ギリシア文字 ラテン文字による表記

ギリシア文字

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/29 15:10 UTC 版)

ラテン文字による表記

ギリシア文字とラテン文字による標識。翻字でなく音を転写している

ラテン文字はギリシア文字から発展したものだが、ギリシア文字にあるいくつかの文字(ΗΘΦΧΨΩ)が存在しない。古典ラテン語でギリシア語からの借用語を表すときにはΗを e、Ωを o で表し、ΘΦΧΨはそれぞれ th ph ch ps のように2文字で表した。ほかに二重母音αι を ae、οι を oe に変えたり、語尾をラテン語風に変えたりしている。現在でも学名などでギリシア語を使用するときにはこのような変形を行う。

現代のギリシア語では発音とつづり字の差が大きく、ラテン文字表記には音声に対する転写と文字に対する翻字の2種類がある。ギリシア文字をラテン文字に翻字する方法は統一されていないが、方式による差は少ない。「ΗΩ」はマクロンをつけ(ē、ō)、気息音は h に翻字するなど。

文字

ギリシア文字
Αα アルファ Νν ニュー
Ββ ベータ Ξξ クサイ
Γγ ガンマ Οο オミクロン
Δδ デルタ Ππ パイ
Εε エプシロン Ρρ ロー
Ζζ ゼータ Σσς シグマ
Ηη イータ Ττ タウ
Θθ シータ Υυ ウプシロン
Ιι イオタ Φφ ファイ
Κκ カッパ Χχ カイ
Λλ ラムダ Ψψ プサイ
Μμ ミュー Ωω オメガ
使われなくなった文字

()
ディガンマ サン
ヘータ ショー
ギリシアの数字
スティグマ
()
サンピ

()
コッパ

文字表

「メガ」「プシロン」「ミクロン」といった語は、ビザンツ時代に文字を区別するために付加されたもの[8]。その他、ギリシア文字の各文字の詳細は、それぞれ独立の項参照。なお、コイネーギリシア語ではアルファベットの読み方は異なる。

大文字と
小文字
手書き 文字名称 音価 数値 ヘブライ
文字
ラテン
文字
HTML
文字参照
アンシャル体 筆記体 小文字体 紀元前4世紀 現代 日本語の慣用 古代 中世 現代
Α α アルパ アルファ アルファ [a] [aː] [a] [a] 1 א a Α α
Β β ベータ ヴィタ ベータ [b] [β] [v] 2 ב b Β β
Γ γ ガンマ ガマ ガンマ [ɡ]   [ɣ] ~ [ʝ] 3 ג g Γ γ
Δ δ デルタ ゼルタ

/ðelta/

デルタ [d]   [ð] 4 ד d Δ δ
Ε ε エー[9] エ・プシロン イプシロン
エプシロン
[e]   [e] 5 ה e Ε ε
Ζ ζ ゼータ ジタ

/zita/

ゼータ [zd] [dz]   [z] 7 ז z Ζ ζ
Η η エータ イタ イータ
エータ
[ɛː]   [i] 8 ח ē Η η
Θ θ テータ シタ シータ
セータ
テータ
[tʰ]   [θ] 9 ט th Θ θ
Ι ι イオータ ヨタ イオタ [i] [iː]   [i] 10 י i Ι ι
Κ κ カッパ カパ カッパ [k]   [k] ~ [c] 20 כ (ך) k Κ κ
Λ λ ラブダ[9] ラムザ

/lamða/

ラムダ [l]   [l] 30 ל l Λ λ
Μ μ ミュー ミュー [m]   [m] 40 מ(ם) m Μ μ
Ν ν ニュー ニュー [n]   [n] 50 נ (ן) n Ν ν
Ξ ξ クセー クシ クサイ
グザイ
クシー
[ks]   [ks] 60 ס ks, x Ξ ξ
Ο ο オー[9] オ・ミクロン オミクロン [o]   [o] 70 ע o Ο ο
Π π ペー パイ [p]   [p] 80 פ (ף) p Π π
Ρ ρ ロー ロー [r]   [r] 100 ר r, rh Ρ ρ
Σ σ ς シグマ シーグマ シグマ シグマ [s] [z]   [s] [z] 200 ש s Σ σ ς
Τ τ タウ タフ

/taf/

タウ [t]   [t] 300 ת t Τ τ
Υ υ ユー[9] イ・プシロン ウプシロン
ユプシロン
[y] [yː]   [i] 400   u, y Υ υ
Φ φ ペー フィ ファイ [pʰ] [ɸ] [f] 500   ph Φ φ
Χ χ ケー カイ
キー
[kʰ]   [x] ~ [ç] 600   kh, ch Χ χ
Ψ ψ プセー プシ プサイ
プシー
[ps]   [ps] 700   ps Ψ ψ
Ω ω オー[9] オ・メガ オメガ [ɔː]   [o] 800   ō Ω ω

ディガンマ」、「スティグマ」、「ヘータ」、「サン」、1つ目の「コッパ」、「サンピ」といった文字は、古典期には廃れた古い時代のもので、その後は数を表記するための文字としてのみ使われている。《この内「コッパ」は、現代ギリシア語では、異なる字体(2つ目の「コッパ」)のものを用いているらしい。》また、バクトリア語には「ショー」と呼ばれる文字が加えられているが、これはバクトリア音素の ʃ からとられたものである。

