可分ヒルベルト空間
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/13 01:23 UTC 版)
「ヒルベルト空間」の記事における「可分ヒルベルト空間」の解説
ヒルベルト空間が可分であるための必要十分条件は、それが可算な正規直交基底を持つことである。従って、任意の無限次元可分ヒルベルト空間は ℓ2 に等距同型になる。 かつてはヒルベルト空間の定義の中に可分であることを含めることが多かった。物理学に現れる殆どの空間は可分であったことや、どの無限次元可分ヒルベルト空間も全て互いに同型であったことから、任意の無限次元可分ヒルベルト空間に言及するときは「唯一の (the) ヒルベルト空間」とかあるいは単に「ヒルベルト空間」と呼ぶこともしばしばであった。場の量子論においてさえ、殆どのヒルベルト空間は事実可分であり、ワイトマンの公理系として明記された。しかし、場の量子論において非可分なヒルベルト空間も重要であるというような反論が時には為された。これは大まかには理論における系が無限個の自由度を持ちうることと(1 より大きい次元を持つ空間の)無限個のテンソル積はどれも非可分であることが理由である。例えばボソン場は自然に、その因子が空間の各点において調和振動子で表現されるようなテンソル積の元と考えることができる。この観点からは、ボソンの空間は非可分であると見るのが自然であるが、しかし全テンソル積の小さな可分部分空間にしか(その上で可観測量が定義できる)物理的に意味のある場が含まれていない。もう一つの非可分ヒルベルト空間モデルは、空間の非有界領域に存在する無限個の素粒子の状態である。この空間の正規直交基底は素粒子の密度を表すある連続なパラメータによって添字付けられる。これは非可算となりうるから、基底は可算ではない。
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