日本の格差社会に関する議論とは? わかりやすく解説

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日本の格差社会に関する議論

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 09:06 UTC 版)

格差社会」の記事における「日本の格差社会に関する議論」の解説

内閣府太田清は、若年層所得格差原因として非正規雇用者の構成比高まり挙げており、1997年以降景気低迷加え雇用流動化などの構造的要因寄与した可能性指摘している。太田論文フリーター増加労働所得格差の拡大」(2005年)で、1997-2002年にすべての年齢層ジニ係数大きくなっているが、特に20代30代若年層所得格差拡大見られることを明らかにしている。また太田は、2003年以降若年層所得格差拡大止まっていることを指摘している。 三菱総合研究所政策経済研究センターは「日本ジニ係数上昇している大きな要因高齢化進行にある。一般に若年世代収入格差小さく年齢重ねるにつれ格差広がっていく。人口全体高齢化進めば格差拡大していく」と指摘している。 経済学者伊藤修は「ジニ係数などの数字による格差大きさ同義的に問題なのではなく、必要最低限の生活ができていない貧困層実在している実態こそが問題のである」と指摘している。 経済学者飯田泰之は「1990年代末、不況深刻化する第一段階では、新卒求人縮小という形で人員絞込みが行われ、格差問題生んだ雇用格差問題考える際には、マクロ経済悪化デフレーション影響注目する必要がある」と指摘している。飯田日本貧富の差広がった理由について「富裕層減税して貧困層増税したからである」と指摘している。飯田は「日本再配分政策は、貧者から金を取って富者与えているという側面がある。日本再配分仕組みは、都市部20-50代から税金集め60歳以上を養う仕組みとなっている。20-30代は貧しい状態にある」と指摘している。飯田は「20代貧困率は、税金を取る前よりもそれを再配分した後のほうが高いというデータもあり、やらないほうがましとなっている。一方で高齢者間への再配分うまくいっている」と指摘している。 経済学者原田泰大和総研は「日本格差拡大している原因は、低賃金サービス労働拡大にある」と指摘している。原田泰は「若年失業率2002年ピーク下降したが、2002年を境に突然、若者社会適応能力上昇したり、実業無視教育改善したり、若者自分探し思考変化したということはありえない」と指摘している。原田は「1990年代前半まで日本では若者格差がなかったのに、1990年代以降若者格差拡大するようになったのは、正社員になれた若者フリーターのままの若者所得格差大きかったからである。正社員同士格差より、正社員フリーター格差の方が大きいため、正社員なれない若者比率高まれば所得格差拡大する若者正社員フリーター分化した最も大きな理由は、1980年代景気良くて1990年代以降景気悪かったからである。景気良ければより高い比率若者正社員になれるが、景気悪ければより低い比率若者しか正社員になれなくなり若年失業者増える」と指摘している。原田は「格差拡大高齢化に伴う現象であり、高齢化影響調整してみると、格差広がっていないというのが多く経済学者分析結果である。1990年代後半以降若年層所得格差拡大したのは、正社員になれた若者フリーター若者所得格差大きかったからである。正社員同士格差より、正社員フリーター格差の方が大きいため、正社員なれない若者比率高まれば所得格差拡大する。そうなった最も大きな理由は、1990年代景気悪かったからである」と指摘している。原田泰は「経済成長への貢献所得比例しない場合が多い。ただし、既存の富は不公正であるため、略奪するべきだとする考えは、社会災厄巻き込む」と指摘している。原田は「明治日本人は、富は自ら創造するものと認識していた一方で昭和初期日本人は富は略奪だと認識した。こういった認識戦争招いたまた、戦前昭和でも石橋湛山のように、富を略奪とする認識否定した日本人もいた。戦後繁栄・平和・自由は、戦前昭和否定し富は創造できると認識したことから始まったことを忘れてならない」と指摘している。原田は「日本の社会保障政策には、格差縮小していないという問題がある。