代数的閉体とは? わかりやすく解説

代数的閉体

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/19 19:29 UTC 版)

数学において、 K代数的に閉じているまたは代数的閉体(だいすうてきへいたい、: algebraically closed field; 代数閉体)であるとは、一次以上の任意の K 係数英語版変数多項式K 上にを持つこと、あるいは同じことであるが、一次以上の任意の K 係数一変数多項式が一次多項式の積として書けることである。

代数学の基本定理は、複素数体 C が代数的閉体であることを主張する定理である。一方で、有限体 Fq有理数体 Q実数体 R は代数的閉体ではない[1]

性質

代数的閉包
任意の体 K について、K の代数的拡大かつ代数的に閉である体が存在して同型を除いて一意に定まり、K代数的閉包と呼ばれる[2]K の代数的閉包は KalgK, ˆK のように書かれる。K の任意の代数拡大 LKK 代数の準同型写像によって埋め込むことができ、そのような埋め込みの数は LK 上の分離指数と呼ばれる。
濃度による一意性
α非可算無限濃度とするとき、任意の標数 p について、標数 p で濃度が α であるような代数的閉体は同型をのぞいて一意に定まる。実際、そのような代数的閉体は k素体(つまり Q または Fp)として k((Xβ)βα) の代数的閉包と同型になっていることが、超越基底の存在と代数的閉包の一意性から従う。任意の有限体は代数的閉体にはなりえない。可算無限濃度の代数的閉体は、k を素体、α を可算濃度として k((Xβ)βα) の代数閉包なるものが考えられ、これら[どれ?]は互いに非同型なので可算無限濃度の代数的閉体はそれぞれの標数について可算個の同型類があることが分かる。
行列の固有値
代数的閉体上では多項式が一次式の積に分解することから、代数的閉体上で任意の行列ジョルダン標準形を持つことや、行列が対角化可能であることとその最小多項式が重根を持たないことの同値性などが従う。
基礎論(モデル理論)と代数的閉体
特定の標数の代数的閉体について、一階述語論理で加法・乗法・加法や乗法の単位元を組み合わせて記述できるような命題の真偽は、どの代数的閉体で考えても同じになる(標数 p の代数的閉体の公理系は完全な理論である)。さらに、量化子を含んだ命題で指定されるような代数的閉体の直積の部分集合は、実際には量化子を含まない命題で指定することができる(量化記号消去)。

  1. ^ それぞれの場合に多項式 1 + ∏aFq (Xa), X2 − 2, X2 + 1 が根を持たないから。
  2. ^ Steinitz 1910.

参考文献

関連項目

外部リンク


代数的閉体

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/21 13:52 UTC 版)

複素数」の記事における「代数的閉体」の解説

詳細は「代数学の基本定理」および「代数的閉体」を参照 代数学の基本定理より、複素数係数とする代数方程式の解は存在しまた複素数になる。つまり、 a n z n + ⋯ + a 1 z + a 0 ( a r ∈ C ,   a n ≠ 0 ) {\displaystyle a_{n}z^{n}+\cdots +a_{1}z+a_{0}\quad (\,a_{r}\in \mathbb {C} ,\ a_{n}\neq 0\,)} は、少なくも一つ複素根 z を持つ。 上記多項式複素根一つを α1 とし、因数定理帰納的に用いると、上記多項式は ∑ r = 0 n a r z r = a n ∏ k = 1 n ( z − α k ) ( α k ∈ C ) {\displaystyle \textstyle \sum \limits _{r=0}^{n}a_{r}z^{r}=a_{n}\prod \limits _{k=1}^{n}(z-\alpha _{k})\quad (\,\alpha _{k}\in \mathbb {C} \,)} と複素数範囲因数分解される。これは、複素数代数方程式による数の拡張最大であることを意味している。つまり、C は代数的閉体である。 代数学の基本定理の証明にはざまざま方法がある。例えリウヴィルの定理などを用い解析的方法や、巻き数などを使う位相的証明、あるいは奇数次の係数多項式少なくも一つ実根を持つ事実ガロア理論組み合わせた証明などがある。 この事実により、「任意の代数的閉体に対して成り立つ定理」を C にも適用できる例えば、任意の空でない複素正方行列少なくも一つ複素固有値を持つ。

※この「代数的閉体」の解説は、「複素数」の解説の一部です。
「代数的閉体」を含む「複素数」の記事については、「複素数」の概要を参照ください。

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