「ビーチ」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/19 09:56 UTC 版)
多摩川沿いのホテルを拠点とした滞在者の集団。 トランプを互いに持ち寄り「今際の国」脱出を目指すことを目的とする。様々な職業の滞在者が集い、異なった能力を持つ者同士でチームを組むことで、多種多様な「げぇむ」に対応できるようにしている。「ビーチ」のメンバーにはNoが割り当てられ、それが「ビーチ」内での序列となっている。この序列は上位メンバーの死亡によって繰り上がるほか、未収集のトランプを入手することによって一度に大きく昇格することもある。 No.1のボーシヤ派(カルト派)とNo.2のアグニ派(武闘派)の二大勢力が牽制し合うことで平穏を保っている。しかし後に起きた殺人事件と「げぇむ」によって秩序が崩れてしまった。 下記の紹介における各人の序列は初登場の時点のNoを基準としている。 弾間剛(だんま たける) / ボーシヤ 声 - 若本規夫、演 - 金子ノブアキ No.1にして「ビーチ」の支配者。 元は歌舞伎町のホストだったが父親の店を受け継ぎ、商店街の人間から「帽子屋(ボーシヤ)」のあだ名をつけられた。アグニとは昔馴染みの親友同士で、アグニのことを「杜ちゃん」と呼んでいる。「♠」を得意とすることからも解る通りの強靭な肉体と宗教指導者を連想させるような高いカリスマ性を併せ持つ。 アグニと共に「今際の国」を訪れた後、いつまで続くか解らない「今際の国」の絶望から人々を救うために「ビーチ」を創設し、“「今際の国」を出国する手段”という偽りの希望をスローガンに掲げ滞在者を率いてきた。しかし、「ビーチ」が巨大化していくと共に独裁者と化し、指導者としての責任感と住民達に嘘をつき続けることに疲れて精神を消耗していき、最終的には絶望から目を背けるため自らがその嘘を信じ込むようになった。「ビーチ」との決別を宣言したアグニに、あえて弾丸の装填されてない拳銃を向けて返り討ちにあう形で絶望から逃れる。 アグニに殺された後の「ねくすとすてぇじ」開催中にも、アグニ自身が見る幻という形で彼の前に幾度となく現れ皮肉めいた言葉で責め続けるが、死ぬ間際に戦友への罪悪感を露わにしたシーラビに自分を重ねるアグニに対し、「嫌な役目を押しつけた自分の方が悪かった」と謝罪をしてアグニの前から去って行った。「今際の国」の正体が三途の川のようなものだったことからするとボーシヤの魂が本当に語りかけて来ていた可能性が高い(アグニが知らないようなドードーやヘイヤの経歴を語っているなど)。 得意ジャンルは「♠」。 粟国杜園(あぐに もりぞの) / アグニ 演 - 青柳翔 No.2→1。自衛官。アグニ派のリーダー。ボーシヤの親友で、ボーシヤのことを「剛」と呼んでいる。 幼少のころより父から母共々激しい暴力を受け、母を守るために暴力の矛先となるべく囮を演じていた。その後、母が家を出て行ったことに応じるように自身も家出し、父への復讐を誓い肉体と意志を鍛え続けた。しかし父は当のアグニが家出した半年後に急性アルコール中毒で死亡しており、以来やり場を失った怒りを抱きながら生きてきた。 武闘派のリーダーらしく襲い掛かってきた肉食動物をゲーム感覚で射殺し、弾が切れた後も特に戸惑うこともなく容易にハイエナを素手で殺す等、すさまじい戦闘力と胆力の持ち主。 ボーシヤと共に「今際の国」を訪れた際も行動を共にし、「ビーチ」建設にも助力。素行の悪いメンバーによる治安の悪化が目立ってからはボーシヤの願いを聞く形で武闘派のリーダーとなり、ボーシヤと敵対する嫌われ者を演じながら「ビーチ」の秩序の維持に努めてきた。しかし、ボーシヤが徐々に狂気に侵されていくのを見るに堪えかね「ビーチ」との決別を宣言。