常世の神の僕
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常世の蟲の100年以上前の旧知の者である人間でも蟲人でもない謎の3人。全員が蟲を模した仮面を被っている。その正体は蟲奉行と同様に蟲人とは違う形で常世の蟲の力を与えられた者達である。名前の由来は、三尸から。 鳰 紫(かいつぶり むらさき) / 上尸(じょうし) 蝶を模した仮面を被る「常世の神の僕」の一人。元蟲狩の参謀。 紫色の髪で襞襟の付いた黒く短い外套を羽織った優男。上尸の時は胸元の開いた着物の上に袖の大きな丈の長い着物を着ており、正体を現した後は羽衣を身に着け派手な和装に身を包んでいる。蟲の蟲人化や長福丸が次期将軍である家重だと知っていた謎の多い人物で、周囲から聞かれる度に「私は何でも知っているから」と通している。裏で蟲狩達を操り、蟲奉行の殺害を達成せんと暗躍している。まんじゅう作りが得意で、甘味には煩いらしいが春夏秋冬のみたらし団子は気に入っている。無涯や有虚からは「紫」、他の蟲狩のメンバーからは「先生」と呼ばれる。幕府の室鳩巣とも親交がある。 その正体は常世の蟲信仰の教祖・大生部多(おおうべの おお)。常世の蟲を祀る虫祭りが流行した皇極3年に常世の蟲を生み、その名付け親になった。一度は秦河勝によって常世の蟲共々討ち取られるが、常世の蟲に与えられた力で生き延び1000年以上の悠久の時の中を様々な名前で呼ばれながら常世の蟲を探していた。100年前の大坂夏の陣で常世の蟲と再会するが、その際に奈阿姫に与えられた常世の蟲の力を彼女を殺すことで還し、「完全体」にすることを画策する。 8年前、蟲奉行を殺すための手駒を手に入れるため蟲狩の里である小里村に移り住んだ。強くなる蟲に対抗するために蟲狩の里の歴史を調べることを里の住民に依頼され、同時に寺子屋「よろず指南」を開いて無涯達に様々なことを教え信頼を得ていた。蟲への復讐心を植え付けるために黒い蟲に里を滅ぼさせた後、蟲を倒すヒントに迫る祠で見つけた咎神の秘薬を無涯達に託し、蟲奉行を殺すことで元凶である常世の蟲の生命力を弱らせ復活に時間がかかり直接倒さずに済むという旨の嘘を騙った。自身は里の住民が調査・記録した日本全国の蟲の動向を記した巻物を江戸に持っていき幕府の危機感を煽った。 紀州での戦いの後、蜜月と共に「常世の巫女」の力を持つ仁兵衛の前に現れ自分達に力を貸すよう求めた。表では仁兵衛に好意的に接近したものの、蟲奉行のいなくなった江戸で蟲人達を大量に出現させ、また蟲狩メンバーに関八州見廻り組を殲滅させるなどして江戸を混乱の渦に陥れるも、力を付けていた他の見廻り組によって止められた。その後、仁兵衛が益荒王兜の蟲人・ハギを倒したのを機に彼の母で「常世の巫女」であった叶のことと自分達の過去を明かし、同時に「常世の巫女」の力の危険性を説いて仲間に引き込もうとするも、長福丸と火鉢の説得や自分の想像以上に成長していた仁兵衛の実力、黒い蟲と無涯の介入により失敗に終わる。黒い蟲の退治後、無涯の「塵外刀真打」と仁兵衛の「常世の巫女」の力だけが蟲奉行の命に届くことを忠告して去っていった。 真田が常世の蟲に江戸へ攻め入ることを進言した際には上尸として中尸・下尸と共に大阪城に現れ、真田が江戸を攻めた後に常世の蟲と蟲奉行が乗り込みその惨状を彼女に見せつけることで人間への愛着を消すことを提案し(これは真田が敗れた場合、常世の蟲が止めを刺すという保険でもある)、彼らが江戸に行くよう仕向けた。江戸冬の陣では、他のメンバーと違い直接的な参加はせず、江戸北西部・西部・東部の3つの戦況を窺っていた。常世の蟲の襲来時には、仁兵衛が常世の蟲に叩きのめされた際に表向きは倒すための手段として蟲奉行の抹殺を示し、彼を言葉巧みに追い詰める形で仁兵衛が蟲奉行を殺しに行くよう誘導した。