ラッカセイ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/03/09 13:29 UTC 版)
利用
品種はさまざまあるが、主にラッカセイそのものを味わう大粒種と、チョコレートなどの加工用にする小粒種がある[2]。食材としての主な旬は9 - 10月といわれ、サヤが固く締まっているものが市場価値の高い良品とされる[2]。生のラッカセイは日持ちしないため、当日分を茹でて食べるのがよく、食べきれない分は小分けにして冷凍保存するとよいと言われている[2]。
食用
ラッカセイの実を食べる時は、殻(莢、豆果)のまま炒るか殻からむいたものを炒ることが多い。炒りラッカセイは、生ラッカセイを殻から取り出し、フライパンに油をひかずに弱火で20分ほど焦がさないように乾煎りしたものである[3]。サヤから取り出して香ばしく炒ったピーナッツは、薄皮がついているものや薄皮を剥いたものがあり、塩やバター、パーム油などを絡めて風味づけして市販もされている[9]。
また、殻のまま塩茹でにしたものは「茹でピー」とも呼ばれる[7][注 2]。塩茹でラッカセイは、殻の表面を洗ってから被るぐらいの塩を加えた水で1時間ほど茹で上げ、ザルに上げて冷ましたものである[9]。日本で市販されているラッカセイは、産地で乾燥させたもので、カリッとした食感を楽しむことができる[9]。日本では、北海道、東北地方、千葉県の一部では節分の豆まきで殻付きで炒った落花生を用いる地域もある。
中国や台湾では殻ごと塩、八角などの香辛料を加えた湯で茹でる調理や、蒸篭で蒸すことも多い。茹で落花生は日本でも静岡県、鹿児島県などでは一般的である。長崎県大村市ではがめ煮に落花生を入れる習慣がある。
中国では皮付きの種を油で揚げてから塩をまぶす方法も一般的である。これは朝食に食べる粥の具としても使う。
栄養
100 gあたりの栄養価 | |
---|---|
エネルギー | 2,351 kJ (562 kcal) |
18.8 g | |
食物繊維 | 7.4 g |
47.5 g | |
飽和脂肪酸 | 8.33 g |
一価不飽和 | 22.76 g |
多価不飽和 | 13.74 g |
25.4 g | |
ビタミン | |
ビタミンA相当量 |
(0%) 1 µg |
チアミン (B1) |
(74%) 0.85 mg |
リボフラビン (B2) |
(8%) 0.10 mg |
ナイアシン (B3) |
(113%) 17.0 mg |
パントテン酸 (B5) |
(51%) 2.56 mg |
ビタミンB6 |
(35%) 0.46 mg |
葉酸 (B9) |
(19%) 76 µg |
ビタミンE |
(67%) 10.1 mg |
ミネラル | |
ナトリウム |
(0%) 2 mg |
カリウム |
(16%) 740 mg |
カルシウム |
(5%) 50 mg |
マグネシウム |
(48%) 170 mg |
リン |
(54%) 380 mg |
鉄分 |
(12%) 1.6 mg |
亜鉛 |
(24%) 2.3 mg |
銅 |
(30%) 0.59 mg |
セレン |
(29%) 20 µg |
他の成分 | |
水分 | 6.0 g |
水溶性食物繊維 | 0.4 g |
不溶性食物繊維 | 7.0 g |
ビオチン(B7) | 92.3 µg |
ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[11]。 | |
| |
%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 |
項目 | 分量(g) |
---|---|
脂肪 | 49.24 |
飽和脂肪酸 | 6.834 |
14:0(ミリスチン酸) | 0.025 |
16:0(パルミチン酸) | 5.154 |
18:0(ステアリン酸) | 1.1 |
一価不飽和脂肪酸 | 24.429 |
16:1(パルミトレイン酸) | 0.009 |
18:1(オレイン酸) | 23.756 |
20:1 | 0.661 |
多価不飽和脂肪酸 | 15.559 |
18:2(リノール酸) | 15.555 |