銃を向けてきたボーシヤを返り討ちにしたが、ボーシヤの拳銃には弾が入っていなかった事実を知り深く絶望し自暴自棄に陥ってしまう。その2日後に開催された「まじょがり」に乗じて「ビーチ」メンバーの全員抹殺を実行に移し、自分もろとも「ビーチ」を壊滅に追い込もうとした。殺戮の末にアリスによってボーシヤ殺害と「まじょ」ではないという事実を暴かれ、「げぇむ」の終結と共に「ビーチ」を後にした。 その後は自らの犯した罪を償うために死に場所を求めて各地をさまよい、シーラビとの戦いを通じてドードーやヘイヤと出逢い、彼らとの交流で過去に失われた「家族の絆」を感じ取り、彼らを守ることを自分がしたことへの贖罪にしようと決意。最終的にシーラビを倒す事に成功するが、その時の負傷で戦線離脱。再び生きて出逢うことを誓いドードーとヘイヤを送り出した。「今際の国」での永住権を拒否して現実世界に帰国。今際の国での負傷が反映されているらしく、昏睡状態で入院しているが、命に別状はない模様。 得意ジャンルは「♠」。 韮木傑(にらぎ すぐる) / ニラギ 演 - 桜田通 No.4→2。ゲームエンジニア。アグニ派に属する舌にピアスをつけた粗野な男。 学生時代は気弱な性格であり、不良生徒から酷いいじめを受けて自身が「嫌われ者」であることを確信。それが原因か他者から嫌悪される言動に抵抗を感じない。「今際の国」に来てからも恐怖心より満足感を覚え、「げぇむ」に関してもクリア如何よりもその過程を楽しむことを重視している。 げぇむにおける戦術の立案や他者への扇動等で高い知性を見せる一方で武闘派のアグニ派メンバーらしく銃器の扱いにも長ける。特にスナイパーライフルを愛用。 「まじょがり」開始後、自らの楽しみのため「ビーチ」住民達を巧みに扇動して、まさに中世の「魔女狩り」染みた恐慌状態を作り出した。ゲーム感覚で次々と「ビーチ」住民を射殺している最中にチシヤと遭遇し手製の火炎放射器で焼かれて全身に大火傷を負う。最後は「ビーチ」諸共生存者全員を焼き殺そうとホテルに放火し、「ビーチ」崩壊の一因となった。「ねくすとすてぇじ」開催1日目、アリスらと共に「すうとり」を「くりあ」した際に「人との絆」に何の価値も感じない自分の歪みを自覚する。全身火傷で死期が近いと悟っていた事も重なって、ひたすら嫌われることにプライドにも似た感情を抱くようになり、自殺に失敗したぷれいやぁから介錯を求められても拒否し、「最期まで嫌われ抜いて地獄に堕ちてやる」との決意を見せた。 開催7日目にアリスとチシヤを襲撃した際は「自分達は己の事しか考えない、大人になれない欠陥品だ」と殺し合いを煽るが、「同族」からの言葉で自分を再認識した上で「変わりたい」と願うアリスから拒否される。直後に銃声を聞きつけやって来たウサギを殺せばアリスは「同族」に戻れると判断、嫌われてでも「独りぼっち」にはなりたくないという本音を吐露しつつウサギを殺そうとするが、ウサギはチシヤに庇われ失敗し自身はアリスに撃たれ重傷を負う。最終的に「今際の国」での永住を拒否して現実世界に帰国。「今際の国」でのように全身に重度の火傷を負って入院していたことが判明した。 得意ジャンルは「♦」。 真昼祐二(まひる ゆうじ) / マヒル No.5→3。学生時代に起業したITベンチャーの経営者。「ビーチ」結成当時からの幹部。高位のランカーであることからも解る通り、地味に見えて極めて有能な人物。 持ち前の器用さを活かして順風満帆な人生を歩んできたが、自身があまりに優秀過ぎるあまり人生において退屈さを感じ常に満たされなさを感じながら生きてきた。 「ビーチ」崩壊から3日後にアリスらと別れて「今際の国」の"外"を目指す旅に出る。一度は「げぇむ」に参加するのを止め死を覚悟したが、自然の中に根付く「生」を目の当たりにして、再び生きる決意をする。 