抽象代数学における冪
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/14 00:51 UTC 版)
冪指数が整数であるような冪演算は抽象代数学における極めて一般の構造に対して定義することができる。 集合 X は乗法的に書かれた冪結合的(英語版)二項演算を持つもの: ( x i x j ) x k = x i ( x j x k ) ( ∀ x ∈ X ) {\displaystyle (x^{i}x^{j})x^{k}=x^{i}(x^{j}x^{k})\quad (\forall x\in X)} とするとき、任意の x ∈ X と任意の自然数 n に対して冪 xn は、x の n 個のコピーの積を表すものとして x 1 = x x n = x n − 1 x ( n > 1 ) {\displaystyle {\begin{aligned}x^{1}&=x\\x^{n}&=x^{n-1}x\quad (n>1)\end{aligned}}} のように帰納的に定義される。これは以下のような性質 x m + n = x m x n ( x m ) n = x m n {\displaystyle {\begin{aligned}x^{m+n}&=x^{m}x^{n}\\(x^{m})^{n}&=x^{mn}\end{aligned}}} を満足する。さらに、考えている演算が両側単位元 1 を持つ: ∃ ! 1 s.t. x 1 = 1 x = x ( ∀ x ∈ X ) {\displaystyle \exists !1{\text{ s.t. }}x1=1x=x\quad (\forall x\in X)} ならば x0 は任意の x に対して 1 に等しいものと定義する。[要出典] さらにまた演算が両側逆元を持ち、なおかつ結合的 x x − 1 = x − 1 x = 1 , ( x y ) z = x ( y z ) {\displaystyle {\begin{aligned}xx^{-1}&=x^{-1}x=1,\\(xy)z&=x(yz)\end{aligned}}} ならばマグマ X は群を成す。このとき x の逆元を x−1 と書けば、冪演算に関する通常の規則 x − n = ( x − 1 ) n x m − n = x m x − n {\displaystyle {\begin{aligned}x^{-n}&=\left(x^{-1}\right)^{n}\\x^{m-n}&=x^{m}x^{-n}\end{aligned}}} はすべて満足される。また(例えばアーベル群のように)乗法演算が可換ならば ( x y ) n = x n y n {\displaystyle (xy)^{n}=x^{n}y^{n}} も満足される。(アーベル群が通常そうであるように)二項演算を加法的に書くならば、「冪演算は累乗(反復乗法)である」という主張は「乗法は累加(反復加法)である」という主張に引き写され、各指数法則は対応する乗法法則に引き写される。 一つの集合上に複数の冪結合的に項演算が定義されるときには、各演算に関して反復による冪演算を考えることができるから、どれに関する冪かを明示するために上付き添字に反復したい演算を表す記号を併置する方法がよく用いられる。つまり演算 ∗ および # が定義されるとき、x∗n と書けば x ∗ ⋯ ∗ x を意味し、x#n と書けば x # ⋯ # x を意味するという具合である。 上付き添字記法は、特に群論において、共軛変換を表すのにも用いられる(即ち、g, h を適当な群の元として gh = h−1gh)。この共軛変換は指数法則と同様の性質を一部満足するけれども、これはいかなる意味においても反復乗法としての冪演算の例ではない。カンドルはこれら共軛変換の性質が中心的な役割を果たす代数的構造である。
※この「抽象代数学における冪」の解説は、「冪乗」の解説の一部です。
「抽象代数学における冪」を含む「冪乗」の記事については、「冪乗」の概要を参照ください。
- 抽象代数学における冪のページへのリンク