18:3(α-リノレン酸) | 0.003 |
栄養価が非常に高いことで知られ、可食部100グラム (g) あたり約295キロカロリー (kcal) あり、30粒ほどで米飯1杯分のカロリーとほぼ同じといわれている[2]。ビタミンB群や老化防止に欠かせないビタミンE、脳を活性化するレシチン、ミネラルを豊富に含んでいる[2][3]。タンパク質や脂質も多く、ラッカセイに含まれる脂肪の多くはオレイン酸やリノール酸などの不飽和脂肪酸で、悪玉コレステロールを抑制する作用から生活習慣病予防に役立つといわれている[2][3]。ラッカセイの薄皮には、レスベラトロールが含まれ、薄皮ごと食べる方が健康に良いと言われている[13][14]。さらに、腸内のビフィズス菌を増やす効果があるオリゴ糖や、便通を促す食物繊維も豊富に含まれている[2]。
ピーナッツの摂取量が多いと脳卒中、特に脳梗塞の発症リスクの低下と関連している[15]。
新しい新鮮なピーナッツでなく、古い落花生ピーナッツには、見えない内側の胚芽に発がん性の高い青カビが発生している場合があるので、中を確認する必要がある。
加工、調理原料
加熱したピーナッツの外側に砂糖をまぶしたり、小麦粉の衣を付けて揚げたりした豆菓子や、チョコレート菓子などの加工品も生産・販売されている。鹿児島県奄美群島には熱した黒砂糖と絡めたがじゃ豆(さた豆)、味噌も加えた味噌豆といった菓子がある。千葉県の名産品には「落花生の甘納豆」が存在している。他には、砕いて団子の中に入れる餡にしたり、揚げせんべいに加えられたりもする。
ラッカセイの日本での主産地である千葉県や茨城県では、炒ったラッカセイを甘辛く味つけた味噌であえた惣菜が郷土料理となっており[18]、スーパーの惣菜コーナーなどでも売られている。日の出味噌の加工品から名が広がり「味噌ピー」と呼ばれている。
料理では加熱して砕いたラッカセイをゴマ同様に薬味に使う場合があり、中華料理のうち四川料理、台湾料理などではよく見られる。また、龍のひげ飴(クルタレ)、団子などの菓子に入れられることもある。
福建省厦門市や台湾には小豆の代わりにラッカセイで作ったぜんざいともいうべき「花生湯」「花生仁湯」がある。
広東料理のスープ料理に鶏の足(もみじ)、ナツメなどと薄皮付きのラッカセイを煮込んだ「紅棗鶏脚花生湯」や、ナツメをパパイヤに変えた「木瓜鶏脚花生湯」などがある。広東粥には豚のあばら骨、タラの干物、するめや干しエビと薄皮付きのラッカセイを入れて煮込んだ「排骨花生粥」「柴魚花生粥」「艇仔粥」などもある。
沖縄県では「ジーマーミ(地豆)」と呼び、水分を含ませてすり潰したラッカセイにサツマイモのデンプンを加えて加熱して作るジーマーミ豆腐がある。鹿児島県の奄美群島にもあり、鹿児島市や鹿屋市ではだっきしょ豆腐と呼ぶ。ごま豆腐に似た食感のものである。
中国の福建省、台湾、ベトナムなどでは加熱後、粉状にしたラッカセイと砂糖を合わせて押し固めた、落雁に似た「花生酥」がある。福建省、台湾、マレーシアには更に麦芽糖を加えて固めた貢糖もある。
ラッカセイを炒ってすり潰して練るとピーナッツバターや「花生醤」(ホワションジアン)を作ることができる。
搾油
油脂含有分が高く、ピーナッツオイルが製造されている。不飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸が多く、血中のコレステロールを下げ、動脈硬化の予防が期待できる。広東料理など、中華料理にはよく使用されている。また、マーガリンの原料にもなる。
工業用途では石鹸、シャンプー、塗料樹脂などにも原料として応用できる。ディーゼルエンジンは当初落花生油から精製されたバイオディーゼルを使用することを想定していた。
殻
殻は肥料、干して燃料にするほか、粉砕して、プラスチックのフィラー、コルク代用品、研磨材などに利用することができる。
注釈
出典
- ^ Linnaeus, Carolus (1753) (ラテン語). Species Plantarum. Holmia[Stockholm]: Laurentius Salvius. p. 741
- ^ a b c d e f g h i j 主婦の友社編 2011, p. 110.
