意識 プロトサイエンスにおける意識

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意識

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/24 20:23 UTC 版)

プロトサイエンスにおける意識

探求者の立場により定義、内容もさまざまで、大胆な仮説が多く、議論が分かれているのが現状である。

自分が慣れ親しんだ諸理論や学問上のツールを、なかば強引に流用して意識の理論を構築しようと試みている研究者なども存在する。(究極の一要素にこだわる還元主義的な発想に陥っているもの、数式や方程式で表現することにこだわるものなど)

また、一部では、心の哲学における細かい論点に対する科学の分野における議論が未熟であること、意識そのものの捉え方が研究者ごとに大きく異なり曖昧になっていることなどを問題視・疑問視する声もある。今後は、従来の分野の域を超えた学際的な議論が期待される。

以下に、意識の仕組みを解明しようとしている仮説提唱者の一部を示す。

ロジャー・ペンローズ スチュワート・ハメロフ
量子脳理論などと呼ばれる意識に関する独自の仮説を提唱しており、「脳内の神経細胞にある微小管で、波動関数が収縮すると、素粒子に付随する基本的で単純な意識の属性も組み合わさり、生物の高度な意識が生起する」としている。微小管とは細胞骨格の一種で、細胞の構造を維持する役割を担っているタンパク質の複合体である。微小管が採用された背景には、脳内の広い範囲で、ある程度の時間量子力学的な重ね合わせ状態を維持できそうな構造物が他に見当たらなかったためだという理由がある。
ペンローズの量子脳理論は三つの大きな仮定の上に組み立てられている。ひとつは「人間の思考はチューリングマシンの動作には還元できない」という仮定、もうひとつは「波動関数の収縮はチューリングマシンで計算することが不可能な、実在的物理プロセスである」という仮定、そして最後は「量子論相対論を理論的に統合することで、意識の問題も同時に解決される」という仮定である。これら個々の仮定はどれも、科学者コミュニティーの間で一般的に受け入れられているものではないが、それらを更に一つの理論として結びつけたのが、ペンローズの量子脳理論である。このような憶測の上に憶測を重ねて構成された仮説であるため、内容の正しさについては一般的に懐疑の眼で見られている。ただ、著名な理論物理学者ペンローズによって提唱された仮説という事もあり、知名度は高くまた、ハメロフは生物学上の様々な現象が量子論を応用することで説明可能な点から少しずつ立証されていて20年前から唱えられてきたこの説を根本的に否定できた人はいないと主張している。[18]
保江邦夫

脳のマクロスケールでの振舞い、または意識の問題に、系の持つ量子力学的な性質が深く関わっているとする考え方の総称。心または意識に関する量子力学的アプローチ(Quantum approach to mind/consciousness)、クオンタム・マインド(Quantum mind)、量子意識(Quantum consciousness)などとも言われる。具体的な理論にはいくつかの流派が存在する。 宇宙が創成されたとき、何もない無の状態、すなわち宇宙をひとつの量子力学系と考えたときのその真空状態(最低エネルギー固有状態)からトンネル効果による相転移で疑似真空状態としての比較的平坦な宇宙が出現したとされる。そして、その宇宙の上での踊る素粒子もまた、場の量子論により記述される。スケールこそ違え、これと同じ現象が人間の脳の中で生じているという、この考え方を量子脳力学(Quantum Brain Dynamics)と呼ぶ。心とは、記憶を蓄えた脳組織から絶え間なく生み出される光量子(フォトン)凝集体であり、場の量子論によって記述されるその物理的運動が意識である。脳をひとつの量子力学系と考えたとき、外部からの刺激を受けてその無の状態、すなわち真空状態からトンネル効果による相転移で準安定な疑似真空状態が出現する。これがその刺激の記憶に他ならない。新たなる刺激は再びトンネル効果の引き金となり、脳の量子力学系は別の真空状態と転移する。これは以前の刺激の記憶を加味した新たな刺激の記憶であり、したがって単なる新たな刺激のみの記憶ではない。つまり、脳の量子力学系の疑似真空状態はつねに過去は記憶の総体を表している。宇宙の上で踊る素粒子の運動に対応するものは、脳の場合は、過去の記憶上での人間の意識そのものと考える。意識とは、過去の記憶総体である脳の量子力学系における疑似真空状態の上に生成と消滅を繰り返す励起エネルギー量子の運動にほかならないとする。これを量子脳力学という。1999年5月25日から28日まで、我が国ではじめてツーソン会議が東京青山の国際連合大学にて開催された。その内容は意識科学を中心とし、会議の幹事が保江であった。保江は、この国際会議を手作り国際研究集会と呼称し協力を各方面に仰いだ。開催が極めて難しい状況であったが、保江の熱意が国連大学高等研究所のデラ・センタ所長に通じて国連大学を開催場所として確保できた。保江によれば、後になって考えるとこれも合気(愛魂)の効果だったのかもしれないと回顧している。

