だい‐すう【代数】
代数
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2012/08/22 12:16 UTC 版)
代数(だいすう)
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対合環
数学、特に抽象代数学における対合環(ついごうかん、英: involutive ring, involutory ring)、∗-環(スターかん、英: ∗-ring)[注 1]あるいは対合付き環(ついごうつきかん、英: ring with involution)は、環構造と両立する対合(共軛演算、随伴)を備える代数系である。可換 ∗-環 R 上の結合多元環 A がそれ自身 ∗-環でもあるとき、二つの ∗-環の ∗-構造が両立するならば、A を ∗-環 R 上の 対合多元環(ついごうたげんかん、英: involutive algebra; 対合代数)、∗-多元環(スターたげんかん、英: ∗-algebra; ∗-代数)あるいは対合付き多元環(ついごうつきたげんかん、英: algebra with involution; 対合つき代数)という。
対合環における対合(∗-演算)は複素数体における複素共軛を一般化するものであり、また対合多元環における対合は複素行列環における共軛転置あるいはヒルベルト空間上の線型作用素のエルミート共軛を一般化するものである。
定義
対合環
単位的環 R とその上の逆転自己同型的対合 I: R → R の組 (R, I) が対合環あるいは対合付きの環であるとは、対合 I が R の乗法半群構造と両立する(乗法半群が対合半群を成す)ときに言う。
より具体的に書けば、写像 I は以下を満たす[1]: x, y ∈ R は任意として
- 加法律: (x + y)I = xI + yI,
- 反乗法律: (xy)I = yI xI,
- 単位律: 1I = 1,
- 対合律: (xI)I = x.
条件 3. は実は過剰である。実際、条件 2., 4. によれば 1I もまた乗法単位元でなければならないが、乗法単位元の一意性により 3. を得る。
対合 I に対して元 xI を元 x の(I に関する)共軛元あるいは随伴元と呼び、特に xI = x を満たす元 x は(I に関して)自己共軛 (self-conjugate) あるいは自己随伴 (self-adjoint) であると言う[2]。
- 対合環の原型的な例は、複素数体や代数体上で複素共軛をとる操作を対合と見たものである。
- 任意の対合環 (R, I) 上で(対合 I に関する)半双線型形式が定義できる。
- イデアルや部分環などの代数的対象で、対合 ∗ に関して不変であるようなものを考えることにより、∗-イデアルや ∗-部分環などの概念を考えることができる。
対合多元環
可換対合環 (R, I) 上の多元環 A とその上に定義される対合 J の組 (A, J) が対合多元環であるとは、(A, J) はそれ自身対合環であって、なおかつ R の元によるスカラー倍に関して、二つの対合 I, J が
- (rx)J = rI xJ (∀r ∈ R, x ∈ A)
定義により、対合多元環 A 上の対合 J は、λ, μ ∈ R, x, y ∈ A に対して
- (λx + μy)J = λI xJ + μI yJ
を満たす。即ち J は A 上の共軛線型写像である。[4]
注意
文脈上紛れの虞が無いならば、対合環 (R, I) やその上の対合多元環 (A, J; R, I) における対合を単に ∗ で表す(I, J を記号の上では区別しない)。また単に台集合のみを以って、∗-環 R, ∗-多元環 A などと呼ぶ場合は、暗黙的にこのような状況のもとであることがしばしばである。
∗-環の類似概念として、単位的環を非単位的環 (rng) や(マイナスを持たない)半環 (rig) などに変えて ∗-rng, ∗-rig なども考えられる。同様に、しばしば ∗-多元環は結合多元環とは限らない分配多元環であるようなものも考える(係数環は単位的 ∗-環だがその上の ∗-多元環では単位元を仮定しない、というようなこともある)。