大文字と
小文字
文字名称 音価 数値 ヘブライ
文字
ラテン
文字
HTML
文字参照
紀元前4世紀 現代 日本語の慣用 古代 中世 現代

()

- ディガンマ [w] - - 6 ו   Ϝ ϝ
(Ͷ ͷ)
- スティグマ [st] - - 6 ו   Ϛ ϛ
- ヘータ [h] - - - ח Ͱ ͱ
- サン [s] - - - צ(ץ)   Ϻ ϻ

()

- コッパ [k] - - 90 ק   Ϙ ϙ
(Ϟ ϟ)

()

- サンピ [sː] - - 900 צ(ץ)   Ͳ ͳ
(Ϡ ϡ)
- ショー [ʃ] - - - צ(ץ)   Ϸ ϸ

Unicodeには「ヨット」と呼ばれる文字が加えられているが、これはラテン文字の J(この文字は、中世に I から分岐して成立した文字である)からとられたもので、古代には存在してはおらず、また現代でも日常的なギリシア語に使われることはない。この文字は、言語学において、有史以前のギリシア語の発音(硬口蓋接近音)を表記するためのものらしいが、詳細は不明である。

大文字と
小文字
文字名称 音価 数値 ヘブライ
文字
ラテン
文字
HTML
文字参照
紀元前4世紀 現代 日本語の慣用 古代 中世 現代
- ヨット [j] - - - י Ϳ ϳ

記号

現代ギリシア語においては、鋭アクセント記号 ( ´ ) とトレマ ( ¨ ) の2種類のダイアクリティカルマークを使用する。その他の記号は、専ら古典ギリシア語などの表記にのみ用いられる。Microsoft Windowsの場合、通常のギリシャ語キーボードでは、鋭アクセント記号 ( ´ ) 以外は入力できないので、それらを入力したい場合は、「ギリシャ語 Polytonic」キーボードを使用する必要がある。

アクセント記号

記号 名称 意味
´ 鋭アクセント記号 高音(または強アクセント)
` 重アクセント記号 中高音(または弱アクセント)
˜(または ˆ) 曲アクセント記号 上2つの結合(山なりの発音)

気息記号・その他

記号 名称 意味
有気記号 語頭母音の有気 (h) 発音
᾿ 無気記号 語頭母音の無気発音
¨ 分離記号(分音符号 連続母音字を個別に発音
◌ͅ 下書きのイオータ 歴史的過程で省略・脱落された ΑΙ /aːi/(アーイ)、ΗΙ /ɛːi/(エーイ)、ΩΙ /ɔːi/(オーイ)の Ι を表現する記号
˘ 短音記号 母音の長さを短くする
¯ 長音記号 母音の長さを長くする

シンボルとしてのギリシア文字

ギリシア文字は、ギリシア語圏以外ではシンボルとしてさまざまな用途に用いられる。特に小文字はラテン文字と異なる形をした文字が多いため、ラテン文字だけでは不足する場合によく用いられる。

箇条書きなどの順序数で「α、β、γ…」を使用することが多い。α線β線γ線も似た使い方である。

単位として使われる「Ω[10]SI接頭辞の「μ」、角度の「θ」、標準偏差を表す「σ」、増分の「Δ」、円周率の「π」、総和の「Σ」や総乗の「Π」、ラムダ計算カイ二乗分布ガンマ関数などはよく知られる。詳細は個々の文字を参照。

シンボルとして使われるギリシア文字は、通常のギリシア文字とは異なる形をしていることもある。Unicode では通常のギリシア文字のほかに主にシンボル用に使われるいくつかの文字を定義している(ϑ ϕ ϖ ϰ ϱ など)。

国際音声記号では [β]有声両唇摩擦音に、[θ]無声歯摩擦音に使用する。[ɑ] [ɣ] [ɤ] [ð] [ɛ] [ɵ] [ʎ] [ɸ] [ø] などは一見ギリシア文字のように見えるが、少なくとも Unicode ではギリシア文字とは別の文字として定義されている。


  1. ^ 「ビジュアル版 世界の文字の歴史文化図鑑 ヒエログリフからマルチメディアまで」p241 アンヌ=マリー・クリスタン編 柊風舎 2012年4月15日第1刷
  2. ^ a b c Threatte (1996) p.271
  3. ^ Swiggers (1996) p.263
  4. ^ 後に [y, yː] に変化した。
  5. ^ Allen (1986) p.47
  6. ^ a b Swiggers (1996) p.265
  7. ^ a b Threatte (1996) p.272
  8. ^ Allen (1986) p.69,79
  9. ^ a b c d e Allen (1986) p.169
  10. ^ Unicode には文字様記号として U+2126 にオーム記号が定義されているが、ギリシア文字のオメガを使うのが望ましいとする。Letterlike Symbols”. The Unicode Consorcium. 2015年5月29日閲覧。
  11. ^ 「ビジュアル版 世界の文字の歴史文化図鑑 ヒエログリフからマルチメディアまで」p266 アンヌ=マリー・クリスタン編 柊風舎 2012年4月15日第1刷
  12. ^ 『図説 世界の文字とことば』 町田和彦編 26頁。河出書房新社 2009年12月30日初版発行 ISBN 978-4309762210
  13. ^ 「ビジュアル版 世界の文字の歴史文化図鑑 ヒエログリフからマルチメディアまで」p273 アンヌ=マリー・クリスタン編 柊風舎 2012年4月15日第1刷






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