抽象代数学とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 学問 > 専攻 > 学問 > 抽象代数学の意味・解説 

ちゅうしょう‐だいすうがく〔チウシヤウ‐〕【抽象代数学】

読み方:ちゅうしょうだいすうがく

抽象的な要素集合としての代数系取り扱う現代数学一部門。群・環・体などが対象となる。


抽象代数学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/26 14:41 UTC 版)

群に似た構造
全域性 結合性 単位的 可逆的
Yes Yes Yes Yes
モノイド Yes Yes Yes No
半群 Yes Yes No No
ループ Yes No Yes Yes
準群 Yes No No Yes
マグマ Yes No No No
亜群英語版 No Yes Yes Yes
No Yes Yes No

抽象代数学(ちゅうしょうだいすうがく、: abstract algebra)とは、加群ベクトル空間線型環のように公理的に定義される代数的構造に関する数学の研究の総称である。

概要

二十世紀初頭の揺籃期には現代代数[1]ともよばれ、数学における厳密さへの指向のもととなった。はじめは数学全体と自然科学の多くが依存している古典的な代数の論理的前提が記号論理学による公理の形で書き下され、それをもとに群論や環論などの理論が純粋数学として具現化するという形で理論が発展した。現在では抽象代数学という言葉はそういった諸分野の総体を、実数複素数未知数からなる代数的な数式や方程式の変形のやり方をあつかう初等代数学(高校までの代数)から区別するために用いられている。この初等代数学は可換環論への導入的な部分とみなすこともできる。

一つの二項内算法からなる代数的構造の最も簡単なものはマグマであり、それに付加的な条件を課すことで準群、モノイド半群などの、そして最も重要な数学的構造に数えられる群の概念がえられる。 より複雑な例として、

  • 二つの内算法を考える環や体
  • 外算法を考える加群やベクトル空間
  • さらにこれらの構造をあわせた、体上の線型環
  • 結合的代数とリー環
  • より記号論理学的なブール代数

などがあげられる。これらの対象は、準同型(それぞれの構造を保つ写像)とあわせてをなし、圏論によって異なった種類の代数的構造の比較や翻訳の枠組みが与えられる。

代数学の系統的な研究によって、異なった見かけの概念に対し共通の論理的説明が与えられるようになった。例えば、一方では正方行列の和や積を考えることができ、もう一方ではベクトル空間の上の線型写像の和や写像の合成が考えられる。これらはともに線型環をなしているが、行列を列ベクトルの空間上の線型写像と見なしたり、ベクトル空間の基底を選んで線形写像を行列表示したりすることでこの二つの概念が実際に等価なものであることもわかる。

数学的対象の具体的な定義から離れてその構造のみに着目する考え方はエヴァリスト・ガロアにさかのぼることができる。エミー・ネーターファン・デル・ヴェルデンによる加群の研究と、それを引き継いだブルバキの「数学原論」によって集合論的な抽象代数学の今日的な定式化が達成された。一方で圏論的な研究も進められ、分類トポスの理解などが得られた。

歴史的には、様々な代数的構造はいきなり抽象代数学において定義されたというより、数学の他の分野で現れ、その抽象代数的な構造が公理的に抽出されている。このため抽象代数学はそれ以外の数学の分野との間に数々の結びつきがある。例えばソフス・リーによって19世紀の終わり頃にやっと取り出された代数構造であるリー環などの抽象代数学の結果は、現代の様々な数学や数理物理学において積極的に利用されている。代数的整数論代数的位相幾何学代数幾何学などは代数の手法をほかの領域に適用している数学の分野である。他方、乱暴な言い方をすれば、数学における表現論は「抽象代数」から「抽象」を取り払うため、与えられた構造の具体的な現れを研究しているということができる。

「抽象代数」という言葉は代数系の一般論である普遍代数学で使われることもあるが、たいていの著者は単に「代数」と言ってすませている。普遍代数学においては様々な代数的構造の定義と性質が統一的に取り扱われる。

関連項目

出典

  1. ^ Jeremy Gray, A History of Abstract Algebra, p.v, Springer Verlag.

抽象代数学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/10 20:21 UTC 版)

部分写像」の記事における「抽象代数学」の解説

普遍代数学において偏代数英語版)は部分写像となっているような演算(偏演算)を許す代数系一般化である。例えば体は、零除算定義されないから除法真に演算である。 与えられた台集合 X 上の部分写像全体の成す集合は、X 上の全部変換半群呼ばれる正則半群英語版)を成し典型的にP T X {\displaystyle {\mathcal {PT}}_{X}} のように表される。また X 上の部分全単射全体の成す集合対称半群英語版)を成す。

※この「抽象代数学」の解説は、「部分写像」の解説の一部です。
「抽象代数学」を含む「部分写像」の記事については、「部分写像」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「抽象代数学」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

抽象代数学

出典:『Wiktionary』 (2021/08/22 12:11 UTC 版)

名詞

抽象代数学 (ちゅうしょうだいすうがく)

  1. (代数学) 代数的構造に関する研究総称

下位語


「抽象代数学」の例文・使い方・用例・文例

  • 抽象代数学という学問
Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



抽象代数学と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「抽象代数学」の関連用語

抽象代数学のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



抽象代数学のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの抽象代数学 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの部分写像 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Text is available under Creative Commons Attribution-ShareAlike (CC-BY-SA) and/or GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblioに掲載されている「Wiktionary日本語版(日本語カテゴリ)」の記事は、Wiktionaryの抽象代数学 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、Creative Commons Attribution-ShareAlike (CC-BY-SA)もしくはGNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2024 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2024 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2024 GRAS Group, Inc.RSS