普遍性の種類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/02 18:56 UTC 版)
類型論的研究によって見いだされる普遍性には、次のようなものがある。絶対的普遍性とは、これまでのところ例外なく全ての言語に当てはまるような普遍性であり、たとえば次のようなものが挙げられる(ただし異論がないわけではない)。 上唇と下の歯で閉鎖を作って調音する音をもつ言語は(生理的に不可能ではないが)存在しない。 全ての言語は名詞と動詞の区別を持つ。 それに対して、次のような命題には少数だが例外があり、非絶対的普遍性と呼ばれる。 摩擦音が一つしかない言語では、その摩擦音は [s] である。(例外:ハワイ語の唯一の摩擦音は [h] である) ほとんどの言語で、平叙文の末尾を上昇調で発音すると yes/no 疑問文として機能する。(例外:タイ語などでは疑問をイントネーションで示さない) 絶対的/非絶対的の区別とは別に、普遍性には含意的か、非含意的かの区別がある。含意的普遍性とは条件文の形で記述されるような普遍性であり、たとえば次のようなものが挙げられる。 ある言語が VSO(動詞-主語-目的語)語順をもつなら、その言語では形容詞は名詞に後続する。 この含意的普遍性の発展的な形として「含意階層」の考え方がある。たとえば、英語ではさまざまな文法的役割をもつ語が関係節の先行詞になれるのに対し、マダガスカル語では主語しか関係節化できない。エドワード・キーナンとバーナード・コムリーは、名詞句の文法役割には主語>直接目的語>非直接目的語>所有者、といった階層があり、言語がある文法役割の名詞句を関係節化できるなら、その言語ではより上位の文法役割の名詞句も関係節化できるという普遍性があることを示した。これは名詞句の接近可能性階層と呼ばれる。
※この「普遍性の種類」の解説は、「言語類型論」の解説の一部です。
「普遍性の種類」を含む「言語類型論」の記事については、「言語類型論」の概要を参照ください。
- 普遍性の種類のページへのリンク