フォーダーのモジュール
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 19:15 UTC 版)
「心のモジュール性」の記事における「フォーダーのモジュール」の解説
歴史的に、心の機能構造に関する疑問は、機能の性質に関する二つの異なる理論に分けられた。一つは水平的な視点と表現することができる。精神的なプロセスは例えば記憶、想像力、判断と認識のような機能同士の相互作用であるかのように言及する。それは領域特異的ではない。二つ目は垂直的な視点と表現できる。精神的な機能は領域特異性に基づいて区別でき、遺伝決定的であり、明確に神経学的構造と連動している。そしてそれは計算機的で自律的である。 垂直的な視点は骨相学とその創設者フランツ・ヨーゼフ・ガルの19世紀の運動に遡る。ガルは個々の精神的な機能が脳の物理的な領域に一対一で正確に関連づけられると主張した。それゆえ、人の知性のレベルは例えば下側頭葉の大きさから文字通り読み取ることができる。このモジュール性の単純すぎる視点はもちろん、前世紀に否定された。 しかしながら、ジェリー・フォーダーはチョムスキーと他の言語学的な証拠、そして錯視、心の理論などの知見から精神的な機能と身体的な部位を関連づけることなく、心のモジュール性というアイディアを甦らせた。フォーダーは1983年に『Modularity of Mind』(邦訳『精神のモジュール形式』1985年)を出版し、このアイディアの明確な支持者の一人となった。フォーダーによればモジュール説は行動主義と、認知主義の下位レベルプロセスに対する見解の間のどこかに収まる。 行動主義者は「心」をフォーダーがカプセル化(認知領域が他の認知領域の影響を受けないか、鈍感化)されており非推論的(non-inferential:他の情報を加えられることが無く直線的な経路で伝えられる)であると描写した「反射」と置き換えようと試みた。下位レベルプロセスはそれが推論的であるという点で反射とは異なる。これは「刺激の貧困」で説明することができる。例えば、直接的な刺激(例えば網膜に投影された二次元のイメージ)はまず脳によって受け取られるが、それだけでは結果として生じる出力(三次元的な世界の認識)を説明できない。 対照的に、認知主義者は低レベルのプロセスをより高次のプロセスと連続的であると考える。それは認知的に侵入されやすく、(例えば信念や思考のような)他の認知領域の影響を受ける。しかしそれは下位レベルのプロセスについて正しくない。例えばミュラー・リヤー錯視を考える場合、人は錯視の存在を認識しているにもかかわらず、錯視は維持される。これは他の領域(例えば信念や思考)が特定の認識プロセスに影響できないことを示す。 フォーダーはそのようなプロセスが高次レベルのプロセスと同じように推論的で、反射のような感覚と同じようにカプセル化されているという結論に達する。 彼は下位レベルの認識プロセスのモジュール性を提唱したが、同時に高位レベルの認識プロセス(例えば創造性などを司る)はそれ独自の特性があり、モジュール的ではないと主張した。スティーブン・ピンカーの『心はどのように働くか?』(邦題:心の仕組み)はフォーダーの主張を拡張した。しかしフォーダーはピンカーの視点が楽観的すぎると批判した。フォーダーの『心はそのようには働かない(The Mind Doesn't Work That Way)』はピンカーの著作に対する返答であり、ピンカーはさらに『それならどのように働くのか?(So How Does the Mind Work?)』と反論した。
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