例
- 自明な ∗-環: 任意の可換環は、恒等写像を自明な対合と見て、∗-環にすることができる。
- ∗-環および実 ∗-多元環の最もよく知られた例として、複素数体 C 上で複素共軛を対合と見たものが挙げられる。
- より一般に、適当な元の平方根(たとえば、虚数単位 √−1)を添加して得られる拡大体はもとの体(これを自明な ∗-環と見て)の上の ∗-多元環である。添加した平方根の符号反転が主対合を与える。
- 適当な D に対する二次の整数環 も一つ前の例と同じ方法で対合を定めて可換 ∗-環になる。特に、二次体は適当な二次整数環上の ∗-多元環になる。
- 四元数体、分解型複素数環、二重数環などを含む様々な超複素数系は、自身のもつ共軛をとる主対合のもとで ∗-環であり、また実数体を自明な ∗-環と見て ∗-多元環である。しかし、ここで上げた三つは何れも複素多元環でないことに注意。
- フルヴィッツの四元整数環は、四元数の共軛に関して、非可換 ∗-環を成す。
- 実数体 R 上の n-次全行列環は、行列の転置に関して、実 ∗-多元環を成す。
- 複素数体 C 上の n-次全行列環は、行列の随伴に関して、複素 ∗-多元環を成す。
- 多項式環 R[x] は、P *(x) = P (−x) と置くことにより、係数環 R を自明な可換 ∗-環として、∗-多元環を成す。
- ∗-環 (A, +, ×, ∗) が同時に可換環 R 上の多元環であり、かつ (r x)∗ = r (x∗) (∀r ∈ R, x ∈ A) を満たすならば、A は自明な ∗-環 R 上の ∗-多元環である。
- 任意の可換 ∗-環は、自分自身の上の ∗-多元環である(より一般に、自身の任意の∗-部分環上の ∗-多元環になる)。
- 任意の可換 ∗-環 R の、任意の ∗-イデアルによる商はふたたび R 上の ∗-多元環になる。
- ヘッケ環において、主対合はカジュダン–ルスティック多項式のために重要である。
- 楕円曲線の自己準同型環は双対同種をとる操作によって与えられる対合のもと、整数環上の ∗-多元環になる。同様の構成は、アーベル多様体とその偏極化 (polarization) によっても行うことができる。この場合、得られる対合はロサッチ対合と呼ばれる(ミルンの講義ノートを参照)。
- 対合ホップ代数も重要な ∗-多元環である(追加の構造として、余乗法との両立も考える)。
∗-準同型
∗-環や∗-多元環の間の準同型としては対合 ∗ と可換であるようなものを考えるのが普通である。すなわち、∗-環 R, S の間の環準同型 f: R → S (resp. ∗-多元環 A, B の間の多元環準同型 f: A → B) が ∗-準同型 (∗-homomorphism) であるとは、
- f(x∗) = f(x)∗
を任意の x ∈ R (resp. x ∈ A) に対して満たすときに言う[2]。
付加構造
行列の転置や随伴に関する多くの性質が一般の ∗-多元環においても満足される:
- エルミート元の全体はジョルダン代数を成す。
- 歪エルミート元の全体はリー代数を成す。
- 係数として考えている ∗-環において 2 が可逆であるとき、対称化作用素 1/2(1 + ∗) および反対称化作用素 1/2(1 − ∗) は互いに直交する冪等作用素である[2]から、問題の ∗-多元環は対称元(エルミート元)全体の成す加群と反対称元(歪エルミート元)全体の成す加群との直和に分解される。(上記の冪等作用素は線型作用素であって問題の多元環の元として実現されるものではないから)これらの加群は一般には結合多元環とはならない。
歪構造
∗-環において、写像 −∗: x ↦ −x∗ を考える。標数 2 の場合には、これはもとの ∗ と恒等的に同じものになるが、それ以外の場合には ∗-構造を定めない。実際、1 ↦ −1 であり、反乗法的でもないが、それ以外の公理(加法性、対合性)は満足するから、x ↦ x∗ の定める ∗-多元環と極めてよく似た性質を持つ。
この写像で不変な元 a = −a∗ は歪エルミートであると言う。
