定着率とは? わかりやすく解説

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定着率


離職率

(定着率 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/14 00:57 UTC 版)

離職率(りしょくりつ、: employee turnover, employee churn rate)は、ある時点で仕事に就いていた労働者のうち、一定の期間(たとえば、ひと月[1]、ないし、1年なり3年[2])のうちに、どれくらいがその仕事を離れたかを比率として表わす指標。この値が極端に高ければ、労働者がその仕事に定着しにくく、入れ替わっていくことが常態化していることが含意され、逆に極端に低ければ、労働者がその仕事に定着し、転職産業間の労働力移動が行なわれにくくなっていることが示唆される。離職率の定義、ないし、計算方法は、これを求める目的や、得られる統計の状態によって多様なものとなるため、異なる目的で、異なる主体が公表する離職率の値は、単純に比較することはできない[3]

離職率と同じ現象を、逆に、どれくらいの労働者がその仕事に残っているかという観点で捉える場合は定着率という表現が用いられる[4][5][6]

企業における離職率

ひとつの企業に注目する場合の離職率は、ある時点でその企業に雇用されている労働者のうち、一定期間の間に雇用関係を解消し、職を離れた者の比率、と捉えられる[注釈 1]。起算日(期首など)から、一定期間(例えば、1年間)の離職者数を、起算日における在職者数で除するのが一般的な方法であるが、新入社員について3年間程度の期間で離職率を求めたり、中途入社した者について、それぞれの入職の時点を起算日として計算することもよくある[2][3]。また、分母についても、期中に入職してすぐに離職する者の存在を考慮して、期首雇用者数に期中入職者数を加算する方法や[6]、期首と期末の雇用者数の平均値を用いる方法もある。

企業への就職希望者は、その企業の労働環境を判断する材料のひとつとして離職率を考慮することが一般的であるが、特に内定を受けた者が離職率について尋ねる例が多いとされている[2]

一般的に、比較的短期間のうちに成果を上げることが求められる仕事では離職率は高くなる傾向があり、逆に長期的な技術の蓄積、熟練を要する仕事では離職率は低くなる傾向があるとされる[3]。また、離職率が低い(定着率が高い)企業では、社員の勤続年数が長くなるが、これは人材が流動せず、組織が硬直化していることの反映とみることもできる[5]

雑誌『東洋経済』が、日本の主要企業について、新入社員の3年後における在職状況から作成したランキングによれば、鉱業、ゴム製品、電気・ガス、空運業、石油・石炭製品、非鉄金属、ガラス・土石製品、精密機器は離職率が10%以下と低く(定着率90%以上と高く)、逆に小売業、倉庫・運輸関連業、サービス業、不動産業、パルプ・紙、証券・先物取引のパルプ・紙を除く非製造業の離職率は20%以上と高い(定着率80%未満と低い)。

非製造業の離職率が高い理由は、人手不足を背景とした労働負担の増加など構造的な問題が離職率を上げてしまっていると推測される[7]。同じく雑誌『東洋経済』がまとめたランキングによると、2010年から2015年の5年間で正社員を減らした企業ワースト3はランド (不動産会社)(99%)、ユニデンホールディングス(電気機器)(92%)、小僧寿し(92%)となっており、ワースト3のうち2つは確かに小売業・サービス業となっている。[8]

離職率の計算には退職理由は考慮されないため、大量のリストラを実施したために離職率が上昇することもある。

労働市場における離職率

日本では、厚生労働省が労働市場の動向を捉える指標として離職率を計算し、公表している。

最も一般的なものは、雇用動向調査に基づいて算出されるものであり[9]、そこでは離職率は「年初の常用労働者数に対する離職者数の割合」と定義されている[10]

これとは別に、毎月勤労統計調査に基づいて算出される入職率・離職率は、同一企業内の事業所間異動(転勤)も含めた当該月における当該事業所の労働者の増加・減少を前月末の労働者数で除した値である[11]

これら、厚生労働省が行なう調査は、抽出調査であり、離職率の計算は推計値に基づいて行なわれている。

厚生労働省は、新規学卒者の離職状況に関する統計も公表しているが、これは雇用保険の登録状況と労働者の年齢等から推計された値である[12]

資料

学歴別1年以内離職率の推移(%) [13][14]
年卒 中学卒 高校卒 短大等卒 大学卒
1987(昭和62) 39.8 19.8 13.6 11.1
1990(平成02) 43.0 21.6 14.2 10.3
1995(平成07) 45.6 21.2 16,1 12.2
2000(平成12) 49.3 26.3 19.3 15.7
2005(平成17) 45.3 25.0 19.5 15.0
2010(平成22) 41.3 19.5 18.1 12.2
2015(平成27) 42.6 18.2 18.6 11.9
2018(平成30) 34.9 16.8 17.8 11.6
学歴別3年以内離職率の推移(%)[13][14]
年卒 中学卒 高校卒 短大等卒 大学卒
1987(昭和62) 64.5 46.2 38.4 28.4
1990(平成02) 67.0 45.1 38.4 26.5
1995(平成07) 70.3 46.6 41.1 32.0
2000(平成12) 73.0 50.3 42.9 36.5
2005(平成17) 66.7 47.9 43.8 35.9
2010(平成22) 62.1 39.2 39.9 31.0
2015(平成27) 64.1 39.3 41.5 31.8
2016(平成28) 62.4 39.2 42.0 32.0
2016年(平成28年)卒産業別(大分類)3年以内の離職率(%)[14]
業種 高校卒 短大等卒 大学卒
鉱業、採石業、砂利採取業 24.3 - 15.0
建設業 45.3 41.8 27.8
製造業 28.8 33.3 19.6
電気・ガス・熱供給・水道業 8.9 6.6 9.2
情報通信業 41.8 37.8 28.8
運輸業、郵便業 35.6 35.5 24.7
卸売業 41.6 42.7 29.2
小売業 49.4 47.3 37.4
金融・保険業 29.5 30.7 23.0
不動産業、物品賃貸業 46.7 46.4 34.2
学術研究、専門・技術サービス業 38.2 46.1 32.8
宿泊業、飲食サービス業 62.9 57.4 50.4
生活関連サービス業、娯楽業 58.0 56.1 46.6
教育、学習支援業 58.0 39.5 45.9
医療、福祉 46.5 35.7 39.0
複合サービス事業 26.9 29.6 27.2
サービス業(他に分類されないもの) 44.8 46.2 35.6
その他 55.5 56.1 64.7

