真面目を個性にコメディでも開花
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「小芝風花」の記事における「真面目を個性にコメディでも開花」の解説
以前は真面目な役が多かったと語る二十歳の小芝だが、ドラマ『マッサージ探偵ジョー』では、その天真爛漫な演技がドラマの幅を広げるエッセンスを加え、コメディ初挑戦ながらしっかり存在感を残す。自身はただ表情豊かに大きなリアクションで応えることに徹したというのだが、共演の小澤征悦は「全ては小芝さんがコントロールしていた」「総監督みたいなもの」だったと話す。小芝は「例えば何かお仕事をもらえたんだったら、“これぐらいできるだろう”って思われているところよりも、もっと上をいく結果を残したいし、できれば、もう一回仕事したいなって思ってもらえるようにっていうのはすごく思っていて。」と語るが、監督の根本和政も小澤征悦、和田正人たちが次々に繰り出すアドリブに毎回ついていく小芝を高く評価。その後、根本が演出する『新・ミナミの帝王』には、小芝が新レギュラーとして参加することに。 2019年1月期のドラマの中でも大きな反響を呼んだドラマ『トクサツガガガ』では、コメディエンヌとしての才能を発揮し思い切りのいい演技でドラマをけん引する一方、シリアスなシーンでの抜群の演技力と共演者に光をあてる“受けの芝居”など、本作で連ドラ初主演を務めた小芝の存在がドラマに感動とリアリティーをもたらしたという。ドラマ満足度調査も第2話で急上昇。この際のインタビューで「真面目すぎて損と言われますけど、満足したらそれまで。この性格で良かったと思います」と語る小芝だが、コメディ作品にも真面目を貫きようやく代表作と出会うこととなる。そして“隠れ特撮オタク女子”役の熱演ぶりがSNSを中心に評判を呼び、最終回の放送日には緊急ファンミーティングも開催され、各方面から続編を望む声も。中でも、主人公の“わかりみが深い”言動や、特撮愛あふれる作風が大きな話題となると、小芝は「コメントで『ヒーローショーを見て、目をひん剥いているところとかすごいわかる!』とか言ってくださったりしたんですけど、自分では無意識だったんです。特撮オタクの助監督さんも『風花ちゃん、オタクの才能があるよ! もうそれにしか見えないよ!』って言っていただいたんですが、オタクだからこうしようというのはとくに考えていませんでした。撮影をしていくうちにシシレオーやエマージェイソンといった、ヒーローたちのことをどんどん好きになっていくんです! 普通にヒーローショーを楽しんで見ていただけなんです!」などと話す。そして、放送終了後にはNHKの発行する『月刊みなさまの声』で大きな反響があった番組として取り上げられたりDVD化を希望する声が上がっていると紹介されると、ゴールデンウィークにNHKスタジオパークでの『トクサツガガガ展』の開催と、BSプレミアムでの一挙再放送ならびにお宝映像をまとめた特別番組の放送が決定。さらにドラマ再放送の直前にはDVD-BOXの9月発売が発表された。小芝は「本当にうれしく思っています。放送が終わった後も、『ガガガ面白かったよ』と温かい言葉をかけていただくことが多く、こんなに愛される作品に携われて、とても幸せです」とコメント。さらに「いろいろな愛が詰まった『トクサツガガガ』をリアルタイムで観て下さった皆さんにはもう一度。そして、気になっていたのに観られなかった! という皆さんにも、楽しんでいただけるとうれしいです」と語ったという。 『トクサツガガガ』の制作統括・吉永証は、「小芝さんは非常に表情豊かなんですよね。だから、キリッとしている部分も、ズッコケている部分も、自在に表現ができる。」「漫画の中でもドラマでも、モノローグがたくさん出てくるんです。それを表現するには、綺麗なだけの女優さんではダメ。お芝居が優れていないと表現できません」と高く評価。さらに、演技だけでなく、本人の持っている「嫌味のない感じ」「人柄の良さ」「素直さ」が、誰からも愛され、かつ「原作上のヒロインの『筋の通し方』に通じる雰囲気があったこと」などもオファーの決め手だったと述べ、「小芝さんなしでは、この作品は今の形にならなかった、本当に感謝しています。」と語る。そして『トクサツガガガ』は「遊び心あふれる上質なエンタメ」として2019年3月度のギャラクシー賞月間賞を受賞。