双対ベクトル空間
(双対空間 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/09 13:49 UTC 版)
数学におけるベクトル空間の双対ベクトル空間(そうついベクトルくうかん、英: dual vector space)あるいは単に双対空間(そうついくうかん、英: dual space)は、そのベクトル空間上の線型汎函数(一次形式)全体の成す空間として定義される。有限次元ベクトル空間の双対空間はテンソルの研究に利用することができる。函数の成す(典型的には無限次元の)ベクトル空間に対する双対空間は、測度や超函数、あるいはヒルベルト空間のような概念の定義や研究に用いられ、結果として双対空間は函数解析学の研究における重要な観念となっている。
- 1 双対ベクトル空間とは
- 2 双対ベクトル空間の概要
双対空間
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/11 09:20 UTC 版)
1 < p < ∞ の場合、Lp(μ) の双対空間(すべての連続線型汎関数からなる空間)は、1/p + 1/q = 1 を満たすような q に対する Lq(μ) への自然な同型を持つ。それは g ∈ Lq(μ) を κ p ( g ) : f ∈ L p ( μ ) ↦ ∫ f g d μ {\displaystyle \kappa _{p}(g)\colon f\in L^{p}(\mu )\mapsto \int fg\,d\mu } で定義される汎関数 κp(g) ∈ Lp(μ)∗ へと関連付ける。 ヘルダーの不等式より、κp(g) は well-defined であることと連続であることが従う。写像 κp は Lq(μ) から Lp(μ)∗ への線型写像で、ヘルダーの不等式の例外的な場合により等長写像であることが分かる。また、任意の G ∈ Lp(μ)∗ もこの方法で表現されること、すなわち κp は全射であることも、(例えばラドン=ニコディムの定理を用いて)証明することが出来る。κp は全射かつ等長なので、バナッハ空間の同型写像である。この(等長)同型性を念頭に置くと、Lq 「が」Lp の双対であると言うことは自然であろう。 1 < p < ∞ の場合、空間 Lp(μ) は回帰的である。κp を上述のような写像とし、κq を対応する Lp(μ) から Lq(μ)* の上への線型等長写像とする。Lp(μ) から Lp(μ)** への写像 j p : L p ( μ ) → κ q L q ( μ ) ∗ → ( κ p − 1 ) ∗ L p ( μ ) ∗ ∗ {\displaystyle j_{p}\colon L^{p}(\mu ){\stackrel {\kappa _{q}}{{}\to {}}}L^{q}(\mu )^{*}\;{\xrightarrow {\;(\kappa _{p}^{-1})^{*}\;}}\;L^{p}(\mu )^{**}} が、κq を κp の逆の転置(あるいは共役)と合成することにより得られるが、これは Lp(μ) の第二共役への標準埋め込み J と一致する。さらに、写像 jp は二つの全射等長写像の合成として全射であり、このことによって回帰性は示される。 S 上の測度 μ が σ-有限(英語版)であるなら、L1(μ) の双対は L∞(μ) への等長同型(より正確には、p = 1 に対応する写像 κ1 が L∞(μ) から L1(μ)∗ の上への等長写像)である。 L∞ の双対についてはより微妙である。(L∞(μ))∗ の元は、μ について絶対連続であるような、S 上の有界な符号付き有限加法的測度と一致する。詳細についてはba空間を参照されたい。選択公理を仮定すれば、この空間はいくつかの自明な場合を除いて L1(μ) よりも大きい。しかし、ℓ∞ の双対は ℓ1 であるような、ツェルメロ=フランケルの集合論の拡張も存在する。これはシェラハによる結果で、エリック・シュヒターの著書 Handbook of Analysis and its Foundations で論じられている。
※この「双対空間」の解説は、「Lp空間」の解説の一部です。
「双対空間」を含む「Lp空間」の記事については、「Lp空間」の概要を参照ください。
双対空間
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/29 16:13 UTC 版)
位相線型空間 V に対してその連続的双対空間あるいは(位相線型空間論の意味での)双対空間 V′ とは、V から係数体 F への連続線型汎関数 φ: V → F 全体の成すベクトル空間として定義される。 位相線型空間 V 上の連続的双対空間 V′ 上に位相を導入する標準的な方法が存在する。即ち、有界部分集合(英語版)からなる任意のクラス A {\displaystyle {\mathcal {A}}} はそれに属する集合上の一様収束の位相を V 上に定める。同じ位相は、A が A {\displaystyle {\mathcal {A}}} を亙るときの、V 上の連続線型汎関数 φ に対する ‖ φ ‖ A = sup x ∈ A | φ ( x ) | {\displaystyle \|\varphi \|_{A}=\sup _{x\in A}|\varphi (x)|} の形の半ノルムたちから生成される位相としても得られる。これはすなわち、汎関数 φi たちの成すネットが V 内の汎関数 φ に収束する必要十分条件が、クラス A {\displaystyle {\mathcal {A}}} に属する任意の A に対して ‖ φ i − φ ‖ A = sup x ∈ A | φ i ( x ) − φ ( x ) | → 0 ( as. i → ∞ ) {\displaystyle \|\varphi _{i}-\varphi \|_{A}=\sup _{x\in A}|\varphi _{i}(x)-\varphi (x)|\to 0\quad ({\text{as. }}i\to \infty )} を満たすことであることを意味する。