常世の蟲が「完全体」になった後に正体を現し、蟲奉行の不遇さを知っていながら殺そうとした挙句、利用した蟲狩の殆どの者を皆殺しにしたことに激怒した仁兵衛の宣戦布告を受けながら大坂へ帰って行ったが、帰還後に蟲奉行を傷つけたことで常世の蟲に制裁を受けた。 「人の幸せ」が何なのかを考えながら常世の蟲がこの時代でどう人を幸せに導くかを答え合わせしようと思っていたが、大阪城では蟲奉行のためにことをなす常世の蟲にこれから神としてどういう行いをするのかを問い、その際に蟲奉行のために思想も理想も持たないとして自分の神に相応しくないと失望する。果たす使命が見出せるほどの外の知識が無いことを指摘した上で自らが蓄えた1100年分の英知と経験を渡すため自分の命を落とす覚悟で常世の蟲と一つになると騙り、それを承諾した彼と共に天守閣の繭の中に入っていった。そこで念のため100年前から大阪城に用意していた「非時の香実」の呪法を使って常世の蟲の力を奪い、彼の「翅にて空間を自在に操る」能力と物理攻撃を無効化し治癒能力を備えた肉体、全蟲人への支配権を得、神の力の原動力となる大きな黒い4枚の「神の翅」と蝶の形をした瞳孔を持つ姿になった。そのまま常世の蟲に止めを刺そうとして駆け付けた仁兵衛に邪魔され、戦闘経験値の差から最初は苦戦していたが、成人と化した常世の蟲の力が「天羽々斬剣」の力を上回っていたことでたいしたダメージを受けず、全方位からの攻撃で仁兵衛に重傷を負わせた。その後、蓋骨を倒した有虚、後藤を倒した無涯と対峙し、一度は彼らの攻防一体となった連携に圧倒される。しかし、常世の蟲の瞬間移動能力を応用した「守りの翅」で瞬く間に彼らを追い詰めるが、回復した仁兵衛と再び相対する。自分を倒すため「富嶽泰山斬り」に全てを懸ける仁兵衛を「命を無駄にする愚かな存在である武士」と見下し嘲笑うが、自らの「神の翅」の強度を上回る「富嶽泰山斬り」で右上の翅を斬り落とされる。だが追い詰められたことで今までの油断と過信を捨て、長い白髪や白くなり形状が変わった翅を持ち、鎧を纏うなど神々しさが強く顕れた神本来の姿に進化した。格段に向上した身体能力と威力・範囲共に大幅に拡大した翅の能力で大阪城を跡形もなく完全崩壊させ、仁兵衛や「塵外刀」に常世の蟲を吸収した無涯を縊り殺しにかかり幾度も二人を圧倒するが、仁兵衛に両腕を斬られて瞬間移動で宇宙空間まで逃亡した際にそこまで追いかけてきた無涯に左下の翅を斬り落とされる。死闘の最中、千年間一人で考え抜いた「人の幸せ」と長年謎としてきた「人々の幸せになりたい願いで何故常世の蟲が現れたのか」という疑問に対して「日の本の全ての人間を殺して常世(死者)の国へ導き、苦しみや悩み、欲望から解放することこそが人間の本当の幸せであり、常世の蟲の役目」だという歪んだ結論に至り、今度は心の底からさらなる力を求めた際に聞いた蟲達の声から地面と一体化して日本中の全蟲人を吸い上げ、日本各地に「蟲の柱」を配置して日本への総攻撃を開始する。だが体そのものは蟲達の憎しみによって乗っ取られ多数の「蟲の柱」と同化したことで尚も巨大な化け物のような姿への変貌は止まらず、理性を失った振りをして翅を体内で移動させながら肉体が欲するかつての常世の蟲の力を持つ仁兵衛を捕食することに成功するも彼の精神を「心世界」へと招き入れてしまう。「心世界」では人間の姿をした鳰が存在しており、精神体の状態で仁兵衛と対峙する。「過去、ただ純粋に人々の幸せを願っていた自分の生き方と瓜二つだ」という言葉を投げかけ仁兵衛の心を折ろうとするが、仲間達の想いに支えられた仁兵衛から逆に「自分さえ良ければどうでもいい」と看破されたことで逆に心を折られて粉砕され、それにより現実世界の鳰が弱体化、贅肉が取れて翅が剥き出しになってしまう。悪足掻きのように必死の抵抗を見せるも無涯に右下の翅を斬られ、そして最後は仁兵衛に対して自らが翅の厚い壁となって立ち塞がるが「常世の光」で超巨大化した「天羽々斬剣」による「富嶽泰山斬り」で自身の躰ごと最後に残った左上の翅を一刀両断され敗北した。