日本の社会保障政策は、貧困層に重い負担と低い給付、非貧困層に軽い負担手厚い給付行っている。これは、貧しくない高齢層に、多額年金給付されいるからである」と指摘している。原田泰は「ただ高所得者層に増税するよりも、低所得者層に対し子供を塾に通わせるための補助金を配るなどの政策実行するほうが、日本では有効な格差対策になる」と指摘している。原田泰は、格差縮小には経済成長続けることが重要であると提言している。原田は「デフレ脱却は、日本では格差拡大対策になる」と指摘している。原田泰大和総研は「必要なのは、セーフティーネット拡充することで、無理やり格差是正することではない 」と指摘している。 経済学者野口旭田中秀臣は「日本的雇用システム維持できなくなった原因は、非効率ではなくデフレによる実質賃金の上昇である」と指摘している。 経済学者田中秀臣は「戦後の『終身雇用』は、景気よかったために出現した長期雇用関係に過ぎない景気次第で『終身雇用』は容易にご破算になる可能性があったにもかかわらず多く労働者はその幻想社会通念信じていた。つまり、会社組織あり方よりも、景気動向などのマクロ経済要因の方が影響大きかった」と指摘している。田中秀臣は「中小企業では、戦後一貫して雇用流動性高かった」「中小企業労働者の七割は、定年までに数回転職行っている」と指摘している。田中秀臣は「不況悪化すると、安い採用コスト賃金労働者調達できる。結果非正規雇用増える」と指摘している。田中は「不況は、同世代正規雇用者と非正規雇用者との間に経済格差もたらし同時にバブル期までの売り手市場就職した世代それ以降世代の間に世代間の経済格差もたらしている」と指摘している。田中秀臣は「経済格差は、不況原因とした新卒市場での就職難中高年リストラ起因している」「『格差社会』は、1990年代からの長期的な停滞がもたした雇用悪化基づいている。若い世代非正規の職に従事している人たち増加したことで所得格差拡大していることでもある」と指摘している。田中は「『格差社会』は、長期にわたる大停滞産物であり、構造的な問題というよりも、不況長期化もたらしたのである。『格差社会』は、短期的な問題であるはずの景気循環問題であり、政府の政策失敗によって長期化したことが問題真相である」と指摘している。田中秀臣は「若年層所得格差拡大には、フリーター増加大きく関係しており、景気回復が最も効果的である」と指摘している。田中は「若年層世代間格差1997年以降拡大していったが、2003年以降景気回復によって若年層所得低下歯止めかかっている」と指摘している。田中は、フリーターの数は2002年208万人であったが、2007年には181万人までに低下していると述べている。 経済学者竹中平蔵は「戦前日本強国中でも最も所得格差大きい国の一つであった日本平等な社会は、高度成長時代のごく限られた期間に実現した特殊な現象である。日本はもともと文化的社会的に極端に平等な国ではなかった」と主張している。竹中は「日本所得不平等は、1980年代から1990年代入って一気高まったという事実は重要である」と指摘している。竹中は「1920年代に、日本型雇用慣行基礎できあがったそれ以前日本は、従業員定着率極めて低く従業員企業対す忠誠心低かった考えられている。1920年代生まれ広がった終身雇用定期昇給は、戦後定着し労働生産性長期安定的に改善に向かうための重要な基盤つくられた。日本型雇用慣行歴史は浅いものであり、決し日本固有の文化根ざしたものではなかった」と指摘している。竹中平蔵は「格差そのものダメなのではなく格差固定されることがダメのである格差固定されている社会は、非常に閉塞感がある。日本社会は、意外に格差固定されている。親の所得格差によって、金持ち再生産されるシステム日本にはある。所得格差があっても、自分高所得者になれるというチャンスがある社会は、夢のある社会であり、悪い社会ではない」と指摘している。竹中は「重要なのは、競争否定することではなく誰もが平等に競争向かっていける環境整えることである」と指摘している。竹中は「本来重要なのは、生涯所得比較である」と指摘している。 池田信夫は「派遣労働規制緩和格差原因である」という議論について、「原因と結果取り違えており、派遣労働者非正規雇用の8%に過ぎない」と指摘している(2009年時点)。