多項式環とは? わかりやすく解説

多項式環

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/07/22 09:36 UTC 版)

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数学、殊に抽象代数学における多項式環(たこうしきかん、英語: polynomial ring)は係数を持つ一変数または多変数の多項式の全体の集合が成すである。多項式環はヒルベルトの基底定理分解体の構成、線型作用素の理解など数学のかなり広い分野に影響をもつ概念である。セール予想のような多くの重要な予想が、他の環の研究に影響をもち群環形式冪級数環のようなほかの環の定義にさえ影響を及ぼしている。

体上の一変数多項式環 K[X]

定義

K に係数を持つ不定元 X に関する多項式とは

環上の多変数多項式環は、「もっとも一般」の有限生成可換多元環である。すなわち以下の普遍性が成り立つ[1]:

普遍性
可換環 R 上の可換 R 多元環 φ : RA とその元 x1, …, xnA に対して、多項式環 R[X1, …, Xn] から A への環準同型 ~φ~φ|R = φ~φ(Xi) = xi (i = 1, …, n) を満たすものがただ一つ存在する。

したがって特に、環 R 上の多元環 AR 上有限生成ならば、AR 上適当な階数の多項式環の準同型像である。この意味において、多項式環は(与えられた集合を不定元の集合とする)自由可換多元環(可換多元環の圏における自由対象英語版)を与える。特に(R = Z有理整数環とするとき、任意の環は Z-多元環と見なせるから)、整係数多項式環 Z[X1, …, Xn]自由可換環である。

代数幾何学において

体上の多変数多項式環は代数幾何学において基本的な役割を演じる。可換環論ホモロジー代数の多くの結果が、多項式環のイデアルや多項式環上の加群の研究に端を発している。

ダフィット・ヒルベルトに端を発する多項式環 K[X1, …, Xn] のイデアルと Kn代数的集合 との間の関係に関する基本的な結果のいくつかは零点定理ドイツ語: Nullstellensatz)と呼ばれる。


多項式環

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/11 14:00 UTC 版)

環 (数学)」の記事における「多項式環」の解説

詳細は「多項式環」を参照 (R, +R, ·R) を環とし、R 上の実質有限列(有限個の例外を除く全ての項が 0 となるような無限列)の全体を S = { ( f i ) i ∈ N : f i ∈ R  and  f i = 0  for all but finitely many  i ∈ N } {\displaystyle S=\{{(f_{i})}_{i\in \mathbb {N} }:f_{i}\in R{\text{ and }}f_{i}=0{\text{ for all but finitely many }}i\in \mathbb {N} \}} とおく。ただし、ここでは非負整数(特に 0 を含む)の意味で N を用いているものと約束する。S の演算 +S : S × S → S および ·S : S × S → S を、a = (ai)i∈N および b = (bi)i∈N を S の任意の元として、 a + S b = ( a i + R b i ) i ∈ N aS b = ( ∑ j = 0 i a jR b i − j ) i ∈ N {\displaystyle {\begin{aligned}a+_{S}b&=(a_{i}+_{R}b_{i})_{i\in \mathbb {N} }\\a\cdot _{S}b&={\Bigl (}\sum _{j=0}^{i}a_{j}\cdot _{R}b_{i-j}{\Bigr )}_{i\in \mathbb {N} }\end{aligned}}} と定めると、(S, +S, ·S) は環となる。これを環 R 上の多項式環と呼ぶ。 S の元 (0, 1, 0, 0, …) を X とすれば、多項式環としての S は R[X] と書くのが通例である。これにより、S の元 f = (fi) は f = ∑ c ∈ C f cS X c , C = { i ∈ N : f i ≠ 0 } {\displaystyle f=\sum _{c\in C}f_{c}\cdot _{S}X^{c},\quad C=\{i\in \mathbb {N} :f_{i}\neq 0\}} と R に係数を持つ多項式の形に書ける。従って S は R 上の X を不定元とする多項式全体に、標準的なやり方加法と乗法定義したものと見なすことができる。通常はこれを同一視してここでいう S を R[X] と書いて、R における演算も S における演算も特に識別のための符牒省略する

※この「多項式環」の解説は、「環 (数学)」の解説の一部です。
「多項式環」を含む「環 (数学)」の記事については、「環 (数学)」の概要を参照ください。

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