普遍文法
普遍文法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/03 08:19 UTC 版)
詳細は「普遍文法」を参照 普遍文法仮説は、ヒトは生まれつき脳に「普遍文法」を固く組み込まれていると主張している仮説である。これ以外に子供が僅かな言語刺激だけでにどのように言語を習得するのかを説明する方法はないと彼らは主張している(実際に、言語に関する何の事前知識も無しにディープラーニングとタグ無しコーパスだけによって文法を習得できるようなシステムを作ってみれば、ヒトのそれと比べて膨大な計算量が必要なことがわかるだろう)。普遍文法は地球上の言語の全文法体系を内包するある種の文法的なモデルからなるに違いないと彼らは主張している(生物学的に同じ脳を持っているのであるから、生得的に持っているのであれば同一でなければならないはずである、というだけだが)。 普遍文法の初期設定は少なくとも見て取れる限りではクレオール言語と同じである。こういった初期設定は子どもが個別の言語に合わせて言語を習得する段になると無視される。子供が言語を習得するときには、最初の内はクレオール言語の文法と矛盾するような個別言語の特性よりもむしろクレオール様の特性を習得する。 正確には「固く組み込まれている」ということではなく、言語に特化した能力を生得的に持っている、とする主張であることが、普遍文法に関する議論の焦点であり、「文法」という用語が使われる理由である。認知言語学者らは、ヒトの能力としてそのような言語に特化したものを仮定する必要・理由は無いとする立場であり、言語をそのように本能(instinct)とするのは神話だとする The Language Myth. Why Language Is Not an Instinct という書籍がある(ピンカー『言語を生みだす本能』を意識している)。 ただし、普遍文法仮説をとなえたノーム・チョムスキーらによる、生成文法という手法はフォーマルな(形式的な)記述を指向しており、チョムスキアンと呼ばれる彼らとしての研究こそ普遍文法との関わりに拘る傾向があるが、プログラミング言語などの形式言語の構文規則の記述に使われるバッカス・ナウア記法もその一種であるように、(ヒトの)自然言語と無関係な側面においては普遍文法仮説とも全く無関係である。チョムスキー自身によるその方向の研究もあり、チョムスキー階層などがその成果である。
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普遍文法 (Universal Grammar)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/18 05:20 UTC 版)
「第二言語習得の理論」の記事における「普遍文法 (Universal Grammar)」の解説
詳細は「普遍文法」を参照 言語学の分野において、最も影響力がある理論は、チョムスキーの普遍文法 (UG)の理論である。UGモデルの原理、つまり、全ての言語の基本的法則は共通であり、言語間の違いは、パラメターと特性の違いだけであるという考えが、多くの第二言語習得研究の基礎となっている。 UGの立場からすると、第二言語の文法を習得することとは、単に、パラメターを正しく設定するだけのことである。 文の中に主語が有無が文法的に正しいか否かを決定する「pro-drop」パラメターを例にとって見よう。このパラメターは正負の二値をとることが出来、それぞれ、(正)「文は必ずしも主語を必要としない」と(負)「文には必ず主語が必要である」を意味する。 ドイツ語においては、"Er spricht" (he speaks:彼は話す)という文は、文法的に正しいが、"Spricht" (speaks:話す)は正しくない。しかし、イタリア語においては、"Parla" (speaks:話す)は、全く自然であり、文法的に正しい。 イタリア語を習得するドイツ語話者は、聞き取るイタリア語から、主語の有無は任意であることを推察して、「pro-drop」パラメターをイタリア語に合わせて設定しなければならない。全てのパラメターを、その言語に合わせて正しく設定してしまえば、UGの視点からすれば、イタリア語を完全に習得してことになり、学習者はイタリア語の文章を完全に正しく発することが出来る。 普遍文法は、言語間転移(language transfer)についても明確な説明を与える。英語を学習するスペイン語を母国語とする人達は、"It is raining"とすべきを誤って"Is raining"とする間違いをすることがあるが、これは「pro-drop」パラメターがまだ正しく設定されておらず、スペイン語の設定のままであることを意味する。 普遍文法が第二言語習得について不足していることは、言語習得の心理学的過程について扱っていないことである。UGの研究は、パラメターが設定されたかどうかに関するもので、「どのように」して設定されるかの過程については扱っていない。
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