池田信夫は「格差拡大原因は、市場原理主義構造改革ではなくバブル崩壊後長期不況である」と指摘している。池田は「格差原因は『新自由主義ではなく1990年代終身雇用維持できなくなった状況で、中高年社員を守るために若年層犠牲にした結果のである」と指摘している。池田は、雇用規制緩和主張し労働市場柔軟になれば、新卒就職できなかった人が一生台無しにするような絶対的な格差がなくなる。問題結果の平等ではなく機会の平等である」と指摘している。池田は「格差単なる所得の差と考え限り解決は簡単であり、高所得者課税し低所得者分配すればよい。ただし増税について国民合意を得ることは困難である」と指摘している。 経済学者伊藤元重は「戦後の日本すべての企業終身雇用年功賃金企業別労働組合といった慣行持っていたわけではなくこうした慣行とは無縁労働者多数存在した」と指摘している。伊藤は「経済成熟化し少子高齢化が進む中、日本的な雇用慣行維持することが困難となっている」と指摘している。 社会学者山田昌弘は、格差には、上位層がますます良くなる「上離れ」と、下位層がさらに落ち込む底抜け」(例えワーキングプアなど)があるとし、このうち底抜け」の増加が、社会与える不安が大きくなるとしている。「底抜け」層は、収入が低い、努力報われないと思う、 未来希望もてない、などの特性を持つため、この層の増加社会活力失われたり、犯罪増加などにより社会不安定化するとしている。山田は、大元には「何を格差ととらえるか」という国民意識の変化があり、そして意識の変化には社会の変化影響与えているとする。また山田は、家庭あり方変わったことも指摘する大家族で、夫が外で働き、妻は専業主婦として家事をこなすというモデル主流であった頃は、次のような対策を取ることによって社会リスク回避し格差顕在化させなかった。家庭稼ぎ手は夫のため、年功序列制度によって将来収入増の見通し立てとともに、夫が亡くなった場合遺族年金などによって収入カバーしていた。老化し働けなくなった場合は、子供養ってもらうことによって生活することを前提としていた。だが、この家庭モデル核家族化さらには離婚増加によるひとり親家庭増加によって崩れていく。さらに「社会リスク回避するためのもの」だった家庭は、社会の変化によって逆に社会リスク増幅し格差生産するためのもの」へとその役割変えていった。ライフステージのの中で、主に3つの段階格差発生する就職生涯収入深く関わるため失敗する格差生じる。特に日本のように新卒一括採用偏っていると、再チャレンジ機会少なく格差固定化されやすい。出産育児時期労働機会が減るため、リスクにさらされたときに格差生じやすい。また老人になると、収入増える機会激減する一方で、健康を害するなどリスクが高まる。さらに「子供がいる・いない」「家がある・無い」「蓄えがある・無い」といった状況違いが人によってあるため、格差生じやすくなる。ただし、高齢者所得貯蓄水準は様々であり一括りにすることは現実的ではない。 山田昌弘教育社会学者苅谷剛彦は、「努力報われる社会以前に、「格差社会においては努力する環境格差生じている(親の収入教育水準教育対す意識等の家庭環境子供やる気等)」と指摘している。 大竹文雄は「『男の非正規』は、かつてうまく機能していた制度慣行が、効率性・安心の障害となってしまうことがあるという実例である」と指摘している。大竹は「かつては非正規雇用者は雇用調整は、深刻な貧困問題を引き起こさなかったが、世帯主単身男性非正規雇用者として増加したため、非正規雇用雇用調整貧困問題直結するようになった1990年半ばまで、非正規雇用中心既婚女性労働者であり、家計生計を主に担う存在ではなかった。家計所得補助的役割を、非正規雇用者が担っていたのである」と指摘している。大竹は「非正規雇用雇用調整弁位置づけ、その増加デフレ下の労務費削減ツールとすることで、正規雇用解雇規制賃金守っていくという戦略に、経団連連合利害一致した少数正規雇用過重労働多数非正規雇用不安定化という二極化起きたのは当然の帰結である」と指摘している。大竹は「『非正規切り』に象徴される問題は、雇用二極化という格差生み出す社会全体不安定化閉塞感である。世代間の不公平が固定化されてしまうことは問題である」と指摘している。