無限次元の場合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/13 01:38 UTC 版)
ベクトル空間 V が有限次元でない場合にも適当な無限集合 A で添字付けられる基底 eα は持つから、有限次元の場合と同様の構成によって、双対空間の線型独立な元の族 eα (α ∈ A) を作ることはできるが、これは必ずしも基底とならない。 例えば、有限個の例外を除く全ての成分が 0 であるような実数列全体の成す空間 R∞ を考えると、これは自然数全体の成す集合 N で添字付けられる標準基底、すなわち各 i ∈ N に対して ei は第 i-項が 1 で他はすべて 0 となるようなものを持つ。R∞ の双対空間は全ての実数列からなる空間 RN である。数列 (an) の (xn) ∈ R∞ への作用は ∑ an xn で与えられる(これは xn の非零項が有限個しかないことから有限和である)。R∞ の次元は可算無限だが、RN の次元は非可算である。 このような考察は任意の体 F 上の任意の無限次元ベクトル空間に対して一般化できる。基底 {eα : α ∈ A} を一つとって V を fα = f(α) は有限個の例外を除く全ての α ∈ A に対して 0 となるような写像 f: A → F 全体の成す空間 (FA)0 と同一視すれば、写像 f は V のベクトル ∑α∈A fα eα と同一視される(f の仮定からこれは有限和だから意味を持ち、また基底の定義により任意の v ∈ V はこの形に書ける)。 そして V の双対空間は A から F への写像全体の成す空間 FA に同一視される。実際、V 上の線型汎函数 T は V の基底におけるその値 θα = T(eα) によって一意に決定され、また任意の写像 θ: A → F (θ(α) = θα) は T ( ∑ α ∈ A f α e α ) = ∑ α ∈ A f α T ( e α ) = ∑ α ∈ A f α θ α {\displaystyle T{\Bigl (}\sum _{\alpha \in A}f_{\alpha }\mathbf {e} _{\alpha }{\Bigr )}=\sum _{\alpha \in A}f_{\alpha }T(e_{\alpha })=\sum _{\alpha \in A}f_{\alpha }\theta _{\alpha }} と置くことにより V 上の線型汎函数 T を定める(fα は有限個の α を除いて全て 0 だから、やはりこの和が有限であることに注意)。 (FA)0 は F をそれ自身 F 上一次元のベクトル空間と見做したものの A で添字付けられた無限個のコピーの直和と(本質的には定義によって)同一視できる。即ち線型同型 V ≅ ( F A ) 0 ≅ ⨁ α ∈ A F {\displaystyle V\cong (F^{A})_{0}\cong \bigoplus _{\alpha \in A}{F}} が存在する。他方 FA は(やはり定義によって)A で添字付けられる F の無限個のコピーの直積(英語版)に同型である。同一視 V ∗ ≅ ( ⨁ α ∈ A F ) ∗ ≅ ∏ α ∈ A F ∗ ≅ ∏ α ∈ A F ≅ F A {\displaystyle V^{*}\cong {\Bigl (}\bigoplus _{\alpha \in A}F{\Bigr )}^{\!*}\cong \prod _{\alpha \in A}F^{*}\cong \prod _{\alpha \in A}F\cong F^{A}} は加群の直積と直和に関する一般の場合の結果の特別の場合である。 従って無限次元のとき、代数的双対は必ずもとの空間よりも大きな次元を持つ。これは連続的双対の場合には無限次元の場合でももとの空間と同型となる場合があることと対照的である。
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