同時に日本中の「蟲の柱」諸共消滅し、その魂は常世の蟲によって常世の国に持ち帰られた。 技 守りの翅(まもりのはね) 常世の蟲の翅に触れたもの全てを瞬間移動させる能力の応用技。能力を最小限にした翅で自身を覆い、それに触れた相手の攻撃そのものをその者の近くに飛ばして返す。攻撃を返す場所は相手の背後や横、頭上など自在に指定でき、翅そのものを巨大化させることで大規模な攻撃をも返すことが可能(翅の隙間に的確に攻撃される場合は返せない)で、物体を移動させることで相手の攻撃を封じることもできる。ただし、この技の使用時は翅を攻撃に回すことは出来ないが、鳰はその弱点を敢えて提示し次に「守りの翅」と見せかけて攻撃することで上手く虚実を混ぜ込み技の欠点を補っていた。 神罰覿面(しんばつてきめん) 神本来の姿になった際に使用した技。より巨大かつ強力になった複数の翅の衝撃波で相手を攻撃する。大阪城を城下町ごと一撃で崩壊させるほどの威力を誇る。 蟲の柱(ムシのはしら) 全蟲人を吸い上げ集合させて作り上げた多数の巨大な生きた柱。埴輪のような不気味な姿で黒い翅と複数の手を生やし、「ニクイィィ…」と端的につぶやいている。人間に正確に狙いを定めて口から強力なエネルギー波を放ち、仁兵衛の「天羽々斬剣」でも防ぎきれないほど。一度倒しても鳰自身を倒さない限り何度でも再生・復活する。 心世界(しんせかい) 現実世界で蟲に肉体を乗っ取られた鳰の心の中である空間。空間内は無数の蝶が舞っており、壁を物理攻撃でどれだけ壊そうとも瞬時に修復される。この空間では個人として居るためには強い精神を保たなければならず、精神が弱まれば存在が消滅し心を折られる度に手足が消し飛んで身体と精神、魂が抜けていく。自分や他者の想いを椅子や剣、手足などの形として具現化することもできる。 弥三郎(やさぶろう) / 中尸(ちゅうし) 声 - 緒方賢一 トンボを模した仮面を被る「常世の神の僕」の一人。火鉢・いろりの祖父。 かつて山県家に仕えていた非常に高名な忍。長い髭を蓄え、髪を高く縛った小柄な老人。中尸の時は端が複数に分かれた黒い外套を羽織っている。火鉢といろりのことは非常に可愛がっていたが、珍宝流を守る苦しみを自分の代で終わらせ孫娘にまでそれを背負わせたくないという思いから、心を鬼にして忍術を教えることについては非常に反対していた。 珍宝流忍術の使い手。両掌に特別な火薬を塗った「火」と書かれた紙を貼り付けており、一定の振動によって強烈な爆発を放出することができ、それで相手の攻撃を払ったり、同じ発破の攻撃を受け流すことも可能。中尸になった後は常世の蟲から刃を通さない硬い手足と水蠆の能力を授かり、口から取り込んだ空気を体内で圧縮し足裏からジェット噴射することで高速による突進攻撃を繰り出せる。 100年以上前に百地三太夫から忍術を学んでおり、霧隠とは兄弟弟子にあたる。1年前に修行で里を出奔していたが、旅路の途中に老衰で死にかけており、自分の代で珍宝流が終わってしまうことを悔い、現れた鳰の「私のために忍術を使う代わりに不死で強靭な身体を授ける」という取引に乗ってしまった。 常世の蟲の襲来時には市中組を圧倒し、去り際に火鉢を戦いから遠ざけるために「忍者を捨てろ」と忠告した。大阪城では、鳰に常世の蟲の抹殺を命じられて火鉢・義怜と対峙する。強力かつ外道な発破術と蟲の能力で二人を圧倒するが、自らの爆発を上回るほどの貫通力を得た「姫椿百連華」に貫かれ敗れた。火鉢に越えられたことでもう珍宝流は彼女のものだと認め、最後に火鉢の口から珍宝流の名を聞いて満足げな笑みを浮かべながら消滅した。 武器・技 烈火爆塵弾(れっかばくじんだん) 巨大蟲を一発で撃退する威力を誇る箱型の火薬玉。 火柱紙震爆(かちゅうししんばく) 僅かな振動で爆発する紙発破。作中では相手に直接貼り付けて手足を奪うなどの使い方をしている。 烈風大筒弾(れっぷうおおづつだん) 両手の紙を合わせ、巨大な筒状の爆炎を放って相手を吹き飛ばす。