有尾人一族ジャシンカ帝国
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「科学戦隊ダイナマン」の記事における「有尾人一族ジャシンカ帝国」の解説
はるか古代に地球に落下した隕石に付着していた原始生命物質が地底で数万年の時を経て繁殖し、人類とは異なる独自の進化を遂げた地底の居住者有尾人(ゆうびじん)の一族による帝国。卵生で卵から誕生し、その名のとおり尻尾を持ち、尻尾の数が多いほど社会階級が高い。尻尾の無い地上人を下等生物と見下し、人間に尻尾を生やすことも不可能とわかると、地上から人間を駆逐し制覇しようと侵攻を開始した。 各幹部・レギュラーの身長・体重などの設定はない。 有尾人や進化獣のコンセプトは当時話題になった書籍『アフターマン』が意識されている。また、デザインを担当した出渕裕は、自身が視聴していた時代の東映作品のビジュアルイメージから当時の美術担当であった高橋章のラインを取り入れている。 帝王アトン ジャシンカ帝国の支配者。尻尾は9本。一人称は「余」。普段はグランギズモ内の玉座に座っており、終盤まで自ら出撃することはなかった。左目からはアトンビームを放ち、帝王剣を使って、幻影攻撃や閃光など強大な妖力を発揮する。不老不死で超魔力を得られるという伝説の10本尻尾になることを夢見ており、尻尾の数を増やせるというレトロ遺伝子の奪取に執念を燃やすが、ゼノビアとダークナイト(=メギド)の策略に嵌まって猜疑心を高めてしまったことで結果的に忠臣のカー将軍を失った。そしてダークナイトに扮するメギドと一騎討ちの果てに致命傷を負ったが、死の間際に自分を倒すまでに成長した彼の姿を見届け、キメラを介してジャシンカの帝王の座とその証である帝王剣を譲り、息絶えた。この経緯から最後までダイナマンと直接対決することはなかった。ラフデザインでの仮称は、ガイバ・オーム。デザイン画では俳優の顔を出す前提であったが、造型ではマスクになっている。衣装はメギド王子との共通性を意識している。 カー将軍 帝国一の科学者で、進化獣やメカシンカの製作・開発を行い、メギド王子の教育係も務めている軍神。黒い長髪と髭に白塗りした顔が特徴。尻尾の数こそ7本とメギドとキメラより多いが、2人を自分の上に立てている。また戦闘力も非常に高く、名実ともに軍神としてダイナマンと渡り合った。地上に出撃する時は兜を着用し、兜から放つビームや剣から放つ雷光を戦力とする。バリアを張ることもできる。帝国への忠誠心は随一で、アトンから全幅の信頼を得ていたが、ゼノビアとダークナイトの策略に落ちて謀反の濡れ衣を着せられ、自らの身の潔白を証明するためダイナマンに戦いを挑むも、あと一歩のところでニュースーパーダイナマイトのパワーに耐えきれず致命傷を負い、残された力を振り絞ってグランギズモへ帰還してビッグバンビームを起動後、装置の暴発がとどめを刺す形で壮絶に散った。 死後、最後のメカシンカであるファイアースフィンクスを作るための遺言ビデオが発見され、最後まで帝国のために尽くしたその忠誠心をアトンから賞賛された。デザインを担当した出渕はカー将軍に娘がいるという自己設定のもとに、イシリアというオリジナルキャラクターを後年の画集に納めている。 メギド王子 帝王アトンの息子。元は5本尻尾だったが、1話でダイナレッドにうち1本を切り落とされ4本尻尾となり、以後ダイナレッドを執拗に狙う。流れ星という白馬に乗り、常に先頭に立って作戦を指揮する。真面目な性格で側近の死を悲しんだり、スパイ有尾人夫婦をキメラの怒りから庇って弁護したりするなど部下を大事にする心根も持っているが、やや短慮で王子としての威厳に欠ける部分もある。邪神剣と呼ばれる剣を持ち、邪神剣コウモリ返しという必殺技を使う。 度重なる失敗につけ込んだゼノビアの謀略に嵌まり、父・アトンから罪人として見捨てられ、ゼノビアに残りの尻尾を全て切られた上に千年洞窟に幽閉されてしまう。 その後、ゼノビアや自分を見捨てた父・アトン、そしてダイナレッドへの復讐心からの執念で千年洞窟を自力で脱出。その後は表向きは消息不明となっていたが、その裏で黒いスーツを纏った闇の使者・ダークナイトとなって暗躍した。千年洞窟に幽閉されている最中、偶然「10本尻尾になると同時にその者は死ぬ」と記された古文書を発見したことで10本尻尾の真の秘密を知り、生まれつき決まっている尻尾の数に頼るのではなく、己を鍛え、自ら強くなることこそが重要と悟る。 ダークナイトとして父・アトンを直接対決の末に倒し、さらに自らを罠に陥れたゼノビアを意趣返しによる謀略で死に追いやった。そしてダイナレッドの手でダークナイトの仮面が割られ、再びメギドとして姿を現した後、アトンの形見にして帝王の証である帝王剣をキメラから手渡されて正式にジャシンカの新帝王となった。 