小芝にとっても大きなステップアップとなるこうした反響に関してライターの増當竜也は、小芝が直前に撮影していた配信ドラマ『TUNAガール』を「『トクサツガガガ』に至る小芝風花のオタク道(?)を開花させた先駆的“映画”」として取り上げ、「簡単に言ってしまえば、本作はマグロに興味なかった女の子がだんだんマグロ・オタクになっていく過程を微笑ましくも繊細に、そしてさわやかに描いた青春“映画”で、およそ1時間半の流れの中でヒロインの表情が次第に生き生きと変わっていくのを目の当たりにしながら、ここでの経験が続く『トクサツガガガ』の演技にも活かされていったのだなあと、非常に納得できるものがあるのです。」と分析。この『TUNAガール』の小芝風花について、自ら「近大マグロ」を取材してオリジナル脚本も書き上げた監督の安田真奈は、「撮影現場でも皆が大好きになってしまうぐらい、とにかく可愛くて、愛想が良くて、頑張り屋さんなんです。それに一つ一つの動作のキレが良くて、怒るにしても笑うにしても本当にピチピチ。ラストシーンなんて、もう超可愛い!とみんなで震えながら見守っていました。クライマックスの長ゼリフも、削ろうかと一瞬思ったのですが、『研究の話だから、マグロオタクの先輩を超える勢いで、アツく語ってほしい』と伝えて、がんばってもらいました。小芝さんも『素敵な作品に出会えてよかった』と喜んでくれました。」と語る。 ドラマ『べしゃり暮らし』では、大阪出身の“ネイティブ”な関西弁による漫才を披露し話題に。そんな小芝についてライターの志和浩司は「漫才師の静代役と、『トクサツガガガ』で演じた特撮オタクの叶役は、見た目も中身も好対照なキャラクターだ。表現の幅が広くなければこなせない。」と分析。「ところで、ネットの検索で“小芝風花”と入れると、検索候補ワードに“小芝風花 てへぺろ”というのが出てきた。」「第5話で、2人のイケメンに挟まれ、『てへっ、てへぺろ』と照れる妄想シーンがあったが、それがファンの間で『かわいい』と大好評を呼び、次々と検索の対象になったらしい。」「たわいない場面なのだが、たった一つの場面やノリで話題を持って行ってしまうのは売れる女優の片鱗を感じさせる。」と語る。2019年に演じた役で、隠れ特撮オタクのOLや裏社会の“偽造屋”、マグロ養殖や就活に励む女子大生、彼氏を救うためラップでゾンビを倒す女の子やお笑いに青春をかける高校生、誤報被害に苦しむ身重の未亡人や新人アナウンサーと、七変化を見せた小芝だが、自身もさまざまな役に挑戦できる今がとにかく楽しいと述べ「コメディー作品は、奥が深いんですよね。」「自分で台本を読んでいるだけだと、ひとりの設計図ができるだけですけど、一度合わせてみると自分では予想しない打ち返しがある。」「私、このシーンではここを大事にしたいとか、この役はここを見てほしいとか、作品のスパイスになりたいから、やりたいことがたくさんあるんです。」「このお仕事には正解がないし、だからこそ面白い。」と語ったという。 ドラマ『美食探偵 明智五郎』ではヒロインを演じた小芝だが、フリーライターの木俣冬は「ひたすらハイテンションでわいわい騒いでいる小芝風花と北村有起哉がコメディリリーフの両輪として、大きめな演技でドラマを盛り上げ」ていたと分析。本作は脚本を『トクサツガガガ』と同じ劇団「ロリータ男爵」の田辺茂範が担当しており、田辺たちの劇団の上演の「俳優がセリフをまくしたてる感じ」をしっかり受け継いでいたとも評している。原作の東村アキコも「風花ちゃんもそのまま苺って感じ!」と絶賛。また、「絶対にマリアに心を持っていかれない心の強さと明智への繊細な恋心を抱えた苺を演じた小芝風花の存在感は特筆すべき」「『美食探偵』は小芝風花の出世作に」との声も。特に、第6話はラストシーンが異例の演出で、そのシーンについては「二人の間の距離が、手を伸ばしても届かない、心の距離を表しているようでした。撮影前は不安でしたが、『よかった』というご意見もいただけてうれしいです」と小芝も語る通り、感情がダイレクトに伝わるこの演出に「#美食探偵」がTwitterのトレンド1位になるなど反響を呼んだとのこと。