「ねくすとすてぇじ」開催3日目にウミガメと出会い、常人離れした推理力で今際の国の謎を解き明かそうとする過程で、今際の国の「答え」まであと一歩まで迫るが、シーラビの襲撃によって「答え」を握る滞在者とウミガメを殺される。開催7日目に「♣Q」を撃破した後は「♥Q」の会場前に集結し、アリスとウサギに最後の「げぇむ」の「くりあ」を託した。最終的に「今際の国」での永住を拒否して現実世界に帰国。表層的な記憶を失っているが、アンと再会してこの体験について談義している。 得意ジャンルは「♣」。 安梨鶴奈(あん りずな) / アン 演 - 三吉彩花 No.6→4。警視庁鑑識班。ボーシヤ率いるカルト派に属し、論理や科学の力で「げぇむ」に挑むことを得意とする、冷静な性格をした女性。熱心な科学信捧者だが、オカルトの類にも一定の理解を示す。 「ビーチ」崩壊後はアリスらと行動を共にしていたが、「ねくすとすてぇじ」開始直後のシーラビ襲撃から逃走する際に、仲間3人と共にアリスらとはぐれる。その後、同日中に「♦Q」に挑み、これを撃破。開催7日目に「♥Q」の会場前に集結し、アリスとウサギに最後の「げぇむ」の「くりあ」を託した。最終的に「今際の国」での永住を拒否して現実世界に帰国。表層的な記憶を失っているが、マヒルと再会してこの体験について談義している。 得意ジャンルは「♦」。 佐村隆寅(さむら たかとら) / ラスボス 演 - 栁俊太郎 No.8→6。無職。顔と左腕に刺青を彫ったスキンヘッドの無口な男。アグニ派に所属している。通称の由来は「ラスボス」のように強いことから。 「現代社会では『死』から過剰に守られているため、『生』を実感出来ない」「本当に自分を理解してくれる人間はいない」という考えから、外界はもとより家族との接触すら絶つ引きこもりの生活を送っていた。誰の力にも依らない生き方に執着し、死と隣り合わせの「今際の国」に運命めいた物を感じ、今際の国からの帰還を目指す他者とは逆に二度と現世に戻らぬことを誓い、その象徴として現世ではまともな生活を送れないほどの強烈な紋様の入れ墨を全身に入れた。日本刀を愛用。 「まじょがり」にて殺戮を行う中でクイナと戦い、彼女に覚悟の違いを見せつけられ敗北する。「げぇむ」が終結した後も燃え盛る「ビーチ」に留まり、「己の力のみで生きる自由」を改めて体感しながら死亡。 得意ジャンルは「♠」。 苣屋駿太郎(ちしや しゅんたろう) / チシヤ 声 - 櫻井孝宏、演 - 村上虹郎 No.11→9。医大生。特別編「だいやのろく」及び「だいやのきんぐ」の主人公でもある。 他人の命はもちろん己の命にさえ価値を見出せず、他人を利用したり死に至らしめることに全く罪悪感を感じない。 「今際の国」を皆がよく知る童話の世界と称し、著者のニーズに答えられる人物こそが「今際の国」を生き抜くことができるという独特の考えを持つ。数学者や裏社会の賭博師を出し抜くほどの驚異的な頭脳と自身の命を顧みない狂気的な駆け引きを武器に、生き残ることに対してまったく執着を持っていないにも関わらず強敵相手に次々と勝利を重ねていく。 「おにごっこ」でアリスたちに目をつけ、カルベに「ビーチ」の手掛かりを与えた。「まじょがり」開催前後に、アリスを自分の目的のために利用して裏切ったが、歪な環境でも思考を失わないアリスに興味を抱くようになる。 「ビーチ」崩壊後は単独で行動し、「ねくすとすてえじ」開催6日目に「♦J」を「くりあ」した後、同日中に「♦K」まで「くりあ」するという驚異的な実力を見せる。開催7日目にアリスと再会し、直後に現れたニラギによる襲撃の中で、クズリューから受けた影響で「自分らしくない行動がしたくなった」と、ニラギの銃弾からウサギを庇って内臓を負傷した。最終的に「今際の国」での永住権を拒否して現実世界に帰国。現実世界でも内臓に重傷を負い、同じく重体患者であるニラギと相部屋で治療を受けていた。