ロシア革命と米国参戦の影響とは? わかりやすく解説

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ロシア革命と米国参戦の影響

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 14:34 UTC 版)

国体」の記事における「ロシア革命と米国参戦の影響」の解説

1917年大正6年)春のロシア革命米国参戦により、デモクラシーの波が日本押し寄せる米国ではウィルソン大統領第一次世界大戦に参戦する理由を「民主主義にとって世界安全にするために」と演説する米国民主主義のために戦うと称したことで日本でも民本主義論がますます盛んになるまた、ロシア革命世界震撼させる日本の新聞雑誌にも革命気分乗じた記事論説増える同年5月寺内正毅内閣内閣訓令第1号発して曰く欧州戦役の影響全世界波及し、その関係するところは単に政治経済上にどどまらず思想上風教上にも及び、誠に恐るべきものがある。この時にあたって政務職司にある者は、すべからく立国大本鑑み国体尊崇すべきを思い国情異にする海外の事例左右されずに帝国憲法の根義に考え自重して適従するところを誤らず、紀律守り一意奉公し至誠君国尽くし、それによって国民模範であるべし、と。また、同月地方官会議において内閣総理大臣訓示して曰く近時言論界風潮大変に放漫に流れ好んで危険過激言論もてあそび卑劣猥雑記事掲げて国民思想誘惑し、そして国体の本義誤り皇室尊厳汚し純朴な風俗を壊す恐れがあるいやしくも国体破壊し秩序紊乱し人心蠱惑するような記事論説厳重に防ぐ道を講じなければならない言論界外国勃発した政変ロシア革命)を引援して我が国体に論及するものがある。地方当局者は適宜善導安寧秩序保持すべし、と。 同年9月寺内内閣臨時教育会議官制公布する。これより4年前、教育勅語趣旨徹底して学制改革することが十数年来懸案であったため、貴族院建議に基づき文部大臣管下教育調査会始めて設けた教育調査会調査進めた懸案解決に至らなかった。1917年大正6年教育調査会改め内閣総理大臣直属臨時教育会議設け組織改造し調査周到期することになる。その官制3月ロシア革命直前立案され、翌月閣議決定されたが、その後6か月の時を経て9月上諭案を改めて再び閣議決定取り直し異例の上諭を付して公布される。その上諭に曰く、朕、中外情勢照らし国家将来考え内閣委員会を置き、教育に関する制度審議させ、その振興を図らせる、と。官制公布翌月臨時教育会議について寺内総理大臣が演示して曰く我が帝国万世一系天皇戴き君臣の分は早く定まり国体精華万国卓越する。ここに教育勅語趣旨存する欧州大戦勃発以来交戦各国戦火の間に学制革新図り自強の策を講じている。我が帝国教育を一層盛んにして国体精華宣揚堅実志操涵養して自強方策確立すべし。もし欧米学制模倣するとばかり急いで知らず知らず国体精華を傷つけることがあれば国家憂患はこれより大きいことはない、と。臨時教育会議中心人物総裁平田東助副総裁久保田譲貴族院議員小松原英太郎同一喜徳郎、同江木千之、そして文部大臣岡田良平である。いずれも元老山県有朋直参子分である。 1917年大正6年10月内務省警保局長永田秀次郎私人資格で「民本主義対す理解」を発表する曰く日本において発達した尊皇愛国思想は、君民一体、民を本とする(民本君主主義である。外国デモクラシー人民人民のための人民による政治かもしれないが、これを日本移し替えれば民意暢達せしむる政治」または「万機公論決する政治」に当たる。前者我が国建国以来の大精神であり、後者五箇条の御誓文により我が国行われている、と。 同月吉野作造が『大学評論』に「民本主義国体問題」と題して曰く民本主義日本国体反しないし、君臨すれども統治せずというような英国流も日本国体反しない、と。 同年11月から12月にかけて浮田和民雑誌太陽』に「欧州動乱民主政治新傾向」と題して曰く一国政治君主国体でも共和国体でも当然に民本主義なければならない国家国民全体国家であって君主国民のための君主である。民主政治とは必ずしも国体政体に関する憲法上の意義有するものではない。徐々に選挙権拡張すれば民主政治であるといえる今後世界各国国体政体如何に関わらず人民多数政治上の勢力であることは疑いない。将来民主政治男女協同になる傾向がある、と。 