大竹は「日本格差社会であることを否定しない日本所得格差拡大要因高齢化である。現在の所得だけで格差社会議論してもあまり意味がなく、資産将来所得含めた生涯所得格差こそ大事で、その生涯所得格差拡大は既に観察されている。現在(2008年)が格差社会であるというのなら1970年代・1980年代日本格差社会だったのであり、『一億総中流』こそ幻想だったということである。日本所得格差低く見えたのは、まだ所得に差がない若者人口比率高かったことが原因である」と指摘している。大竹は「人々努力水準把握することは、最も難しいことの一つである。人によって生まれもっての素質が違うため、同じ成果を得るために必要とされる努力水準は、大きく異なる」と指摘している。大竹文雄は、格差解消について、経済学では「市場競争によって効率性高め貧困問題セーフティーネットによる所得再配分解決することが望ましい」とされている。大竹は「多く経済学者は、市場競争得た豊かさ成果分配することで格差対処すべきだと考えている」と指摘している。大竹は、市場競争格差発生した場合政府による社会保障通じた再配分政策低所得者技能を身につけさせ、高い所得得られるための教育・訓練拡充、の2つ対策があるとしている。また大竹は「規制強化すると、規制枠内の人の中での格差縮小するが、規制枠外の人たちとの格差拡大する規制枠内入れかどうかで、運・不運要素大きくなる」と指摘している。 「橘木・大竹論争」も参照 経済学者土居丈朗は「格差拡大への批判世界的に起きているが、その内容権利機会の平等を訴える者と、結果の平等訴えている者がいる。日本ではどちらかといえば結果の平等訴える者が多い。これは危うい傾向である」と指摘している。 経済学者高橋洋一は「日本格差は、アングロサクソンの国に比べればそれほどではなく高齢化説明できる程度である」と指摘している。 経済学者岩田規久男は「再配分所得格差拡大させる最大要因は、完全雇用達成できない成長が続くことにある」と指摘している。岩田は「長期的には、金融政策によるマクロ経済安定化伴った経済改革は、成長率引き上げ格差の拡大抑制できる」と指摘している。 経済学者若田部昌澄は「格差の是正をいかに行うべきか。税制だけでなく、教育立法による機会不平等格差の是正も重要である」と指摘している。若田部は「貧困原因として自己責任部分があったとしても、自己責任問えない状況下で自己責任を問うのは論理的ではない」と指摘している。 経済学者松原聡は「貧富の差激し社会では、犯罪発生しやすくなる」と指摘している。 経済学者吉川洋は「偶然に左右される分配放置すれば社会安定大きく損なう。よって『結果の平等』を求めるのはそれなりに合理性がある」と指摘している。 三橋貴明は「資本主義である以上、ある程度人々の間に格差生じ拡大するのは当たり前である。歴史上人々の間に格差存在しなかった時代など、一度たりとも存在しない」「実際問題日本所得問題貧困率格差拡大ではなく名目GDP成長していないことであり、人々所得水準上昇していないことにある」と指摘している。 加藤諦三は「現実格差大きさと、格差意識深刻さとは関係ない」と主張する加藤は「勝ち組」は日本以上に格差大きアメリカにもない概念であり、現代日本社会カレン・ホルナイ神経症的競争とらわれた人たちが不必要に敵対意識持ってしまっていることを示すものだとしている。 トマ・ピケティ日本格差について「日本1950年から1980年にかけて目覚ましい経済成長遂げたが、今(2014年)の成長率低く人口減少している。成長率が低い国は、経済全体パイ拡大しないため、相続得た資産大きな意味を持つ。資産相続とは縁がなく、働くことで収入得て生活する一般の人たちは、賃金上がりづらいことから富を手にすることが難しくなっている。その結果格差拡大しやすい」と指摘している。 経済学者ゲイリー・ベッカーは「日本の経済格差原因不況であり、景気回復続けば問題大半解消される」と指摘している。 社会政治学者のマルガリータ・エステベス・アベは、日本では年功序列終身雇用慣行代表される正社員雇用保護強く均等待遇実現難しくしていると指摘している。

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