複素数の全体に複素共軛を考えた ∗-環において、実数の全体はエルミート元の全体と一致し、純虚数の全体は歪エルミート元の全体に一致する。
関連項目
- 対合半群
- B*-環
- C*-環
- ダガー圏
- フォンノイマン環
- ベーア環
- 作用素環
- conjugate (algebra)
- ケイリー–ディクソン構成
注記
- ^ 記法について: 対合 ∗ は後置により表される単項演算で、そのグリフはミーンライン付近やや上方に中心がくるように右肩にのせて
- x ↦ x*,
- x ↦ x∗ (TeX:
x^*
),
*
) とスター演算記号 ∗ (∗
) との混同に注意: アスタリスクの項も参照)。 - ^ 即ち(通常の多元環がそうであるように)、R を A の中心に埋め込んで考えるとき、R の元によるスカラー倍は A における乗法として実現できる(例えば行列のスカラー倍はスカラー行列を掛けることと同値)が、R の元が A において中心的(すなわち r ∈ R, x ∈ A ならば rx = xr)であることに注意すれば、r ∈ R, x ∈ A について
- (rx)J = xJ rJ = rJ xJ
- ^ X を環 R 上の不定元とすると、二重数環は R[ε] = R[X]/(X2) と書けて、その無限小 ε = X mod (X2) の生成する単項イデアル (ε) を取れば、R[ε]/(ε) = R になるのであった。
出典
- ^ Weisstein, Eric W. "C-Star Algebra". mathworld.wolfram.com (英語).
- ^ a b c “Octonions” (2015年). 2015年3月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年1月27日閲覧。
- ^ a b star-algebra in nLab
- ^ Weisstein, Eric W. "Involutive Algebra". mathworld.wolfram.com (英語).
参考文献
代数
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/17 06:26 UTC 版)
代数モデリング言語 (AML)は、大規模な数学的計算(例えば、大規模最適化問題)のための高度に複雑な問題を記述し解決するためのハイレベル・モデリング言語である。AIMMS、AMPL、GAMS、 LPL、 MPL、OPL 及び OptimJ のような代数モデリング言語 (AML)の一つの特定な利点は、最適化問題の数学的表記とのその構文の類似性である。これは、集合、インデックス、代数式、強力な希薄インデックスと任意名を持つ変数や定数を取扱うデータのような一定の言語要素によってサポートされた、最適化のドメインにおける問題の簡潔でかつ読易い定義を可能にする。モデルの代数形式は、どのようにそれを処理するかのどんなヒントも含まない。
※この「代数」の解説は、「モデリング言語」の解説の一部です。
「代数」を含む「モデリング言語」の記事については、「モデリング言語」の概要を参照ください。
代数
「代数」の例文・使い方・用例・文例
- 彼女は高校時代数学が得意でしたよ。
- 彼女は高校時代数学が得意でした。
- 代数は僕の得意な学科だ。
- 代数は数学の1部門です。
- 代数の苦手な生徒が多い。
- 代数が得意[不得意]で.
- 彼は代数の問題を全部解いた.
- 彼は代数も幾何も知らぬ. 言わんや三角法をやだ.
- 同級生が代数で四苦八苦している時に, 彼は高等数学に進んでしまっていた.
- この問題は普通の代数では解けない.
- 彼は代数機何もろくに知らないまして微積分をやだ
- 今日は代数の時間に欠席した
- 代数学者
- 彼は代数幾何も知らぬ、いわんや微積をやだ
- 代数式
- 代数の方法で
- 代数的に決定された
- 彼の代数の問題を片づけた
- 代数と微積分を使って方法論を使用する、または方法論を受ける
- 代数学の、または、代数学に関する
代数と同じ種類の言葉
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