この間同年11月ロシア暦10月ロシア十月革命がおき、マルクス主義政権世界で初め誕生するロシアは、過激思想導かれて無秩序に陥り、ほとんど阿鼻叫喚修羅場化し、その皇室悲惨な末路遂げる。日本ロシア革命の関係により発禁処分受けたものは1917年中に7件あり、そのうち1件は日本国体呪いロシアに倣うべしと主張するものであった大阪朝日新聞ロシア革命過激派推奨する記事頻りに載せる早稲田大学では学生騒擾起こし早稲田革命などの語を用い、まるでロシア革命真似たのような観を呈する同年12月尾崎行雄が『立憲勤王論』を著して曰く皇室の尊栄と国民幸栄により日本世界無双である。その原因一つは「君意民心一致」にある。君意民心一致のためには議会設け民心聴くとともに声望ある人物多数党の中から挙げて行政長官任命する政党内閣主張の根拠はここにある、と。以上のように主張する同書尾崎行雄年来主張結晶であり、尾崎今こそ適時であると見て同書発行したといわれる同書世間注目惹き後藤武夫らは反対論著して尾崎行雄の論は仮面勤王論であり、実は民主主義鼓吹するものであって我が国体を誤るものである批判する1918年大正7年1月吉野作造が「民本主義意義説いて再び憲政有終の美を済(な)すの途(みち)を論ず」と題する長大論文発表する吉野作造はこの2年前に民本主義論を提唱してから民主主義論議中心であったが、この時になって、これまで思想多少混乱があり発表方法宜しくなかったといって、この論文を『中央公論』誌に掲げたのである。この論文2年前の論文確かめるものにすぎないが、要は憲政本義として参政権拡充主義である民本主義主張することである。この論文は再び言論界問題となり、これに対す批評誘発する批評主なものは、北一輝の弟で早稲田大学教授北昤吉による「吉野博士の民本主義評す」である。北昤吉の評によると、吉野作造民本主義論は主権論触れないようにしていることから、その論は矛盾曖昧不徹底誤謬を含む。主権論回避すること処女のごとく、参政権拡張主義をもって虎視眈々天下志すこと奸雄のごとし、という。 1918年大正7年2月井上哲次郎が『増訂国民道徳概論』を出版する。これは1912年出版の『国民道徳概論』を増補改訂したのである1912年版1918年版の間の異同をみることで、この6年間で井上哲次郎国体論がどう変化したかが分かる国体に関して次の箇所注目される。 「第三章 国体国民道徳」で日本国体他国比較して議論している箇所において、1912年版では「露国などは少し日本似たところがある。露国一種特有な政教一致国体成しておる」などと書いて、帝政ロシア国体日本国体類似性示唆していたが、1918年版ではロシア革命勃発受けたためか、その箇所全て削除する。その一方で孔子の子孫ローマ法王など代数長い系譜との比較増補する。のちの昭和期日本国体隔絶性を高めていくが、第一次世界大戦期においては必ずしも隔絶性を強調しない形で議論されていたことがわかる。 「第四章 神道国体」で天壌無窮観念外国のそれと比較している箇所において、1912年版では外国における唯一の例外として秦の始皇帝の例を挙げていたが、1918年版では周王朝ヘブライ人天壌無窮観念があった例を追加するいずれにしても外国における天壌無窮観念現実無窮でなかったので、日本天壌無窮とは大きく異なると論じる。また神道国体の関係について、1912年版では神道真の威力があるとすればそれは国体に関する側であると述べ神道宗教として幼稚であると断定していたが、1918年版はこうした口調をやや弱め、「これまでの神道幼稚な感があります」、「宗教としては見劣りがする。もっとも今度神道革新して大に発展せしめたならば、どうなるか分らぬけれども、今まで神道はそう偉いものではない」と書き改める。さらに神道革新するために、淫祀邪教的な神道はむしろこれを撲滅すべしといって強圧的態度を示す。 「第十章 忠孝一本国民道徳」で民主主義民本主義君主主義の関係について論じ箇所において、1912年版では民主主義民本主義も同じものである理解し民主主義君主主義調和できると断言していたが、1918年版では重要な改変行い民本主義君主主義調和できるが民主主義君主主義両立できない主張する井上哲次郎はこの6年間の大正デモクラシー進展をみて、1912年版説明では対応できない考えたのである1918年大正7年3月浮田和民が『太陽』誌に「国際上の民主主義日本国体」と題して連合国戦争目的である民主主義というのは国際上の民主主義であると述べ、これが日本国体反しない所以説く。