流動化
流動化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/02 13:59 UTC 版)
「ストラクチャード・ファイナンス」の記事における「流動化」の解説
日本でストラクチャード・ファイナンスが紹介された当初「セキュリタイゼーション」「証券化」という呼称が一般的であった。その後は「流動化」という呼称が一般的に使われている。 流動化の定義 “企業や銀行が、保有資産に対する対外コントロールを維持しながら、資産に対する、法的・会計的・税務的支配権の全部又は一部を第三者に移転することによって、法的・会計的・税務的オフバランス化の全部、又は一部を実現すると同時に、当該資産の保有にかかる資金調達を行うこと。なお、この場合の第三者は、多くの場合、以前は同様の資産を保有することがなかった新しい投資家層であることが期待される” *流動化とは何か流動化3つの類型1.疑似証券化仕組みとしては証券化と同様の複雑なものを有しているが、最終商品が「有価証券」として認められないもの。証券化商品に至らない流動化商品は、債券型、信託型、任意組合型、匿名組合型の4つになる。流動化商品と証券化商品の基本的な相違点は1.CP・社債という伝統的有価証券の私法的枠組みに入るかどうかという点。2.販売に当たってよい業者に特定債権法上の小口債権販売業者の免許を取得したリース・クレジット会社が含まれるかという2点である。すなわち、流動化商品を固有に認める必要があるかは、ノンバンク等にも小口債権販売業者として取り扱いを認めるか否かという点である。信託型商品については、もともと取り扱いが信託銀行を主体とする金融機関に限られている為、小口債権販売業者という固有の販売ルートを維持する必要が薄く、むしろ、金銭債権信託の受益権は有価証券に指定して、投資家保護の一般法たる証券ン取引法により規制する事が望ましい。残りの商品は、すでに述べ払い代金債権型をs中心に流通ルートが確立されており、証券化の外となる。これらも有価証券指定した上で、小口債権販売業社をより広く特定債権法関連商品を証券業者(ブティック・ハウス)として、このような特定債権専業証券業者を個会社として位置づけることになる。 不動産小口証券化商品 不動産特定共同事業法に基づく不動産流動化の仕組みは、多数の小口投資家が共同で、不動産を保有するが、その運営は多くの場合に売主兼マネージャーである不動産会社に委託する。SPVには任意組合や匿名組合、不動産信託を利用し、これにより投資家が不動産の所有者として税メリットを享受できるように仕組む訳である。組合スキームの場合、運営の客観性を確保する為不動産管理信託が併用され、この結果大蔵省の規制が同種商品に及ぶことになり、他の金融商品との関係で金額等が規制されていた。このような税メリットを狙った仕組みは、投資家が税効果を享受できないと本質的には意味がなく、不動産取引の枠組みの外に出る訳にはいかない。ただし、不動産取得の資金調達は、持ち分投資(エクイティ)だけではなく、負債調達(デット)と組み合わせることで最大の効果を発揮できる。デット部分の流動化は、純粋な金融取引として証券化への発展が自然と期待できる。 2.相対的流動化SPVが介在せずに売り手と買い手が相対で直接資産を取引するが、売り手にとっては証券化と同様の対外的コントロールを維持した資産の処分、資産を利用したファイナンス効果が得られるもの。貸付債権流動化とは、銀行が企業等に貸し出している貸付債権(金銭消費貸借契約)を、借入人との関係は維持したまま、ほかの金融機関や機関投資家に売却(指名債券譲渡)したり、会計・税務上売却と同等の効果が発生する取引(ローン・パーティシペーション)を行い、見返りにその貸付債権の時価を代金として受領する取引を言う。貸付債権流動化とは、欧米で一般的なローン・パティシぺーションとか、サブ・パーティシペーションとの言われる取引を日本は導入しており、貸付債権の種類別にみると、住宅ローン流動化、地方公共団体向け貸付債権流動化、一般貸付債権流動化の3つがある。このうち住宅ローン流動化には住宅ローン債権信託という証券化商品と住宅抵当証書方式と呼ばれる相対的流動化商品の2種類がある。一般貸付債権というのは、個人向けの販売が許されておらず、法人のみとなっており、短期貸付が中心となっている。日本で行われている流動化の法的な枠組みは、指名債権譲渡型とローン・パーティシペーション型の2種類が存在する。銀行が企業に短期貸付を行う場合、約束手形を差し入れることが多い、これを単名手形という。手形は債券者である銀行にとって有利であることから、この方法が一般的になる。