茂木健一郎
茂木は、基本的な立場としてはデイヴィッド・チャーマーズと同じ路線を歩んでおり、クオリアまでをも含んだ全ての現象を扱いうる「拡張された物理学」を志向している。茂木の著書「クオリア入門」も「心も自然法則の一部である」という表題から始められており、「意識のほんとうの科学を目指す」という自身の方向性をはっきりと明示している。また茂木は「脳内でのニューロンの時空間的な発火パターンに対応してクオリアが生起している」という独自の作業仮説をとり、そこからクオリアが持つ(であろう)何らかの数学的構造を見つけることが出来るのではないか、として研究を行っている。具体的には発火しているニューロンの時間的・空間的パターンをミンコフスキー空間内で幾何学的または位相幾何学グラフ理論的に抽象化し、そこに群論的な数学的構造を見出そうとしている[要出典]、ともされる。
前野隆司
前野は、ロボットに人間と同等の機能をもたせるようプログラミングする、といういわゆる人工知能の問題を追いかけている途上で、意識に関する仮説「受動意識仮説」を見出し、提唱している。工学者の前野らしく、意識についてかなり工学的な議論を展開する。
中田力
中田は、脳にはニューロンネットワーク以外の機能構造があるとし、グリア細胞に存在するアクアポリン4を介した水分子のクラスター形成によってランダムなニューロンの発火、つまり覚醒がおこるとする仮説を展開している[19]
野口豊太
野口は、脳内信号と外界との相互関係により、脳神経活動パターンに情報・意味が創生され(例えば「痛い」)、その情報が自立情報であるときだけ(「私が痛い」)、意識(クオリアの「痛い」)が生まれるという。情報・意味の創生には「モザイクボール情報世界仮説」が、自立情報には「組み込み主体情報仮説」が提唱されている[20]

意識の神経相関

神経科学などを専門としている科学者による意識の探求は、人間(あるいは患者)の事例・症例を多数踏まえ、脳の解剖や神経組織の観察・実験などから意識現象と物理的な要素をすり合わせ的に検証している。

フランシス・クリッククリストフ・コッホ
コッホは、フランシス・クリックとともに、科学が意識の問題に挑む第一歩として、「意識と相関する脳活動(NCC)」を神経科学の実験により追求していくことが得策であるとして具体的な研究手法を提案している[21][22]。意識の機能を脳活動と対応づけていくことが着実な進展につながると考えている。意識の機能として将来の行動のプラニングが重要であることから、前頭葉に直接投射のある脳部位の活動がNCCの一部となっていると考えており、解剖的に前頭葉へ投射していない一次視覚野の活動は直接意識に上らないという「V1仮説」を提唱している。その他にも、意識に関して理論的考察から、「非意識ホムンクルス」などの概念も提唱している。クオリアは計画モジュールなどの一歩手前のニューロン連合からつくられると考えている。これはレイ・ジャッケンドフの「意識の中間レベル理論」に準拠し、意識の内容は常に知覚の形式をとると主張している。一方、より抽象的な「思考」などは非意識に遂行されると考えられる。
ジェラルド・エーデルマンジュリオ・トノーニ
視床-皮質系のネットワークで構成されるダイナミック・コアが意識体験を生み出しているとするダイナミック・コア仮説[23]、また視床-皮質系において相互情報量で測られる各部位間の情報的な統合の強さが主観的な意識体験の内容を決めるとする意識の統合情報理論Information Integration theory of Consciousness)を提出している[24][25]

運動準備電位

自発的運動に関する研究から、意識的決定の体験は行動に先んじない事が確認されており(つまり後追いする)、脳内で神経細胞の活動が始まってから数百ミリ秒後に意識的決定の体験が起きる、という順序が確かめられている。このことから「意識とは自分の現状をモニター(監視)する機能である」と結論付けられつつある。 つまり意識はモニター監視した結果をフィードバックする事で、その後の行動に反映するという形で間接的に行動を制御できるが、その瞬間瞬間に行動を直接的に制御しているのではない、といったことである。簡潔に、私たちが持つのは自由意志(free will)ではなく自由拒否(free won't)だ、と表現されることもある。意識的決定と運動に関する先駆的な研究は1980年代にアメリカの生理学者ベンジャミン・リベットにより行われた[26]