最終話のオープニングでは「若き帝王メギド」としてクレジットされた。また正体を明かした後の軍服が以前とは異なり、装飾が破損した状態のまま全体的に土色に染まっている。ダイナマンに決戦を挑み、男性戦士4人を相手に帝王剣を使いこなして善戦するもダイナレッドに深手を負わされ、グランギズモに乗り込んでダイナロボに挑むが、ダイナロボの科学剣・稲妻重力落としの前に敗れ、地上へ墜落するグランギズモの中でキメラとともに互いの名を呼びあいながら最期を遂げた。 第28話ではピエロに化けた。 王子時代にはキメラとは喧嘩友達に近い関係だったが、結婚後は素直に愛情を示しており、最終決戦で自らが重傷を負い敗北を覚悟した際にはキメラだけでも逃がそうとしている。デザインでは『電子戦隊デンジマン』のヘドラー将軍と『仮面ライダーX』のアポロガイストを意識している。また襟の部分には安彦良和が『機動戦士ガンダム』の軍服で用いている逆三角形の意匠でデザインを引き締める手法を取り入れている。 後年の出渕の画集には「ジャシンカ帝国初代『神聖』皇帝メギドと『女王』キメラ」という2人のオリジナルイラストが収められている。 ダークナイト 第42話から第50話に登場。闇の使者を自称する謎の剣士。 用いる武器は鍔の無い細身の長剣ダークソード。そのダークソードで発生させた暗黒の空間で高速でダークソードを振り回すダークナイト闇の舞をもって敵を幻惑し、敵の喉元へ必殺の刺突を繰り出すダークハリケーンを必殺技とする。 レトロ遺伝子の存在が明らかになってからはそれを利用し、協力する振りをしながらゼノビアを死に追いやりつつ、地上に現れたアトンも一騎討ちの末に倒す。その後ダイナレッドに仮面を割られたことでその正体を明かした。 第44話で謎の老人に化けている。第49話ではコンピュータードラゴンの意思を奪う機械を作製しており、機械に精通した面を見せた。メギドが既に鎧姿であることや正体を伏せる必要があったことから、「ナイト」という名称から想起される鎧騎士ではなくジャシンカとは異なるヒーローよりのデザインとなった。メギドにあわせて隻眼になっている。デザイン画ではブーツに隠したナイフが伸びて剣になるという想定であったが未登場に終わった。 王女キメラ 第8話から登場。メギド王子の従妹(母が帝王アトンの妹)で、4本の尻尾を持つ妖術使い。黒いボディスーツに赤い鎧を着用している。変装も得意で、カー将軍による将としての評価はメギドよりも高い。鞭に変形する赤いバトンを武器として戦い、そのバトンを使ったキメラ花隠れという瞬間移動もできる。ダイナピンク=立花レイの好敵手で、第20話ではレイと一騎討ちの勝負を演じたほか、最終話でもダイナピンクとの一騎討ちを展開。子供向け番組でありながら裸で水浴びをするシーンも披露、その際、ダイナブラックに鎧を奪われてしまうという失態を演じた。気の強い性格で、メギドとはことあるごとに反目し合っていたが、メギドが刑に服す瞬間は同情を見せている。アトンの死の間際には涙を見せる場面もあった。また、後に父を倒し若き帝王となったメギドを認めて妻となり、新女王となる。 最終話のオープニングでは「若き女王キメラ」としてクレジットされた。ダイナロボとの戦いに敗れた際、メギドに地上へ墜落するグランギズモから脱出するよう促されるが、これを拒んで彼と運命を共にした。デザイン画での名称は「キャプテンキメラ(キメラ少佐)」であった。へそを出した衣装にしようという意見もあったが、デザインを担当した出渕裕はかえって色気がなくなると反対し、ウエスト部分には引き締まって見える黒を用いている。 後年の出渕の画集に「ジャシンカ帝国初代『神聖』皇帝メギドと『女王』キメラ」としてオリジナルイラストが収められており、イベントでもファンから「キメラ描いてください」というリクエストが多かった、とその画集の中で明かしている。 女将軍ゼノビア 第37話から登場した女将軍。尻尾は7本。妖魔力の使い手で、刃を装備した杖を武器に戦う。狡猾で奸智に長けた野心家であり、8年前にジャシンカ帝国の女王として君臨することを企てアトンを暗殺しようとしたが未遂に終わり、その罪を問われて千年洞窟に投獄されていた。自力で脱獄し、改めてアトンに忠誠を誓ったが、心中には変わらず野心を宿しており、アトンに従う振りをしながらジャシンカの支配者の座を狙う。そのために最初の標的として最も邪魔な存在と睨んだメギドを罠に陥れ、彼の尻尾を全て切り落とした上に千年洞窟に落とした。 