これは国際上の民主主義実際的に説いた初めての論説である。以下のように言う(大意)。 今後外交秘密主義をやめ公開主義でいかなければならない公開主義外交いわゆる民主主義外交である。 国際上の民主主義というのは、決し各国内政干渉し、その国体政体変更しようとする主義ではない。英仏主張国際上の民族の自由や小国独立擁護することを主義とし、これを民主主義称するのだから、たとえ同盟国中に万世一系皇室戴く日本があっても、英仏主張に少しも矛盾しない連合諸国いわゆる民主主義ドイツ至上主義反対する立場である。むしろこれを自由主義または民族主義といったほうが穏当で正確であるが、自由主義といって前代のように消極的なものではなく積極的に人民の意思成就しようとするものだから民主主義といわなければ世論満足しない。また民族主義というのは両刃の剣であり、強大民族弱小民族強いて屈服させ同化させる意味もあるので、いよいよ国際上に民主主義という語が流行するようになったわけである。 このように民主主義の意味解すれば国際上に民主主義味方であることは決し日本国体悪影響及ぼさないましてや民主主義民本主義解すれば、それは井上哲次郎の言うように、建国以来日本国是である。 浮田和民翌月にも同誌に「参戦目的出兵問題」を載せ日本参戦目的国際上の独裁主義を破ることであり、国際上の民主主義のために戦うものにほかならない説く。この月(1918年4月)は民本主義論が最も賑わった月であり、多く論者様々な論説発表したその中で例え稲毛詛風は『雄弁』誌同月号に「外来思想国民生活」を載せ民本主義各種概念国体の関係を次のように分類する広義民本主義人道的人格主義普遍的人格主義)… 日本では極めて幼稚であったが是非必要なものである。 個人的人格主義(特殊的人格主義)… 排他的になる弊害があるが、権利思想承けるものであり、日本国民には必要なものである。 狭義民本主義政治上の民本主義極端なもの(民主主義絶対的民主主義 … 全く外来的であり日本国体許容されない。 相対的民主主義皇室存在認めるものであるが、人民主権者とし君主機関視する点において日本国体許容されない。 穏当なもの政治目的に関するもの(一般国民福利)… 日本古来この主義である。 政治運用方針に関するもの(国民意向に従う)… 日本では十分に発達していないが、国体許容されないものではない。ただし為政者自発的に採用するものであって民衆主権者強制するものであってならない1918年大正7年6月、『太陽』誌が臨時増刊号世界再造」を刊行する。同号は世運に関する各種問題集めたものであり、その中で美濃部達吉近代政治民主的傾向」が民主主義国体の関係について論及している。曰く、もし民主主義法律上の意味解して国民法律上の最高統治権者とするならば、明らかに日本国体両立しない。これに対して政治上の意味における民主主義は、少しも日本国体抵触するものではなく、むしろ更に国体尊貴発揮する所以である。この意味における民主主義、すなわち民政主義明治維新以来国是であって五箇条の御誓文に「広く会議興し万機公論に決すべし」というのは最も直截簡明民政主義表現したのである、と。 1918年大正7年8月白虹事件が起こる。大阪朝日新聞前年以来ロシア革命過激派称賛する論説頻りに載せ、またシベリア出兵米騒動に関して寺内正毅内閣攻撃していた。8月25日に「日本今や最後の審判受くべき時期にあらずや」という記事載せる記事中に「白虹日を貫けり」という故事成語を引く。この句は、白虹武器、日を君主象徴として臣下白刃君主危害加え予兆とされる。同紙は新聞紙法41安寧秩序紊乱により起訴され社長右翼から暴行を受ける。 1918年大正7年9月非立憲的な寺内正毅内閣米騒動責任をとって崩壊し立憲政友会原敬内閣誕生する同年11月内務省警保局が『我国に於けるデモクラシー思潮』を出版する同書表紙に「秘」と記される秘密文書である。同書本文同局事務官安武直夫の私稿を別冊として付け形式である。警保局名義序文曰く世界今やデモクラシー中心に回転している。我が国でも、これに関して論議しない新聞雑誌はない。ほとんど現代思潮中心為し一般人心もその影響著しく受ける。しかし論説内容は様々であってデモクラシー民本主義観念補足することは容易でない。これらの論議思潮傾向窺うための参考として本書出版する、と。

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