天元術とは? わかりやすく解説

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てんげん‐じゅつ【天元術】

読み方:てんげんじゅつ

算木(さんぎ)を用いて高次方程式を解く高等和算中国の宋・元の時代起こった代数学日本渡来したもので、未知数のことを天元の一と称した。今の開平開立の類。


天元術

読み方:テンゲンジュツ(tengenjutsu)

中国発達した一種代数学


天元術

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/12 06:52 UTC 版)

天元術(てんげんじゅつ)は、中国で生まれた代数問題の解法(高次を含む方程式の解の求め方)である。

歴史

天元という言葉の初出は、の蒋周の『益古集』(1080年)である。

天元術は末の13世紀に発展した。重要な教科書朱世傑の『算学啓蒙』(1299年)である。朝鮮世宗によって復刻され、これが1600年以前に日本に伝来した。これに土師道雲・久田玄哲らが訓点を施して1658年万治元年)に『新編算学啓蒙』として出版され、これを通して天元術は和算の発展の元となった[1]

内容

天元術は代数学の問題の解法であり、算木算盤とを使う(籌算)。

問題の答えとして求める数を仮に 0+x の形で設け、これを「天元の一」(てんげんのいち)と言う。天元術は「天元の一を立て、何々とす」という言い回しから始まり、これが西洋数学でいう「何々を x と置く」にあたる。それから論を進めて算盤上に1元代数方程式を求め、そのを導いて答えを得る。

天元術は1元代数方程式のみを扱うが、多元連立方程式を扱う二元術・三元術・四元術も生まれた。ただしこれらはほとんど広まらず、四元術の書である朱世傑の『四元玉鑑』は19世紀に再発見された。この中で二元術・三元術の書についても言及しているが、これらは現存しない。

沢口一之は、佐藤正興の『算法根源記』の遺題に答える形で、日本で初めて天元術を本格的に理解して扱った『古今算法記』を1671年に著し、その中に天元術では解けない問題を遺した(遺題継承[2]

その問題を解くために関孝和は天元術を発展させた。筆算表記法の傍書法によって多変数の方程式を表した。その際、連立方程式の変数を消去する必要があるが、関は消去の一般論を重視して、終結式の理論を完成させた[3]。さらにそれを解く点竄術を編み出し、和算を大いに進展させた。四元術とは異なる形で、独創的な文字係数の扱いを確立した[4]

用例

  1. 天元の一を立てて仮に求める値(未知数)とする
  2. 題の条件によって加減乗除を施して既知数と等しい式を作り、それと既知数とを相消することで開方式(方程式)を得る。
  3. それを開方して答えを得る。

相消とは等しい数を減じて0の値を得ることで、西洋数学の等号で結ぶこと、また等式の右辺を0にすることにあたる。

例として「いま長方形がある。その長方形の面積は15で、長辺と短辺のが8であるとき、長辺と短辺の長さはそれぞれいくらか」という問題を天元術で解こう。

求める数を長辺とし、まず「天元の一を立てて長辺とす」と言って、算盤の実級(定数項)を空 (0) とし、法級(xの1次項)に係数1の算木を敷く。すなわち 0+x の式である。


次に「長短辺の和8より長辺(つまり未知数 x)を減じ、短辺とする」と言って、実級に8の算木を、法級に-1の算木を敷く。これが 8-x=短辺 を意味する。


この式(つまり短辺)を長辺(すなわち x)と、あい乗じて積とする。x が掛かって次数が1上がるので、法級に8を、廉級(x2 の項)に-1を敷く。つまり 0+8x-x2=積 である。「これを左に寄す」と言って、ひとまずこの式をおいておく。


この式が積に等しいので「積15を列しこれを左に寄すと相消す」と言い、左に寄せた式より積15を引き、長辺 x を得る開方式を得る。すなわち方程式 -15+8x-x2=0 である。


これに増乗開方法を適用して、商(根)に長辺の値5を得る。また長辺短辺の和8よりこれを引いて、短辺3を得る。

脚注

  1. ^ 森本光生「算学啓蒙の日本における受容 (数学史の研究)」『数理解析研究所講究録』第1625巻、京都大学数理解析研究所、2009年1月、154-159頁、CRID 1050282677278419968hdl:2433/140291ISSN 1880-2818 
  2. ^ 竹之内脩「古今算法記の遺題について (数学史の研究)」『数理解析研究所講究録』第1317巻、京都大学数理解析研究所、2003年5月、220-226頁、 CRID 1050282677150307968hdl:2433/43021ISSN 1880-2818 
  3. ^ 上野健爾「関孝和の数学と大成算経 (『大成算経』の数学的・歴史学的研究)」『数理解析研究所講究録』第1831巻、京都大学数理解析研究所、2013年4月、119頁、 CRID 1050282810782004736hdl:2433/194834ISSN 1880-2818 
  4. ^ 竹之内脩「関孝和の解伏題之法について (数学史の研究)」『数理解析研究所講究録』第1064巻、京都大学数理解析研究所、1998年10月、148-159頁、 CRID 1050282677151261824hdl:2433/62441ISSN 1880-2818 

外部リンク


天元術

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/23 00:17 UTC 版)

籌算」の記事における「天元術」の解説

詳細は「 天元術」を参照 高次方程式の解法である天元術は12世紀ごろに生まれた考えられている。このころ未知数記号用いられていなかったため、次数の順に並べた各項の係数算木数字の列とすることで方程式表現していた:159元代数学者李冶は天元術の表記洗練させた。 李冶の『測円海鏡(zh)』第二巻第十四問で提示されている一元方程式 − x 2 − 680 x + 96000 = 0 {\displaystyle -x^{2}-680x+96000=0} は天元術では以下のように表されるそれぞれの段の数字未知数次の係数を表す。1次の段には「元」の字を記す。 元

※この「天元術」の解説は、「籌算」の解説の一部です。
「天元術」を含む「籌算」の記事については、「籌算」の概要を参照ください。

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