表層的な記憶は失っているが、ニラギに「今までよりマシな生き方が出来る気がする」と語っている。 得意ジャンルは「♦」。 水鶏光(くいな ひかり) / クイナ 演 - 朝比奈彩 No.13→11。アパレル店員。女性を装っているが、実は性別違和の(元)男性でニューハーフ。ドレッドヘアで関西弁を話す。チシヤとは利害の一致で手を組む仲間にあたる。 厳格な父親の元で空手を習い道場を継ぐはずだったが、自分のジェンダーのあり方が原因で両親が不仲になることに耐え切れず、実家から逃げ出す形で父親と決別した。後に両親は離婚し、母親も身体を壊し入院してしまい、母親に報いるために介護を申し出るが、その直後に「今際の国」に迷い込んでしまい、離れ離れとなった母親のため「今際の国」を出国することを決意する。 「ビーチ」のメンバーにも過去の秘密を隠し通してきたが、「まじょがり」の最中ラスボスに自分の生い立ちを重ね、己の過去を乗り越える意志を持つ。過去と打ち勝ったことで封印していた空手を解禁。覚悟の違いを見せ付けラスボスを撃退した。「ビーチ」崩壊後はアリスらと行動を共にし、男であることも明かしている。 「ねくすとすてぇじ」開催1日目に「すうとり」を「くりあ」してからは、「げぇむ」への参加を嫌うようになったアリスと別れて単独で行動するようになり、開催7日目に「♠J」を撃破。その後「♥Q」の会場前でアリスらと再会して涙した。最終的に「今際の国」での永住権を拒否して現実世界に帰国。現実での怪我も大したことはないようで、母親の車椅子を押している姿が見られる。 得意ジャンルは「♣」→空手解禁後は「♠」。 九条朝陽(くじょう あさひ) / アサヒ 演 - 吉田美月喜 No.35。高校生。正体は「でぃいらぁ」の1人で、「まじょがり」の準備のために「ビーチ」に潜入していた。 互いに殺し合う「ぷれいやぁ」に失望し全滅を望んでいたが、地獄の中でも生きようともがくアリスに希望を見出す。「げぇむくりあ」への道を繋ぐため、「でぃいらぁ」であることを明かしレーザーで命を絶たれる瞬間を見せつけることで惨劇を止めた。 得意ジャンルは「♣」。 井上萌々花(いのうえ ももか) / モモカ 演 - 矢崎希菜 No.37。高校生。アサヒの友人。正体は「でぃいらぁ」の1人で、「まじょがり」の準備のために「ビーチ」に潜入していた。 他人の死を望みながら「でぃいらぁ」として生きることに疲れ、「自分が『まじょ』であることをすぐに見破って、誰も殺しあうことなく『まじょがり』が終わって欲しい」という想いを抱きながら、「まじょ」としての役目を遂行するために自ら命を絶つ。 得意ジャンルは「♣」。 竜田康大(たった こうだい) / タッタ 演 - 渡辺佑太朗 No.43。フリーター。ムードメーカー気質のお調子者。自動車整備士の息子で機械に詳しい。「ビーチ」崩壊後はアリスと行動を共にしている。 元は売れないお笑い芸人で、流行や甘言に乗せられやすく行き当たりばったりな生活を送っていた。過労で身体を壊して死んでしまった父親のような生き方を嫌い、母親に孝行したいと思いつつも、失敗の連続で目的を見失いかけていたところ「今際の国」へと誘われた。 「すうとり」でも無力さに苛まれていた時に、アリスからその気楽な性格に元気づけられた事実を告げられ、自分の価値を再び見出す。そして「るうる」の裏をかいた「ばとる」を仕掛けるため自らの腕をコンテナの扉で切断することをアリスに頼む。取り外した腕輪を託すも勝利したアリス達が戻ってきたときには既に出血多量により死亡していた。 得意ジャンルは「♣」。
※この「「ビーチ」」の解説は、「今際の国のアリス」の解説の一部です。
「「ビーチ」」を含む「今際の国のアリス」の記事については、「今際の国のアリス」の概要を参照ください。
- 「ビーチ」のページへのリンク