レトロ遺伝子の存在を知った後はダークナイトと手を組み、アトンより先に10本尻尾になるべくカー将軍までをも陥れて死に導いたばかりか、遂に野心をむき出しにしてジャシンカ帝国を裏切り、そして夢野を誘拐、洗脳してレトロ遺伝子システムを完成させ、レトロ遺伝子を浴びて念願の10本尻尾となるが、その強大なパワーに耐え切れず、白骨化して絶命する。その寸前、ダークナイトの正体がメギドだったこと、そして彼の行動の全てが自らへの復讐だったことに気付くも、まさに時すでに遅しであった。演じた藤山律子の起用はデザインを担当した出渕裕の意見によるもので、デザインも藤山を想定して描かれた。デザイン画での名称は「大神官ゼノビア」であった。デザインでは胸元が大きく開いた布地の衣装となっていたが、造型ではキメラの鎧と同じ型から作られた鎧に変更された。 藤山は、ゼノビアのセリフ回しは時代劇での男優の演技を参考にしたと述べている。 進化獣(しんかじゅう) 進化獣製造機プログレッサーに注入された大昔の地球の海で生命の元が誕生したときの状態を濃縮させた生命のスープが生命が誕生して以来35億年の進化過程を一気に辿らせ、未来へと急速進化した生命体。 名称は「○○(使われた動植物の名前)シンカ」。 過大なダメージを受けることによって生命の危機を感じるとビッグバン・プログレスと呼称される、細胞の巨大増殖によって急速に進化する現象が起きて巨大化し、超進化獣(ちょうしんかじゅう)となる。その際、「超進化獣、○○シンカ!」と名乗る。巨大化後はバランス上脚部が太くなる。 進化獣誕生シークエンスのBGMは、ベルリオーズの『幻想交響曲』第5楽章より。本作品以降、怪人が大型化していったため、怪人側が能動的に動くよりも戦隊側から向かっていく描写が増えていった。 メカシンカ 「生命のスープ」をプログレッサーを強化した製造機メカプログレッサーに投入することにより生物の遺伝子と金属元素を合成させた、進化獣の強化版。 名称は「兵器や機械の名前+使われた生物の名前」となる。機械名が外来語で、生物名が日本語の組み合わせのネーミング(ミサイルザリガニ、ギロチントカゲなど)もあれば、逆の場合(マサカリベアー、ヨロイローズなど)もあり、双方外来語の場合(レーザーホーク、ロケットタイガーなど)もある。終盤はドラゴンやスフィンクスなど空想上の生物をモチーフにしたものも登場した。 体に強力な機能や兵器を装備しており、ダイナマンの必殺技であるスーパーダイナマイトに耐えうる能力を持っており、バラバラになってもカー将軍の指示でジャシンカ帝国の要塞グランギズモから発射されるビッグバン・ビームの照射を受けることによって、金属原子まで反応させた超メカシンカとして復元・巨大化することができる。こちらも巨大化後は超進化獣と同じく、脚部が太くなり、「超メカシンカ、○○××!」と名乗る。 シッポ兵 ジャシンカ帝国でもっとも身分の低い一本尻尾の有尾人の下級兵士。「テール!」と叫びながら襲い掛かる。 武器は敵を痺れさせる効果を持つ剣と機関銃。変身能力にも長けているが、驚いたりすると尻尾が飛び出して、正体が発覚してしまう。致命傷を負うと全身が赤く光り尻尾を残して身体が溶け、その尻尾もすぐに消滅してしまう。未知の病原体に対しては、地上人の子供と同程度の免疫力しか持っていないという欠点を持っている。また、知能はさほど高くないとされるが、スパイとして人間に化け社会で長期間暮らす内にすっかり馴染み、悪事を拒んだ夫婦のシッポ兵もいた。顔はジャシンカの紋章としても用いられるようデザインされた。第50話終盤のメキド・キメラが新帝王・女王となった際の大勢のシッポ兵は、キャスト・スタッフ全員が演じている。 親衛隊キール 後述のギーラ同様、シッポ兵の中でも精鋭としてメギドの親衛隊員として仕える。メギドからの信頼は厚く、ギーラとの結束も強い。第8話で人食い花に捕らわれたギーラを救おうとするが、ギーラともども喰われてしまった。親衛隊の登場は出渕裕の案によるもの。キールとギーラのデザインは共通で、ベレー帽の向きのみ対称になっている。 親衛隊ギーラ キールと同じくメギドの親衛隊として仕える。第8話でダイナレッドのバイクに突き飛ばされた弾みで不運にも人食い花の口に突っ込んでしまい、助けに入ったキールとともに抵抗虚しく喰われてしまった。 侍女ビルギス ゼノビアの侍女として仕える女性シッポ兵で、共に千年洞窟から復活。武器は槍。45話で人間に化けた姿も見せる。終盤、レトロ遺伝子を浴びて恍惚の表情を浮かべるゼノビアに危惧を感じて制止を呼び掛けるも、10本尻尾になる装置のオーバーヒートによって生じた衝撃で体を吹き飛ばされた後、爆死した。デザインはキールやギーラと共通だが、色が異なる。
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