ヒルベルト‐くうかん【ヒルベルト空間】
ヒルベルト空間
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/16 13:38 UTC 版)
数学におけるヒルベルト空間(ヒルベルトくうかん、英: Hilbert space)は、ダフィット・ヒルベルトにその名を因む、ユークリッド空間の概念を一般化したものである。これにより、二次元のユークリッド平面や三次元のユークリッド空間における線型代数学や微分積分学の方法論を、任意の有限または無限次元の空間へ拡張して持ち込むことができる。ヒルベルト空間は、内積の構造を備えた抽象ベクトル空間(内積空間)になっており、そこでは角度や長さを測るということが可能である。ヒルベルト空間は、さらに完備距離空間の構造を備えている(極限が十分に存在することが保証されている)ので、その中で微分積分学がきちんと展開できる。
- ^ Marsden 1974, §2.8
- ^ この節における数学的な題材は、Dieudonné (1960), Hewitt & Stromberg (1965), Reed & Simon (1980), Rudin (1980) など、標準的な関数解析学の教科書を見れば載っている。
- ^ 第二引数に関して線型であると約束する場合もある。
- ^ Dieudonné 1960, §6.2
- ^ Dieudonné 1960
- ^ メビウスの後押しを受けたグラスマンの手によるところが大きい (Boyer & Merzbach 1991, pp. 584–586)。抽象線型空間の現代的にきちんとした公理的取り扱いは、1888年のペアノが最初である (Grattan-Guinness 2000, §5.2.2; O'Connor & Robertson 1996)。
- ^ ヒルベルト空間の詳しい歴史は Bourbaki 1987 に扱われている。
- ^ Schmidt 1908
- ^ Titchmarsh 1946, §IX.1
- ^ Lebesgue 1904。積分論の歴史の詳細は Bourbaki (1987) と Saks (2005) にある。
- ^ Bourbaki 1987.
- ^ Dunford & Schwartz 1958, §IV.16
- ^ Fréchet (1907) と Riesz (1907) の結果を併せて Dunford & Schwartz (1958, §IV.16) は「L2[0,1] 上の任意の線型汎関数は積分で表される」と書いている。「ヒルベルト空間の双対がもとの空間と同一視される」という一般な形の主張は Riesz (1934) で述べられている。
- ^ von Neumann 1929.
- ^ Kline 1972, p. 1092
- ^ Hilbert, Nordheim & von Neumann 1927.
- ^ a b Weyl 1931.
- ^ Prugovečki 1981, pp. 1–10.
- ^ a b von Neumann 1932
- ^ Halmos 1957, Section 42.
- ^ Hewitt & Stromberg 1965.
- ^ a b Bers, John & Schechter 1981.
- ^ Giusti 2003.
- ^ Stein 1970
- ^ 詳細は Warner (1983) に見つかる。
- ^ ハーディ空間の一般論は Duren (1970) を見よ。
- ^ Krantz 2002, §1.4
- ^ Krantz 2002, §1.5
- ^ Young 1988, Chapter 9.
- ^ フレドホルム核の固有値は 1/λ でこれは 0 に近づく。
- ^ この観点からの有限要素法の詳細が Brenner & Scott (2005) にある。
- ^ Reed & Simon 1980
- ^ この観点からのフーリエ級数の扱いは、例えば Rudin (1987) や Folland (2009) を参照。
- ^ Halmos 1957, §5
- ^ Bachman, Narici & Beckenstein 2000
- ^ Stein & Weiss 1971, §IV.2.
- ^ Lancos 1988, pp. 212–213
- ^ Lanczos 1988, Equation 4-3.10
- ^ スペクトル法の古典的文献は Courant & Hilbert 1953。より今日的な取り扱いは Reed & Simon 1975 を参照。
- ^ Kac 1966
- ^ Dirac 1930
- ^ von Neumann 1955
- ^ Young 1988, p. 23.
- ^ Clarkson 1936.
- ^ Rudin 1987, Theorem 4.10
- ^ Dunford & Schwartz 1958, II.4.29
- ^ Rudin 1987, Theorem 4.11
- ^ Weidmann 1980, Theorem 4.8
- ^ Weidmann 1980, §4.5
- ^ Buttazzo, Giaquinta & Hildebrandt 1998, Theorem 5.17
- ^ Halmos 1982, Problem 52, 58
- ^ Rudin 1973
- ^ Trèves 1967, Chapter 18
- ^ See Prugovečki (1981), Reed & Simon (1980, Chapter VIII), Folland (1989).
- ^ Prugovečki 1981, III, §1.4
- ^ Dunford & Schwartz 1958, IV.4.17-18
- ^ Weidmann 1980, §3.4
- ^ Kadison & Ringrose 1983, Theorem 2.6.4
- ^ Dunford & Schwartz 1958, §IV.4.