プロデューサーの荻野哲弘は、舞台『オーランドー』で小芝の演技に瞠目したとのことで、「多部未華子さん扮する主人公を翻弄するロシアの姫君役を演じる、当時20歳の小芝さんは、実際のご本人よりかなり大きく見える存在感を放っていました。」そして、ドラマ『トクサツガガガ』での小芝も「モノローグの嵐を、素晴らしい声と顔芸で演じ切っており、その姿は、私が“日本一のコメディエンヌ”と信奉する多部未華子さんの若き日を彷彿とさせるものでした。」と語る。そして、社会情勢で撮影方法が変わったシーンについても「実は、あのシーンはテストなしの一発本番なんです。中村さんと小芝さんだからこそできたことですね。」と評している。また、相棒・小林苺を演じる小芝について、明智役の中村倫也は、「最初から完璧でしたね。この作品で、さらにドカンと注目されたらうれしいなと思いながら、一緒にやらせてもらっています。」と語る。一方の小芝も、中村について「作品への参加の仕方や役へのこだわり、周りのスタッフさんへの気づかいとか。私が演じた役に対しても、親身になって一緒に考えてくださるんです。」「主演として、自分のことだけではなくて、周りのことも見れる、フォローできるってすごいなと思いました。」と述べるなど、今後の女優人生においても大きな刺激になったとのこと。 そしてこの年の小芝は、コロナ禍で最終話ギリギリまで撮影の長引いた4月期ヒロインに続き、息つく間もなく7月期の『妖怪シェアハウス』にて民放連ドラ初主演。そんな今作レギュラーキャストのなかで最年少の座長について、文筆家の折田侑駿は「小芝が民放の連続ドラマで主演を務めるのは今作が初。かねてより将来を有望視されていた彼女が、ついにここまでやってきた。」などと述べ、「ヒロインに続いて単独主演というのは、彼女が一人の演技者として力をつけてきた証拠であり、小芝が“いま必要とされている存在”だからに違いない。彼女の奮闘する姿と笑顔には、見ている者を勇気づける何かがあるような気がする。」などと分析する。このようにコメディから重厚な役までこなす演技力で“次世代のコメディエンヌ”とも評されるなかで、小芝は「コツコツ9年間頑張ってきたのを見てくださっていたスタッフさんに『あなたとお仕事がしたい』と言ってもらえるようになりました。」「こういうコメディー作品を見て笑ったり、楽しい気持ちになってもらえるのは嬉しいです。」と語る。またその一方で、自らを「真面目すぎて面白くない人間」「校則で制服のスカートを折ったらいけないことになっていても、みんな折っていて先生も気にしてないんです。だけど自分が折ると、すごい罪悪感が生まれて、結局戻してしまいます」とも。そして、「私自身はそんなに個性が強い役ではないので、私が無理に面白いことをしなくっちゃという感じではなくて、芸達者で面白い先輩方のお芝居に素直にリアクションできたらいいなって。瞬発力を大切にしようと心がけています。」「周りをちゃんと見て、しっかり聞く、受けのお芝居を大事にしていますね。」などと述べ、その際の弾けて振り切った顔芸も「最初は恥ずかしさもあったのが、私は意外と顔を崩すのに抵抗がないことに気づきました(笑)」とも語る。また、演技面での苦労はとの問いには「基本は私、重い役でもコメディでもカットがかかると小芝になる。」「役を引きずるというのはないので、切り替えられなくて苦労したというのはないですね。」と答え、役作りの工夫については「作り込まずに現場に入って皆さんと一緒に作れたらいいなと。」と話したとのこと。 『妖怪シェアハウス』のプロデューサー・飯田サヤカは、「不思議な人です。演技に手を抜かず、努力や工夫を惜しまず、思い切りがよく、いつもはつらつとした笑顔で周囲の人への気遣いも100%、誰もが小芝さんの年上なのに、一番小芝さんがしっかりしているから、みんな彼女の人格を尊敬しています。なのに、小芝さんはお芝居で食べなくちゃいけない虫にギャーと叫んで逃げ回ったり、怖い話をキラッキラの瞳で聞いてたり、さっきまで笑ってたと思ったら2秒後には居眠りしていたり、『大人の小芝』からふとした瞬間、突然『子供の小芝』が顔を出すのです。」と語る。フリーライターの田幸和歌子は、「昨年放送の『トクサツガガガ』(NHK総合)主演あたりから、グンと垢抜けて綺麗になったと言われる彼女だが、持ち前の『育ちの良さそうなお嬢ちゃんっぽさ』が醸し出す真面目さ、野暮ったさ、無防備さは健在で、放っておけないかわいさがある。」