線型作用素
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/03/01 04:25 UTC 版)
もっともありふれた作用素の種類は線型作用素である。体 K 上の線型空間 U, V に対し、作用素 T: U → V が線型であるとは、定義域 D(T) が U の線型部分空間であり、任意の x, y ∈ D(T) および任意の α, β ∈ K に対して T ( α x + β y ) = α T x + β T y {\displaystyle T(\alpha x+\beta y)=\alpha Tx+\beta Ty} が満たされることを言う。 線型作用素の重要性として、それがベクトル空間の間の射となることを挙げよう。 有限次元の場合には線型作用素は以下のように行列として表現することができる。体 K 上のベクトル空間 U および V について、それぞれの基底 u1, …, un ∈ U および v1, …, vm ∈ V を選んで固定する。(アインシュタインの和の規約によって)任意のベクトル x = xiui ∈ U を取るとき、線型作用素 T: U → V に対して T x = x i T u i = x i ( T u i ) j v j {\displaystyle Tx=x^{i}Tu_{i}=x^{i}(Tu_{i})^{j}v_{j}} が成り立ち、このとき aji := (Tui)j ∈ K によって作用素 T の固定した基底に関する行列が得られる。ここで (aji) は x の取り方に依らない。また Tx = y ⇔ ajixi = yj である。故に、固定した基底に関する n × m-行列と線型作用素 U → V の間に一対一対応が成立する。 有限次元ベクトル空間の間の作用素に直接関係のある重要概念として、階数、行列式、逆作用素、固有空間などがある。 無限次元の場合においても線型作用素は重要である。階数や行列式の概念を無限次元行列に対してまで拡張することはできず、それは無限次元の場合において線型作用素(あるいは一般の作用素)に対して有限次元の場合とは非常に異なる手法が展開されることの理由でもある。無限次元の場合の線型作用素の研究は函数解析学と呼ばれる(このように呼ばれるのは、さまざまな函数のクラスが無限次元ベクトル空間の興味深い例をあたえるからである)。 実数列の全体や、任意のベクトル空間内のベクトル列の全体の成す空間はそれ自身が無限次元のベクトル空間になる。最も重要なのが実数列あるいは複素数列の場合で、それら全体の成す空間及びその部分空間は数列空間と呼ばれる。またこれらの空間上の作用素は列変換(英語版)という。
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