大突撃火炎球(だいとつげきかえんだま) 水蠆のジェット噴射で高速移動しながらすれ違いざまに放った「烈風大筒弾」を喰らわす。 鉄煉火獄殺炎弾(てつれんがごくさつえんだん) 箱型の火薬玉から火鉢の「牡丹灯籠」を遥かに上回る超巨大な爆炎を放つ。発破の中には毒を塗った無数の鉄菱や杭を仕込んであり、殺傷能力を高めている。 蓋骨(がいこつ) / 下尸(げし) 声 - 上田燿司 クワガタを模した仮面を被る「常世の神の僕」の一人。元蟲狩の一員。 頭に巻いた布や仮面で素顔を隠す不気味な男。仮面の下の顔は蟲の毒によって焼け爛れ、醜い表情になっている。下尸の時は体中に包帯を巻いて白い羽織を身に纏っている。失態を犯した蜜月に手を上げるなど仲間内でも容赦のない冷徹な性格。自らの顔に激しい執着を示し、綺麗な顔を持つ相手は壊したくなる狂気を抱いている。 非常に長い鞭「仏屍鞭(ぶっしべん)」を武器に用い、多数の杭と併用することで相手を拘束したり、人体を容易に切断することもできる。下尸になった後は刀も使い、他の蟲狩メンバーを圧倒する実力を得た他、常世の蟲からアオバアリガタハネカクシの能力を授かり、傷つけられた皮膚から大量のペデリンによる毒の体液を放出して相手に報復することができ、指や舌を噛んで自分から傷つけることで攻撃手段にすることも可能。 本名は京左郎(きょうざろう)。8年前、当時は美形の少年で多数の女性にモテていたナルシストだったが、黒い蟲の襲撃の際に自身の顔を失った。 蟲奉行に対して異常な憎悪を抱いており、他の蟲狩と共に蟲奉行の抹殺を企む。蟲奉行が御籠りを行う「離れ」と呼ばれる場所を探るために蜜月に蟲奉行所を監視させていた。その場所を八丈島と特定し、戒汝と共に滅蟲邪刀「ムシカリ」を蟲奉行に発射する役割を担う。皆の注意が暴走する仁兵衛に向いている間に蟲奉行を嬲り殺そうとするが、完全に意識を取り戻した仁兵衛によって右腕を斬り落とされる。その後仲間達と共に撤退する時も、蟲奉行を恨めしい表情で眺めていた。 その後、鳰に「昔の顔を取り戻したくないか」と誘われ、常世の蟲に強靭で綺麗な体軀を与えられたことで顔と右腕の傷を治した。常世の蟲の襲来時には、鳰が正体を現した後に蟲狩を裏切り、鉄丸・蒼願・至胴・末那蚕を殺害した。大阪城では、常世の蟲と鳰が繭の中に入った後に仕切り役を申し出て長宗我部達と一触即発となるが、毛利の気迫に気圧されてあくまで協力し合うことにした。鳰が常世の蟲の力を奪った後、常世の蟲の手向けとして鳰が蟲奉行を殺すと決めたことで衝動が抑えきれなくなり、蟲奉行抹殺に動く。蟲奉行を守るため駆け付けた長宗我部も自らの毒液で寄生虫を無効化して追い詰めるが、現れた有虚には「白沙乃雷」の電撃で毒液を封じられた挙句、左腕を斬られ胸部に貫かれた「白沙乃雷」の電撃を直に受ける。鳰にも見限られ、体が焼け焦げていく中で自分が元の顔を取り戻したかった理由が小里村での仲間達との平和な日々に戻りたかったことに気付き「皆に顔向けできない」と深い後悔を感じるが、有虚に「死ぬ気で土下座すれば皆許してくれる」と諭され、あの世で仲間達と先に待っていると告げ消し炭となって消滅した。 アニメ版では春菊の母親を殺した真犯人であった(理由は「ことのついで」)。春菊と戦い、彼の捨て身の攻撃に隙を突かれて死亡する。 技 怨嗟ノ血潮(えんさのちしお) 自分の指を噛んで出来た傷口から大量の毒液を周囲にまき散らす。怨嗟ノ血潮十字割腹(えんさのちしおじゅうじかっぷく) 切腹して自らの腹に出来た十字状の傷口から前方広範囲に毒液を放出する。長宗我部の10兆635匹の寄生虫をものともせず、大阪城の城下町を跡形もなく溶かすほどの威力を持つ。 仏屍鞭「数多(あまた)」 「仏屍鞭」の中から無数の鞭を出し、相手に振るって攻撃する。
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