また(必ずしも仮定しなければならないわけではないが)通常は考えるクラス A {\displaystyle {\mathcal {A}}} は、次のような条件 V の各点は A {\displaystyle {\mathcal {A}}} に属する適当な集合 A に含まれる、 A {\displaystyle {\mathcal {A}}} の任意の二元 A, B に対してその上界となる(つまり A ∪ B ⊂ C を満たす)集合 C が A {\displaystyle {\mathcal {A}}} に属する、 A {\displaystyle {\mathcal {A}}} はスカラー倍に関して閉じている などを満足することを仮定する。これらの条件がすべて満たされている時、対応する V′ 上の位相はハウスドルフとなり、また集合族 U A = { x ∈ V : ‖ φ ‖ A < 1 } ( A ∈ A ) {\displaystyle U_{A}=\{x\in V:\|\varphi \|_{A}<1\}\qquad (A\in {\mathcal {A}})} はその近傍基を与える。 ここに、三種類の非常に重要な特別の場合を挙げる。 V′ 上の強位相は V の有界集合(英語版)上一様収束の位相(つまり、 A {\displaystyle {\mathcal {A}}} として V の有界部分集合全体の成すクラスをとったもの)である。V がノルム線型空間(例えばバナハ空間やヒルベルト空間)ならば V′ 上の強位相は ‖ φ ‖ = sup ‖ x ‖ ≤ 1 | φ ( x ) | {\displaystyle \|\varphi \|=\sup _{\|x\|\leq 1}|\varphi (x)|} なるノルムによって、ノルム空間(実は係数体が完備ならばバナハ空間)になる。 V′ 上のステレオタイプ位相(英語版)は、V の全有界集合上一様収束の位相(つまり、 A {\displaystyle {\mathcal {A}}} として V の全有界部分集合全体の成すクラスをとったもの)である。 V′ 上の弱位相は V の有限集合上一様収束の位相(つまり、 A {\displaystyle {\mathcal {A}}} として V の有限部分集合全体の成すクラスをとったもの)である。 これら三種類の位相は何れも、位相線型空間に回帰性(反射性)の一種を定める。
※この「双対空間」の解説は、「連続的双対空間」の解説の一部です。
「双対空間」を含む「連続的双対空間」の記事については、「連続的双対空間」の概要を参照ください。
双対空間
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/12 07:34 UTC 版)
線型位相空間 E から係数体 K 自身への連続線型写像は連続線型汎関数あるいは単に汎関数(はんかんすう、functional)とよばれる。E の上の連続線型汎関数の空間 E* は E の(連続的)双対空間とよばれる。これは E を(位相を考えない)抽象ベクトル空間としてみたときの、代数的な双対空間 (algebraic dual) HomK(E, K) の部分線型空間になっている。また、滑らかな汎関数が考えられるときには滑らかな双対空間 (smooth dual) を部分空間として含む。 E がノルム空間のとき、双対空間 E* 上に E の単位球上での汎関数の振る舞いをもとにしたノルムを導入することができ E* の上のノルム位相を考えることができる(E* はこのノルムに関して完備になる)。このとき、E は E* の双対空間 E** に自然に埋め込まれていると見なすことができるが、E が無限次元の場合には E と E** はしばしば異なったものになる(双対をとった方が大きい)。E と E** が一致している場合には E は回帰的(反射的, reflexive)であるといわれる。回帰的な空間の例としてヒルベルト空間が挙げられる。 線型位相空間の間の連続線型写像 f: E → F に対してその共役写像が f による引き戻し F ∗ → E ∗ ; ϕ ↦ ϕ ∘ f {\displaystyle F^{*}\to E^{*};\ \phi \mapsto \phi \circ f} として定められる。これは双対空間上の妥当な位相に関して連続になる。
※この「双対空間」の解説は、「線型位相空間」の解説の一部です。
「双対空間」を含む「線型位相空間」の記事については、「線型位相空間」の概要を参照ください。
双対空間
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/13 01:38 UTC 版)
体 F 上の任意のベクトル空間 V の(代数的)双対空間 V* は V 上の線型写像 φ: V → F(すなわち線型汎函数)全体の成す集合として定義される。集合としての V* には、次の加法とスカラー乗法 ( φ + ψ ) ( x ) = φ ( x ) + ψ ( x ) , ( a φ ) ( x ) = a ( φ ( x ) ) ( φ , ψ ∈ V ∗ , x ∈ V , a ∈ F ) {\displaystyle {\begin{aligned}&(\varphi +\psi )(x)=\varphi (x)+\psi (x),\\&(a\varphi )(x)=a(\varphi (x))\end{aligned}}\quad (\varphi ,\psi \in V^{*},\,x\in V,\,a\in F)} を定義することができて、それ自身 F 上のベクトル空間となる。この代数的双対空間 V* の元を、余ベクトル(共変ベクトル)あるいは一次形式((代数的)1-形式)と呼ぶこともある。 双対空間 V* の元である汎函数 φ と V の元との対をしばしば括弧を用いて φ(x) = [φ, x] あるいは φ(x) = ⟨φ, x⟩で表す。この対の記法は非退化な双線型形式 [·,·]: V* × V → F を定める。このとき、[,] は V* と V との間に双対性を定める、V* と V を双対にする、あるいは V と V* の双対性を表す内積 (duality pairing) であると言う。
※この「双対空間」の解説は、「双対ベクトル空間」の解説の一部です。
「双対空間」を含む「双対ベクトル空間」の記事については、「双対ベクトル空間」の概要を参照ください。
双対空間
- 双対空間のページへのリンク