脚注

注釈

  1. ^ 自主的な退職解雇か、また、離職後に他の仕事に再就職したか否かは考慮されない。

出典

  1. ^ 大辞林 第三版『りしょくりつ【離職率】』 - コトバンク
  2. ^ a b c en パートナーズ倶楽部 採用活動Q&A 離職率についての質問です。”. エン・ジャパン. 2013年10月30日閲覧。
  3. ^ a b c 日本の人事部 離職率”. アイ・キュー. 2013年10月30日閲覧。
  4. ^ 岸本吉浩 (2013年4月1日). “新卒離職率が低い、ホワイト企業トップ300 電力・ガス、海運はホワイト業界!?”. 東洋経済オンライン. 2013年10月30日閲覧。
  5. ^ a b キャリコネ (2013年8月9日). “迷える就活生必見 お探しの「離職率の低い業界」はココだ!”. アメーバニュース. 2013年10月30日閲覧。
  6. ^ a b アコールマネジメント (2012年5月25日). “離職率・定着率の計算方法”. アコールマネジメント. 2013年10月30日閲覧。
  7. ^ 村山 颯志郎 (2019年8月1日). “新卒3年後の「若手が辞めない」300社ランキング 定着率が100%となった企業は103社になった” (日本語). 週刊東洋経済: pp. 3. https://toyokeizai.net/articles/-/294471?page=3 2020年5月13日閲覧。 
  8. ^ 5年前から正社員を減らした300社ランキング http://toyokeizai.net/articles/-/174251
  9. ^ 雇用動向調査:調査の概要”. 厚生労働省. 2013年10月30日閲覧。
  10. ^ 平成23年雇用動向調査の概況:結果の概要”. 厚生労働省. 2013年10月30日閲覧。
  11. ^ 厚生労働統計に用いる主な比率及び用語の解説”. 厚生労働省. 2013年10月30日閲覧。
  12. ^ 新規学卒者の離職状況に関する資料一覧”. 厚生労働省. 2013年10月30日閲覧。
  13. ^ a b 新規学卒就職者の離職状況(平成28年3月卒業者の状況)を公表します~新規学卒就職者の就職後3年以内の離職率は新規高卒就職者39.2%、新規大卒就職者32.0%~』(プレスリリース)厚生労働省、2019年10月21日https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00002.html2020年5月13日閲覧 
  14. ^ a b c 厚生労働省 (2019年10月21日). “新規学卒者の離職状況” (PDF). 2020年5月13日閲覧。

関連項目


定着率

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/09 13:25 UTC 版)

オキナワ移住地」の記事における「定着率」の解説

1968年に、国際協力事業団は「オキナワ移住地動態調査」を行った。この調査によると移住から12年後には入植者の36.3%が移住地から転住死者70人も含む)していると分析したオキナワ移住地入植者動態詳細に報告したものには、石川友紀による「ボリビアコロニアオキナワ移民の再移住に関する実証的考察」がある。石川調査によると、琉球政府移民計画下で行われた第1次から第19次の移住者総数3,231人のうち2,599人が1979年までに移住地を去っていることを明らかにした。定着率は19.9%と極めて低いことがわかる。 また石川調査によると、オキナワ移住地への入植者のうち1,736人がボリビア国外へ転出ブラジルに1,088人、アルゼンチンに578人と国外転出者の実に約96%が両国への再移民になったことが明らかになった。この理由として、ブラジルアルゼンチンには戦前からの沖縄県出身移民者が数多く存在し、かつボリビアより経済状態良かったことが挙げられる日本戻った移民数412人で全体の約16%。ボリビア国内別の場所に移動した移民数は181人で全体の約7%。その大半サンタ・クルス市への転出である。 石川研究によると、オキナワ移住地で再移住要因発生について、いくつかの期に分けることができるとしている。再移住初期入植時から1964年頃までの期間であり、移住地形期にあたる。この期末期開催された「入植10周年記念事業」では、近隣諸国から沖縄県出身者多数オキナワ移住地訪問した。この訪問者が困難を極めていた移住地の住民を見かねて、再移住促したことがあったと推測した

※この「定着率」の解説は、「オキナワ移住地」の解説の一部です。
「定着率」を含む「オキナワ移住地」の記事については、「オキナワ移住地」の概要を参照ください。

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