- ^ 添字集合が有限の場合は例えば Halmos 1957, §5、無限の場合は Weidmann 1980, Theorem 3.6 を参照。
- ^ Levitan 2001。様々な文献(例えば Dunford & Schwartz (1958, §IV.4) など)ではこれを単に次元と呼ぶが、考えているヒルベルト空間が有限次元の場合を除けば、これは通常の線型空間の意味での次元(ハメル基底の濃度)と同じものではない。
- ^ Prugovečki 1981, I, §4.2
- ^ von Neumann (1955) はヒルベルト空間は可算ヒルベルト基底を持つものと定義したので、そのようなものは全て ℓ2 に等距同型である。量子力学の厳密な取り扱いにおいて殆どの場合この規約が用いられている(例えば Sobrino 1996, Appendix B を参照)。
- ^ a b c Streater & Wightman 1964, pp. 86–87
- ^ Young 1988, Theorem 15.3
- ^ Kakutani 1939
- ^ Lindenstrauss & Tzafriri 1971
- ^ Halmos 1957, §12
- ^ ヒルベルト空間におけるスペクトル論の一般的な説明が Riesz & Sz Nagy (1990) にある。C∗-環の言葉を用いたより高度な説明は Rudin (1973) や Kadison & Ringrose (1997) を参照。
- ^ たとえば Riesz & Sz Nagy (1990, Chapter VI) や Weidmann 1980, Chapter 7 を参照。この結果は、積分核から生じる作用素の場合には、既に Schmidt (1907) で知られている。
- ^ Riesz & Sz Nagy 1990, §§107–108
- ^ Shubin 1987
- ^ Rudin 1973, Theorem 13.30.
ヒルベルト空間
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/11 09:20 UTC 版)
ヒルベルト空間は、量子力学から確率解析学(英語版)に至るまで、多くの応用の中核をなすものである。空間 L2 および ℓ2 はいずれもヒルベルト空間である。実際、ヒルベルト基底を選ぶことにより、すべてのヒルベルト空間は ℓ2(E) と等長であることが分かる。但し E は適当な濃度の集合とする。
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ヒルベルト空間
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/22 00:46 UTC 版)
詳細は「ヒルベルト空間」を参照 完備な内積空間はヒルベルトに因んでヒルベルト空間 (英: Hilbert space) と呼ばれる。自乗可積分函数の空間 L2(Ω) に ⟨ f , g ⟩ = ∫ Ω f ( x ) g ( x ) ¯ d x {\displaystyle \langle f,g\rangle =\int _{\Omega }f(x){\overline {g(x)}}\,dx} で定義される内積(ただし g(x) は g(x) の複素共軛とする)を入れたものは主要なヒルベルト空間の例である。 定義によりヒルベルト空間における任意のコーシー列は極限を持つから、逆に与えられた極限函数を近似するという適当な性質を持つ函数列 fn を求めることが重要になる。初期の解析学では、テイラー近似の形で可微分函数 f の多項式列による近似が確立された。ストーン=ヴァイアシュトラスの定理 により、[a, b] 上の任意の連続函数は適当な多項式列によりいくらでも近く近似できる。三角函数を用いた同様の近似法は一般にフーリエ展開と呼ばれ、工学において広く応用される(後述)。より一般に、またより概念的に言えば、これらの定理は「基本函数族」とは何であるかということを端的に記述するものになっている。あるいは抽象ヒルベルト空間においてどのような基本ベクトル族が、ヒルベルト空間 H を位相的に生成するに十分であるかをいうものである。ここで、位相的に生成する(あるいは単に生成する)とは、それらの位相的線型包と呼ばれる、線型包の閉包(即ち、有限線型結合およびその極限)が、全体空間に一致することである。 そのような函数の集合は H の基底(あるいはヒルベルト基底)と呼ばれ、基底の濃度はヒルベルト空間 H の次元と呼ばれる。これらの定理は適当な基底函数族が近似の目的で十分性を示すことのみならず、シュミットの直交化法を用いて互いに直交するベクトルの族からなる基底が得られることも意味している。そのような直交基底は、有限次元ユークリッド空間における座標軸をヒルベルト空間に対して一般化したものと考えることができる。 様々な微分方程式に対して、その解をヒルベルト空間の言葉で解釈することができる。例えば物理学や工学にけるかなり多くの分野でそのような方程式が導かれ、特定の物理的性質を持つ解が(しばしば直交する)基底函数族としてよく扱われる。物理学からの例として、量子力学における時間依存シュレーディンガー方程式は、その解が波動函数と呼ばれる偏微分方程式として、物理的性質の時間的な変化を記述する。。エネルギーやモーメントのような物理的性質に対する明確な値は、ある種の線型微分作用素の固有値とそれに属する固有状態と呼ばれる波動函数に対応する。スペクトル定理は、函数に作用する線型コンパクト作用素を、それらの固有値と固有函数を用いて分解することを述べるものである。
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