  1. ^ G.Bryan Young ら(編), 井上聖啓ら(訳) 『昏睡と意識障害』
  2. ^ Moruzzi G. & Magoun H.W. (1949) Brain stem reticular formation and activation of the EEG. Electroencephalography and Clinical Neurophysiology 1:455–473.
  3. ^ 前田敏博 『睡眠の神経機構』 動物心理学研究 第47巻第2号 99-106 (1997)
  4. ^ 井深信男 『サーカディアン・システムの神経機構とその生理心理学』 The Japanese Journal of Psychology 1985, Vol. 56, No. 5, 300-315
  5. ^ 秋山正憲, 守屋孝洋, 柴田重信 『生体時計の生理学的,薬理学的,分子生物学的解析』 日薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.)112, 243~250 (1998)
  6. ^ 本間研一 「ヒトのサーカディアンリズムと光環境」 人間工学 第37巻 特別号 pp.44-45 (2001)
  7. ^ "By "consciousness" I mean those states of sentience or awareness that typically begin when we wake up in the morning from a dreamless sleep and continue throughout the day until we fall asleep again. " (「意識」という言葉で私が意味するのは、典型的には夢のない眠りから覚めたときに始まり、再び眠りにつくまで日中続く、感覚や気づきのこうした状態である) John R Searle "Mind, Language And Society: Philosophy In The Real World" Basic Books (1999) pp.40-41 ISBN 978-0465045211
  8. ^ Antonio Damasio and Kaspar Meyer "Consciousness: An Overview of the Phenomenon and of Its Possible Neural Basis" The Neurology of Consciousness: Cognitive Neuroscience and Neuropathology Steven Laureys et al. ed. p.4 Academic Press (2008) ISBN 978-0123741684
  9. ^ クリストフ・コッホ著、土谷尚嗣金井良太訳 『意識の探求―神経科学からのアプローチ <上>』 岩波書店 2006年 ISBN 4000050532 pp.28-29
  10. ^ Gerald Edelman, Giulio Tononi "A Universe Of Consciousness How Matter Becomes Imagination" Basic Books (2001) ISBN 978-0465013777
  11. ^ ここでは非常に簡単な区分しか示さない。より詳細な議論については、たとえば哲学分野での議論を反映した文献として、スタンフォード哲学事典の記事、Van Gulick, Robert, "Consciousness", The Stanford Encyclopedia of Philosophy (Spring 2009 Edition), Edward N. Zalta (ed.) がある。また「意識」という概念について分析を行っている様々な論文を、PhilPapersというサイトがリストしている。こちらも参照のこと。(文献リスト)The Concept of Consciousness (英語) - PhilPapers 「「意識の概念」について論じた文献のリスト。」の文献一覧。
  12. ^ Naotsugu Tsuchiya and Christof Koch (2008), "Attention and consciousness" Scholarpedia, 3(5):4173. (オンライン・ペーパー)
  13. ^ Lawrence M. Ward (2008), "Attention" Scholarpedia, 3(10):1538. (オンライン・ペーパー)
  14. ^ Thomas Nagel (1974). "What is It Like to Be a Bat?" Philosophical Review 83 (October):435-50 (Online PDF) 永井均訳、『コウモリであるとはどのようなことか』、勁草書房、1989年、ISBN 4326152222 PhilPapersにネーゲルのこの What it is like の用法と関連した論文をリストしているカテゴリがある。そちらも参照のこと。(文献リスト)What is it Like? (英語) - PhilPapers 「「○○であるとはどのようなことか」について論じた文献のリスト。サイトPhilPapersより」の文献一覧。
  15. ^ Koch, C, and Greenfield, S, (2007) How Does Consciousness Happen? Scientific American (Online PDF)
  16. ^ アレグザンダー & 白川 2013, p. 108
  17. ^ NHKBSプレミアム「ザ・プレミアム超常現象 さまよえる魂の行方」
  18. ^ モーガン・フリーマン 時空を超えて 第2回「死後の世界はあるのか?」
  19. ^ 中田力『脳のなかの水分子』意識が創られるとき 紀伊國屋書店 ISBN 4314010118
  20. ^ 野口豊太 『意識の謎』への挑戦 文芸社 ISBN 978-4-286-08872-3
  21. ^ Florian Mormannクリストフ・コッホ Neural correlates of consciousness. scholapieida.org, 2(12):1740
  22. ^ クリストフ・コッホ著、土谷尚嗣金井良太訳 『意識の探求―神経科学からのアプローチ』 岩波書店 2006年 上巻:ISBN 4000050532 下巻:ISBN 4000050540
  23. ^ ジェラルド M. エーデルマン (著) 『脳は空より広いか―「私」という現象を考える』 草思社 (2006) ISBN 978-4794215451
  24. ^ Gerald Edelman, Giulio Tononi "A Universe Of Consciousness How Matter Becomes Imagination" Basic Books (2001) ISBN 978-0465013777
  25. ^ Giulio Tononi "An information integration theory of consciousness", BMC Neuroscience 2004年, 5:42. doi:10.1186/1471-2202-5-42
  26. ^ ベンジャミン・リベット (著), 下條信輔 (翻訳) 『マインド・タイム 脳と意識の時間』 岩波書店 (2005) ISBN 978-4000021630


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