「おまけに、小芝は『言いたいことをなかなか言えない、困り笑い』が絶妙に上手い。『トクサツガガガ』もそうだった。『大丈夫です』と言っても、全く大丈夫じゃない感がビンビンに伝わってくる。」と述べ、ドラマ『妖怪シェアハウス』の第一の癒やしは、なんといっても澪を演じる小芝だと分析している。作家で五感生活研究所代表の山下柚実は、「もう、演技の幅がハンパない。いささかの躊躇もない。」「最初に『小芝風花』という名前を聞いた時は、響きがどこか古風で演歌的かつその昭和顔も手伝って、陰翳のようなものを感じました。しかし実は本名とか。しかも、女優になる前は、何とフィギュアスケートの選手でバリバリの体育会系というのだから二度びっくり。たしかに言われてみれば、筋肉の躍動感が他の女優とは全く違う。」と述べている。出版プロデューサーの高須基一朗は、小芝の「声優のように透き通ったハイトーンが役どころの可愛さを際立たせ、彼女の魅力を引き出している。」と語り、さらに、ミュージカル仕立てに無理やりにつなげて終わる斬新さの『妖怪シェアハウス』第6話のエンディングについて「このテンポを引っ張っていける小芝は、令和らしい魅力的な女優だ。」と評している。そして『妖怪シェアハウス』は、土曜ナイトドラマ枠の個人視聴率歴代最高タイ(『おっさんずラブ-in the sky-』と同率の2.4%)、世帯視聴率歴代最高タイ(『M 愛すべき人がいて』と同率の4.7%)を記録。2020年9月度のギャラクシー賞月間賞にも選ばれ、ドラマ続編と映画も制作されることに。 コラムニストのペリー荻野は『マッサージ探偵ジョー』以来の彼女の演技の注目点を「振り回され芸」だと分析。「振り回されて、誰かの周りをくるくる回るんじゃなく、自分自身で回れることに気づくヒロイン。それはまるでフィギュアスケートのような…って、」「どこまでも『振り回され芸』。プロの技だ。」と評している。フリーライターの武井保之は「作品に恵まれぬ不遇の時代を経て、自分なりのポジションを見つけたいま、その役に取り組む真摯な姿勢がようやく実を結びつつある。」「若くしてコメディエンヌという道を歩みはじめ、女優としてのイメージ定着を恐れず、ドラマシーンでそのポジションを確立しようと邁進する姿からは、溢れ出るような力強いエネルギーを感じる。」と評し「デビュー以来、地道に積み上げてきた演技力もあり、小芝ならではの役柄にハマった芝居が、観る者に感動を与える女優として静かなブレイクを迎えたのだ。」と分析する。コラムニストの堀井憲一郎は、「どうやら、小芝風花が画面を引っ張っていく力は尋常ではないようだ。まるで魔法をかけるかのように、魔術的な表情でまわりのものを巻き込んでいく。表情の魔力だ。」「小芝風花が力を発揮するのは、悩んでいたり、困っていたり、驚いてる瞬間である。そういうときに彼女の風貌は強い力を発揮する。中心の渦となって、周りを強く引き込んでいく。つまり、困ってる姿で、世界を牽引するのだ。そういう強さを持った女優である。あらためて、小芝風花のこれからの可能性を強く感じさせるドラマだったとおもう。」と『妖怪シェアハウス』での小芝を総括している。しかし、このように自身への高い評価が次々と語られる一方で、インタビューでその手応えを聞かれた小芝からは「不安です」と意外な回答が返ってきたという。そしてその理由を「似たような役柄が続くと、その役の中でその役らしさを出していくのが難しくなっていくし、何をやっても同じように見られるのはすごく嫌です」と語る。「その役にはその役の個性があると思って、『全然役は違うんだけどな』って毎回葛藤していますね。」と役と真摯に向き合っているからこその悩みを明かし、実は「自分のビジュアルや性格がすごく普通で、それが一種のコンプレックスでした」と打ち明ける。だからこそ「コメディー作品で振り回されるような役を面白いと思ってもらい、またこういう作品に起用される。それが一つの個性となると思うとすごくうれしい」。とはいえ、「女優としてはもっと幅のある役、作品にもかかわりたい。怖い役、猟奇的な役、黒幕みたいな役もやりたいですし、年齢的にも恋愛ものや社会派のシリアスな役もやりたいですね」と貪欲に語ったという。
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