 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  17. ^ 「英語系諸言語」p88-89 トム・マッカーサー著 牧野武彦監訳 山田茂・中本恭平訳 三省堂 2009年9月15日第1刷発行
  18. ^ 「英語系諸言語」p117-118 トム・マッカーサー著 牧野武彦監訳 山田茂・中本恭平訳 三省堂 2009年9月15日第1刷発行
  19. ^ 「言語世界地図」p194 町田健 新潮新書 2008年5月20日発行
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  22. ^ 「よくわかる社会言語学」(やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)p147 田中春美・田中幸子編著 ミネルヴァ書房 2015年9月20日初版第1刷発行
  23. ^ 「アメリカ」(世界地誌シリーズ4)p82-83 矢ヶ﨑典隆編 朝倉書店 2011年4月25日初版第1刷
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  25. ^ en:List_of_languages_by_number_of_native_speakers
  26. ^ 「英語の歴史」p143 寺沢盾 中公新書 2008年10月25日発行
  27. ^ 「英語の歴史」p5-10 寺沢盾 中公新書 2008年10月25日発行
  28. ^ 「よくわかる翻訳通訳学」(やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)p69 鳥飼玖美子編著 ミネルヴァ書房 2013年12月10日初版第1刷発行
  29. ^ Eurobarometer (2006年2月). “Europeans and their Languages (PDF)” (英語). 2009年11月26日閲覧。
  30. ^ 「言語世界地図」p196 町田健 新潮新書 2008年5月20日発行
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  33. ^ 「世界の英語ができるまで」p86-87 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
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  35. ^ 「英語の歴史」p113 寺沢盾 中公新書 2008年10月25日発行
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  51. ^ 「英語の歴史」p190-191 寺沢盾 中公新書 2008年10月25日発行
  52. ^ 貝原好古他 1910.





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