しかし、単名手形も約束手形であるから、法的には裏書さえすれば譲渡できる。問題は、この裏書譲渡により、銀行が裏書人として遡求義務という債務を負担するので、銀行にとってはその貸付債権をオフバランス化したことにならない。ところで、手形法上、裏書に際して「引受無担保」というような文言を記載して裏書譲渡した場合、裏書人は遡求義務を負担しない。これに目をつけた外資系銀行が着目して、自行が貸し出した商社向けの手形にかかる単名手形を、無担保裏書の方法で地銀に譲渡し、アメリカのローン・パーティシペーションと同一の効果が得られるような仕組みを開発し、一般貸付債権流動化が解禁される前から相当な規模の取引を行っていた。 ローン・パーティシペーション(参加契約) 譲渡における譲受人に当たる参加人(パーティシパント)が、銀行が貸付債権に対して有する経済的利益を取得し、同時にその借入人にかかる貸倒リスクを負担する見返りに、その貸付債権の現在価値に相当する代金を銀行に支払う契約をいう。論点はローン・パーティシペーションが会計・税務上のオフバランス効果を認めてよいかという点であり、結論からすると、ローン・パーティシペーションの国際基準に則ってオフバランス効果を認めるという、公認会計士協会の見解が得られている。 住宅抵当証書による住宅ローンの流動化 1973年に住宅ローン債権信託と併用して導入させたローン流動化の為の制度である。多数の住宅ローンを1度に指名債権譲渡するという相対取引であり、住宅抵当証書と呼ばれるものは、取引の証拠でしかない。有価証券性のある住宅ローン債権と比べると、この方式による流動化は行われていない。 企業の売掛債権流動化 売掛債権は、企業が商品を販売した場合に、代金をすぐに受け取らずに後日決済することにして、相手方に信用供与することで発生する金銭債権である。企業と企業との間に成立する金銭債権の全てが流動化の候補となり、売掛債権の流動化とは企業間の金銭債権をSPCが売主企業から指名債券譲渡の形態で買い取り、約定された金利で割り引いた金額を支払うことによってファイナンスすることである。SPCは、この買収資金をABCP等の証券化・流動化商品で調達する。商品の買い主からの代金の回収は、売主の企業がSPCの間で別途事務委任契約を締結して代行する。売掛債権を利用したファイナンスとしては、売掛債権を譲渡担保にとった借入があり、また、売掛債権を売却する仕組みとしてファクタリングという業務が存在している。ファクタリングとは、特約した企業(クライアント)から、その企業の影響活動より発生する現在及び将来の売掛債権を一括して買い取り、債券の管理・回収、継続的で回転的な金融、取引先の信用調査、信用危険の引受け、その他事務処理の代行を行う業務である。ファクタリング会社はノンバンクとして買取資金を銀行借り入れに依存するので、ファイナンス手法としては銀行による債券担保借入には劣る。従って、取立代行、信用調査、売掛金管理にかかる事務代行による付加価値を高めない限り、債権回収業という性格を有することになるため、ファイナンスとしての性格が強い債券流動化とは一線を画す。 3.バランス操作型流動化相対型であるが、共同債権買取機構やSPCといった最終投資家とはいえない中間的な主体に対して流動化をするのみで、売主にとってのファイナンスという意義が希薄となり、オフバランス化のもたらす効果があるもの。共同債権買取機構(Cooperative Credit Purchase Company、以下CCPC)は1993年に銀行の不良債権処理を促進するため、担保不動産、不動産担保債権を譲り受ける会社として、銀行界が共同出資で設立したものである。もともと、担保不動産を買い取って転売するような発想だったが、CCPCが簡単に販売できるものは銀行でも同様のため、担保処分が困難な不良債権を買い取って銀行に損失を前倒しさせ、その後時間をかけて担保処分をできるようにするという点に重きが置かれることになった。具体的には、銀行がCCPCに延滞中の不動産担保付債権を譲渡したいと打診、CCPCにおいて担保不動産の価値を評価し、価格査定委員会という内部の意思決定機関の議決を得て買取価格を決定する。価格が決まり次第、銀行は指名債権譲渡の方法で、この債券をCCPCに譲渡するが、CCPCの買収資金は同じ銀行がCCPCに対して融資を行うことによりなされる。結果的に、銀行からみると、不良債権がより額面が小さいCCPC向けの融資に振り替えられ、この差額を譲渡損失として認識し、CCPC存続期間の10年で担保の処分が行われる。
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