心のモジュール性
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心のモジュール性(こころのモジュールせい、英:Modularity of mind)とは、心が特定の機能を果たすために個別の生得的な構造を基盤に持ち、それぞれが進化的に発達したという概念を指す。この概念の支持者はノーム・チョムスキーの普遍文法、生成文法が最初にこの概念を示唆したと考えている。チョムスキーの言語に関する解明は、言語が脳の中の「言語獲得装置」に由来することを示唆している。この装置は自律的で言語の急速な学習に専門化された「モジュール」であると仮定された。
- ^ The Mind Doesn't Work That Way http://cogweb.ucla.edu/Abstracts/Fodor_00.html
- ^ So How Does the Mind Work? http://pinker.wjh.harvard.edu/articles/papers/So_How_Does_The_Mind_Work.pdf
- 1 心のモジュール性とは
- 2 心のモジュール性の概要
- 3 議論
- 4 関連項目
心のモジュール性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/04 09:24 UTC 版)
詳細は「心のモジュール性」を参照 ジェリー・フォーダーが心のモジュール性を提唱すると、進化心理学者はこれを支持した。そしてフォーダーが想定した以上のモジュールを仮定した。これを大量モジュール仮説(Massive Modular Hypothesis、MMH)と呼ぶ。モジュールがどのように存在するか、高次の認知プロセスもモジュール化されているのか、モジュール同士がどれだけ独立しているかなど詳細には合意がない。以下の説明はレダ・コスミデス、ジョン・トゥービーらの想定するモジュールである。モジュールは通常、領域特異的、あるいは内容特異的システムなどと呼ばれる。より高次の認知能力や、極端な行動主義で想定されていた汎用学習装置は領域一般的システムなどと呼ばれる。 領域一般的 情報処理装置は領域一般的であっても、同時に専門的機能を持つことがあり得る。それは多くのモジュールに作用することができる。古典的条件付けとオペラント条件付けは適例を提供する。伝統的な視点では、時間的・空間的な連続性が学習装置に刻みつけられると考えたが、適応主義的アプローチでは条件付けを引き起こすメカニズムは野生で効率的に採餌するために機能が特化されていると考える。報酬の量は餌を探し回る状況によって異なるために、上手く設計された装置は程度の違いに敏感でなくてはならず、採餌率の変化に気付かなければならない。 領域特異的 領域制限された装置は内容を与えられることができる。例えば人間の顔認識モジュールは幼児が両親の顔を見分けるのに役立つが、植物を認識するのには役に立たない。このような内容(や傾向)を含んだ専門領域は、内容のない推論システムよりも急速な学習を可能とする。 大量モジュール仮説では顔、感情、場所、動物、ヘビ、体の部位、果物と野菜、植物、血などを即座に判別する認識モジュールがあると考える。また認知的発達の研究はいくつかの専門化された推論モジュールが存在することを示唆する。例えば素朴心理学、素朴生物学、素朴物理学、数の概念などである。自閉症や前頭葉を損傷した人は他者の心を推論するのが上手くないが、他の物理的推論能力はおおむね平常である。コスミデスらは人間の多目的で柔軟な思考と行動は、多数の進化的な専門システムを含む認知構造の上に成り立つと考えるが、ポール・ロジンのような他の人々は各モジュールの相互作用が一般認知能力だと考える。
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心のモジュール性
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生得論はジェリー・フォーダー、ノーム・チョムスキー、スティーブン・ピンカーの業績と関係が深い。特にピンカーは、人間には生まれながらにして認知モジュール(特定の神経構造を持ち、遺伝的で専門化された精神能力)があり、それによって学習し特定のスキル(例えば言語)を獲得できると主張した。例えば、子供は話し言葉は自然に覚えるが、読み書きはそれなりの訓練が必要である。『人間の本性を考える』の中でピンカーは、これを人間が言語獲得が専門化された器官を持っている証拠だとした。 モジュール性の証拠としてあげられるのは他の脳機能を保ったままの失読症の存在、顔認知機能の障害、自閉症児の心の理論の欠如などである。FOXP2遺伝子の変異は重大な言語障害をもたらす事が判明しており、DNA配列も解読されている。この遺伝子はしばしば言語遺伝子と呼ばれる(しかしFOXP2がそれだけで言語能力をすべてコードしているわけではない)。さらにピンカーは食べ物の好み、道徳に関わる感情、道具の使用などもモジュール化されていると考えている。 心のモジュール性をどの機能にどの程度、どのような形で認めるかは認知科学者の間でも議論がある。コネクショニストは全く認めていない。ピンカーや進化心理学者レダ・コスミデスとジョン・トゥービーは多数のモジュールを認めるが、進化心理学の間でも意見の一致がない。フォーダー自身はピンカーやコスミデスらの「多数のモジュール説」に批判的である。発達心理学者パトリシア・グリーンフィールドは生まれたばかりはモジュールが整っておらず、二歳頃にならないと完成しないと主張している。アネット・カーミロフ=スミスは経験や学習がモジュールの形成に影響を与えると考えている。また彼女の視点ではモジュールは一体となって働くことが可能であり、それが一般知能を構成している。
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