- ^ a b c d e f g h 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 137.
- ^ “peanut”. Wiktionary. 2022年4月30日閲覧。
- ^ a b c d e ジョンソン 1999, p. 125-131.
- ^ 『落花生 栽培手引き』p47、2010年3月、相州落花生協議会。同時期に神奈川県二宮町の二見庄兵衛も「南京豆」の種子を入手し、試作した。後年、この中から立性種を選別した。
- ^ a b 『落花生 栽培手引き』(2010年3月、相州落花生協議会)p.48
- ^ ジョンソン 1999, p. 133-136.
- ^ a b c 主婦の友社編 2011, p. 111.
- ^ 文部科学省『日本食品標準成分表2015年版(七訂)』
- ^ 厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2015年版)』
- ^ USDA栄養データベース アメリカ合衆国農務省
- ^ 「情報:農と環境と医療 47号」北里大学学長室通信 No.47(2009年2月1日)
- ^ ピーナツは皮ごと食べよう:視的!健康論~眼科医坪田一男のアンチエイジング生活~読売新聞/ヨミドクター(2010年10月21日)
- ^ ピーナッツ摂取と脳卒中および虚血性心疾患発症との関連 JPHC Study 多目的コホート研究、 独立行政法人国立がん研究センター
- ^ http://www.nal.usda.gov/fnic/foodcomp/search/
- ^ [『タンパク質・アミノ酸の必要量 WHO/FAO/UNU合同専門協議会報告』日本アミノ酸学会監訳、医歯薬出版、2009年05月。ISBN 978-4263705681 邦訳元 Protein and amino acid requirements in human nutrition, Report of a Joint WHO/FAO/UNU Expert Consultation, 2007]
- ^ “「みそピー」物語”. 日の出味噌ホームページ. 2018年10月20日閲覧。
- ^ KERI BLAKINGER Quebec woman opens up about daughter’s tragic death after allergic reaction from kissing boyfriend who ate peanut butter sandwich Daily News2016年6月13日
- ^ a b c d e f g 主婦の友社編 2011, p. 112.
- ^ 高橋芳雄「落花生の連作害に関する研究」『千葉県農業試験場研究報告』第11号、千葉県農業試験場、1971年3月、1-12頁、ISSN 0577-6880。
- ^ a b c d e f 主婦の友社編 2011, p. 113.
- ^ FAOによる生産統計(2004年)
- ^ FAOによる輸出統計(2004年)
- ^ FAOによる輸入統計(2004年)
- ^ 「27年産豆類(乾燥子実)及びそばの収穫量(全国農業地域別・都道府県別)」『作物統計』農林水産省、2016年
- ^ 千葉県農林総合研究センター・落花生研究室(2018年7月26日閲覧)
- ^ 落花生新品種は「Qなっつ」千葉県、10年ぶり/甘み強く後味あっさり■秋デビュー『日本経済新聞』朝刊2018年7月20日(首都圏経済面)2018年7月26日閲覧
- ^ 幻の「遠州半立」復活/静岡・浜松市 ピーナッツバターが評判/1904年万博で世界一 荒廃農地から発見『日本農業新聞』2021年9月7日13面(同日閲覧)
- ^ 千葉県では、2019年に新種「千葉P114号」を「Q(きゅー)なっつ」と命名した(“県育成落花生「Qなっつ」について”. 千葉県 (2020年2月27日). 2021年11月10日閲覧。)。
- ^ 農林水産省年報 第2章 国際部
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